DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxとWONKのリーダーである荒田洸の二人が、リスペクトしている人や、とにかく会ってみたいと思う人を迎える鼎談連載としてEYESCREAM誌面で展開している「注文の多い晩餐会」。第三回は、2018年9月に共作アルバム『la blanka』をリリースしたSweet William & Jinmenusagiに加え、話題のクリエイター集団〈Pitch Odd Mansion〉を主宰する國枝真太朗も急遽参加。誌面には載りきらなかった部分も含めて、完全版でお届けします。
L→R
國枝真太朗、Sweet William、Jinmenusagi、Licaxxx、荒田洸
「数字よりもおまえは、おまえの愛を信じられないのか?」って
荒田:今日は過去最大人数でお送りしたいと思います。
Licaxxx:今回は、なぜこの3人になったんですか?
荒田:JinmenusagiとSweet Williamで共作アルバム『la blanka』を出したんですけど、それがWONKも所属するレーベル〈epistroph〉と、國枝真太朗さんの主宰する〈Pitch Odd Mansion〉のダブルネームでリリースしたこともあり、ゲストに来てもらいました。
Licaxxx:このインタビューは、お酒を飲みながら普段は話せないようなことを話す、というテーマでもあるので、これまでのインタビューでは話してこなかったようなことを聞いていきたいと思います。
荒田:早速聞いていきたいんですが、最近の日本のアーティストで気になる人っていますか?
Jinmenusagi:曲作りたいなってまで思うのはjan and naomiさん。
Licaxxx:おおーっ。理由は?
Jinmenusagi:マジかっこいいから。以上。
Licaxxx:ジャンルとか活動しているフィールドは違いますよね。
Jinmenusagi:共演というか会ったこともないですね。iTunesで買って、かっこよかったから。
Sweet William:僕は、EVISBEATSさん好きです。あとはbirdさんや、大沢(伸一)さんも昔から聴いていました。
Licaxxx:これまでにも「今のシーンについてどう思う?」と質問されることもあったと思うんですが、そういうときはどう答えていますか?
Jinmenusagi:「何も言えない」というのが答え。と言って、伝わる人には伝わってほしい。今の日本のシーンは音楽をコンテンツビジネス化することにすごく長けているなと感じますね。アートは二の次だなって。それに良さがあるときもあるし、寂しいときもある。本当は数字のこととか考えたくないけど、それも考えないといけない状況でもある。指標とするものが、収入なのか、自分の満足するものができたかどうか、そこで大きな違いがある。「数字よりもおまえは、おまえの愛を信じられないのか?」って思いますね。
荒田:お二人とも、メジャーからのリリースは今のところやってないですよね。理由はあったりするんですか?
Sweet William:そうじゃなくても食べている人がたくさんいるというのはここ何年かで知れたから。
荒田:WONKにしても自分たちでやっていて、それでやっていける時代だと思うんですよね。自分でやる楽しさってあるから。
Sweet William:かといって、メジャーを否定するわけじゃないし、おもしろそうだなとは思います。
メディアが受け身なことがイヤ
荒田:話は変わりますが、メディアについてはどう思いますか?
Jinmenusagi:メディアについてというのは、自分がインタビューを受けたりするなかで、メディアに思ったことですか?
