Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」vol.23 〜kZmの巻〜

DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxとWONKのリーダー/ドラムスである荒田洸の二人が、リスペクトする人を迎える鼎談連載。第二十三回はラッパーのkZmを迎えて、中延のタコス屋にて。ヒップホップ、テクノ〜ハウス、ジャズとジャンルは違えどそれぞれのシーンを牽引する同世代3名による、ユルめの、でも芯を食った会話をどうぞ。
EYESCREAM誌面には載りきらなかった部分も含めて完全版でお届けします。

ラッパーとかバンドマンって目指すとかじゃなく気づいたらなっているもの

荒田:僕は今日、初めましてです。唾奇バンドとかで同じ現場になったりはしていましたけど。二人はどういったつながりですか?

kZm:Licaxxxと初めて会ったのは渋谷CONTACTで、そのときにバーカンでわりとちゃんと喋った。で、そのとき付き合っていた彼女がなにか勘ぐって、後ろから思いっきりブン殴られた(笑)。「なにその女」状態で。

Licaxxx:つかみバッチリ(笑)。そこから、家が近くて仲良くなったかも。kZmと飲むといつもふざけすぎちゃう。モノボケしたり、でんぐり返ししたり。上下関係はとくになく楽しくやってる。バスケ仲間でもあるね。

kZm:昨日も一緒にバスケして、近所でメシ食って、バイバーイって感じだった(笑)。

荒田:ヒップホップにはバスケのカルチャーから?

kZm:そうですね。高校の部活でバスケやっていて、もっとうまくなりたいから代々木公園のコートにも行くようになって。そこで米軍基地の黒人の人たちがバスケしていて、そこでかかっていたのがヒップホップだった。「なんかお経みたいだけどカッケー」ってなって、これじゃん! って、がっつりハマっていった。その頃まだヒップホップは盛り上がってなくて、「聴いているオレかっこいいミュージック」だった。SoundCloundでビート探して、それをiPhoneから流しながらラップしたりしてた。


Licaxxx:アナログでいいね〜。YENTOWNの出会いはどこだったの?

kZm:バスケの仲間でkiLLaってグループをつくって、そこからMONYPETZJNKMNあたりと仲良くなりだして、一緒になってYENTOWNになっていった。最初は音楽で食っていこうなんてまったく考えてなかったんで、覚悟も決まってない状態だったからいろいろ悩んだけど、まあやってみようかって。2015年に最初のリリースをして、まとまったものを出したのが2018年だから、まだルーキー説ある。

Licaxxx:たしかに、言われてみると短いね。

荒田:WONKを組んだときも、音楽で食っていくというよりは、とりあえず雰囲気でアルバムつくったんですけど、そこからなんか謎に食えている状態で。

kZm:なんかありますよね。そういうのって、たとえばラッパーとかバンドマンを目指すってないんじゃないかなと思っていて。気づいたらなっているもんだなって最近思います。

荒田:そう。気づいたら、これがいまの生業になっているからリリースがんばんなきゃなって。

Licaxxx:たしかに、私もDJで食おうって思ったことなかったわ。……そういえばkZmは最近、DJもやってますけど、DJ飽きたってホントですか?(笑)

kZm:はい……。なんか、DJやるようになって本当のDJの人ってホントすごいなってわかっちゃった。恐れ多くなった。


ラッパーは遊んでないとどんどん同じことしかできなくなっちゃう

荒田:どういうモチベーションで曲をつくりはじめるんですか?

kZm:だいたい昼くらいに起きて、二日酔いじゃなくて、今日天気いいな、気分いいな、というときですね。ウチは夕日がちゃんときれいに見える家で、夕日を見ながら作業をしはじめます。

荒田:気分が乗ったら、なんですね。制作のときにあまり悩まないですか?

kZm:悩みます。やりたいこと、アイデアがない時期がキツいですね。

荒田:普段はけっこうインプットしますか?

kZm:めっちゃ遊びにいきますね。インプットしているという大義名分のもと、クラブで遊んでいます。でもラッパーはホント遊んでないとどんどん同じことしかできなくなっちゃうような気がする。それこそLicaxxxがやっているような現場によく行きますね。ヒップホップのパーティーにはあまり行かない。

荒田:ヒップホップはあまり聴かない?

kZm:そうですね、USはいまほぼわかんないですね。フロウやビートが焼き増しでしかない時期にきていて、けっこうつまんない。UKは聴きますけど。

荒田:UKはおもしろいんですか?

kZm:そうですね。UKは移民が多いから、フロウにレゲエの要素が入っていたり、予想だにしない感じで来るからめっちゃおもしろい。

荒田:僕も最近、ストームジーばっかり聴いています。

kZm:ストームジーいいですよね。

荒田:国内のヒップホップのシーンはどうですか? バブルはまだまだ終わらなさそう?

kZm:いやーどうなんでしょうね。どこかで弾けるというよりは、マスのほうにテイクオーバーされていくんだろうなというのは思ったりする。ちょっと懸念しているのは、オレらがハタチくらいのときって、ヒップホップのパーティーにちゃんとおしゃれでイケてる子たちがいたんですけど、もういない。マス化されすぎちゃって。ヒップホップは、「オレだけが知っているかっこいい音楽」って枠ではなくなってきているから。イケてる子たちっていまはダンスミュージックとかクラブにいることが多い。ヒップホップのパーティーは敷居が低くなっている分、街のかっこいいヤツらはそこにはいなくなったのは悲しい。

Licaxxx:次のリリースはいつだったっけ?

kZm:(2023年)12月に。毎回、MVの最後に次に出す曲のイントロをティザー的に入れて、ちょい広告みたいなことしてるんですけど、それの第三弾で。クリスマスっぽい、久々のラブソング系のやつで。(編集部注:2023/12/20にリリースされた「U Are My Paradise」のこと)

Licaxxx:いいやん。ラブカズマ。

kZm:ラブマですね。完全に。

(一同笑)


kZm

Instagram:@kzm9393


荒田 洸

“エクスペリメンタル・ソウル・バンド”を標榜するWONKのバンドリーダーであり、ドラムスを担当。
Instagram:@hikaru_pxr


Licaxxx

DJを軸にビートメイカー、エディター、ラジオパーソナリティーなどさまざまに表現する新世代のマルチアーティスト。
Instagram:@licaxxx