Interview:音楽とアートとファッションを繋ぐDOTS COLLECTIVEのアクション

Photograph_Ryo Kuzuma, Edit&Text_Ryo Tajima [DMRT]

Interview:音楽とアートとファッションを繋ぐDOTS COLLECTIVEのアクション

Photograph_Ryo Kuzuma, Edit&Text_Ryo Tajima [DMRT]

音楽×アート。2つのカルチャーは切っても切れないものであるのは言うまでもないことだが、自身の音楽表現と並行してアート表現を精力的に行い、その先に自身のブランドも展開しているアーティストがいる。バンド、NOISEMAKERのVo、AGとGt、HIDEの2人。彼らはバンドに関わるアートディレクションを自ら行い、アートプロジェクト、DOTS COLLECTIVEとして全国で展示会を行っている。さらには、本格的なアパレル制作も行い、音楽・アート・ファッションのカルチャーを繋ぎ、それを広める活動を行っている。ここでは、アートプロジェクトであるDOTS COLLECTIVEの動きを起点にファションの話までを含むクリエイションをインタビューする。

AG

HIDE

NOISEMAKERのAGとHIDEが、DOTS COLLECTIVEの名義での活動が明確にスタートしたのは2017年10月頃。それまでも自身のバンドのアートワークを描いてきた2人が、具体的なアート表現を行うプラットフォームとして展開された。シルクスクリーンやスプレーを用いた作風にはBanksyやMR.BRAINWASHなどが描いてきたストリートアートがルーツにあり、2人ならではの形で昇華させた表現となっている。それらの技術をすべて独学で身につけ、DOTS COLLECTIVEとしてのアートが構築されている。

音楽にプラスして表現する際に出た”アート”という選択

ー実際に自分で絵を描きたいと思うようになったきっかけは何ですか?

AG:若い頃にストリートアートに衝撃を受けた経験がもとになっています。具体的にはWK Interactの絵を中学校の頃にストリート誌で見て衝撃を受けたんです。喉から手がでるほど「この絵がほしい」って、それで画集を買って、自分で模写するところから絵を始めました。それは音楽にも似た部分があって。理解できないのに特定のジャンルやバンドを聴き続けてしまうような、あの衝動に近いものがありましたね。

HIDE:そんな風に小さい頃から絵を描いていたわけですが、バンドのマーチャンダイズを自分たちでデザインしてきたというのが1番大きいですね。「今回はここまで出来た、次作はもっとできるんじゃないか」という好奇心にも近い形で始まったんです。世界中の様々なアーティストの作品を見ながら、それを自分の中に吸収して、他のバンドとは違うアプローチができるんじゃないかって考えながらアートやデザインをやってきました。その過程でアートに特化したアクションを取るプロジェクトとして、DOTS COLLECTIVEが成立していったんです。

ー今ではNOISEMAKERは音楽×アートを実践するバンドであるということがシーンにも浸透していますし、自負されている部分も多いと思います。そこは、やはり他のバンドにはないNOISEMAKERだけの強みだと捉えていますか?

AG:そうですね。マーチャンダイズのデザインを自分たちでやるだとか。そこから派生して(DOTS COLLECTIVE)の展示会を開催したり、自分たちのアトリエを作るだとか。最近では、同じようなことをやるバンドやアーティストが増えてきていると思うのですが、自分たちは比較的早い段階からそういうことをやっていてよかったなって。だからこそ、自分たちの強みになっていったのかなと思いますし。

HIDE:先駆者的なね。でも、本当のところは他に類を見ないから珍しく見えるだけなんだと思いますよ。他のバンドだって、音楽以外に色々と活動しているし、長く音楽を続けているバンドであれば必然的にそういうアクションをとっていくものだと思いますしね。オレたちにとって、音楽プラス何かをやるときに、たまたまアート活動だったというだけで、DOTS COLLECTIVEとして発進するものも、NOISEMAKERとしての活動にすべて繋がっているんですよ。

AG:うん。DOTS COLLECTIVEの展示会をやるようにやって、バンドの方もより広く支持されるようになったと感じるし相乗効果が確かにあるよね。あと、何より大きいのは展示会で直にファンと交流できるって点ですね。そこで色んな思いを直接聞くこともできるし、DOTS COLLECTIVEのお陰でNOISEMAKERの音楽も広がりつつ、ファンともより深く繋がれるようになっていると思います。

DOTS COLLECTIVE 3rd Exhibition [FROM THE NODO BASEMENT]の模様より。10月3日、4日の2日間、原宿で開催された展示会ではプロジェクトマッピングをミックスさせた作品も展示され、多くの人が来場した。

ー直近ですと10月に3回目の展示会“DOTS COLLECTIVE 3rd Exhibition [FROM THE NODO BASEMENT]”が開催されましたが、そこでは、どんな交流がありましたか?

