FASHION 2022.04.15

Talk Session: MÖSHI×PORIN×YUUKI ー音楽とファッションを並列的に表現することー

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Ryo Kuzuma, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

音楽×ファッション。この2つのカルチャーは、どちらが欠けても成立しない表裏一体の存在として、共に変化しながら時代をリードしてきた。それを踏まえたうえで、音楽とファッションを同時に表現しているアーティストによるトークセッションを敢行。
ブランドyardenを手掛けるPORIN、クリエイティブプロジェクトYMYM Project(以下、YMYM)としてファッションを表現するCHAIのYUUKIを招き、4月20日に1stアルバム『BABEL』をデジタルリリースするMÖSHIと3人で音楽とファッションについて話し合ってもらった。

互いが表現するファッションの形について

 
MÖSHI:PORINちゃん、YUUKIちゃんとは、yardenやYMYMの展示会などでお話させていただいていたんですけど、僕はブランドをやっていないので、改めて自分が表現している洋服について簡単に説明できればと。ロンドン時代に作っていた洋服はアート表現の一環でもあって、NYに行ってからは、より個人的な体験をベースにファッションを表現してきたんですよ。自分が作っている洋服は、まだ誰かの生活の一部になるところまでいけていないし、2人がやっているようにお客さんに届けられるところまで至っていない状況で。今後ファッションも積極的にやっていきたいと考えている段階になります。そんな中、実際にブランドを手掛けている2人とも色々とお話したいと思って、今日は来てもらいました。
 
PORIN:MÖSHIくんが作ってきた洋服は写真とかで見たことがあるけど、めちゃくちゃカッコいいよね。もうすご過ぎて(笑)。洋服作りのアイディアはどういうところから降りてくるの?
 
MÖSHI:アイディアが沸くというよりもリサーチしている期間が長くて、それをどう表現するかを悩んでいる時間の方が長いんだよね。例えば、インスタにアップしているのはロンドン時代に作った洋服なんだけど、当時、自分が好きだったアートムーブメントがあって、その精神性や考え方を洋服に落とし込んでいるんだ。そのアートの歴史に対する研究や勉強に時間を費やしていて。
 
YUUKI:何もないところから発想するんじゃなくて研究するって感じなんだね。
 
PORIN:そのアートムーブメントって?
 
MÖSHI:ネオ・ダダという潮流があって。自分の解釈だと、人が価値を見出さないところに価値を見出すというか。例えば、街で見つけた廃材を使ってスカルプチャーを作ったりとか、そういう表現や思想を持つものなんだよね。だから、あの卒業コレクションを作っているときは、学校を回りながらスタジオに落ちているゴミを拾い集めたりして使ったりしてたんだよ。
 
PORIN:すごい! 面白い。今で言うとSDGsじゃない?
 
MÖSHI:今思えば、ある意味そういうことになっているのかもしれないけどね(笑)。でも、よくわからないような素材を何とか洋服にできないかなって考え方は今も好きで、考えていることの1つだよ。それにしても、2人がブランドとして表現していることって本当にカッコいいよね。yardenの最新コレクションは、あのレイヤー感がすごく本格的で現代にマッチしていると思った。一方で、YMYMに落とし込まれているYUUKIちゃんのイラストには、人をハッピーにさせる強さがある。絵が持つ世界観がファッションに昇華されている部分にすごく惹かれるんだ。
 
YUUKI:ありがとう! 私はもともと絵を描くこともファッションも好きで、それを全部繋げたブランドになったら面白いかなって思って始めたんだよね。だから、YMYMの根底にあるのは、私が描きたい絵なんだよ。洋服そのものや街の風景、見かける広告に使われている色の組み合わせからもインスピレーションを受けていて、常に全方位的に自分が好きなものを探しながら洋服作りをしているんだよ。
 
PORIN:YUUKIちゃんの絵を見て思うんだけど、素晴らしい感性を持っているなって。フォーカスする部分もそうだし、多様性があるように感じるよ。イラレ(AdobeのIllustrator)で描いているの?
 
YUUKI:うそー! ありがとう! そんな風に見てもらえているのは嬉しいな。私が使っているのはアクリル絵の具なんだ。あとはiPadも使っているかな。アクリルだと水彩っぽくも油絵っぽくも描けるし楽しいんだよ。
 
MÖSHI:PORINちゃんはyardenをどう作って表現していっているの?
 
PORIN:そもそもyardenはyardとgardenを合わせた造語で、四季がある日本の庭園に見られる刹那を洋服で表現したいと考えているんだよね。毎シーズン、モチーフとなる植物・お花があって、それをベースに、時代感を踏まえたうえで自分が着たいと思う要素を加えていきながら服作りをしているの。ブランドの活動はAwesome City Clubの活動と切り分けていて、自分の軸にある本質的な部分と向き合いながらやっているんだよ。
 

ーyardenにおいては、PORINさんのファッション的な気分も重要だと思いますが、今のムードは?

