藤井道人:けむりのまち
第三回 対談:横浜流星 ー映画『ヴィレッジ』をめぐってー

Photography_Sara Masuda, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

藤井道人:けむりのまち
第三回 対談:横浜流星 ー映画『ヴィレッジ』をめぐってー

Photography_Sara Masuda, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

日々映画を作っていく中で忙殺され、失われていく大切なはずの記憶の数々。
映画監督・藤井道人による連載『けむりのまち -Fake town-』は、そんな瞬間・瞬間を記録していくものであり、煙のように曖昧な記憶の貯蔵庫的な装置でもある。
第三回は対談企画。4月21日より公開される藤井道人の新作映画『ヴィレッジ』で主演を果たした横浜流星とのトークとなった。藤井道人と横浜流星のタッグは本作で6度目であり、もう長い関係だ。
映画『ヴィレッジ』の舞台挨拶や、そこにまつわる取材を1日中受け続けた藤井道人と横浜流星。すべてのスケジュールをクリアした2人は、夜更けに新宿のBABEL BARに集合。次の日の朝も早かったのだが、まずはお疲れさまも兼ねて、積もりに積もった話にふんわり火をくべてもらった。

今後やりたいことと言えば

藤井:いやぁ、今日は疲れたね。
 
横浜:そうだね。ずっとインタビューされてたもんね。
 
藤井:そうだよ、1日中しゃべりっぱなし。で、ここからは雑談というか、何でも自由に話せればと思うんだけどね。どう? 今後やってみたい役とかある?
 
横浜:そうだね……。アクションとか?
 
藤井:お~、アクションね。『インフォーマ』でもちょっとやったよね。
 
横浜:やったね!『インフォーマ』と言えばさ、二宮さん(二宮和也)がすごくほめてくれて。日本アカデミー賞で会ったときに「愛之介(『インフォーマ』における横浜流星の役名)よかったよ。 『インフォーマ』最高 !」って言ってくれて、めっちゃ嬉しかった。
 
藤井:あんな深夜ローカルドラマに注目してくださって本当にありがたいな。でも、そうか。あんまり(横浜流星がアクションを)やっていないよね、意外と。
 
横浜:うん、なんでなんだろう。
 
藤井:そもそも、そういう作品があんまり日本にないからじゃない?
 
横浜:そっか。
 
藤井:そこでいくと『春に散る』はアクションだよね? ボクシングでしょ?
 
横浜:そう、ボクシング。
 
藤井:あれはいつ公開なの、来年?
 
横浜:今年の夏。8月25日公開。
 
藤井:あれも主演だよね?
 
横浜:うん、佐藤浩市さんとダブル主演。
 
藤井:そっか、ダブル主演になるんだね。じゃあ、一緒にやりたい人とかはいる?
 
横浜:あーー……。それこそ岡田さん(岡田准一)とご一緒したいな。
 
藤井:岡田さんね、怖いくらいにすごいよね。全部兼ね備えている人だから。でも、機会は絶対にあるよ。
 
横浜:あったらいいな。岡田さんとがっつりアクションをやってみたい。
 
藤井:あるある、今後ね。じゃあ『ヴィレッジ』のことも話すかな。ここだけで言える面白話とかある?
 
横浜:えーーー、なんかあった?
 
藤井:古田さん(古田新太)がベロベロだった。
 
横浜:ああ(笑)。基本的にベロベロだった。
 
藤井:今日も酒の話しかしてなかったよね。(※芝居は最高でした)
 
横浜:そう、黒木さん(黒木華)とオレと古田さんで朝の情報番組の取材をやってたときも「早く酒飲みてぇ、早く酒飲みてぇ」って(笑)。

映画『ヴィレッジ』では、主演の横浜流星も藤井監督と共に撮影地となる村をロケハンしたのだそう。

横浜:(ロケハンに)行っていいなら行くって言って連れてってもらったんだよね。
 
藤井:普通は、主演俳優がロケハンに来るなんてことはないし、オレとしても初めてのことだったけど。でも、そっちの方が見えてくるものだと思う。あと、一緒にいるスタッフの士気もグンと上がるからね。
 
横浜:うん、行った方が絶対にプラスになるし、今後もロケハンには積極的に参加したいと思うよ。
 
藤井:でも、なかなかそんな時間がないんじゃない?
 
横浜:いやー。でも、できるだけやりたい。大事なことだから。

壁を眺めると映画『青の帰り道』のポスターが貼られている。中央に映し出された横浜流星は当時まだ10代。藤井監督との初タッグとなった作品でもある。本作は2016年に撮影した後、諸事情から撮影中止を余儀なくされ、その後2017年夏に再撮影し2018年に公開となった背景を持つ。その隣には横浜流星がアップになった『ヴィレッジ』のポスターがあった。

 
藤井:これ見るとさ。ちょっとエモいよね。青から『ヴィレッジ』。こんとき、まだ流星は19歳だった?
 
