[AUGER ART ACTION]Vol.04:Margtが作ったユーモア満載の無限鏡

Photography_Toyohiro Matsushima, Edit&Text_Takuya Nakatani, Ryo Tajima(DMRT)

[AUGER ART ACTION]Vol.04:Margtが作ったユーモア満載の無限鏡

Photography_Toyohiro Matsushima, Edit&Text_Takuya Nakatani, Ryo Tajima(DMRT)

貝印によるグルーミングツールブランドAUGERの掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER ART ACTION」
第4弾は本誌EYESCREAMでも連載『孫ノ珍美眼』を担当するクリエイティブユニットMargt。制作したのは“男の夢が詰め込まれた無限鏡”。見れば、スロットやら猿、サボテンの人形やらが装着され、とにかくド派手な仕上がりだ。まず、これは何なのか? というところからMargtのArataとIsamuに話を聞いていこう。

Margtらしいユーモアを詰め込んだ無限鏡

ーいやー、パッと見ですごい作品ですね。なんでこうなった!? というところから聞いてもいいですか?

Arata:実は純粋なアート作品を作ったのは今回が初なんですよ。Margtはオレがグラフィック担当でIsamuが映像担当なので、双方の特性をどうミックスさせて作品を作ろうか話していたんですよ。そのうち、映像主導でもグラフィック主導でもなく、とにかくアホっぽいほどに遊び心が感じられるものが面白いんじゃないかって流れになっていたんですよね。電光掲示板とか、どこか大袈裟でいいじゃないですか。

Isamu:アホになったほうが正解かもしれんなって話をして。ただアホなものを作っても意味がないので、AUGERの中にある“身だしなみを整える”という部分にフォーカスして鏡を中心に持ってきて、アイディアを作品の中で合体させていこうとしたんですよ。そしたら結果的にめっちゃアホなものになったんです(笑)。

ー全力の遊び心を感じますし、まさしくクリエイティブ精神を突き詰めたアホですね。作品のタイトルは?

Arata:「such a small world」ですね。某ファンタジーランドからの引用かもしれません。男の夢を詰め込んだ無限鏡を作ろう、というのが制作におけるテーマです。

Isamu:だから、中央の鏡がインフィニティミラーなんですよ。男らしさを追究した無限鏡といったところですかね。

ーこの作品、随所にギミックを作り込まれていますよね。特にスロットになっているところなんて、男の無骨な雰囲気があります。これが作品全体の挙動を決めるというのもいいですね。

Arata:最初はスロットも飾りの1つとして組み込んでたんですけど、 そこですべてを司るような作りにするのが面白いかと思って。

Isamu:今日はどんな1日になるだろう? っていう占い的な要素も、スロットにはある感じですね。

Arata:あと、鏡の下には口臭チェックメーカーをつけていたり、スロットでチェリーマークが当たると貝殻が開いて避妊具が出てきたりとか(笑)。『いいか、忘れんなよ』的な紳士としてのメッセージ性をギミックに込めていますね。1日の始まりの場所的な感じです。上部に付いている猿とサボテンは朝の男を鼓舞するような踊りを舞ってくれるわけですよ。レコードプレイヤーが付いているのは、朝起きて好きな音楽をかけるっていう所作から。この作品の裏コンセプトとして“マーゴ・ランド”をイメージしているので、セレクトしたのは世界で1番ポップな音楽。きっと誰しも無条件でテンションが上がると思います。

Isamu:寝起きってテンションが上がらないじゃないですか。それを上げてくれる要素を次々に組み込んでいった結果が、この作品ですね。左下にあるテスラコイルもそうだし、灰皿が付いているのも、タバコを吸いながら身だしなみを整えたらいいんじゃない? っていう、男の挙動を意識したものでもあります。

Arata:アホな仕上がりではあるんですけど、オレらとしては、アホとかバカはすごく肯定的な言葉で、こんなものに全力を出しているなんてアホだけど、その姿勢がカッコいいよなっていう裏返しの意味合いがあるんですよね。

Isamu:カッコつけないっていうか、自分を偽らずに向き合って曝け出したときに出てきたのが、この作品なんですよ。

ーちなみに、今回の作品はシステムを組むにあたって、重要な協力者がいたのだとか?