 
PORIN:そこがけっこう難しいんですよね。というのも、自分が出演する媒体(テレビ、ライブ、日常)によって全然異なってくるから。あえて言うなら、今は雑多に色んなものが好きです。でも、やっぱり根本にあるのはトラッドなもの。私はアニエスベー(agnès b.)が好きなので、オーセンティックで普遍性のある良質なもの、というのは絶対的に自分の中で守るようにしながら洋服作りをしようと心がけていますね。
 
MÖSHI:なるほど。今回のコレクションもそうなんだけど、前々シーズンのyardenのコレクションはかなりトラッドな印象があって、すごくカッコいいと思ったんだよね。そこがしっかりと軸として表現されているのがすごいと思う。ブランドとしてブレないキャラクターがしっかりとあるうえで、その時々にやりたいことをやるっていうのは大事なことだと思うし、それを意識してやってるのは本当に尊敬するよ。だって、ブランドのキャラクター付けってすごく難しいことじゃない?
 
PORIN:そう! 難しいんだよね~。
 
MÖSHI:僕はブランドをやったことがないから想像でしか言えないけど、各ブランドごとに核となるものがあると思うし、その核があったうえで、色んなことを試していくのが大事だと思うから。だからyardenもYMYMも本当にすごいよね。
 
YUUKI:私の場合はシーズンごとにコレクションテーマやコンセプトを明確に設けてやっているわけじゃくて、いつも好きなものをリリースしているから、yardenは本当にすごいなーって思うよ。私もいつかyardenみたいにやってみたい!
 
MÖSHI:でも、YMYMの展示会に行くと、YUUKIちゃん的にはコレクションテーマを設けていないんだろうけど、全体的に統一感を感じたし、圧倒されたけどね。型数も多いしすごいなって。
 
PORIN:私も統一感を感じるよ。
 
YUUKI:だったらよかった、嬉しいな! YMYMは、まだ実験段階に近いようなところもあるんだよね。こうやったらこうなるんだ! ってことを洋服作りを通して発見しているような感じかな。今後どんどんブラッシュアップさせていきたいって、いつも考えているよ。
 
MÖSHI:いや、2人ともすごいよ。僕もやってみたいと思うけど、どうやってブランドをやればいいのかわからないんだよね。デザインのことは学んだつもりだけど、具体的な生産方法となると知らないことも多くて。自分的にはMVに使用される衣装作りだとか、そういう仕事にも興味があるんだけどね。いつかはデイリーユースな洋服もやってみたいと考えつつ、今は構想段階かな。
 

音楽とファッションの文化的な親和性について

 

ー純粋な疑問として思うのですが、PORINさんとYUUKIさんは音楽とファッションを同時に表現されているわけで、その両立って大変なことではないですか?

 
PORIN:私の場合、洋服と触れ合うことでインプットにもなるし、そこで感じたことが音楽にも反映されていく部分があるんです。だから、逆に両方ともやっていないとバランスが崩れてしまう気がしますね。常に新しいことを考えながら吸収していきたいタイプなので、その良い循環がyardenのおかげで出来ていると思います。だから苦ではないし、どんな状況でもやれるんじゃないかな。
 
YUUKI:それ、私もPORINちゃんに聞きたかったの! どうやってバランスをとりながらやってるの? 気持ちのバランスとしてさ、両方があることで活かされる部分が私にもあるんだけど、現実問題として大変だ! 難しい! って思うことがあったりして。今、全部が同時並行でやっていたりするから、ライブの移動時間でデザインを起こしたり、出番前に絵を描いて、ライブ後に疲れて寝ちゃったり。これじゃいけない!って。両方があることでグチャグチャになっているところもあったんだよね。
 
PORIN:私の場合、1、2ヶ月yardenに専念して作る期間を設けているの。そのサイクルが決まっているんだよ。
 
MÖSHI:1年の中でサイクルがきっちり決まってるってこと?
 
PORIN:そうそう。そこは周囲の人にも予め相談していて。
 
YUUKI:そうなんだ! それは良いこと聞いたな。そうだよね、そうしたらいいよね。時期を分けて作っていくってことだね。うん、解決したよ!
 
一同:


 

ー音楽とファッションは表裏一体のカルチャーだと思いますが、現代日本において、感じることはありますか?

 
PORIN:今の日本では、ファッションと音楽がカルチャー的に分離していると感じるんだよね。そういうの2人はない?
 