横浜:そう、19から20歳になるとき。撮り直しが2017年ってことは最初に撮ってるのは2016年だったんだね。
 
藤井:そう、流星はタバコを吸う役だったんだけど未成年だから吸っちゃダメで。それで、韓国かどっかの美容タバコだかを探してきたんだ。未成年でもOKなやつ。


 
藤井:にしても『青の帰り道』は出演者メンバーが仲良いよね。流星の20歳記念誕生日会とかやったでしょ。
 
横浜:やった! オレが初めて酒を飲んだ日だ。
 
藤井:そうそうそう。「スイスイいけちゃうかも」とか言いながらビールをめっちゃ飲んでたよ。
 
横浜:飲んだねぇ、顔を真っ赤にしながら(笑)。そこぐらいかな、よく(藤井監督と)会うようになっていったのは。
 
藤井:『ヤクザと家族 The Family』の撮影しているときさ、近くの撮影所で流星は『きみの瞳が問いかけている』の撮影をしてて、ちょっと会いにいったもんね。
 
横浜:そうだ、会いに来てくれたよね。しょうがないけど……ちょっと嫉妬した作品ですね、『ヤクザと家族 The Family』は。
 
藤井:でも、オレがマネージャーだったら『ヤクザと家族』だなんてタイトルの作品にあの時の流星は出させないよ。
 
一同:(爆)。


 

映画プロデューサー河村光庸氏の存在について

 
藤井:河村さん(故・河村光庸氏。『ヴィレッジ』のプロデューサー)から『ヴィレッジ』のオファーがきたとき、大丈夫だった? 村社会の話なわけだけど。
 
横浜:いや、誰からも何も言われなかったよ?
 
藤井:最初に話がいったときは、まだオレが監督することになってなかったからね。だから何も言われなかったのかも。
 
横浜:最初、そうだったよね。藤井さんが河村邸に行って色々話して、結果的に引き受けてくれたから。オレ、やらないって言ってたときも一瞬だけどあって。
 
藤井:そうだよ。「藤井さんがやらないんだったらもうやりません」って。それで1回ポシャりそうになったんだから。もう『ヴィレッジ』はダブルでプレッシャーだったよ。流星からもそうだし、河村さんからもそうだし。
 
横浜:あのとき、オレも河村さんからも電話もらったりしたな。「やってくれ」って言ってくれて。そんな風に求めてもらえることなんてないからね。
 
藤井:だからさ、河村さんから最後に寵愛を受けた俳優って、きっと流星なんだよ。
 
横浜:……嬉しいな。現場も来てくれたし、ラストシーンも見届けてくれたし。しかも、ちょうど最終日でラストシーンだったよね。
 
藤井:あのときのことめっちゃ覚えてる。河村さんが「すごいね! 誰も疲れてないね!」って言いながら現場に入ってきたの。その場にいる全員くっそ疲れてんのに。
 
横浜:あはは! 河村さんとのエピソードは多いよね。お疲れさま会で「うまい肉を食べさせてやる」って言って連れて行かれたのが、(チェーン店の)しゃぶしゃぶ。
 
藤井:そう(笑)。『あ、知ってる、行ったことある店だーーー』って。好きなだけ食えって言われたけど。
 
横浜:「うまいだろ!」ってあの笑顔で言われたらね(笑)。あれが最後になったのかな。近くにいた藤井さんでも、(体調のことは)知らなかったんでしょ。
 
藤井:うん、知らなかった。病人ならもっと病人らしくしてほしかったよ。そしたら、少しは優しくできたのに。
 
横浜:そういう姿をオレたちに見せたくなかったんだろうね。


 

お互いの未来図の話を少しだけ

藤井:流星的には『青の帰り道』、ドラマ「新聞記者」 、『ヴィレッジ』の3本だと、どれが1番キツかった?
 
横浜:えー、どれも違った大変さや面白みがあるからなー。『青の帰り道』は再撮って意味でキツかったけど、あの作品で映画作りの大変さを感じたし、作品を完成させることができる喜びはすごく感じたかな。まだ10代だったからね。あの頃は誰かが作品を作ってくれるんだろうって軽い気持ちが心のどこかにあったけど、そうじゃなくて、ちゃんと自分も最後まで責任を持って届けないといけないっていう責任感みたいなものが生まれた作品でもあると思う。「新聞記者」では先輩方に囲まれていたから学ぶことも多かったし。
 
藤井:なるほどね。将来さ、流星はどんな俳優になっていきたいと思う? 30歳までの未来図の話なんだけど。
 
横浜:自分のパブリックイメージもあるだろうけど、そこを良い意味で壊していきたいって。なんかこう枠に収まりたくなくって。20代の今は、やりたいと思ったことをとにかくやって、先輩方ともたくさん共演して、良い部分をたくさん吸収していきたいな。とにかく、やりたいものをやるって気持ちが大事だと思うんだよね。
 
藤井:うん、それだけでアッという間に30歳になっちゃいそうだよね。
 
横浜:ね。で、30歳を超えてから、また色々と考えていきたいなって。とりあえずまだまだ修行中で、学ばなきゃいけないことが多いんだよなと。でも、あと3年で30歳なんだけどね。
 
藤井:あと3年で30歳か。そうだよな、オレは40歳になるんだもんな。
 
横浜:たまに藤井さんが「40歳いったらオレはプロデューサーとか脚本家の方にいこうかな」なんて言ったりするでしょ。もし本当にそうしようとしたら全力で引き止めますね(笑)。ずっと監督をやってくれなくちゃ、こっちも寂しくなっちゃうんで。
 
藤井:いやー、どうなんだろうな(笑)。まぁ、もう40歳にもなればね。何でもやるっていうより、ちゃんと自分じゃなきゃいけない作品に取り組んでいきたいんだけどね。あとは、流星と一緒にやる作品で、しっかりとした賞を取りたい。わかりやすい結果も大事だし、そういう意味でも仕事を選定していくことになるんじゃないかな。
 

藤井道人:けむりのまち 第二回『ほしとすな』一問一答

藤井道人:けむりのまち 第一回『夜たちの備忘録』

※本連載にて、藤井道人監督への質問を募集。
監督が一問一答形式でお答えするので、
聞きたいことや気になることがある方は、
こちら宛にお送りください。

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