Arata:はい、Kyopanくんです。高校の頃に、兄の友達で部屋を宇宙船のコックピットみたいに改造しているという噂の人がいて、今回手伝ってもらいました。自分らの無茶ぶりに答えてもらったので、この作品はKyopanくんがいなかったら完成しなかったですね。

Isamu:実際にどういうことができるのかってことも相談しながら作っていって、その流れで最終形態に落ち着いたんです。

Kyopan:僕としては2人の無茶ぶりに答えて、とりあえず面白いことをぶっ込んだって感じですね。基本的にはソフトウェアとか電機といったシステムを担当しました。

今作を経て いつかは実現したい“マーゴ・ランド”

ーそのようにして完成した本作、非常にアホで最高です! さて、Margtの2人は、制作など作業に取り掛かる際にルーティン的に行っている、自分を整える作業はありますか?

Isamu:ヒゲを剃って髪を整えたら、めちゃめちゃやる気になるっていうのはありますね。逆に気が入らないときは身だしなみも整えないような感じなんですけど。

Arata:オレは逆に家から出ない日も、毎日シャツを着て髪をセットするので、パジャマで1日を過ごすようなことがないんですよね。基本的に、起きて朝風呂入って身嗜みを整えてコーヒーを飲んで、デスクの前でぼーっとしてから作業に取り掛かる流れです。まぁ、この事務所に来たら、そういう一連の作業はないんですけど。

Isamu:そうだね、事務所に来たら1回タバコを吸って、やろうかってモードになるね。

ーここからはMargtについての話も振り返って教えていただきたいと思います。

Arata:基本的にMargtは2人で1つの脳みそという感じで動いていて、右手左手みたいな感じですね。2人でディレクションの方向性を考えて、映像編集はIsamu、グラフィックは自分、といった形で振り分けています。最近では各々1人でディレクションを担当する案件も増やしていて、撮影現場にどちらかしか行かないこともありますね。今年はそんな動きが多かったです。

Isamu:そんな風に1人で動くことで、自分の時間を大事にするようにしたんですよね。アイディアはふとした瞬間に浮かぶもので、ずっと考えていると出てこないんですよね。そういう余白の時間をお互いに取るための2022年でもありました。そうやって1人で考える時間を増やすことで、2人が合流したときに、今まで違う深度で1つのことに取り組めるようになったと感じますし、1つの制作に対して向き合う時間がより濃密になったと思っています。

Arata:これまでとは、脳の使い方が変わった感覚があって、より深く考えられるようになった気がします。Margtとしても活動するし、1人でも制作することで思考の変化があったと思います。

ーもともと2人で1つの脳みそだったものが、個々に制作へ向き合うことで、さらにクオリティが上がったという?

Arata:そんな気はしますね。2人で1つの脳みそではあるんですけど、実際には2つあって、その掛け合わせ方に良い方向に変わってきたというか。オレとIsamu、どっちがやってもMargtっぽくなるなって気づきがあったんですよ。1人でやっていたら、各々の個性が出るのかと思っていたんですけど、全然そうじゃなくて、結局どっちがやってもMargtっぽいなって。

Isamu:そんな感じはあるね。2人で考えるときも、この案を出したらArataはこう言うだろうなとか、この案は嫌いだろうなとか、1人でやっていてもわかるんですよ。だからまた別の視点で物事を見れるっていうのはあるかもしれないですね。

ーMargtらしさを言葉にするとしたら、どういうことになるでしょう?

Isamu:具体的に説明することはできないんですけど、他の人がやっていたらやりたくないっていう。それはどの作品にもあって。

Arata:だから、変な崩し方をしていると思います。無意識的にも意識的にも。そういう“崩し”がMargtの作品にはあると思います。

Isamu:ちょっと捻りたくなるんですよ。

Arata:そうだね。まずは自分たちが楽しむってことを前提にやっているから、そうなっていくのかもしれないです。

ー今後、作ってみたいものや、やってみたいことは何ですか?

Arata:今回のAUGERとの取り組みでアート作品を作らせてもらって、すごく楽しかったのでこういうことをやっていきたいと思いますね。その過程で、Margtらしさとは何かを掘り下げたいです。

Isamu:そうだね。グラフィックと映像の制作チームという枠を超えて、存在として広めていきたいです。今回の作品を経て思ったんですけど、いつか“マーゴ・ランド”は作りたいですね。

Arata:やりたいよね。まずは“マーゴ・センター”になるのかわからないけど、そういうのを経て“マーゴ・ランド”に。我々はスポンサーを募集しております。これを読んでいる人で“マーゴ・ランド”に興味がある方は是非ご連絡を!

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