1968年に発売されて以来、変わることのないクラシックなデザインが、ストリートを中心に支持され、新たなムーブを生み出してきたPUMA SUEDE。本企画では、その不変のスタイルにフォーカスし、時代を動かす4名のキーパーソンから、変わらない2つのメソッドを探る。
令和の時代に突入し、これまでの日常から“変わること”が求められているいま、“変わらないこと”の大切さを見つめ直す。
ヒップホップバンド、韻シストのラッパーとして1998年から活動をスタートしたBASI。現在ではソロ活動も積極的に展開し、2018年にリリースした「愛のままにfeat.唾奇」のヒットによって、さらなる知名度を獲得。そして、他アーティストのプロデュースをもこなしている。そんな彼が、PUMA SUEDEを着用してくれた。20年以上のキャリアを誇る、自身の音楽活動と重ね合わせながら、PUMA SUEDEの魅力を紐解いていく。
ブレないPUMA SUEDEに
確固たる強さを感じる
—2月24日にリリースされる、kojikojiさんの新しいEP『PEACHFUL』をプロデュースしたそうですね。ご自身の音楽制作と他アーティストのプロデュースで、どうチャンネルを切り替えているんですか?
今作も全曲作詞をやらせてもらいました。そこで変えていると言ったら、言葉の選び方ですね。やっぱり歌う人によって、言葉の響きが全然違うんですよ。自分だったらピンときていない言葉も、kojikojiが歌うことで開花することもあって。その作業が一番楽しいです。
—ということは自分のリリックでは使わない言葉も?
そうですね。このEPを僕じゃ全部再現できなくて、kojikojiが歌うから成立するんです。
—kojikojiさんが去年出したEP『127』でもプロデュースしていましたよね。今作で特に意識したことはありますか?
若い世代で流行っている曲や、世の中の音楽シーンで盛り上がっているようなトレンドは無視して作りました。この1枚を5年後、10年後のkojikojiが歌っても、古く感じないような作品にしたかったんですよ。
—いつ聴いても時代を感じない曲っていいですよね。
年齢とキャリアを重ねていくことで、曲の響きも温度も成熟していくようなEPになればいいな、と考えながらやりました。
—そもそも、kojikojiさんとの繋がりはいつからなんですか?
彼女がギターを弾きながらカバー曲を歌っているのをインスタで見て、「愛のままにfeat.唾奇」を歌ったらどんな感じになるのか気になって、面識もなかったけどコンタクトをとったら、すぐカバーしてくれたんですよ。
—あの動画、かなり話題になりましたね。BASIさんからのアプローチだったとは……!
そうなんです。ギターの弾き語りでラップをカバーしているのが新鮮で。ラップって自分のカラーが強いから、本人が歌ってなんぼな部分もあります。ましてや、ギターじゃカバーしにくいですし。でも今までにない、かわいらしい声でうまく仕上げてくれました。
—初めて会ってみてどうでした?
今までどんな曲を聴いてきたのか、なんでラップをカバーしたのか、これからどんな音楽をやっていきたいのかなど、話を聞きました。
—1年ぶりにkojikojiさんをプロデュースしましたが、いかがでしたか?
今作は作詞以外に、歌録りのディレクションまでやらせてもらっていて、彼女の表情ひとつでレコーディングに納得しているのか分かるようになったし、例えば5テイク録ったらどのテイクが気に入っているかも分かった。それは前回までなかったもので、今作は全部話さなくても、フィーリングで意思疎通ができたんですよ。
—彼女の歌い方に合わせてリリックを書いたりもするんですか?
それは、こちらからいくら合わせようと思っても読めないというか。曲を提供して、実際に歌ってもらって初めて分かるんですよね。あ、そこのリズムはそんなに溜めるんや。とか、ここの音程は上げると思っていたけど、落とすんや。って。だから作っている最中は、全く完成形がわからないんですよ。
—想定を上回ることもありそうですね。
まさに。どの曲もそうでした。
—完成した感想は?
もちろんやりきりましたし、作業も楽しかったですが、そんな特別なことじゃないっていうか。割と日常的で、日頃からお互いに曲を送り合ったり、一緒にデモを録ったりしていたから、この制作期間だけコミュニケーションをとっていたって訳じゃないんですよ。常にやっていて、今も続いている。いい意味で、いつも通りの変わらない僕らのルーティンが、反映されました。
—今日履いていただいたのは、発売当時からほぼデザインが変わらないPUMAのクラシックモデルのひとつ、PUMA SUEDEですが、どんな印象ですか?
