[vol.1] starring Sawa Nimura
安価な上に立つ、大量消費社会。
何を以ったどんな物なら、私達は深く大切に出来るんだろうか。
”安くて早くて良い服。’’
広告でも雑誌でも、多くがよく謳っている。
けれど今は
どんな想いをして作ったかも分からない”何処の国の誰か”が作った服を
お金を出せば“この国の誰もが”手に入る、
そんな、沢山の人が関わって作られた筈のものたちに溢れ返りながら
私達は、寂しい。と 何故か言う。
自分達は、所詮、独りで生きている。という。
なんでだ。
私達作り手は思う。
私達が、ひとつひとつ
物凄い時間をかけて作っているのに。
気付けば周りには気が遠くなる位の他者の手によって
作られたもの達に溢れているのに。
でも、同時に思う。
作り手の私達も、ちゃんと声を挙げないのがいけないのだ。
どんな物にも、作品にも、ちゃんとそれを作った人が居る
消費の波にこのまま応え続ける、だけではいけない。
私は渦を描く。
人々の無常も感情も全ての思考も渦巻いて見えるから。
全てのことは混ざって起きている
そしてその皮膚の下に巻き起こる、内在的な”混沌”を
皮膚の上から、”纏う渦の服”として表現する。
いつもは隠れて見えない頭の中を”着るアート”
みんながみんな、自分の世界をぐるぐる進んでいる。
そして作り手として。
皆んなが今まで安く手に入れてきた服達は、
ほぼ分業でつくられているといって、間違い無いと思う。
デザイナーが、どんな服を作るかデザインして
それをパタンナーが実現させるための実際に紙に断面図を書いて
それを布にカットする人がいて、
指示通りに縫う人が居て、
出来上がったものを売る人が居て、
これだけじゃない細かいことで言えば
もっともっとー多くの人が関わって居て、その上で
物が安いことを喜ぶ私達が
より安い賃金で人の命の時間を買うことを促し、
そして服というものがそんなに長い時間をかけて
沢山の人達を経て作られたものだなんて、
誰一人知らない。
そこで、今回は衣装デザイナーとしての今までの仕事である
“服自体”が作品となっていた部分を辞めて
一から服を作る作業からそれを人が着るまでの
その”全ての工程”を作品にすることによって
声を挙げようと思った。
デザインを決め、パターンを作り、布に絵を描き、カットして、それを縫製して、
仁村紗和ちゃんをキャスティングし、ヘアメイクも施して、
その全てを写真家のSaki Yagiが記憶した。
私は元々服飾の専門学校に通っていた訳ではないから、
これが”正しい”服は作れない。
けれど、正誤ではなく、
たぶん、服以外にもずっともっと多くの”ものづくり”が
いま消費社会の影に隠れている。
これを機に、もっと色々な”ものづくり”たちが
搾取されるままに流されることを一度辞め、
自分たちがつくるものたちへの愛情や時間の濃度が、
それを使う多くの人達に伝わるように声を挙げてくれたら嬉しく思う。
声を上げなければ、自分の手で作った温かさえ伝わらない、
そんな社会は、
私達ものづくりの魂と声無ければ
やっぱり伝わらない。
text by yoshimi saito
Costume,Hair&make-up : Yoshimi Saito
Instagram : @yoshimiman
Photographer : Saki Yagi
http://www.saki-yagi.com/