Report: VERDYが大阪のビルに作り上げたHenry’s PIZZAとRise Above Galleryはどういうスポットなのか

2月末頃からの数週間「VERDYが大阪にピザ屋とアートギャラリーをオープンさせたらしいよ」という話題がわっと広まり、アーティストやクリエイターがSNSで『行ってきたよ』報告をするなどして一気に情報が拡散され続けている本事案。ゴンズ（Mark Gonzales）が個展やっているらしい、現場にいるらしい、という情報が伝わってきたりもして、「なんか大阪が大変なことになっているらしいよ」という空気をヒリヒリと感じていた。ピザ屋とアートギャラリーのオープンについてプロモーションが打たれていなかったため、現場から離れた東京から見ると、どこかミステリアスなもののように見受けられた。んーーならば! と言うことでプレオープン最終日目掛けて現場へ行ってきたので、どんな場所なのかをレポートしておきたい。

Henry’s PIZZAとRise Above Gallery。
これがVERDYがスタートさせたピザ屋とアートギャラリーの名前だ。閑静なオフィス街と思しき街、谷町に位置しており目印は屋上の掲げられたGirls Don’t Cryのサインボード。

入り口に掲げられたHenry’s PIZZAのレトロな看板がアメリカっぽい。

やはり大きく情報が広がっていたこともあって、昼過ぎに到着してからの夕方まで、ひっきりなしにお客さんが訪れて、ときには行列をなしていたりもした。

1階から続く階段を登るとイートインスペースで、この日はほぼ常に満員状態だった。さらに階段を上がって3階へ行くとアートギャラリー、Rise Above Galleryに辿り着く。このギャラリーもほどよい広さで、ゴンズの作品を多くの人が楽しんでいた。こちらの展示も最終日だったため、非常に多くの人が押しかけていた模様。

そんな感じで一棟通してピザ屋からギャラリーまで繋がっているというもユニークな構造だと感じられた。地下には代官山から引っ越してきたイベントスペースDINER$ CLUBがあり、すでにイベントの開催も決まっている状況だ。

Henry’s PIZZAはプレオープンを経て3月11日より、いよいよ本格的なオープンとなる。そもそもだが、なぜこの場所を作ったのかを改めてVERDYに聞いてみたいと思う。

「僕はアメリカのカルチャーが好きなので、もちろんピザも大好きです。東京にいるときはよくPIZZA SLICEに通っていますからね。でも、大阪にはNYスタイルのピザを出すお店で通える場所がなかったので、それなら自分で作ろうと思ってスタートさせたんですよ。実際に大阪でピザ屋を一緒にやろうって話は浩基（PIZZA SLICEのオーナー、猿丸浩基さん）とも昔からしていたんですが、当時は漠然と言い合っていただけど、数年ぶりに思い出して現実的に動き出したという感じです。だから、Henry’s PIZZAはPIZZA SLICEにも協力してもらって実現できたんですよ」

実際には3、4年以上前からピザ屋をやろうと考えていたというVERDY。その実現に時間がかかった理由は主に2つだ。まずは良い物件が簡単には見つからなかったということ。VERDYとしてはお店をやるうえで、他に何もないような場所にオープンさせたいという思いが根底にあった。と言うのも繁華街にオープンして、お客さんがついでにやって来るというよりも、明確な目的地として意識してほしいという気持ちがあったからだ。

もう1つの理由はHenry’s PIZZAの店長、シンミョウの免許皆伝待ちだったというもの。これ、どういうことかと言うと、ピザ屋をオープンするにあたって、それまで1枚もピザを焼いたことがなかったシンミョウが将来の店長候補生としてPIZZA SLICEに入り、修行を積みに積んで、いよいよ美味しいNYスタイル・ピザを焼けるようになったから、ピザ屋をスタートさせようという運びになったということだ。非常にスケールが大きい話だということが伝わってくるエピソードだろう。では、NYやLAの店を連想させる内装については誰が担当したのか。

「訓市さん（野村訓市さん）のTRIPSTERにお願いしました。自分にとって初の店舗でもあるので、本当に実現したいことを細部まで反映させたくて色々なお願いをしながら完成していったんです」

什器1つ取っても情緒があり、他のショップにはない風合いが漂っている。2階にはVERDYにまつわるポスターなどが飾られており、どこかアメリカンスクールのような雰囲気が感じられる。床に使われている素材は体育館で使用されているものをリユースしているのだとか。たしかに、そんな色味が感じられるしかわいい。

「3階のRise Above Galleryは気持ち的にはイベントスペース的な感じなんですよ。ここから日本のポップアートを打ち出していくギャラリーとして運営していくというわけではなくて、若い作家や自分が好きなアーティストにやってほしいと思っていて。昔、大阪に住んでいるとき、僕が大好きなジム・フィリップス（Jim Phillips）などのアート展が東京でしか開催されなくて大阪まで来なかった思い出があるんですよね。だから、今回のマーク・ゴンザレス展のように、自分や周りにいるスケーターが好きなアーティストを自分で招聘してやっていこうと考えて、そういう場所として作ったんです」

このビルのどこを見ても、これから何かが発信されていくという沸々とした高揚感で満ちている。今後、言うまでもなくカルチャースポットになっていくことは確実。Rise Above GalleryやDINER$ CLUBでポップアップが開かれりして、そのパーティがHenry’s PIZZAで行われたりするのかもしれない。ちなにHenry’s PIZZAのHenryが誰なのかと言うと、ヘンリー・ロリンズ（BLACK FLAGのHenry Rollins）が由来なのだそう。ここからもVERDYのルーツがたしかに感じられるのだ。

説明ばかりで最後になってしまったが、Henry’s PIZZAのピザはめちゃくちゃうまい。PIZZA SLICEのピザ好きの人は想像しやすいだろうが、あの味がよりマイルドになっているように感じられた。NYスタイルなので1ピースが大きめだが4枚くらいはペロリといける。この日、ボックスでテイクアウトしている人も多かったが、それは美味すぎたからということだろう。
いよいよグランドオープンしたHenry’s PIZZAとRise Above Gallery、及び同じ場所に位置するDINER$ CLUB。
VERDYにとっての初のショップ、この場所の未来が非常に楽しみである。