シンガー 安田レイの新作『It’s you』はコラボEP。JQ、TENDRE、tofubeats、H ZETTRIOの4組が参加した4曲入りの作品となっている。コラボアーティストの参加によって、安田レイが、これまでに歌ってきた力強くパワフルな楽曲とは、異なる魅力的な歌唱表現が実現。あえてミニマムな歌を披露した安田レイにとって、今作は格別にスペシャルなEPになったそう。その背景に込められた思いを聞く。
今、まさに歌いたい表現を詰め込んだ特別な作品
ー今作『It’s you』は安田レイさんにとって初のコラボEPです。なぜ、今回の作品で他アーティストとコラボレーションしようと思ったんですか?
「コラボレーションはずっと前からやりたいと考えていて、今作はEPということもあったので、全曲コラボ作にしようと思ったんです。一緒にコラボする相手を考えるのは夢のような時間でしたね。『このアーティストとはこんな曲が実現できるのかな?』なんてワクワクしながら考えていました」
ーどのようにコラボするアーティストを決めていったんですか?
「今作に参加してくれたアーティストさんは全員大好きな方々なんですけど、JQさんとTENDREさんは以前から交流があって、そもそも私が大ファンだったんですよ。いつか一緒に何かを作れたらいいなってことを前々から妄想していたんです(笑)。もう実現できたのが夢のようで。制作は本当に最高の時間でした。ずっと憧れてきた人が隣にいて同じ時間を過ごしながら音楽を作っているなんて信じられない。デビューして8年間やってきたのは、このためだったんじゃないかな? って思えるぐらい特別な時間になりました。頑張って活動してきたことへのご褒美のようでした。そのぐらい『It’s you』はスペシャルな作品になりましたね」
ー普段の安田レイさんの音楽と『It’s you』に収録されている2曲「It’s you」と「blank sky」はちょっと毛色が異なるように感じました。
「ジャンル的には普段やっている安田レイの楽曲とはちょっと違いますよね。デビューした頃から歌い上げるような感じで、インパクトがある楽曲表現をしてきたんですけど、今はコロナ禍などの時代性もあって、よりミニマムな歌唱表現が求められているように感じていたんです。音楽的なトレンドを見ても、1対何万という大規模なものよりも、1対1のようなリスナーとアーティストの距離感が近い音楽が多いと思うんですよ。なので、JQさんとTENDREさんにお力添えいただいて、今まさに私がやりたい楽曲を一緒に作りたいんですってことを制作前にご相談させていただいたんです」
ーでは、この2曲に関しては安田レイさんの意図もあって、歌い方に変化がついたんですね。
「はい。たまに、SNSに即興のメロディや言葉を歌ったものをアップしたりしているんですけど、それがハミングしているようなミニマムな歌い方で、それをJQさんもTENDREさんもチェックしてくれていたんですよ。そんな私の好みを予め理解してくださっていていたのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。普段やっている楽曲とはギャップがある歌い方だったんですけど、そういう部分もすごい汲み取ってくださっていて、制作を進めながら、落としたトーンでどうやってハマるかを探るような作業を進めていきましたね」
ー特にJQさんがプロデュースした「It’s you」は時間をかけて一緒に制作されたのだとか?
「そうですね。今作で1番時間をかけたんですが、スタジオでゼロから誰かと一緒に制作するのって、私にとって初めての経験というか。すごく学べる時間でしたし、JQさんが普段どんなふうに曲を作っているかっていうのもファンとして見学できたのも嬉しかったです。JQさんは、その場にいる人たちを巻き込む力がすごくあって、色んな人の意見をうまく取り入れていくんですよ。もちろん、自分の芯にあるものは曲げずに。良いことは次々に採用して、みんながピースな気持ちになれるような空間を作り上げていて。今後、誰かと一緒に曲を作る機会があったら、私もそんな空気感を作れるようにやりたい! と強く思いました」
ーTENDREさんプロデュースの「blank sky」の制作で記憶に残っていることは、どんなことですか?
「最初にTENDREさんから送られてきたデモには、ちょっとだけTENDREさんの声が入っていたんですよ。当初、収録されない予定だったんですけど、レコーディング当日に、TENDREさんの声もどこかに入れたいんですけどってお願いをしたら、「全然良いですよ!」って快諾してくださって、ラストのサビでコーラスを入れてくれたんです。本当に嬉しすぎるし宝物だなって。憧れの人の声が自分の曲に入っているなんてやばいですよ! 最高です」
ーBONNIE PINKのカヴァーでもある「A Perfect Sky」はtofubeatsさんがアレンジャーとして参加されていますが、これに関してはいかがでしょう?
