[AUGER ART ACTION] Vol.01:上岡拓也がタトゥーカルチャーとクラフトマンシップを融合させる

Photography_Ryo Kuzuma, Text_Ryo Tajima(DMRT), Edit_Takuya Nakatani

[AUGER ART ACTION] Vol.01:上岡拓也がタトゥーカルチャーとクラフトマンシップを融合させる

Photography_Ryo Kuzuma, Text_Ryo Tajima(DMRT), Edit_Takuya Nakatani

貝印によるグルーミングツールブランドAUGERの掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER ART ACTION」。第1弾はイラストレーター、アーティストとして活躍する上岡拓也に油彩作品を描いてもらった。

そのアーカイブを振り返るとKANDYTOWNKOHHなどHIPHOPアーティストのアートワークも多数ある上岡。今回、氏がキャンパスに描いたのは自身のルーツにあるタトゥーカルチャーを昇華させたモチーフだ。さながら生きている刃物然としたレオパードとスネークは、無機質な配色にも関わらず旺然たる仕上がりだ。

ルーツであるタトゥーカルチャーを昇華した表現

 

ー今回、AUGERから連想されるイメージを作品に落とし込むにあたって、どんなことを考えましたか?

 
上岡拓也(以下、上岡):僕はコントラストが強かったり、金属の質感が感じられる絵を描くのが昔から好きなんですが、それは見方によっては刃物っぽいテイストにも捉えられると思います。そういう意味で、今回のプロジェクトは自分とリンクする部分があったんですよね。制作に取り掛かる前に、AUGERのプロダクトを使用させていただいたり、貝印のオフィスで包丁に浮かび上がっている波模様を拝見させていただいて、綺麗でカッコいいと感じましたし、貝印が持っているクラフトマンシップというか、ブランドの雰囲気自体が自分の好みに合っていると思ったんです。

 

ーモチーフにブラックパンサーとスネークを選ばれたのは何か理由があるんですか?

 
上岡:まず、AUGERがモノクロの世界観でブランディングされているので、豹は豹でもブラックパンサーを選びました。それに、ブラックパンサーとスネークが絡み合っている様子というのは、アメリカン・トラディショナル・タトゥーの代表的なモチーフでもあって、自分のルーツにあって影響を与えられているものなので、それを自分なりの解釈とタッチで描いたんです。
 

ー描かれたブラックパンサーとスネークのタッチが独特で、非常にインパクトがあると思います。

上岡:どちらも表面の質感を刃物っぽく見えるタッチで描いていきました。後付けになりますけど、このスネークの蛇腹部分なんかは、AUGERのカミソリっぽさも彷彿させるものがあるんじゃないかなと。
 

心身を整頓させて制作に向き合うという姿勢

 

ーたしかに。例えば、カミソリでヒゲを剃ることも、身だしなみを整える行為の1つですが、上岡さんにとって、何か自分を整えるためにしていることはありますか?

 
上岡:やっぱり外出する前は、ちゃんとヒゲを剃ったり、身だしなみは整えますね。それに、仕事に取り掛かる前に部屋の片付けをしたり、デスク周りを整えたりして、1度整頓させてから作業に入るというのはありますね。昔はそうじゃなかったんですが、最近はちょっと性格も変わってきて、いろいろと散らかった状態で、次の行動に移すのが苦手になってきちゃったんですよ。
 

ーなるほど。片付け以外に、心身を整えるために行なっていることはありますか?

 
上岡:週3ぐらいの頻度でランニングをしていますね。朝、走った後にシャワーを浴びて爽快な気分になってから作業に取り掛かる。ここだけ話すとカッコよく聞こえますけど、実際は、制作でほとんど外に出ないので身体がなまってしまわないように少し走るぐらいのことはしようと思っているだけなんですけどね(笑)。

 

ーわかります(笑)。一方で絵を描くことは、まさに自分と向き合う作業だと思うのですが、その辺りはいかがでしょう?

 
上岡:そうですね、特に今回の企画のように自由度が高いほど、何もない状態から作品を作るということになるので、(自分と)向き合わざるを得ないというか。誰かが見ているわけでもないので、自分が描いている作品が、実際に良いのかどうか悩んだりもしますね。1回描いて、次の日に見たら良いかなと思ったり、また半日して違うかな? と思ったり。やっぱり、なるべく自分の満足いくものにしたい思いが今作に関してもあったので、どうしたらカッコよくなるかについては、自分なりに試行錯誤しましたね。
 

大きくインスパイアされたグラフィティカルチャー

 

ーそうした思考の変遷を経て今作が出来上がったわけですが、先ほどルーツの1つとしてタトゥーカルチャーがあると仰っていましたね。タトゥーは、いつ頃から好きですか? また、通っているタトゥースタジオはありますか?