MÖSHI:それはあるかも。海外では、舞台演出やファッションも含めて、すべてが1つに繋がって音楽を表現するためのツールになっていると感じるし。その点、CHAIはファッションと音楽の統一感が確立されているよね。
 
PORIN:うん! だから大好き!
 
YUUKI:ありがとう。私たちはライブをショウとして捉えていて、エンターテインメント性について考える部分は多いんだよね。目でも耳でも楽しめるのが良いと思っているからファッションも不可欠! 個性に直結できる部分だからね。
 
PORIN:そうだよね。(アーティストにとってファッション性は)歌詞と同じくらい大事なものだと思う。哲学を伝えるうえで。
 
YUUKI:本当にそうだと思う!
 
PORIN:最近、テレビの現場も増えてきたから以前にも増して、そう思うようになったんだよね。社会的に個性的なファッションが受け入れられにくい面もあるのかな? って感じることもあって。
 
MÖSHI:ああ、その辺りはPORINちゃんだからこそ感じることだよね。
 
YUUKI:そっか、PORINちゃんの話を聞くと色々考えちゃうなぁ。私は海外をツアーして回って、ちょっとでも目立たなきゃって考えるようになったんだよね。どれだけしっかりと自分らしさをファッション面においてもアピールできるのかってことを、この2ヶ月間すごく考えていたかな。でも、そういうマスな社会的概念も、これからPORINちゃんがどんどん出ていけば変わってくるかもしれないし。
 
PORIN:良い方向に変化していったらいいよね。カッコいいものがカッコいいと認めてもらえるような時代になるように、みんなで頑張っていこうよ! やっぱりファッションと音楽は親和性があった方が良いと思うし、みんなで自分らしいファッションについて考えていくことって楽しいことだから。
 
MÖSHI:本当にそうだね!
 

変えられてしまったコミュニケーションの在り方を表現したアルバム『BABEL』

 
 
ー最後にMÖSHIさんへ質問です。4月20日には1stアルバム『BABEL』がデジタルリリースになりますが、この作品の概要やコンセプトについて教えてもらえますか?
 
MÖSHI:旧約聖書に登場する“バベルの塔”ってあるじゃないですか。あれは人がコミュニケーションを取れなくなってバラバラになっていく話だと、僕は解釈しているんですね。同時に僕の好きな映画の『バベル』も、同様に絶妙なミスコミュニケーション が起こる物語なんですが、それが、コロナ禍の現代に近いと感じたんです。今までの交流方法がリセットされた現代で考えたこと、実際に体験した人とのすれ違いや、新たな人間関係の形、それらをひっくるめたコミュニケーションの取り方をシネマティックに描いた作品です。これまでの楽曲とは違い、リリックも直接的な表現をしている部分も多く、ジャンルもバラエティ豊かに描いています。『BABEL』を聴いた人が、1本の映画を見ているような気持ちになってくれればと思っているので、リリース日を楽しみにしていてください。


 

INFORMATION

MÖSHI
https://the-moshi.com/
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4月20日 1stアルバム『BABEL』デジタルリリース
MV「Painting」
MV「Your Name」
MV「Waiting feat. kiki vivi lily」
MV「Breathe」
MV「Connected feat. ASOBOiSM」
 
MÖSHI & Kou Yanga EXHIBITION 2022
期間:2022年4月22日(金)- 24日(日)13:00~21:00
会場:LIQUIDROOM KATA
入場無料
http://kata-gallery.net/

MÖSHI & Kou Yanga EXHIBITION 2022 OPENING PARTY
日程:2022年4月22日(金)
OPEN 18:00 / LIVE START 18:30 / CLOSE 21:00
会場:Time Out Cafe & Diner
LIVE:MÖSHI / aTTn / KEMURI x Kou Yanga (DANCE PERFORMANCE)
GUEST:ASOBOiSM
チケット発売中
前売り:2500円(税込/1drink別)
問合せ:CREATIVEMAN PRODUCTIONS
公演ページURL:
https://www.creativeman.co.jp/event/moshi22/
一般チケット販売URL:
https://eplus.jp/moshi-kouyanga/

PORIN
https://www.instagram.com/ppporin/
  
Awesome City Club
https://www.awesomecityclub.com/
https://www.instagram.com/awesomecityclub/
ニューアルバム「Get Set」発売中
https://acc.lnk.to/GetSet
配信シングル「Good Morning」4月20日(水)リリース
https://acc.lnk.to/GoodMorning

yarden
https://yarden.jp/
https://www.instagram.com/yarden.jp/

YUUKI
https://chai-band.com/
https://www.instagram.com/CHAIofficialJPN/
 
YMYM Project
https://store.ymym.tokyo/
https://www.instagram.com/ymym.tokyo/

 

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