加藤雄太:新宿 #2
by Yuta Kato

Text,Photography_Yuta Kato

加藤雄太:新宿 #2
by Yuta Kato

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去年大学を卒業して、就活はせずにフリーターでダンスをやってる状況です。ちょうど今年の4月で一年が経ちますね。

 やっぱり安定はしてないです。多い時は多くて、ない時はない。波があります。なのでいつも不安がある状況で、このままで大丈夫なのかって心配はあります。ただ毎日本当にダンスのことを考えてる状況で、目標に向かって頑張っていて、選択に悔いはないです。安定した職につくことももちろん悪いことじゃないし、むしろいいことだとは思います。だけど、自分はお金がどうとか関係なく、やりたいことをやってる人の方が、夢を追いかけてる人の方が、人生がつまんなくないし悔いも残らないだろうと思います。「とりあえず他の仕事について」というよりは大学で俺はやりたいことが見つかって、周りもその選択を応援してくれました。なので、自分なりに、あとはどう魅せていくのかっていうのを研究して、日々克服していくだけです。一年先とかっていうよりも今日、いま目の前に集中してる日々です。

 夢はアーティストに同行してツアーを回ることです。


写真集とかDVDとか。もうかれこれ30年くらい前から集めてるね。「なんで?」って聞かれても好きなもんは好きだから難しいよ。お寺とか山とか、いわゆる絶景写真と言われる類のものだよね。持ってる量だと日本一なんじゃないかな。

 あなたは写真を撮るのが好き? 俺は写真を見るのが好き。撮ろうとは一切思わないね。あの、気分を悪くしないでほしいけど、俺は他人の現在、過去、未来に全く興味がないの。ほら、これまでこの仕事してると、何万人もの人と接してきたでしょ。そうすると、人って怖いなって思うよ。みんな笑ってるけど、腹の中は真っ黒。ハッとさせられるお客なんてほとんどいない。大体みんな口を開けば、人の悪口、政治家の悪口だもんね。確かめてないから分からないけど、嘘ばっかり並べて。

(タバコに火を付ける)お兄さんは夢とかある? 俺はね、夢というか、強いて欲を口にするなら、行ったことのない国へ行きたいね。それで絶景を見たいし、写真集があれば買い漁りたい。豪遊とかは考えてないけど、絶景写真が見れるなら俺は幸せだな。
 
 日本はたぶん47都道府県全部行った。お客さんを県を跨いで送ることもあるでしょ。そういう時は全部泊まれる限り泊まって小旅行。九州や関西でも働いてたからね。

 さ、もう出るよ。


将来やりたいことがあっても、それが果たして成功するかなんて誰にも分からないじゃないですか。どうしてもやりたいことがあっても、先のことばかり考えてしまうと、時間とか、お金とか不安で。

 僕は将来、古着屋さんをしたいです。福島県出身で上京してきたんですけど、とにかく田舎で暮らしていたので周りにおしゃれしている人も全然いなかったんです。でも当時からYouTubeでファッションの動画を見たり、雑誌の「FINEBOYS 」が市の図書館にあってそういうのを見てて。でやっぱり東京に住み始めたら、服の店も多いし、情報も多くて。なんか高校生とか中学生の田舎に住んでる子にでも、そういう経験とか情報を伝えられるお店を持ちたいなって。

 自分の将来を考える上でサカナクションの山口一郎さんの言葉にはすごく共感しています。「20代は、影響受けるものを自分で決めない方がいい」って言葉なんですけど。例えば「この人についていこう」とか「この人の真似をしてみよう」って結構視野が狭まったりとか、本来ならキャッチできる情報とかも意外とキャッチできなくなりそうで。いいアドバイスを大人から受けても、「でも」って拒んでしまったり。なので視野を広げて、影響を受けるものっていうのは20代のうちはなるべくオープンに、素直な心を持っておきたいです。


 I work as an escort in Kabukicho. It’s legal sex work. I have been working for about a year now since last April. I’m still learning how to approach and communicate with clients. When I moved to Japan and learned that this job was legal, it piqued my interest, so I decided to give it a try. I have learned so much from this experience and have had many different encounters. I still enjoy doing it.

 I didn’t really like myself. It’s not that I hate myself, but I was always critical of my flaws. Starting to work as an escort didn’t make me suddenly admire my flaws, but I started to view flaws differently. I used to be a perfectionist, but now when I see people on the streets, people with flaws, and I appreciate art, I see flaws as a part of life. We all have flaws, and it’s natural. But at the same time, our flaws hold a certain beauty. That’s life and I call it “art”.


(写真許可おりず / 西新宿駅)

 現実社会は、私から見たら言葉の暴力に満ち溢れてるの。みんな無意識にやってる気がする。それが年々過激化してる。だからなんとか、私も、世間も、無意識のうちに自分の心を強くしておこうとしてると思うわけ。そうじゃないと、潰れちゃうから。

 ひとはみんな傷つきたくないの。だから知らず知らずのうちに、一人一人が鈍感でいようとしてると思うの。見て見ぬふり。聞こえてないふり。知らないふり。多忙なふり。全部「関わることが面倒」、だからなの。心当たりないですか? それが大前提で、今の世の中や生活は成り立ってるの。本当の話をしたら、問い詰めたら、もうそこに行き着くじゃないですか。

 でも私は、自分の気持ちを誤魔化すことは嫌なの。鈍感でいることができないの。だから、いつもアンテナを張ってしまうんですよ。そしたら、やっぱり傷つくことも多いです。

 この前も駅の中で倒れてるひとがいたんだけど、誰も声をかけなかった。電車の中で、倒れてるひとがいても、誰も声をかけなかった。私はよくそういう場面に遭遇するんです。でも本当に誰も何もしない。一瞬「えっ」って顔して、知らんぷり。小さい液晶にまた目がいって、目の前でひとが倒れてるのに、同じ日本人なのに。私が声かけなかったら、あの倒れてたひとたちは、本当にどうなるの? 

 自分の中の正義、信念というのか、良しとしてるところというのか。普段身の回りで起こることがあまりにも理不尽で、それを受け入れられない自分がいるんです。だけど、だからといって、全部に関わるかって言われたらそれも違う。見ないように生きようとすると、それはそれで自分の心に嘘をつく。となると、自分なりにですけど、問題と向き合ってしまう。考えてしまう。すると、ますます自分はしんどくなる。だけど、しんどくなることを恐れてはいけない、というのが今の私の結論です。あえて、しんどくても向き合う。

 私は不器用というか、自分では「不器用」とあえて言ってますけど、言い方を変えれば、それは「純粋」かもしれないし「愚直」や「まじめ」かもしれない。でも当たり前のこと。困ってるひとがいたら手を差し伸べる。優しくする。当たり前のことじゃないですか? 私が目立ってどうするの? 私からしたら、逆に「えっ」って気持ちなんですよ。でもそれがわかる人は、絶対にやり続けないとあかんとも思っています。大多数が「しない・できない」でも、ひととして「絶対に間違いない」て確信持てるうちは、絶対に行動しないと。

 誤魔化し、茶化しが通る世の中ではダメなんですよ。

INFORMATION

加藤雄太

「毎日、知らん人に話しかけたら?」先輩の一言をきっかけに、
2014年より街行く人々の写真を撮り、話を聞き・書く生活を始める。2022年、独立。
HP:yuta-kato.com
Instagram:@_yuta_kato_

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