荒田:そうです。
Jinmenusagi:あまりジャーナリズム精神のあるメディアはないですね。たとえばアルバムをリリースして、それがすごく先進的でおもしろいことをやっていたから話を聞きたい、となるべきなのに、リリースの資料をメディアに送って、じゃあやりましょうか、ってなっている時点で俺はイヤなんですよね。メディアが受け身なことが。おもしろい話題は自分で探しなさい、って思うんですよ。もっとペーペーなときに、「取材されたいのに取材がこない」みたいなこと言ったら、「そりゃそうだよ、資料送ってないから」って言われたんですよ。資料送るとかそんなんじゃないだろうが! って。メディアに対して思うのはそれだけです。
Licaxxx:どのメディアもできてることとできてないことがあって、そのなかで取材される側が選択していけばいいんじゃないかな。なんとなくのまま取材されるのも、おもしろくするのも全部自分次第。実際、こうやって連載もできているわけだから。
荒田:取材される側も受け身じゃなく、ってことですね。
Licaxxx:そう。利用されているだけじゃなく、お互い利用しあっていかないと。
お酒飲んでフロアでぶらぶら踊っていてほしい
Licaxxx:Sweet Williamさんに聞きたいんですけど、ビート作っている人のライブって難しいですよね。「ライブ」イコール、マイクを持つか楽器を弾く、だと多くの人が思っているから。ビートライブしているときに、「何してるかわからない」って言われることないですか?
Sweet William:ほんとそう。お客さんには、お酒飲んでフロアでぶらぶら踊っていてほしいんだけど、みんな「何やってんだろう」って覗きに来る。
Jinmenusagi:ちなみに、6年くらい前にLicaxxxからビートもらって作んなかったことあります!
Licaxxx:懐かしい(笑)! そういうこと全然あるから大丈夫。
Jinmenusagi:でも俺も、“ラッパー”って言われたらちょっと違う。ラッパーって言われるほど肝座ってないし。言われる度に“ミュージシャン”ですって言ってる。小学生の頃は漫画家になりたくて、でもひとくちに絵で食っていく職業って言っても、漫画家とかアニメーターとかいろいろあるじゃないですか。だけど「○○になる」って言葉で言いたいから、そのときは「将来、クリエイターになる」って言っていた。今思うと、制作する人だから、間違ってない。
Sweet William:小学校の卒業のときの文集みたいなのあるじゃん。あれに俺は将来の夢、DJって書いてた。
荒田:俺、野球選手だった。
Licaxxx:建築家。
荒田:あー、なんか人柄出るね。
國枝:俺は、ペットショップの店員。
Jinmenusagi:それってたぶん、ペットショップで働いたらペットにいっぱい触れ合える、とかの思考回路ですよね。
國枝:そうそう。
Jinmenusagi:自分で、自分の肩書きを決められるなら、何が一番いいですか?
Licaxxx:新しい質問だね。
國枝:たとえば?
Jinmenusagi:俺は「ソーシャルワーカー」ですかね。
(一同笑)
荒田:一番、ソーシャルから離れようとしてる感じあるのにね。
國枝:俺は社長がいいかな。ふんぞりかえっていたい。
Licaxxx:私は、肩書きがない状態でなんでも仕事をやっていきたい。いろいろ聞かれるし、ことあるごとに(肩書きを)つけられるじゃないですか。でも、DJを軸に置いていればなんでもできるからDJって名乗っている。
みんなで一緒に上がっていきたい
Licaxxx:今後、2〜3年のうちにやりたいことは何ですか?
Sweet William:アニメの音楽か、インスト集を作ってみたい。
Licaxxx:インスト集かあ。grooveman Spotさんとか作ってますもんね。大好き。
Sweet William:俺も。あの人の作るヒップホップ、超ツボですね。
國枝:俺は〈Pitch Odd Mansion〉のみんなで売れたい。
荒田:みんなで成り上がっていこうと。
國枝:だって、ひとりだけ上がっても、その上がったひとりも寂しいもんだろうから。
Jinmenusagi:俺は、バンドを組むこと。韻という概念がない世界にいきたい。
Licaxxx:へえー。どんな感じのですか?
Jinmenusagi:ダブとファンクを混ぜたようなバンドで。下北沢あたりで月イチ、ライブしていたい。あとは、犬を飼うことと、結婚。ポメラニアンかビーグルがいいかな。
荒田:それはなぜ?
Jinmenusagi:なんでかっていうと、音楽は、全身全霊で取り組むことはわかっているので、その音楽に影響を与えうる私生活を変えたくて。
Licaxxx:なるほど。それはすばらしいですね。