フォトグラファー加藤雄太の「新宿」連載第五回。暇さえあれば声をかけに出る彼がこれまでに撮りためてきた作品は数千以上に及ぶ。その時その一瞬を収め続けてきた彼のレンズ越しにみる新宿という街のリアルやドラマをテキストと共に楽しんでもらいたい。これは見ず知らずの人間の人生を垣間見る邂逅録である。
自分の仕事に自信を持てないことに頭を抱えています。しっかりとした結果が見えにくい仕事ではあるので、自分の自信のなさがネックになってる部分もあると感じています。
自分は料理をやっています。まだ自信を持って自分の料理を出せるぐらいの自信が持ててないことが悩みですかね。
料理歴はまだ15年ぐらいです。今年に入ってから一応管理職にさせてもらって、「まだまだそんなことできないのに」と思いつつの日々で、失敗ばかりでして。
メニュー開発も担当していて、たとえお客さんが「美味しい」「綺麗」と言ってくださっても、内心は「まだまだ改善の余地があるな」と感じてます。
今は試行錯誤しながらですけど、このやり方がダメだったから、じゃ次はこうしてみようとか、とにかく思いついたことをやってみるしかないって思っています。
「今日はどういったお客さんに来ていただけるかな」とか、「今日1日来ていただけるお客さんにどう自分が接することができるかな」と声をかけられる前は考えてました。僕、飲食店に立たせてもらってるんですけど、新宿3丁目っていっぱいお店があるじゃないですか?そんな中で選んで入ってきてくれることに、まずすごく感謝していますね。僕は店長じゃないです。1スタッフです。
ー今お話しいただいてる接客に対するモチベーションは、家に帰ったオフの時間でも考えたりしますか?
はい、します。それを議題として常に考えてるわけではなく、自然に。例えば、1日終えて家に帰ってシャワー浴びてるときとか、行き帰り僕は自転車で通ってるんですけど、その道中とかで「今日こんな1日だったな」、「次はこうしてみようかな」とか。スタッフ間の関係の築き方など、自然と考えることはありますね。
言葉にするのもあれなんですけど、写真を撮る、絵を描いたりする、歌を歌ったりするって、きっと目的じゃないですけど、対ひとがいて、感じてもらえる。ひとに何か喜びだったり、明るい気持ちになってもらえたらそれが僕にとって原動力になってる気がします。 そういったことができるような人間になっていけたらなと思っています。飲食でもそうですし、何事においても。今言った部分を大切にして、やっていきたいですね。
バレーボールの試合で転びました。ジャンプしてブロックして、着地したときに、ひとの足に乗っちゃって。
自分の未来をどうやって生きるか、今はもがいています。「幸せに生きる」って考えたときに、自分にとって何が幸せなんだろうってよく考えます。価値観は日々変わるので、その時々で答えを見つけるのが難しいなって。
中学生のときもバレーを部活でやっていて、楽しかったんですけど、 一方で辛い部分も多くありました。でも、バレーをしたくてもできないひとも世の中にはいるじゃないですか?だから自分はバレーが出来るだけでも幸せなはずなのに、なんでそう思えないのかな?って。その頃から「幸せって何だろう?」って疑問を抱いてます。
今は「足るを知る」ことが一番大事だなって思います。「旅行に行きたい」とか、やりたいことは色々ありますが、そうでない日も、太陽浴びて幸せだな、おいしいご飯食べて幸せだな、友達と遊んで楽しいなとか。自分で自分の幸せを見つけることが幸せなのかもしれない。
特に怪我してからはそうですね。
アパレルに50年ぐらいいた。色々やって大変な時期もあったけど、やっぱり楽しかったかな。今楽しいことってなんだろ? もう77になるからね。いっぱい遊んできたからさ、若いときは。新宿、原宿、赤坂とかで働いて、夜は銀座とかさ。まぁ今の望みって言うと、早く病気を治したいぐらいだね。膵臓。医者に「膵臓癌です」って言われて、びっくりしちゃったよ。「え、俺もう死ぬのかな?」ってやっぱり怖かったよね。それでこの前手術して、少しずつ歩けるようにもなってきた。今日も一人で歩いたよ。ここからもバスに乗って自分で帰るんだ。
INFORMATION
加藤雄太
「毎日、知らん人に話しかけたら?」先輩の一言をきっかけに、
2014年より街行く人々の写真を撮り、話を聞き・書く生活を始める。2022年、独立。
HP:yuta-kato.com
Instagram:@_yuta_kato_