去る6月21、22日に横浜アリーナで開催された『Suchmos The Blow Your Mind 2025』でカムバックを果たしたSuchmos。新体制となり7月2日にはニューEP『Sunburst』が発表となり、バンドの新章がスタートを切った。
横アリのライブにはTechnicsのトレーラーが置かれており、そこでSuchmosのアナログを試聴することができた。今回は、YONCEとKaiki Oharaにトレーラー車へ来てもらって、私物のレコードを試聴してもらう。海沿いでした「ターンテーブルとレコードの音楽の話」をどうぞ。
Technicsのターンテーブルには普遍性があって そこがシビれる
Kaiki Ohara(以下、Kaiki): このトレーラーすごいね。街を移動しながらDJイベントをしたりしても楽しそう。
YONCE: それはいいね。
―今日は、ひと言でいうと「Technicsってどうですか?」っていうインタビューです。
Kaiki: Technicsのターンテーブルは18歳くらいの頃から使っているんですよ。選んだ理由はなんだろう……。カッコよさじゃないですかね。
YONCE: 学生の頃、地元のダイニングバーでバイトをしていたことがあって、店長がヒップホップ好きだったんですね。店にはTechnicsのターンテーブルが当たり前のように置いてあって、DJをやる人にはコレ(Technics)一択なんだなって感じたのを覚えています。その時に、「他の追随を許さない堅牢性と安心感があって他とは比較できないし、時代ごとにモデルチェンジしてきた背景があるけど、どれもめちゃめちゃいいんだ」ってことを教えてもらいました。そういう憧れのアイテムだ って印象があります。
Kaiki: 僕はMK5(SL-1200MK5)世代 で長らく愛用してきたんですけど、先日の横アリでのライブからMK7(SL-1200MK7) を使いはじめて、微妙な違いを体感しましたね。
YONCE: あ、そうなんだ?
Kaiki: まぁ、かなり使い込む人じゃないと気づかないレベルの差なんだけどね。スイッチの感触が変わっていたり、±16%のピッチ調整ができるようになってたり。でも、基本的には何も変わらない ね。とにかく良いターンテーブル。
YONCE: でも、たしかに思ったな。ライブのリハをしていたら、ある日、Technicsさんがライブ本番で使う機材を持ってきてくれて。それで、すぐに機材を入れ替えたけど、Kaikiが何の違和感もない感じだったんですよ。それってすごいことだなって。例えば、車だったら違うじゃないですか。同じ車種でも世代が変わると運転の感触が全然違ったりするし。これまでにTechnicsが何世代にも渡ってターンテーブルを出してきたにも関わらず、そこに普遍的なものがある っていうのはシビれますね。
Kaiki: 本当にそうだね。Technicsは最初から完成されたものを打ち出していて、この速度で(レコードが)回ってくれる っていうところに絶対的な安心感がある。
未来のレコ屋で2020年代という棚に自分たちの盤が並んでいたら
―自宅などでリラックスタイムに音楽を聴くときはアナログ環境が多いですか?
