1968年に発売されて以来、変わることのないクラシックなデザインが、ストリートを中心に支持され、新たなムーブを生み出してきたPUMA SUEDE。本企画では、その不変のスタイルにフォーカスし、時代を動かす4名のキーパーソンから、変わらない2つのメソッドを探る。
令和の時代に突入し、これまでの日常から“変わること”が求められているいま、“変わらないこと”の大切さを見つめ直す。
#01 Yohei Uchino
2008年に世界タイトルを獲得して以来、幾度となく頂点に立ち続けるBMXライダー、ウッチーこと内野洋平。昨年11月、神奈川にBMXフラットランドとスケートボードのパークをオープンしたことも話題になっている。数々のニュートリックを生み出し、世界に影響を与えている彼の足元は、いつも決まってPUMA SUEDEだ。そんな第一線で活躍し続けるシーンのキーパーソンが、ずっと変わらずに大切にしていることを答えてくれた。
BMXだけではなく、ストリート全体のために
—昨年「THE PARK SAMUKAWA」がオープンしましたが、神奈川県の中でも、寒川町を選んだ理由を教えてください。
内野:ARK LEAGUE(BMXフラットランド・スケートボード・ブレイクダンスの世界大会)を神戸で開催していて、関東でも開催したいという気持ちがありました。最初は、神戸と雰囲気が似ているから、横浜を想定していたんですよ。場所を探すために横浜市と話し合ったんですけど、いろんな事情で難しくて。そのあと、神奈川県に相談してみたら、ARK LEAGUEに興味があると紹介してくれたのが寒川町でした。
—寒川町は、なぜARK LEAGUEを?
内野:寒川町は小さい町で、周りには茅ヶ崎や藤沢、平塚などがあるから、地元の若い子たちはそっちに遊びに行っちゃったり、引っ越しちゃったりしているみたいで。でも町は、地元の若者をサポートして、それを発信したいという思いがあったそうです。
—町ぐるみで応援してくれるのは、いいですね。
内野:とは言え、町が出資して作ったわけじゃなくて、僕の会社で運営しています。町としては、子どもたちの利用料やレンタル料、月2回の無料開放とかをバックアップしてくれています。そのおかげで、遊びに来てくれる子どもたちがすごく増えているんですよ。
—パークについて、詳しく教えてください。
内野:設計したのは、オリンピックで期待されているスケーターで、金メダルを獲るためのセクションを提案してくれました。いろんなセクションがあるデカいパークより、このワンラインがあるパークのほうがいいみたい。むしろ、これがどこにもないらしいです。レールの角度と高さと長さは、アメリカの大会が基準。世界で戦っているスケーターたちも、県外からほぼ毎週来てくれています。
—BMXフラットランドのパークとしては、いかがでしょう?
内野:贅沢な広さにしました。フラットランドとスケボーが共存しているパークって、見たことないですし。
—BMXだけに限らず、スケートボードにも対応するパークを作った意図は?
内野:ずっとBMXで世界と戦ってきましたけど、昔からBMXだけに縛られずに考えています。技は無限にあるから常に挑戦したいし、大会では優勝したい。でも、BMXだけに絞りたくないんです。スケボーとかブレイキングとかにまで視野を広げていて、ストリートって枠で考えているから、フラットランドだけじゃなくて、スケボーもブレイキングも使える場所にしたかったんです。
—パークのこだわった部分を教えてください。
内野:とにかくかっこいいパークを作って、ここで撮影してもいい映像が撮れる空間にしようと思いました。本当にひとつひとつこだわっています。汚れていた壁をグレーに塗って、机もオーダーメイドで作って。備品の中でゴミ箱が無駄に一番高かった(笑)。入り口には、LEDのネオンサインを友人のアーティストWOKに作ってもらいました。本当はもっと作り込みたいところがあるんですけどね。
—確かに、洗練されていますね。
内野:一番のこだわりは照明なんです。ラインごとにLEDのライトを操作できて、夜の街っぽい明りにもなるんですよ。ただ滑れればいいというパークではなく、映像作品に残したくなるパークを。
—ちなみに、どこから来るスケーターが多いですか?
内野:スケーターは近隣の湘南エリアはもちろん、東京や千葉からも遊びに来てくれています。今日も都内から丈太郎が遊びに来てくれていて。
—はじめまして。よく遊びに来るんですか?
丈太郎:はじめまして。齋藤丈太郎です。よく来ていますよ。まだ中3なので、週末くらいしか来れませんが。
—他のパークと、どこが違うと感じていますか?