HIDE:コロナ禍でライブがまったくない状態だったわけなので、お客さん同士が久しぶりに会えるような場所になっていたように感じました。それはオレらにとってもそうなんですけどね。とても良い空間になっていたので『さすがだな、オレたち』って。

AG:あはは!(笑)。入場無料でみんなの場所を作った的な?

HIDE:そうだよ。次からは入場料を取ろうか?

一同:

AG:実際に展示会で、色んな人が繋がったり、アーティストやクリエイターも来るし、バンドのファンもやってくるんで面白いんですよ。NOISEMAKERの曲をコピーしている子が、わざわざギター持ってきて「ここのフレーズは合ってますか?」とかHIDEに聞いたりしたりね。あれ、面白かったね(笑)。

HIDE:そういう情熱的な人との交流も楽しいわけです。

AG:「自分もアート制作を始めました」って人もいたよね?

HIDE:いたね。ある日、お店で画材を選んでたら、DOTS COLLECTIVEのTシャツをきている子が「僕も始めたんですよ」って話しかけてくれたり。

自然な流れで好きなことを表現しているからこそ響いている

ーそれはすごいですね。バンドとして音楽×アートを標榜していて、それを広めていくということがすでに実現できている状態なわけですよね。

AG:思い返せばそうなのかも。これって意外に狙ってできるもんじゃないかもしれないですね。オレらは自然な流れで始めて今に至るわけで。偶然が重なった部分もあったんでしょうけど、こんなにバンドに密接に関わっていくとは思わなかったし、今みたいに受け入れてもらえるとも思っていなかったんで。そんな自分たちの姿を見て、「自分もアートをやりたい」なんて思ったり行動してくれるのは本当に嬉しいですよ。きっとオレらが楽しんでやっているっていうのが伝わったんでしょうね。楽しくないと続かないですから。

HIDE:そうだね。

アトリエに飾られていた3枚の絵はシルクスクリーンではなくすべて手で描かれたもの。右の作品はスプレーを最初に施したうえに絵を描いていった。ちょうど涙が流れているような構図になっている。

ー最近ではキャンバスだけではなく立体物にもアートを描かれていると聞いたのですが。

AG:インテリアに自分たちのアートを描いてみたらどうなるのかっていう新しい試みをやってみようってチャレンジでやってみたんですよ。意外とうまくいったなって感覚です。

HIDE:これはJMSが展開している“JMS pre.STAY FREE”というYouTubeコンテンツがあって、その中での企画に誘われたときに、リサイクルショップで何か買ってきて描いてみたらいいんじゃないかってことを自分たちから提案したんです。今回はたまたま椅子に絵を描いたんですが、なぜか悪ノリでルイ・ヴィトンのバッグを買っている人がいて(笑)。

AG:悪ノリって(笑)。

ールイ・ヴィトンのバッグに描いたんですか??

HIDE:描きましたよ。正直、けっこうなプレッシャーでした。ちゃんと色がのるのか、弾いたらどうしよう、だとか。結果的にちゃんと出来たからよかったものの……。リメイク自体は面白かったですけどね。

AG:そう、楽しかったよね。次の展示会でアートを施した並んでいても面白いかもしれない。ルイ・ヴィトンが並んでたらちょっとアレだけど(笑)。そんな風に最近では表現する幅がより広がってきたように感じています。こうして考えると、オレらは物作りが好きなんだろうなって本当に思います。だからレコードプレイヤーをオリジナルで作ったし、そもそもを考えるとアートをやっていなかったらレコードというフォーマットで作品を出したいと思わなかったかもしれない。よりジャケットが大きいものが欲しいと思ったからレコードにチャレンジしたわけですから。

NOISEMAKER最新EP「H.U.E.」はアナログレコードとして展開される。ON AUDIOとコラボしたNOISEMAKERオリジナルデザインのレコードプレーヤーとのボックスセット。

アート表現から派生したアパレル展開の動向

ーDOTS COLLECTIVEではアパレルも数多く展開されていますよね。洋服はどのようなコンセプトでデザインしているんですか?

