[AUGER ART ACTION]Vol.10:MESが表現する“自分の顔型石鹸で自らを洗顔して示す自己ケアの心”

Photography_Yuta Fuchikami, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

[AUGER ART ACTION]Vol.10:MESが表現する“自分の顔型石鹸で自らを洗顔して示す自己ケアの心”

Photography_Yuta Fuchikami, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

貝印によるグルーミングツールブランドAUGERの掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER ART ACTION」。
谷川果菜絵と新井健から成るアーティストデュオ、MESの2人は「自分と向き合うこと」というAUGERのコンセプトから連想し自己ケアの心を映像作品を絡めた立体作品で表現した。作られたのは自分たちの顔を象った石鹸。それを用いて洗顔する様子を撮影し作品に昇華させている。このパフォーマンスに至った思考について聞く。

MES
《Double Lovabble》
制作協力:降幡あずさ

自分の顔を象った石鹸で洗顔して表現する自己ケア

ー作成いただいたものについて教えていただけますか?

谷川果菜絵(以下、KANAE):自分たちの顔の型をとって、それを石鹸にしたものです。そのフェイスソープで自分の顔を洗っているというパフォーマンスを撮影して映像にしました。先日、メキシコシティでの展覧会の際に撮影したもので、その場にあった廃材などを利用したんですよ。映像に映っている洗面台もそうです。

新井健(以下、TAKERU):遠くの街並みにはメキシコらしい建物が映り込んでいるので観る人が観れば日本でないことが伝わるかと思います。それと、予期せぬ音が拾えているのも向こうで撮影したからこそかな、と。

KANAE:こういう発想に至ったのは、今回のAUGERに関するプロジェクトについてのオリエンテーションがあったときに、商品の説明を受ける中で『日常的に自分をケアすることを億劫に感じるーー』という一節があって、それはどういうことなのかを考え始めたのが取っ掛かりでした。グルーミングをするということに対して何らかの強迫観念だったり、綺麗な状態でいなくてはいけないという衛生観があったり、そういったところから石鹸を使った作品がいいんじゃないかとアイディアが湧いてきました。例えば、毛を剃らなきゃいけない、顔を洗わなきゃいけないとかにからんでくるものなので。○○しなきゃいけないっていうのは自分にまとわりつく社会的な視線でもあって、それでグルーミングが「面倒くさい」ということに繋がるのかなと。

TAKERU:つまり自己と向き合うというのはどういうことなのかを探究していくことが制作のインスピレーションに繋がっていったんだよね。

―では、なぜ石鹸を使おうと考えられたんですか?

KANAE:私たちがこれまで作品で使ってきたのはロウソクや光など、その場に残らないものなので、使ったら形が消えて世界のどこかに漂っていくような石鹸に面白さを感じたんです。

石鹸と自分の表情の差に面白みが感じられる

ー制作されたフェイスソープは色味が肌の色に近しいのも独特の存在感を放っていますね。

KANAE:私たちの肌の色や典型的な固形石鹸の色をすごく意識して調合していきました。素材も日常的に使用されるグリセリンを使っています。肉眼で見たときとグレースケールで見たとき両方で、ワントーンに見えるように、アジア人の自分たちの肌と石鹸の色味をなるべく近づけたいと思いました。映像や展示の際に一緒に置こうと思っているZINEといったアウトプット自体は白黒寄りですね。プロダクトと展示を行ううえでの親和性を考えた結果、こういう配色にしたいと考えました。

TAKERU:ここにあるフェイスソープは実際に映像で顔を洗っているときに使ったもので、自分の顔の方は泡立てた痕跡が残ったりもしています。

ー洗顔中の表情もTAKERUさん、KANAEさん、それぞれの変化がありますね。実際に自分の顔を模った石鹸で洗顔して見て何を感じましたか?

KANAE:めっちゃ硬かったです(笑)。洗っているうちに顔や口の中がヒリヒリしてきて、心地よいのを越えて痛みとの格闘になっている感じがありました。

TAKERU:映像を観ていると石鹸はすごく穏やかな表情をしていて変わらないのに、自分たちは苦々しい表情をしていたり気持ちよさそうだったり、どんどん変化していくというコントラストがあって、今回パフォーマンスをしながら、そこに面白さを見出したりしました。同時に、自分と同じ顔のものと向き合うことで感じる不気味な気持ちや不快さを作品の中で表現できたらいいなと思いますね。

KANAE:最初は他者をケアするということで、お互いの顔を交換して削っていくという選択肢もあったんです。色んな情じゃないですけど、関わるほどにそれが失われていくみたいな。でも、今回のテーマに対しては、自己愛というか自分を自分に引き寄せる感じにしたかったんですよ。

ーフェイスソープが収められている箱も気になるところです。1個ずつ別々のケースに入っていますが、そこが何か理由がありますか?

TAKERU:これは僕らが倉庫として使っている四谷未確認スタジオ(この日の撮影場所、銭湯を改修したスタジオ)にある銭湯の廃材を使っていて、もとは下足箱だったんですよ。だから表に鍵がついています。最初は2つで1つの箱を作ろうと思っていたんですけど、自分と向き合うということが作品の根底にあるテーマなんで1個ずつバラバラの容れ物にしたんです。

KANAE:この下足箱を見ていると、銭湯に着いて脱衣所で服を脱いで裸になり、自分と向き合うっていう一連の行動が思い出されますね。以前も石巻の銭湯でインスタレーションを行ったこともあって、私たちにとって銭湯はゆかりのある場所です。

TAKERU:その石巻のインスタレーション(「サイ(SA-I) 」)をやったときに銭湯についてすごく考えさせられたんです。そのときから自分の中でいろいろとリンクするものがあるので、きっと今後の作品に関しても銭湯というキーワードは欠かせないものとして自分の中に残り変遷していくと思いますね。

展示用に作成されたZINEに掲載される写真より一部アトランダムに抜粋

ーグルーミングツールを使うことで、気持ちや身体を整える作用があったりすると思うのですが、MESとして制作に向き合うにあたって何か整えるために行っているルーティンなどはありますか?

TAKERU:それがないんですよね。というのも、偶発性をめちゃくちゃ大事にしているのでルーティンを決めるというよりはカオスな感じです。

KANAE:制作する環境が変わったり、日本から離れると新たな感覚を見つけたりするじゃないですか。そこを大事にしたいです。

TAKERU:我々は2人で活動しているのでルーティンで活動をがっつり決めちゃうと凝り固まっちゃう部分があると思うので、そういうのを決めずにラフにやっていこうかなって。

ーありがとうございます! 最後にMESとしての今後の活動についても少し教えていただけますか?

KANAE:5月8日からBUGでの展覧会をはじめ、今年は夏までに大事な展示が2つ控えていて、そこで展開する熱をテーマにしたインスタレーションの内容を毎日考えています。

TAKERU:今回の作品を撮影した際、メキシコで行った別のパフォーマンスがあって、自分たちの身体にロウソクを立てて、お互いにゆっくり動きながらやるパフォーマンスがあるんですけど、どこかやれる場所がないかを探しています。

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