ART 2018.09.25

静なる風情の鼓動。日本では4年ぶりの展覧会、
エレン・フライス 「Disappearing」展

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

エレン・フライス 「Disappearing」展が来る10月16日(火)よりCenter for COSMIC WONDERにて開催される。
エレン・フライスは自身の生活や旅先の風情を撮影した写真や記録した言葉を空間や媒体の中に独自の感覚により構成する。私的(詩的)な対象に目を向けた記憶と感覚により収集されたものを編成、構成することでそれらが成立されるのだ。それは彼女の中で消化され静けさにうつり変った私的(詩的)なジャーナリズムの美の在りようを表現している。

彼女の活動の遍歴を辿ると、生前にミシェル・ビュテルの語った言葉が思い浮かぶであろう。
「私は言論/ジャーナリズムを考えてきました、今も考えていますが、不慣れであると思っています。そして年月を経てもなお、私はアートと同じレベルで、出版は何を示すことができるか考えています。私は雑誌がアートやフィルムと同じくらい作り手と読み手にとって、美しく、大切な作品として存在すると思っている」

エレンは90年代から2000年初頭にかけて、独自の編集視点を持った雑誌『Purple』を創刊。2003年から2007年の『THE PURPLE JORNAL』では、独創的な美意識を通したジャーナリズム雑誌を発表。現在、フランスの南西部トゥールーズに近い田舎町に暮らし、写真や文章による作家活動が注目されている。

今展の開催にあたり、エレンは以下のように述べている。
“ごく最近訪れた旧友の喪失がこのタイトルには重ねられている。彼は私にとってとても大きな存在だった。私の人生に詩と文学を結びつけてくれたから。彼はかつて雑誌を出版していたが、それはどんな雑誌とも違っていた。彼がいた領域はより生活的で、政治的だった。フランスの人々にとっても大きな影響を与えてきた彼の人生は 77 歳で幕を閉じた。彼の名はミシェル・ビュテル。
タイトルは失われていくこの世界そのものを映した言葉でもある。眼の前には翠の山々が拡がり、驚くべき景色に囲まれながら私はこの文章を書いている。ただ、30km 圏内には老朽化されたフェッセンアイム原子力発電所がある。この場所が今すぐにでもチェルノブイリのようになってもおかしくないと人々は言う。ずっと昔に閉鎖するべきだったのだ。私が住んでいる村の 80km 圏内にも発電所がある。昨年いくつかの亀裂がそこで見つかった。どんなに私がこの世界との共生を試みようとも、常に私の頭に浮かぶのは過去、そしてとてつもなく暗い私たちの未来だ。
ある意味では、姿を消し去ったのは私自身でもある。パリからも、これまで辿ってきた道からも私はもういない。”

エレン・フライス

また今展では、写真展示に加え、エレン・フライスとCosmic Wonderによる“Autre Temps”も発表される。エレンが近年ライフワークとしている古着を収集する行為からアイデアが生まれ、それらを用いてCosmic Wonderの前田征紀と安田都乃が手作業を行うコンテンツだ。

「墨は松や木々などを燃やした煤である
それらは生命を焼失することで煤へと変わる
墨は常世の気配を表現することに適している
韓国ではお坊さんが着る僧衣は墨で染めたもの
収集した古着から焼失した気配を感じるための試み」

前田征紀

エレン・フライスの感覚と視点を少しでも自分の中に感じて見たいと思う。会期は10月25日(木)まで、ぜひ足を運んで見てはいかがだろうか。

A conference at Salon de la Revue (periodical fair), 2007

INFORMATION

エレン・フライス 「Disappearing」展

2018年10月16日(火)−10月25日(木)

“Autre Temps” Performance:
2018年10月16日(火)
16:00-17:00

Center for COSMIC WONDER
東京都港区南青山 5-18-10
11:00−19:00
休館日:10月15日(月)

Elein Fleiss “Disappearing”
発案:林央子(here and there 主宰)
制作: Elein Fleiss、COSMIC WONDER
協力: 志村信裕 (現代美術作家)、Stephen Sprott
主催: COSMIC WONDER

お問い合わせ
COSMIC WONDER / 広報 奥田きく
kiku@cosmicwonder.com / 03-5774-6866

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