HIDE:基本的には自分が着たいものを作るようにしているんです。だからシンプルなものやビッグシルエットのウエアなど、普段から着ているような洋服が多いんです。ラインナップを見れば、シックな印象が伝わると思います。洋服作りのきっかけも展示会でした。最初の展示会のときにグッズとしてDOTS COLLECTIVEのTシャツを作ったんです。それはバンドのマーチャンダイズと同じような感覚で出したんですけど、お客さんが次々に買ってくれて、開始30分後にはソールドしてしまって。

AG:残念がられたよね。「なんでもっとたくさん用意してくれないんですか?」って(笑)。絵よりも手が届きやすいものだから、きっとお客さんの反応も大きかったんでしょうね。

HIDE:そこから洋服作りについても考えるようになって。知り合いに洋服作りをやっている人がいたので、相談をしながら自分たちでアパレルラインを展開してみようという考えに至ったんですよ。それに、DOTS COLLECTIVEでせっかく絵を描いているんであれば、着るアートとして、Tシャツをリリースし続けたら面白いですし。今でも自分たちのアートをプリントしたTシャツを展開していますが、洋服作りを始めた当初よりもトータルコーディネートで作るものを考えるようになったので、シンプルなデザインのジャケットなども現在は展開しています。バランスを見ながらデザインを考えていますね。

ー最新のルックはどのようなテーマで撮影されたんですか?

HIDE:スタイリング提案を前提にしたシンプルなビジュアルになっていますが、特にこれまでと違うアプローチになっているのはレディースに向けたスタイリングを提示している点ですね。自分たちが作ると、どうしてもメンズの男っぽいスタイルになっちゃうんですけど、洋服を買ってくれる女性も大勢いるので、レディースの着こなしにどう合わせたらハマるか、ということを意識して撮影を進めていきました。どうやってDOTS COLLECTIVEの洋服を合わせたらいいかを想像できるようなルックにしたいと思って。次はレディースの展開も視野に入れているんですよ。なので、最近はリサーチもかねてレディースの服を1人で買いに行くことも多いです。店員さんには不審がられますけど。

一同:

ーレディースのプロダクトも展開される予定なんですね!

HIDE:はい。僕らが着たいものを作るという前提で洋服作りも行っているんですけど、サイズ感やシルエットという点で言えば、小柄な女性には合わないものもあるので。洋服を展開しているのに、お客さんに妥協させて買わせるのってちょっと違うじゃないですか。自分たちが服を作りたくて、DOTS COLLECTIVEとしてアパレルを展開するんであったら、今後はレディース向けのラインナップも整えるべきだし、サイズ展開も考慮しなくちゃいけないと思って。これも展示会でお客さんと接していて気づかされた部分ですね。

ーなるほど。今後、DOTS COLLECTIVEとしてはどのような活動をしたいと考えていますか?

HIDE:次に展開する2021SSコレクションでは、これまで以上にラインナップも増えるのでアパレルのポップアップストアも開催したいと考えていますね。あくまでもアートの展示会がメインではあるし、バンドの派生としてDOTS COLLECTIVEのアートがあって、その派生としてアパレル展開があるんですが、とりあえずはしっかりと自分たちが作った洋服を披露したいと思う気持ちがあります。

AG:そうだね。あと、展示会という意味で言えば、コロナ禍以前はワールドツアー的なことをしたいと考えていたんですよね。アジアやヨーロッパとか行けるところに行ってみようって。それはしばらく叶わないでしょうけど、次に展示会をやるのであれば、よりパーティ感が感じられる内容にしたいと思っているんです。場所は路面で、中にはDJがいたりドリンクが用意されていて、知らない人もふらっと入れるような空間で。まだ全然具体的なことは決まっていないんですけどね。

ーわかりました。最後にNOISEMAKERの動向についても教えてください。

AG:「FUTURE FOUNDATION(※)」を制作している段階なのと、2月から始まる「H.U.E. TOUR」の準備を整えている状況です。今年行えなかったツアーの振替公演で、早く作品の世界観を現場で伝えたいと思っていますね。そのツアーが始まって終わって、その先にどう繋げていくかも踏まえて、色々と考えているところなので、バンドの動向にも期待していてほしいです。

※NOISEMAKER、Crystal Lake、SHADOWSの3バンドによる音楽プロジェクト

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