「AIには作れない熱がある」
自爆 × HINONABE × the bercedes menz
スペースシャワー列伝 第168巻「揺炎の宴」事前鼎談

Photography_Yuki Aizawa, Text&Edit_Shu Nissen

「AIには作れない熱がある」
自爆 × HINONABE × the bercedes menz
スペースシャワー列伝 第168巻「揺炎の宴」事前鼎談

Photography_Yuki Aizawa, Text&Edit_Shu Nissen

2001年から続く新人アーティストの登竜門企画、スペースシャワー列伝
7月9日にShibuya WWWで開催される第168巻「揺炎の宴」には、自爆、HINONABE、the bercedes menzの3組が出演する。
ロックンロールの復権を掲げる自爆。爆音とポップネスを共存させるthe bercedes menz。文学性と衝動を行き来するHINONABE
ジャンルもルーツも異なる3組だが、今回の対談では不思議な共通点も見えてきた。それは、ライブという場所への強い執着だ。
AI、アルゴリズム、細分化する界隈カルチャー。
そんな時代だからこそ、彼らはなぜライブハウスに向かうのか。
「揺炎の宴」を目前に控えた3組に、それぞれの現在地と、この日への思いを聞いた。

Left to Right
ササキ(自爆)
磯敢太(HINONABE)
ワダカズナリ(the bercedes menz)

――まず、お互いの印象から聞かせてください。

磯敢太(HINONABE):どちらも、めちゃくちゃ強そうな印象がありました。腸(ハラワタ)みたいな、僕が使ったことがないような歌詞が出て来たり(笑)今日も正直「ちゃんと話せるのかな?」と思っていたくらいで。かなり個性的なメンツが集まったイベントだなと。

ワダカズナリ(the bercedes menz):磯さんは初めましてですが、広告でよく見かけてました。とにかく歌が上手いなっていうのと、ストレートにグッと来る。それができる表現力の高さが魅力だと思いました。
自爆さんは、サーキットフェスで何回かご一緒しました。あと新宿の喫茶店で偶然会ったことがありますよね。

ササキ(自爆):ベルメンさんはメディアで顔出しをしていないし、ライブでもお客さんがいてよく見えないから、最初は気がつかなくて。

ワダ:ササキさんがあのヘルメットを持っていたので、「あ、自爆の人だ」ってなりました。めちゃくちゃ尖っている印象なんですけど、生き方をちゃんと見せるアティチュードが良いなと思いますね。

ササキ:方向性は全然違うと思うんですけど、それぞれ強い個性がありますよね。僕自身、あまり新しい音楽ばかりを追うタイプではないんですけど、お二組ともすごくモダンな印象があって。ルーツは違うのに、それぞれ今の時代の表現になっている感じが面白いなと思います。

:確かに。歌詞の世界観も全然違うし、ライブで受ける印象も違うんですけど、それぞれちゃんと自分たちのやり方で前に進んでいる感じがしますよね。

「激しい音でJ-POPをやるのが武器」

the bercedes menz
“ハードコアJ-POPバンド”を掲げる東京発の3ピースバンド。メディアでは素顔を明かさず活動しながら、爆音とポップネスを共存させた独自のサウンドで注目を集める。2026年にメジャー1stアルバム『weapons』をリリース。ライブハウスを中心に勢力を拡大し続けている。

――the bercedes menzはメジャー1stアルバム『weapons』をリリースしました。今の自分たちの武器は何だと思いますか?

ワダ:結構、誰もやっていないことをやっている自覚はあります。簡単に言うと、激しくて大きい音でJ-POPをやることですね。ロックバンドという形を取りながらJ-POPを鳴らす。それが自分たちのやっていることだと思っています。

もちろんバンド好きな人にも聴いてほしいんですけど、それだけじゃなくて、普段バンドを聴かない人にも届いてほしい。カラオケで歌えるとか、歌として気持ちいいとか、そういう感覚も大事にしています。ロックバンドだけど閉じた音楽にはしたくないんですよね。

――アングラとポップの間を行き来している感覚もあります?

ワダ:ありますね。たぶん今回の3組って、やり方は違うけどみんなそういう部分を持っていると思うんです。ハードにいく曲は徹底的にハードにやるし、柔らかい曲は柔らかい曲としてやり切る。

どっちつかずじゃなくて、その曲ごとにちゃんと振り切る。そのバランス感覚は常に考えています。
バンド好きのためだけの音楽でもないし、かといってただポップなだけでもない。その間をずっと探している感じかもしれないですね。

「ロックンロールを主流派に戻したい」

自爆
2023年結成。ロックンロールの復権を掲げる東京発のバンド。50〜70年代のロックンロールやカルチャーを現代的な解釈で鳴らしながら、ライブハウスを中心に活動を展開。1stアルバム『大衆に告ぐ』をリリースし、独自の世界観と熱量で注目を集めている。

――自爆のアルバム『大衆に告ぐ』にはどんな意味が込められているのでしょうか。

ササキ:メンバー全員、人生初のバンドなんですよ。その中で初めてアルバムを作った。作品を世に広めたいという気持ちはもちろんあります。でも、それと同じくらいロックンロールそのものを広めたいんです。

僕の中では50〜70年代くらいの文化として捉えているんですけど、その価値観や世界観をもう一度流通させたい。だから『大衆に告ぐ』なんです。ロックンロールを主流派に戻したい。

――かなり大きな目標ですね。

ササキ:時代的にはナンセンスだと思います(笑)。でもだからこそ意味があるとも思うんです。今って誰もがそれぞれ違うものを聴いていて、違う価値観を持っているじゃないですか。

