現代美術家の藤井智也とnoisy_eyeによって香川県高松市に設立されたギャラリーSyndicateにおいて、香川県在住の作家5人によるグループ展『Ruins of Babel / バベルの跡地から』が2月17日より開催される。
齋藤祐平、藤井智也、矢野恵利子、noisy_eye、Juno Mizobuchiという、バックグランドが異なりながらもそれぞれ近年香川県に拠点を移し、活動している同世代の作家5人により企画され、作品の発表が行われる本展。展覧会のコンセプトを練り上げていく中で生じたコミュニケーションの齟齬、そこから派生する各作家の視座を探る展示となるという。
以下がステートメントだ。
齋藤祐平、藤井智也、矢野恵利子、noisy_eye、Juno Mizobuchiは、東京をはじめとした各都市での生活を経て、現在高松に拠点を構える5人の現代美術作家である。お互いの作品は見たことがあり、良い展覧会が作れる確信はあった。しかし知り合ったのは最近で、作品以外のことをよく知る関係とは言えなかった。
そこでまずは、オンライン上でスプレッドシートを使い質問を交わした。Q&Aで各作家の人間性や作家性を炙り出し、理解を深めようとしたのである。
しかし設問と回答を書き込んでいくやり取りには、相手の出方を窺うようなしぐさが入り込む。これはよく知らない相手に対して複雑な対話を試みているためだ。Q&Aによって炙り出されたのは、作家性よりも言語によるコミュニケーションのいびつさやこわばりだった。コミュニケーションには様々な方法がある。営業、接客など、はっきりとした関係性を前提にして言葉を発したり、雑談など、相手の外側にある世界を視野に入れて言葉を発することなどがまずは挙げられる。またその裏で、言葉を交わさずとも人と人の間には動きや関係が生まれ続けている。
例えば自分と世界との間に考えるための拠点(創作物)を置き、世界全体と関係させ、対話を行うことである。それらを”造形コミュニケーション”と呼ぼう。「コミュニケーション」という単語から一般に連想されるのは、言語による簡潔で合理的なやり取りだ。しかし、アーティストや芸術家と呼ばれる人々は作品を提示するプロセスの中で、言語コミュニケーションが切り捨てる抽象性を用いた造形コミュニケーションをこそ、重要視していたのではなかったか。
造形コミュニケーションは言語コミュニケーションに批判的に働きかけ、再考を促す。そして、芸術作品の制作だけでなく、料理や整理整頓など、日常的な行為の中にも造形コミュニケーションはあるはずだ。そこへ目を向けることを「豊かさ」と呼ぶだけでは、やはり何かが切り捨てられるだろう。本展では、その背後にあるものに対する各アーティストの視点を探る。
INFORMATION
『Ruins of Babel / バベルの跡地から』
会期:2023年2月17日(金) – 3月5日(日)13:00 – 18:00
※水、木曜休み
会場:Syndicate(香川県高松市塩屋町9-9 渡辺ビル2F西)
オープニングレセプション:2月17日(金)17:00 – 20:00