演じることで生まれるもの。映画初出演となるSUMIREにインタビュー

嘘のない真っすぐな視線と存在感で、モデルとして活躍するSUMIREがいよいよ女優デビューを果たす。映画『サラバ静寂』は、音楽や映画、小説などの娯楽が禁止された世界で、偶然出会った音楽の虜になっていく若者たちを描いた作品だ。主人公のミズト役には吉村界人、ミズトとともに音楽を追い求めるトキオ役に若葉竜也、そしてSUMIREは音楽を所持していた罪で父を殺されたヒロイン、ヒカリ役として出演。もがき、疾走する若者たちの情熱と、それを取り締まる警察官・斉藤工の怪演、そこに灰野敬二や大貫憲章、ASSFORTなどといった尖ったミュージシャンも交錯していく。Charaと浅野忠信を両親に持つという、この物語ともリンクする今を生きるSUMIREに迫った。

不安はあった、でもやってみなきゃわかんないなって

ー映画『サラバ静寂』において役者デビューとなりました。まず、オファーを受けたときの心境から聞かせてください。

「今まではモデルの仕事を中心にしてきていたので、『自分にできるのか?』というプレッシャーというか、不安はあった。でもやってみなきゃわかんないなって、前向きに思えたので(オファーを)引き受けました」

ー実際に演技をしてみて、どうでしたか?

「撮影を重ねていく度に、『他から見たら自分はこういうふうに見えていたりするんだ』と第三者の目線で見れるようになっていって。『もっとはっきり喋って』とは、よく指摘されました。(撮影前に受けた)演技指導でもそこは言われていたので、自分なりには意識しているつもりでも、まだまだだったり。普段、口をあまり開かずに話すので…。笑うときは大きく口を開いて笑うんですけど」

ー実際のSUMIREさんとヒカリは近かった? 遠かった?

「どちらかといえば近い、かな。いつも笑っているようなキャラクターじゃないところとか。どちらかというとムスッとした」

ー少し諦めの入っているような。

「そうですね。そこは自分の性格とは違うのかもしれないけれど。普段の私で言うと、友達が大好きなので、信頼した人とはずっと一緒にいたい。決まった人とばかり遊んでいます。ヒカリも、ミズトと出会ったことによって、その人が大切だということに気づいたから一緒に歩んでいった。そうやって身近な人を大事にするところは似ているのかな」

ー撮影現場はどうでしたか? 共演者とのやりとりだったり。

「界人さんとは、この映画で初めて会ったんですけど、私がまだ演技に慣れていないのを親身にサポートしてくれて。私がやりやすいようにするのはどうしたらいいか? というのを話し合えたり。最初は人見知りしちゃっていましたけど、話してみると界人さんも若葉さんも“おもしろいお兄ちゃんたち”だった。撮影の合間に私と界人さんが一緒にふざけているのを、若葉さんが『しょうがねえな』みたいにお兄ちゃんぽく振る舞う、みたいな。あったかい空気に支えられました」

ーSUMIREさんにとって印象深いシーンを教えてください。

「難しかったのは、(映画の冒頭で)お父さんが殺されて泣くシーン。あそこが一番、悩んだ。最初は、頭のなかで思い描いても全然泣けなくて。起きていない状況を起きているかのように、というのがどうしてもなかなかできなかった」

ー映画のハイライトで、泣き叫ぶ場面は真に迫るものでした。

「あのときは演じることに慣れてきていたのもあって、感情が入って自然にできました。役に入り込んで、素直に感情が出せたかなと自分では思えるシーンですね」

自然な、嘘のない関係。大切な人とはそうありたい

ー今作は音楽や映画、小説などの娯楽を禁止する「遊楽法」が施行された日本が舞台。そのなかで偶然、ミズトとトキオが音楽に出会い、衝撃を受けることで物語は進んでいきます。翻って、SUMIREさんがこれまでに影響を受けた作品について教えてください。

「映画が多いですね。『もののけ姫』が一番好き。小さい頃に観たときはちょっと怖かったけど、今になって観ると、絵がきれいだったり、ストーリーも、自然観もすごい。一度ハマると何回も繰り返し観たりするんですけど、『最強のふたり』もそのひとつですね。普段は恋愛ものやアクションを観ることが多くて、ああいったヒューマンドラマにハマったのははじめて。二人のキャラクターも、サントラも好き。あの二人みたいな自然な、嘘のない関係っていいなあと思いながら観ています。私も、大切な人とはそうありたいから」

ー劇中の「私は音楽が自由に聴ければそれでいい」というセリフが印象的でした。もし、あの世界にSUMIREさんが生きているとしたら、どういった楽しみを持っていたと思いますか?

「物語としては非現実的というか、平行世界のようなSFっぽさもあって、でもリアルな部分もある。もしあそこにいたら、トキオやミズトみたいに楽器じゃないもので音楽を作ったりとか、そういうことをして友達と楽しんでいたかもしれないですね」

ーASSFORTや切腹ピストルズがライブしているシーンで、もみくちゃになりながらハシャいでいる姿は素に近いようにも感じました。GOMESSのラップに引き込まれていく表情も。

「ああいったライブは今まで行ったことはなかったんですけど、楽しかったです。2〜3年前にRIZEを観に行ったことがあって、私は二階席だったんですけど、下ではダイブが起こっていて。一度、あのなかに混ざってみたいなあとは思っています。(クラウドサーフのように)持ち上げられてみたい!」

ー今後も役者には挑戦していきたいですか?

「はい。また機会があるのであれば、もっと自分にチャレンジしていきたい。もっと上の自分を見てみたい。だからといって今がダメ、とかではないんですけど。いろんな役をすることによって、今までにない自分を発見したり、違う自分が見えるから。『こういう自分あるんだ』みたいな、新しさを見たい」

INFORMATION

『サラバ静寂』

2018年1月27日(土)より渋谷ユーロスペースほかにて順次公開
企画・脚本・監督:宇賀那健一
出演:吉村界人、SUMIRE、若葉竜也、森本のぶ、仲野茂、大貫憲章、灰野敬二、斎藤工、ほか

http://www.saraba-seijaku.com/