それはそれで面白いんですけど、その中であえてロックンロールを掲げる。ただ昔の格好をして昔の音を鳴らしたいわけじゃないんです。ロックンロールをコスプレとしてやりたいわけじゃなくて、その魂だけは本気で継承したい。

だからライブも絶対に手を抜かない。前回と同じことをやっていたら終わりだと思っています。毎回ベストを更新しなきゃいけないし、全部全力です。ロックンロールって結局、生き方だと思うので。

「春の行き切らなさを鳴らしたかった」

HINONABE
平均年齢21歳の4人組オルタナティブ・ロックバンド。文学的な歌詞と繊細さ、狂気が同居するサウンドを武器に活動中。2026年4月に最新曲「ころもがえ」をリリース。ポップスとアンダーグラウンドを横断する独自の表現で存在感を高めている。

――HINONABEの最新リリース「ころもがえ」はどんな感覚を大事にした曲なんでしょうか。

:春の温度感ですね。暖かいんだけど、どこか中途半端で、行き切らない感じ。歌詞にもそういう空気感を入れています。春って、新しい生活が始まる季節でもあるし、出会いも別れもあるじゃないですか。そういう曖昧さを曲に落とし込みたかった。

自分たち自身も、ポップスとアンダーグラウンドの間みたいな感覚があるので、その中途半端さみたいなものを春と重ねていた部分はありますね。

春って明るいだけじゃなくて、ちょっと不安だったり寂しかったりもすると思うんです。そういう説明しづらい感情も含めて表現したかった曲です。

「次の主流がない時代だからこそ」

――今回のタイトル「揺炎の宴」にはどんな印象を持ちましたか?

ササキ:今って次に来る主流ジャンルがない時代だと思うんですよ。だからこそ、この3組が選ばれたんじゃないかなと思っていて。

宴とは言いつつも正直、みんな内心では「ぶっ倒してやろう」って思ってるイベントなんじゃないですか?もちろん仲良くやるんですけど、それでもライブハウスに立つ以上は勝ちたい。

お客さんを持って帰りたいし、一番良かったと思われたい。そういう気持ちは絶対にあると思います。

ワダカズナリ:誰がそこにある火を燃やせるのか。僕らが一番それをできたらと思ってます。みんなそう思ってるんじゃないですか?

:僕は逆にお祭りみたいな感覚でした。平和に踊りたいというか(笑)。でも結果的に、それぞれの熱量がぶつかり合うから面白いんでしょうね。全然違うバンドが並ぶからこそ起きることってあると思うので。

「画面の向こう側はAIの独壇場になる」

――ライブで一番燃える瞬間は?

:音と感情が全部噛み合ったときですね。空間と一体化するというか、自分自身が大音量でなっているような感覚になるんです。それがすごく気持ちいいです。

ワダ:ライブって結構苦しい部分もあるんですよ。毎回ベストを更新しようと思うと、当然しんどいし。

でも途中からランナーズハイみたいな状態になる瞬間がある。それがお客さんにも伝わっていると感じられたとき、一番燃えます。自分たちだけじゃなくて、フロア全体の熱量が上がっていく瞬間があるんですよ。

ササキ:僕はイレギュラーです。楽器が壊れたとか、機材トラブルが起きたとか。この前も急に「弾けるやつ来い!」って言ったら18歳の子がステージに上がってきて。チャック・ベリーの「ジョニー・B.・グッド」のリフを弾き始めて。そういう予想外のことが起きた瞬間が一番興奮しますね。

ライブって結局、その場でしか起きないことが面白いと思うので。完璧に進行することよりも、その日しか起きないことの方が価値がある気がしています。

ワダ:ギターソロでシールドが抜けた時とかね。とりあえず掲げるしかないんですけど(笑)そういうのも最高ですよ。

――皆さんライブの価値についてどう考えていますか?

ササキ:最近よく考えるんですけど、画面の向こう側って、いずれAIの独壇場になる気がしているんです。
映画もゲームも音楽も。それと同時にスマホが普及して、文化そのものも細分化したと思うんですよね。昔みたいな主流がなくなって、それぞれが違うものを見るようになった。

それは面白いことでもあるんですけど、その一方でアルゴリズムの外側にあるものと出会いづらくなった。だから今回みたいなイベントには意味があると思うんです。自分から探しに行かなかった音楽に出会える。それはライブハウスだから起きることだと思うんですよ。

AIでは作れないし、サブスクでも再現できない。だからライブの価値はむしろ上がっていくんじゃないかなと思っています。

ワダ:僕もそう思います。特に、対バンって前のバンドの匂いが残るんですよ。その空気を受け継いだり、壊したり、混ざったりする。そういう生っぽさはライブでしか味わえないものだと思います。その日だけの空気があるので。

「伝説の日にしたい」

――最後に、7月9日に初めて3組を見る人へメッセージをお願いします。

ササキ:こういった面白い対バンを組んでいただいているので、とにかく勝利!勝利したいですね。ロックンロールを見に来てください。

ワダ:やっぱどのバンドが一番良かった?って話になるので、こちらも勝利するしかないですね。バチバチになると思います。あと素顔が見れます(笑)

:みんなで一緒に勝利できたらいいんですけど(笑)絶対いい日になると思います。整えられた音源とはまた違う、ライブの熱量を見てほしいですね。

INFORMATION

スペースシャワー列伝 第168巻 ~揺炎の宴~

開催日:2026年7月9日(木) OPEN 18:15 / START 19:00
開催場所:Shibuya WWW
ARTIST:
自爆 / HINONABE / the bercedes menz

イベントチケットサイト