-Uniikで繋がるファッション-
若きデザイナーに訊くリアルクローズ

Photography_Hiroki Asano
Text&Edit_Maho Takahashi

-Uniikで繋がるファッション-
若きデザイナーに訊くリアルクローズ

Photography_Hiroki Asano
Text&Edit_Maho Takahashi

SNSやアプリで簡単にファッションを発信できる今、新たなファッションコミュニティーアプリUniikが2021年8月にローンチ。アイテムやコーディネート写真の投稿をはじめ、ファッション情報が収集できるほか、若手のデザイナーを応援するプロジェクトなども実施している。ここではアプリのユーザーであり、東京大学大学院へ通う傍ら、文化服装学院にてファッションデザインを学ぶYUKIに、リアルなファッション感を訊いてみた。スタイリングのこだわりから、制作中の作品やローンチを控えるオリジナルブランドまで、心を動かすリアルクローズを探る。

ー東京大学大学院と文化服装学院に通うという、二足の草鞋を履くような生活をされていますが、大学院では何を専攻されていますか。

農学部で、サステナブルファッションについて研究しています。アパレル産業は今、石油の次に環境を汚染している産業と言われていて、最近だとルイヴィトンのランウェイに環境保護のプラカードを持った人が乱入したりするなど、社会的にも問題視されています。修士課程ではそういった環境負荷の実態や解決策と向き合っています。

ー文化服装学院へ通おうと思ったきっかけは?

人生の中で、表現者としての側面を持つべきだと思ったからですね。大学時代は普通に就活して内定も頂いていたのですが、何十年か先を想定したときに独自の強みや特徴が埋もれてしまう感じがして。自分らしさを伸ばすにはクリエイティブな力も必要だと思って、文化式の服作りを学ぶことにしました。

ー1日のスケジュールはどんな感じですか。

午前中から東大へ行き、夕方からは文化に通っています。帰宅後は課題や制作をしているので、夜中はずっとミシンを回している感じで、空いた時間でSNS用の動画や写真の編集をしています。休みの日はインプットも兼ねて美術館やカフェを巡るのが好きです。

ー最近はSNS上でファッションを発信することも主流になっていますが、投稿する上で意識していることはありますか。

いわゆる“SNSウケ”する投稿を狙っています。SNSごとでトレンドが違うので、それぞれに相性の良いコンテンツに変えています。服装やスタイリングで注意している点は、流行りのブランドを取り入れたり、シルエットやアイテムの生地感、配色、小物遣いのバランスなどですね。無地の服を多く使って誰でも取り入れやすいスタイリングを組んでいるので、参考にしてもらえると嬉しいです。

Uniik:yuki_outfits
Instagram:@yuki_outfits

ーそんな中でファッションアプリUniikは、他のSNSやアプリとはどんな点が違うと感じますか。

デザイナーズやインポートにコミットしている点ですね。例えばTikTokではプチプラ系が伸びやすいのですが、Uniikではハイブランドがメインの投稿も多く見かけるので。

ーUniikでは若手のデザイナーを応援するプロジェクトなども行っていますが、リアルユーザーかつ服飾を学んでいる身として、どういうメリットを感じますか。

他のSNSのように手軽に使えながらも、色々なブランドを知るきっかけにもなるのはメリットだと思います。発信しているユーザーは、洋服に対してこだわりや感度の高い人が多い感じがします。ユーザー同士で交流できるようなイベントも多い印象です。

ーちなみに今は、文化服装学院の文化祭に向けて目下制作中だとか。

文化祭の出展用として制作中で、当日はモデルに着装してランウェイを歩いてもらいます。出展するのは各クラス6人程度で、授業でやらないことも先生に教えてもらえるので、自分の中で練習したい点を詰め込んだ作品にしました。例えば通常の授業では扱わないファー素材を用いたり、レザー、デニム、ファーといった異なる素材の縫製始末を練習できるようなデザインになっていて。何度も縫い直しをすると生地がダメになってしまうので、部分縫いで何度も練習しています。やってみないと分からなかったことも多く、大変意義のある制作になっています。

2022年7月29日(金)撮影時点

ーデザインソースなどはどこから得ていますか。

自分の感覚を頼りにやっているので、あまりないのですが普段から海外の昔のランウェイや古着をチェックしているので、そこから集約されているかもしれません。また元々は一般の大学生なので、スタイリングを組むときもそうですが、公共の場所で着ても恥ずかしくない服というのは念頭にあります。奇抜なデザインというよりは、リアルクローズなものが好きです。

ーなるほど。大体の制作期間はどれくらいになりますか。

物にもよりますが、トータルで2ヶ月くらいですね。デザインから作図、パターンに起こしてから生地を裁断し、縫製して付属品を加える流れです。やはり作図を修正する工程が、洋服の土台になるので一番時間がかかりますね。専門学生は基本的に手引きなので(笑)。まだまだ経験値が足りないので、型におこしてから1cmの微妙な間隔を修正したりします。今回のパターンでいうと3回は書き直しました。

ー繊細な作業の繰り返しなんですね。この先のビジョンなどはありますか。

年末からオリジナルブランドをローンチする予定です。インフルエンサーがプロデュースしているブランドとは違って、作図や生地探しから関わったり、自分の足で工場にも出向いたりして、生産背景にもこだわりを持ったリアルクローズを提案していきたいと思っています。本格始動は2023 SSからになりますが、Instagramで少しずつ更新していく予定なので、チェックしながら楽しみにしていてほしいです。

ー楽しみですね。ブランドのコンセプトなどは決まっていますか。

「心地よく、心躍る洋服」をコンセプトにしたいと考えています。人の心が湧く瞬間を見るのが好きなので、目にした瞬間に惹かれるものを作りたいです。その上でパターンやテキスタイルにこだわるので、日常着としても納得のいくワードロープを目指していきます。まだ学生なので様々な道がありますが、自分がおじいちゃんになっても心を動かせる表現や、物作りができればと思っています。

ー最後に、ファッションを学ぶ人に向けて。

デザインは0から1を生み出すものなので、自分も含めてですが、服作りだけでなくさまざまな経験やインプットを重ねた方が良いと思います。

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