SUEDEは高校の時に履いていました。ずっと変わらないし、ブレていない。みんなが疑問を抱くようなことは、していないと思います。でも絶妙なアップデートは、施されていますよね。これまでのSUEDEの歴史の中で、ブランド側もいろいろと考えているはず。でも、PUMA SUEDEはこうだから、っていう強さを感じます。
—履いてもらっているPUMA SUEDE VTGは、発売当時のディテールを踏襲しながら、現代的な技術で作り上げています。
古いけど新しいってことですね。PUMA SUEDE自体に芯があって、履いている人たちがストーリーを作っていますよね。だからPUMA SUEDEは変わる必要がないっていうか。いろんなカルチャーがあるから好きなんですよ。
—カルチャー色が強いのもPUMA SUEDEの魅力ですね。
Beastie Boysが履いてましたよね。昔、雑誌でMCAが「ワンサイズ大きめで履くのがクールなんだ」って答えているのを読んで、真似していたのを思い出しました(笑)。
ずっと変わらず
なにか表現を続けている
—長年音楽シーンで活躍されているBASIさんなので、PUMA SUEDEのように変わらない部分があれば、変わった部分もあると思います。それについてはいかがですか?
自分の根本的な軸は、音楽を始めた当初から変わらないと思っています。自分が音楽を始めてから現在までの間に、新しい世代が出てきました。だから、自分が経験していないことを、新しい世代から吸収することが変わったところですかね。
—あと、変わらないからこそ、変われる部分もあるはず。
それ、めちゃくちゃあると思います。当時は未来を予測できていなかったけど、変わらずに続けていたからいろんな出会いがあって、自分の新しい一面を発見できた部分も多いです。昔から聴いてくれていたリスナーさんが、子供を連れてフェスに来てくれるなんて、音楽を始めた時には想像もできなかった。変わらずに続けていたから、得ることのできる領域なのかな。
—変わることと変わらないこと、どっちが難しいと思います?
う〜ん……。直感ですけど、変わるほうが難しい。変わるつもりが、ただブレているだけ、なんてこともあるのかなと思って。その点PUMA SUEDEはすごい。50年以上ブレないんだから。僕の音楽のキャリアは23年目になるんですけど、中途半端な時期に、変わろうと思って全然違う音楽をやり始めていたら、ここまで来られていないと思います。
—そうとは言っても、進化はしていますもんね。アップデートする中で、一番大事なものってなんだと思います?
自分も経験してきましたけど、ヒップホップってジャンルは、若い世代が塗り替えていくものだと考えています。頑固になるんじゃなくて、同じ視線に合わせて、若い世代は何が好きなのか、どんなことが起きているのか、俺はこうやっているけどみんなはどう? って意見を交換する時間は大事だと思います。
—確かに。違う世代とのコミュニケーションは大事ですね。
吸収していく感じかな。センスやスキルをシェアしたからこそ、生まれる音楽もあると思います。
ーここまで変わらずに続けてきた音楽をアップデートするなら、どの部分になりますか?
スタイルを崩さないというのが、大前提の話ですが。今まで、歌いたいことは自分でリリックを書いてきたし、僕と一緒に曲を演りたいと他のアーティストに言っていただけたら、自分のバースのリリックは自分で書いたし。さっき話したkojikojiのように、別のアーティストをプロデュースさせてもらうこともありますが、逆に自分じゃない誰かが書いた歌詞を、歌ったことがないんです。だから、それをやってみたいですね。
—また違ったBASIさんが見られそう。
今はいろんなアーティストと共作させてもらっているし、『切愛』という納得できるアルバムも作れたので、歌詞もトラックも誰かにプロデュースしてもらうことを経験してみたい。BASIがこうやったら、おもしろいんじゃない? って提案してくれる誰か、僕じゃない僕を見出してくれる人と、出会えればやってみたいです。
—新たな挑戦であって、表現のアップデートですね。
想像したらニヤニヤしてしまうほど、おもしろそうで楽しみ。リリースも周囲の評価も関係なく、作ってみたいですね。
PUMA SUEDE VTG
COLOUR_Puma Black-Puma White
PUMA HPでは、BASIとPUMA SUEDEとのサイドストーリーを展開中だ。ぜひ、こちらよりチェックを。
For All Time Story With PUMA SUEDE archives!
#01 Yohei Uchino
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