2018年ニッポンとサブスクリプションサービス

from EYESCREAM No.164 サブスクと日本とアーティスト
The fin.Interview

Photography—Kiyotaka Hamamura Edit—Ryo Tajima

2018年ニッポンとサブスクリプションサービス

from EYESCREAM No.164 サブスクと日本とアーティスト
The fin.Interview

Photography—Kiyotaka Hamamura Edit—Ryo Tajima

現在、発売中のEYESCREAM4月号では、ネットTV特集として「インターネットテレビジョン/オンデマンドメディア論」を徹底紹介しているが、その特集から派生し、音楽系サブスクリプションサービスの扱われ方についてもピックアップしている。Apple MusicやSpotifyに代表されるサブスクが今、日本ではどのように受け入れられているか。それを音楽アーティストの利用方法と合わせて聞いてみた記事をWEBでも公開。第2弾の今回は、The fin.のインタビュー記事をどうぞ。

“今までやってきたことが新たな音楽の聴かれ方として定着した感覚”
ー Yuto Uchino

“世界で活動するうえで大きなプラットフォームを活用することに意味を感じる”
ー Kaoru Nakazawa

ーThe fin.は特にサブスクを活用しているアーティストというイメージがあります。

Yuto Uchino(以下、Yuto)「そうですね。サブスクは新しい音楽の聴かれ方じゃあないですか、その勢いがすごい。The fin.は、その波に恩恵を受けてきたバンドだと思っていますし、行ったことのない国にライブしに行っても、知らない人が何百人も来てくれるので、肌でそれを感じています」

ーアーティストサイドとして配信するということには躊躇はありませんでした?

Yuto「ないですね。そもそもThe fin.は昔、1曲レックしてはサウンドクラウドに楽曲をUPしていたんですよ。聴かれないと意味がないという意識は初めからあるんですよね。聴かれて好きになってもらうことが1番で」
Ryosuke Odagaki(Ryosuke)「前身バンドではCD-Rを無料配布したりしていたんですけど、それだけでもちょっと広まっていく感覚があったんです。だからこそ聴いてもらうことが重要だと考えて、The fin.では、しっかりそこをやっていこうと思ってやってきたので」
Yuto「今ではストリーミングサービスが本格化し定着してきて、オレらがやってきたことがメジャーになってきていると思うんですよ。フリーで公開してみんながすぐ聴けるというやり方、それにオレらが従来通りのやり方を踏襲していった結果、聴かれる幅もすごく広がったんですね。このプラットフォームにうまくハマっていった感覚があります」

ーThe fin.はイギリスを拠点として活動してきましたが、その辺りのサブスクの受け入れられ方も差がありそうですね。

Yuto「そうですね、海外ではほとんどの人がSpotifyを使っていて、ライブをやってもプレイリストはどれだ? って聴かれるし、ファンになった人がライブに来てくれる流れなので活動しやすいんですよ。現場に行けば曲を知ってくれているファンが待っているという状況で、最初はその状況に驚きましたけど、嬉しいですよね」
Kaoru Nakazawa「例えば、オレたちのことを知らない場所でライブをやっても、来ているお客さんに『Spotifyやってる? どれ?』って聴かれますからね。そこで違うプラットフォームしか持っていなかったら、すぐに聴かれなくなっちゃうと思うんです。だからSpotifyのような大きなプラットフォームがあって、そこで活動していくのは良いことだと思いますね」
Yuto「そうだね。みんな大体1つのアプリで聴いているんですよ。複数を使い分けたりはしていなくて。海外では、それがSpotifyなので、その中に入っているのは大きいですね。無国籍に聴いてもらえますし」

ー2ndアルバム「There」はZINEとのセットもリリース。逆にフィジカルに寄った展開ですよね?

Ryosuke「ZINEはフォトジンのような内容ですね。The fin.は1年半、イギリスで共同生活をしながら音楽制作してきたわけなんですけど、その活動をきちんと日本のシーンに届けられていないと感じていたんです。向こうでどんな生活を送っているかを切り取ったものを伝えたかったんです。友人の写真家に撮影してもらった写真と、自分たち発信のインタビューも掲載します」
Yuto「音源をデジタルで配信して、CDにインタビューやZINEをつけるのは一種の回収なのかな、と。ちゃんとフィジカル手を伸ばしてくれる人への感謝でもありますね。そうやってバンドとファンとのコミュニケーションのサイクルを作っていきたいと思います」

ー内容的には壮大なストーリーを感じました

Yuto「そうでしたか? でもアルバムのテーマを設けて作品にしようという考えはなくて、ジャンルで言っちゃうとバラバラだと思うんですよ。とにかく自分の感情を曲に落とし込む、ということを考えてフィーリングを大切にして表現した形です。制作していたのは曲を書き始めた頃から考えると約3年くらいで、この時期はちょうどThe fin.が海外ツアーを行い始めた頃でした。人間としても変革期を迎えていたし、この期間にいくつもの壁を乗り越えてきたので、そういう自分を打ち破るエナジーが全曲通してあって、それはすごく満足しているんですよ。それまではネットで騒がれているだけ、という部分もあったんですけど、そこを乗り越えて形になった曲が収録されていると思います。だからSpotify US、UK、Franceでもプレイリストに選んでもらえたのかな? と思いますね。この作品を携えて海外も含めてツアーもありますけど、日本でのライブも本当に楽しみ。フェス出演も決まってきているので、今のThe fin.を見てほしいですね」

INFORMATION

The fin.
活動の拠点をロンドンに置く3人組ロックバンド。Spotify US、UK、Franceの注目の最新曲を取り
上げるプレイリスト「New Music Friday」にもセレクト。サブスクを活用し世界中へ自身の音楽
を配信している。3月14日に2ndアルバム「There」を発表。

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