 
上岡:タトゥーは、何か特別なキッカケがあったというわけではなく、昔から憧れていたし、直感的にカッコいいものだと思っていたんですよ。自分も入れていますけど、それは単純に入れたかったからですね。好きなタトゥースタジオはTHE PARLOURで、その場所を運営しているタトゥーアーティストのUEくんやスタッフとは仲も良いですし、自然とリラックスして行ける場所になっています。
 

ーそもそもの話になりますが、上岡さんは、どういう理由から絵を描き始めたんですか?

 
上岡:本当に小さいときから絵が好きで。クラスに1人ぐらい絵がうまい的なヤツがいるじゃないですか。いわゆる、そういうタイプだったかもしれません。幼稚園のときに動物園に行って絵を描く機会があって、自分の絵が大人にやたら褒められたことがあったんですよね。そのときに幼稚園児ながら『絵だったらいけるかもしれない』って、うっすら思っていた記憶があります。
 

ーそんなに幼いときからですか!?

 
上岡:はい(笑)。その後、他に得意なことや、やりたいことが出てきたわけでもなかったですし、絵でやっていこうと決めるのは早かった気がしますね。小学校のときは電車で通っていたんですが、窓から見える風景の中にグラフィティがあって『ああ、ああいうのが描きたいな』って。そこからグラフィティに憧れて、という流れです。グラフィティは、今の自分に直接的に大きく影響を与えてくれたルーツの1つですね。
 

ーでは、ターニングポイントではどうでしょう? 何がきっかけで作品が注目されるようになったと感じていますか?

 
上岡:振り返れば、KOHHくんのジャケット(2014年発表のアルバム『MONOCHROME』)を、たまたま描かせてもらえたのは大きいと思います。その流れで、水曜日のカンパネラ(2015年発表のアルバム『ジパング』)もやらせてもらえて。そこがきっかけとして世の中がある程度、自分の存在を知ってくれた感覚があります。


 

ーアーティストのアートワークも数多く手掛けられていますよね。特にKANDYTOWN関連の作品を描かれているイメージは強いです。

 
上岡:KANDYTOWNに関しては、IOとか一部のメンバーが同じ学校の出身で後輩なんですよね。在学中は彼らのことを知らなかったんですけど、とあるタイミングで出会って、その頃から「ラップやってるんですけど、いつかジャケを描いてくださいよ」なんて言われていたんです。その後、まだ有名になる直前の彼らの音楽を聴いて、めっちゃカッコいいと思って。それで、「むしろ描きたいわ、先輩面してごめんね」って(笑)。
 

ーそんな経緯が(笑)。

 
上岡:そこからは、KANDYTOWNに関してはジャケットに限らず、本当にたくさんのアートワークを担当してきましたね。

 

ー他にもHIPHOPアーティストのアートワークを数多く担当されていますよね。やはりHIPHOPカルチャーからも影響を受けた部分はありますか?

 
上岡:HIPHOPは聴くのは好きですけど、何か具体的に絵に反映されている感覚は自分の中にはないです。間接的な部分は自分で認識していないことも多々あるんでしょうけどね。なので、HIPHOPのジャケットだけを描きたいという気持ちがあるわけではないんですよ。ただ、KOHHくんやKANDYTOWNもそうですけど、いろんな繋がりを経て、たまたまジャケットを描かせてもらえるようになったというのは、偶然ながら何らか運命的なものがあるんだろうなと思っています。
 

ー最後に、今後描いていきたいものなどはありますか?

 
上岡:今はクライアントワークも大切にしながら自分の作品を描いているんですけど、今後は作品の精度をもっともっと上げていきたいと考えていますね。来年3月には、先ほどお話したTHE PARLOURのUEくんと2人で、渋谷のギャラリーTHE PLUGで展示を行う予定です。まずは、それが近々の目標になりますかね。その展示では、昨今のトレンドもあって、絵だけではなく何か立体物も作ろうかという計画も出てきているので、どんな展開になるのかご期待いただければ。

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