ドローイング表現を軸に、絵画や彫刻など多様なメディアで作品を制作するアーティスト、BIENの個展「DUSKDAWNDUST」が神宮前HARUKAITO by islandと馬喰町PARCELにおいて同時開催される。
アニメのキャラクターなどフィクションが生み出す形状、文字や記号などの表象に着目し、それらが持つ形や意味を解体/再構築する抽象表現を行なっているBIEN。3年ぶりとなるペインティングを中心とした今回の個展においては、パズル状に組まれた支持体に、カメラの捉えた光を抽象化した色面を置き、フィクションと現実の混在する世界を紡ぐようにドローイングのラインを描いた新作を発表。そのソースとなる写真などもインスタレーションの一部として展示される予定だ。
また、3月26日からはC.C.P.(CHILDHOOD, CALM & PUNK GALLERY)企画による、BIENとED DAVIS(BRAIN DEAD)の共作による新作展「Mystery Plants」が神宮前DOMICILEにおいて開催されるので、合わせて堪能したい。
以下、作家によるステートメントだ。
自粛期間中の空気が澄んだある日、近所を散歩していた。目的なく歩いていると夕暮れ時になり、西に落ちる太陽から、そこに立つすべてのものが一斉に同じ方向に影を作った。こちらに突き刺さるいくつもの影を感じながらふと思った。いつも街は光にあふれており、僕は全ての影が一斉に同じ方向を向く瞬間など久しく見ていなかった気がする。火すらなかった時代、地球には太陽という一つの光源しかなく、地球上の皆が同じ光のもと同じ世界を生きていたとするならば、あの日に見た光景は「遙か昔」に最も近い瞬間だったのかもしれない。
これまで僕は「フィクションとノンフィクション」という世界を隔てて考えてきた。しかしスマートフォンという「ひとりの光」を持ち歩いている今、世界は分かりやすく「ひとりにひとつ」のものとなり、誰もがその世界の中を生きている。そしてコロナウイルスによって世界中の先行きが見えない今、物理的にも個人は分断され、現実はフィクションを追い越し、フィクションは現実に介入してきた。世界中で更新されるインスタグラムに映る日常の風景は、映画のワンシーンの延長線上に見えてくる。今まで僕はアニメのキャラクターや文字など、記号をモチーフとしてドローイング作品を制作してきた。しかしフィクションと現実が混在しているのならば、表象的イメージをドローイングをすることは、空想の世界を形作るだけではなく、フィクションと現実の境界を壊し、線を引いていることに等しいのかもしれない。飛蚊症によって眼球に映り込む線のように、逆光の中に立ち込めた埃のように、太陽の光、スマートフォンの光、分断されたそれぞれの物語を繋げるようにドローイングをしていく。
BIEN
Courtesy of Department of Arts Studies and Curatorial Practices, Graduate School of Global Arts, Tokyo University of the Arts. / Photo by Masataka Tanaka
Photo by Kazunori HARIMOTO
INFORMATION
BIEN「DUSKDAWNDUST」
[PARCEL]
会期:2021年3月13日(土) – 4月30日(金)
水・木・日14:00 – 19:00、金・土14:00 – 20:00
会場:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F)
http://parceltokyo.jp
[island JAPAN]
会期:2021年3月19日(金) – 4月18日(日)
木〜日13:00 – 19:00
会場:HARUKAITO by island(東京都渋谷区神宮前6-12-9 BLOCK HOUSE 2F)
03-6874-3273 http://islandjapan.com
BIEN & ED DAVIS「Mystery Plants」
会期:2021年3月26日(金) – 4月11日(日)12:00 – 20:00
会場:Domicile Tokyo(東京都渋谷区神宮前4-28-9)
03-6447-1068 https://domicile.tokyo
Special Thanks:Benjamin Moore Japan
http://benjaminmoore.co.jp/
IG:@benjaminmoorejapan