丈太郎:理想的なレールがある都内のパークって少ないんですよ。スケートパークにあると嬉しいセクションが全部揃っていて、大会の練習にもなっています。
齋藤丈太郎
@joetarosaito
—やっぱり大会で上位を狙いたい?
丈太郎:それもありますけど、普段からデカいセクションで練習しておいて、ストリートにある難しいスポットもメイクできるようにしたいんです。
—このパークで他に気に入っている部分は?
丈太郎:スタッフのナオトくんがフレンドリーだから楽しいです。あと、湘南ローカルの仲がいいスケーターと会うには、ちょうどいい中間地点なんですよ。僕も友達も土日に集まってくるから練習になるし、わいわい滑れるし。お互いのレベルを高められる場所だと思います。
楽しむ余裕を持って、乗り続けることが大事
—PUMA SUEDEはクラシックなデザインが特徴です。ウッチーさんにとって、クラシックとは? 自由にお答えいただきたいです。
内野:BMXに出会った当初の気持ちですかね。自転車をゲットして、がむしゃらに楽しく乗っている時の感情は今も変わらず、一番の原動力になっています。
—BMXのどこに惹かれたんですか?
内野:20年前、友達とスケボーのイベントを見に行ったんですよ。でも、情報が間違っていて、スケボーじゃなくてBMXで(笑)。当時雑誌を読んでいて、スケボーもBMXもカッコよかったから、正直どちらでもよかったのかもしれません。初めて見てみたら、本当にかっこよくて。細かいことは全然分からなかったから、何がっていうより、空気感がカッコよかった。ファッションもカッコよかったし。
—その時の感覚がクラシックなんですね。
内野:だから今も、すべてにおいて、カッコよさにこだわっているのかもしれません。自分が感じたカッコよさだから、他の人に押し付ける気なんてありませんが、あの景色を今の子に見せたいなあ、という気持ちもあります。
—そんな衝撃を受けたBMXに乗り続けていて、今も“変わらない”ことは?
内野:まさに、BMXライダーとして乗り続けていることが、変わらないことですね。でも、続けることって、好きなら当たり前のことで、特別すごいことではないかもしれません。トップに立ち続けるのは、簡単じゃないですけど、乗り続けることは誰でもできますからね。BMXを移動手段として使うのもいいですし、車に積んでおいて、時間があれば少しだけ乗ってみるのもいいですし。それでいいと思うんです。
—世界を相手に戦っていく中で、スキルをブラッシュアップするために必要なことを教えてください。
内野:僕の場合、間違いなくライフスタイルが肝心。練習を詰め込んだアスリートのスタンスじゃ、頭がパンパンになって、新技は生まれないと思うんです。ライフスタイルを楽しむことが、新技を生み出せる環境ということ。仲間とふざけてみたり、ボーッと他の人のライディングを眺めてみたりしていると、「今、ちょっと見えたかも」みたいな、新技のひらめきがあるんです。
—BMX以外から影響を受けることもあるんですか?
内野:もちろんありますよ。例えば、スケボーを借りて乗ってみると、やっぱり難しい。バランスは、BMXが前だけど、スケボーは横なので、横のバランスが弱いんだなって気づけました。フリップってこうやって回すんだって理解して、バイクフリップ(オリジナルトリック)が生まれたんですよ。気づけば、それが世界中でやられていて。ライフスタイルの余裕が、技を生み出す余裕に繋がると思っています。
—遊びも大事ですね。
内野:むしろそっちのほうが大事かもしれませんね。友達と戯れてなんぼですよ。まあ、競技じゃなかったら、技を自分のものにしたいって気持ちにならないはず。遊んでいたらこんな技ができた、で終わらず、大会でやりたいから完成度を上げたいって思うんですよね。そこのバランスも大事です。
—最後に、今年の目標を教えてください。
内野:今コロナ禍で動きにくい分、考える時間が増えたので、頭を整理したり、新しい発想が生まれたりするタイミングだと思います。世界中のいろんなジャンルにおいて、今までの常識が通用しないので、今年の考え方次第で、遅れる人と進む人の差がはっきりすると思います。だから今年は、しっかり考えて、準備をする年にしたいです。あと来年は、人が想像もつかないことをやりたくて、今も動いているところ。それは、ビッグプロジェクトすぎるから、時間が掛かっちゃっています。来年、楽しみにしていてください。
PUMA SUEDE VTG
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PUMA HPでは、内野洋平とPUMA SUEDEとのサイドストーリーを展開中だ。ぜひ、こちらよりチェックを。