「私、BONNIE PINKさんが大好きでイベントでカヴァーしたりしているんですけど、それがきっかけでオファーいただいた、アネッサの「#おうちで夏フォトチャレンジ」キャンペーンソングでもあるんですが、本当に光栄な機会でした。ただカヴァーするだけではなく、何か新しいエッセンスを込めたくて、tofubeatsさんにアレンジをお願いさせていただきました。お伝えしたのは、私がBONNIE PINKさんにすごく影響を受けていて、そのラブとリスペクトを込めたいってことでした。そのうえで、tofubeatsさんらしい洗練された雰囲気や楽しい気持ちになれる要素を散りばめていただけたら嬉しいですってお話したんですけど、それが見事に表現されていて、すごく嬉しかったです。なので、聴いてくれる人にも、私のBONNIE PINKさんに対するリスペクトと愛情を感じていただけるんじゃないかなと思います」
ー「Brand New Day feat. H ZETTRIO」はYouTube チャンネル「THE FIRST TAKE」 での1発録りですね。
「そう、今年の3月のことですね。本当に合わせたのも数回なんですよ。本番の数日前に初めましてのリハーサルがあって、そこでアレンジを固めての本番、1発録りだったんです。そこで感じたのはプロのミュージシャン(H ZETTRIO)の演奏ってすごいなって(笑)」
ープロの(笑)。
「いえ、本当にそうなんですよ。ライブであってライブじゃないし、レコーディングであってレコーディングじゃないというか。普段であれば、他のプレイヤーとアイコンタクトを取りながら歌ったり演奏したり、ということをやるんですけど、各々がブースに入って音を録らなくちゃいけなかったので。色々と不安点はあったんですけど、H ZETTRIOさんの演奏に身を委ねて、奏でられる音に乗って歌おうという気持ちでやったんです。そしたらゾーンに入れたというか……。歌いながら、自分がどこにいるかわからない、空を鳥みたいに飛んでるみたいな絵が浮かんで、すごく心地よくなって。すごく不思議な体験でした」
人に寄り添うような優しい歌を歌いたい
ーそうした即興性のある音楽作りは今後の安田レイさんの表現に活かされてきそうですか?
「はい、次に曲を作るとしたらセッションの延長線でやってみたいと思っていたんです。それがバンド形態なのかはわからないですけど、その時々のテンションに合わせて色んな音が鳴る中で、メロディを即興でつけて歌っていくっていうことにはチャレンジしたいですね。今作で言うと、JQさんとの「It’s you」はそれに近しい部分がありました。その場でメロディを考えたり、歌詞の譜割を考えたり。そういう時間がすごく楽しかったんですよ」
ー今作で見られた安田レイさんの新たな歌い方について教えてほしいのですが、今後も「It’s you」や「blank sky」にあるような歌唱表現が増えてくるんでしょうか?
「どうでしょう。きっと年齢的なものもあるんだと思います。デビューしたのが20歳で、今は28歳。8年も歌ってくると、自分の価値観にも変化が生まれますし、表現したいことも変わっていくんですよね。もっと私のパーソナルな部分を知ってもらいたいという気持ちも強いので、声のニュアンスも細かく感じとっていただけるような楽曲にも挑戦していきたい気持ちがあります」
ー8年のキャリアがあるからこそ、表現の幅を広げていきたいという?
「そうですね。私の太陽の部分は今までたくさん楽曲を通して知っていただけていると思うので、ここからは自分の月の部分をみんなに知ってもらいたいなっていうのは2年くらい前から思うようになったというか。私にも二面性があって、その2つで自分のバランスを今とれているんだよって。だから、これまでは隠していた部分を、あえてさらけ出していきたい気持ちはあります。そんな私の思いが、コラボEP『It’s you』の雰囲気にも繋がっているんだと思います」
ーそういう変化が生まれたのはコロナ禍の今だから、というのも影響していますか?
