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米津玄師
5th ALBUM『STRAY SHEEP』
発売：2020年8月5日（水）
https://reissuerecords.net/straysheep/
間違いなく、時代を代表する一枚になるだろう。「Lemon」を筆頭に数々のヒット曲を世に放ってきた米津玄師による2年9ヶ月ぶりのニューアルバム『STRAY SHEEP』。収録された全15曲のうち、新曲の多くは新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が大きく揺れ動く中で制作されたという。期待を大きく上回る傑作は、いかにして作られたのか。
ーアルバムの制作に本格的に取り掛かったのはいつ頃でしたか。
ここ3か月くらいですね。本来であればツアーと並行してアルバムを作っていくつもりだったんですけど、新型コロナウイルスの影響で、その予定がなくなってしまって。外にも出れず、人にも会えなくなって、家にこもって一人でずっと曲を作っていた。だからこそ、本来作ろうと思っていたものとは違うものになったと思います。「じゃあ俺は何を作ればいいんだろうか？」と考え始めて、家にこもって1人でずっと曲を作っていましたね。
ー表題曲にあたる「迷える羊」もツアーが中止になったあとにできた曲ですか？
そうですね。ツアーが中止になって外出がままならなくなった頃に作り始めた曲です。ラストの「カナリヤ」を作っているときもそうでした。新型コロナウイルスによって、日本のみならずいろんな国で混乱が巻き起こっていて、正しいことがなんなのか誰1人わかっていない当時の状況で、じゃあ自分は何を作ればいいのかということも考えていました。いろんなものに怒ったり、失望したり、絶望したり、どうしても感情的になってしまう感じがあったんですけれど、最終的には、この国で、この世界で生きていかなきゃならないわけで。そうなったときに、自分がやれることはポップソングを作ることだという結論に行き着き、そのうえで、生きていくことや生活していくことを肯定する曲を作ろうと思いました。
ー「感電」は、楽曲だけでなく奥山由之監督が手掛けたMVも素晴らしかったです。
奥山監督とは最初の打ち合わせのときにバチッとハマる感じがありました。同い年というのもあったし、最初の打ち合わせの段階で自分にとって大事な言葉を発してくれた。自分のことを「世の光を多角的に映し出すミラーボールみたいな人だ」と形容してくれて、その言葉がすごくしっくりきたんです。その言葉があったからこそ、このアルバムのすごく大きな指針として、宝石、クリスタルみたいなものを作りたいと思ったんです。
ー宝石、クリスタルみたいなもの、というと？
宝石は、人間の手で発掘された原石が、いろんな研磨やカットを経て美しい形になりますよね。それって要は原石を傷つけることだと思うんです。つまり、美しく形を整えるということは、本質的には傷を付けることに近い。同じように、人間も生まれた瞬間は球体で、そこから家庭環境やいろんな外からの刺激によって傷が付いていく。丸だった形が変化して、摩耗して、研磨されて、たくさんの傷が付いて、形が角ばって、それによって光が反射する宝石になっていくんじゃないかと。そんな風に思うんです。
ー１曲目の「カムパネルラ」には「光を受け止めて 跳ね返り輝くクリスタル 君がつけた傷も 輝きのその一つ」というフレーズもあります。
「カムパネルラ」のその部分の歌詞は今説明したことに近いですね。この曲はアルバム制作の最後に作ったんで、今の自分の心情に一番近いものになっています。アルバムを総括するようなニュアンスを持たせたいという思いもありました。
ーちなみに、ここ1、2年で、米津さんの刺激になった映画や小説や漫画などのカルチャー、クリエイティブに影響を与えたものには、どんなものがありますか？
ここ最近は人からインプットを受けることがすごく多かったかもしれないですね。人から与えられた影響が音楽に直結している。それこそ菅田将暉くんにしても、彼がいなければ今の自分は絶対にいないと思うし。カルチャーの話で言うと、最近は制作が終わったので、ずっと観たかった映画を観たり本を読んだりしています。『この世界の片隅に』もようやく観ることができたんですけれど、本当に素晴らしかった。そういう時間がすごく楽しいです。