YONCE: 時と場合によりますね。やっぱりサブスクも俺は好きというか、あれはあれでいいなって。実際にディグるときに重宝していますし、変にアナログを特別視したくない んですよ。そういう意味で、Kaikiはアナログを超自然的に選択していると思うし、持っているものを聴くだけだから、アナログとデジタルの区分けがない状態です。
Kaiki: そうそう。サブスクでディグって自分の中でヒットしたやつを聴き込む。で、レコ屋で、その作品に出会ったらレコードを買って聴く、という流れです。レコードはいつでもゲットできるわけじゃないですからね。常に<いつか出会ったら絶対にほしいリスト> みたいなのが頭の中にあるんですよ。
YONCE: たまたまの出会いがね、嬉しいから。
Kaiki: いいものはいいと毎回教えてくれるのがレコードって気がしますね。
YONCE: それもわかるな。だから、自分たちの作品がレコードになるって聞くと「出していいんでんすか?」って気持ちになる。
Kaiki: そう、この歴史(アナログによる音楽世界)の1ページに入ってもいいんですか? って。
YONCE: めちゃくちゃ喜ばしいし、最初に自分の作品に針を落とす瞬間って、なんか奇妙な気持ちになるんだよね。
Kaiki: なるよね。そのレコ屋の棚に60年代、70年代って区分けがあったりするじゃないですか。未来の世界では、2020年代っていうラック があって、そこに自分たちのレコードがあったりするのかな、なんて思いを馳せちゃいますよね。
―今日はトレーラーの中にSL-1200MK7を置いているので、お2人が持ってきたレコードを試聴してみてください。
Kaiki: (SL-1200MK7を触りながら)このブラックのモデルね、もうカッコよさの塊だよね。他にもシルバーのやつがあるんだけど、そっちは……。
YONCE: ガンダム感があるよね。
Kaiki: わかるわかる! シルバーはイケメンなんだよ。俺は昔からシルバーを使ってきていたので、今回のシルバーを選ばせて頂きました。じゃ、自分のルーツの1枚をかけてみましょう!
―ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)の3rdアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンドⅢ』ですね。
Kaiki: これは自分にとって外せないですね。どのアルバムも好きだけど3rdが1番好きかも。
YONCE: うん、1番好き。
Kaiki: この「Pale Blue Eyes」にたどり着いた瞬間のさ、「もう人生、何でもいいわぁ」 って感覚になれる感じというかね。
YONCE: あるね〜。これはオリジナル?
Kaiki: うん、オリジナル。
YONCE: この作品は本当にすごいよね。この音楽をNYで作っていたなんて信じられないよ。
Kaiki: いやぁ、マジで売れなかったんだろうなぁ(※)。
一同: 笑。
※『ヴェルヴェット・アンダーグラウンドⅢ』は1969年リリースのアルバム。現在では最高傑作と評される作品だが、リリース当時は評価されず、実際にレコードの売れ行きも悪く、チャートにも入らなかったという事実がある。
楽しんで音楽をやった先にちょっといい未来が待っていれば
YONCE: 自分はコレでも聴こうかな。ボロボロのホワイトアルバム。
Kaiki: いいですねぇ〜。
―選んでいただいたルーツの1枚はザ・ビートルズの『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』。1968年発表の2枚組全30曲というフルボリュームの作品ですね。
YONCE: 本当に大変なバンドだったんだなってことがよくわかる作品ですよね。(「Happiness Is a Warm Gun」をかけながら)この曲、有名な話ですけど3曲を合体させて1曲に仕上げたんだとか。そうまでしないともう作品が作れなくなってたんだなって(笑)。
Kaiki: 満足できなくなっちゃってたんだろうね。行きすぎてしまった才能を慰めるために必要なことだったのかもしれない。いやぁ、大変な人たちですよ(笑)。
―その後、海沿いに設置したTechnicsのトレーラーの中で、2人のレコード試聴タイムを続けてもらったー
Kaiki Oharaが持ってきてくれた激レアレコードたち。
YONCEのレコード。中にはHedigan’sの『再生』の7インチも。
―ところで、誰もが気になるのがSuchmosの今後だと思います。EP『Sunburst』と、それに伴うツアーが発表され、誰もがどうなっていくのか気になっていると思います。最後に聞かせていただきますが、今後はバンドを通じてどう活動していきたいですか?
Kaiki: 横アリ2デイズのライブで、俺らにとってもみんなにとっても通過しなきゃいけないものをちゃんと通れたし、くずせた気がするんですよ。だからね、あとはもう本当に楽しみたい 。ある種のファミリーバンドでもあるので、こうして関係が続いてりゃ、音楽が勝手に運んでくれるんじゃないかなって思っています。
YONCE: うん、そうだね。楽しみの先にちょっといい未来があれば、それで満足なんで。あと、これは今まであえて言及してこなかったんですけど、僕はあらゆる活動を通じて世界平和を目指します!
一同: おお〜!
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