「すごく大きいと思いますね。コロナ禍で人と会えなくなったときに、力をもらったのはやっぱり音楽で。多くのアーティストがコロナ禍を経たうえで音楽を発信していますけど、そこで生まれた、人に寄り添うような音楽に静かなエールをもらった人は多いと思うんですよ。そういう優しい曲を私も作っていきたいですし、これは現代の状況に影響されたことだと思います。また、時代が変われば、自分が歌いことも変わってくると思うので、本当に状況次第ですよね。そういう意味では、きっとこれからも変化していくと思うので、来年の自分が楽しみです」
音楽は人生における大切なパートナー
ーでは、安田レイさんが自分を表現するうえで”歌うこと”を選択している理由についても教えていただけますか?
「小さい頃からの夢だったのであんまり深く考えたことはなかったですね。私、小さい頃は、いや、今でもかもしれないですけど、口下手で友達や家族にもあんまり相談とかできないんですよ。そういうときにメンタルを整える方法が音楽だったんです。本当に色んな音楽に救われてきましたし、今でも支えられているんです」
ーはい。
「私は人生の中で音楽がすごく大事なパートナーなんですよね。自分の制作はもちろんですけど、他のアーティストの作品を聴いて、人には見せられない自分を音楽には見せられてるというか。誰かのためでもあるし、もちろん自分のためでもある。それに、私の音楽を遠くに住む誰かが聴いてくれて、その人に少しでも寄り添ってくれたらいいなって思います。そういうことをやっていきたいし、自分のやりたいことを表現していくのが1番じゃないですか。だから、私は歌で音楽を発信していきたいんです」
ー20歳でデビューして今に至るわけですが、シンガーになろうと思ったのはいつ頃だったんですか?
「小学校1年生くらいのときに宇多田ヒカルさんを聴いたタイミングだと思います。その頃は何も知らないので謎の自信があったんですよね、私は絶対にシンガーで成功するって(笑)。そんなに甘い世界じゃないことは後で知ることになるんですけど」
ーなるほど(笑)。
「それに、他に何かができるような子供でもなかったんですよ。私には何ができるんだろうって小学校1年生ながらに考えたりしてたんですけど、歌うことが好きだったので、これなら頑張れるんじゃないかなっことは考えていたし、これで生きていくんだっていうのはあったかもしれません。うちの家族も音楽が好きでしたし、お母さんと2人でカラオケに行くこともあったし。友達とみんなでパーティールームみたいなのを借りて15~16人の前で歌うってことは昔からやっていましたね。そう考えると小学生ぐらいからマイクを持って人前で歌うってことを意外とやってきたのかなって」
ーそれが今に繋がっているのはすごいと思います。
「今もこうやって続けられているのはありがたいですし、その運だけはあるなぁって(笑)。今こうしてやれているのも、私のことを見つけてくれた人がいるお陰だし、運がいいなって思います、本当に」
ー最後に、本作『Itʼs you』を携えたライブが11月21日にBillboard Live TOKYOで開催されます。これについても教えてください。
「東京のBillboardでライブするのは初めてなんですが、私にとっては憧れの場所なんです。きっと20歳の私だったら噛み合っていないステージだと思います。でも、今、こうして28歳になって、ちょっとずつBillboardに立たさせていただける自分に近づけてきたかなって。ライブハウスやホールとはまた少し違った優雅な空気が流れている場所なので、すごく楽しみですね。楽曲のアレンジ面でも、今までのライブとは違うものにして、Billboardならではのライブにしたいと考えています。2ステージ制ですが、どちらにもJQさんが出演してくださる予定ですし、憧れのJQさんと隣で並んで歌うという意味でも、すごく楽しみですね。初めて私のライブを観てくれる人にも、昔から応援してくださっている人にも、どちらにも楽しい時間が届ける1日にしたいです。何よりライブがすごく久しぶりで、ファンの皆さんにも会えるのでワクワクします。きっと色んなエネルギーを交換し合える日になると思いますね。配信も決定しているので、来られない方は配信でも参加していただけたら嬉しいです」
INFORMATION
安田レイ 『It’s you』
01. It’s you produced by JQ from Nulbarich
02. blank sky produced by TENDRE
03. A Perfect Sky arranged by tofubeats
04. Brand New Day feat. H ZETTRIO – From THE FIRST TAKE
Rei Yasuda Live 2021 “It’s you”
日時_2021年11月21日(日)
14:00 open / 15:00 start
17:00 open / 18:00 start
会場_Billboard Live TOKYO
チケット_サービスエリア ¥6,400 / カジュアルエリア ¥5,900 (1ドリンク付)
お問合せ_ビルボードライブ東京:03-3405-1133
Billboard Live Official Web:http://www.billboard-live.com/
http://www.yasudarei.net/
http://instagram.com/yasudarei
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