去る9月6日、水曜日のカンパネラより突如、コムアイの脱退と二代目主演・歌唱担当として詩羽が加入する知らせが届き、コムアイと詩羽による異例のインスタライブが開催された。この突然の出来事は多くの水カンファンに、衝撃と興奮を巻き起こしたことは言うまでもなく、すぐさま詩羽のインスタを確認したことではなかろうか。そして彼女の加入によって、水曜日のカンパネラが今後どんな躍進を遂げるのか。新たなエンターテイメントの開演にワクワクしたことだろう。
モデル、クリエイターとしてSNSで発信を続けてきた詩羽の姿が、Dir.Fの目に留まったのがきっかけとなり、水曜日のカンパネラに加入。10月には「アリス」と「バッキンガム」の2曲を引っ提げデビューを果たし、現在音楽シーンを稲妻の速さで席巻している。言うならば、令和のシンデレラ・ストーリーの主役に大抜擢された彼女だが、ただ待っているだけのシンデレラにチャンスは訪れないのが世の常。SNSが発達したこの時代に思う存分自己を表現し、貪欲に楽しむ彼女だからこそ掴んだ未来なのだ。そんな彼女にEYESCREAMもインタビューを試みた。自分の意見を伝える力強い眼差しやくしゃっと笑うあどけない笑顔、クルクルと色んな表情を見せる詩羽の魅力に釘付けになった。
「自分がもらったチャンスを周りの人たちに繋げて、一緒に成長していきたい」
ーまずは詩羽さんの歴史を伺っていきたいと思います。どんな幼少期を過ごしました?
とにかく根暗な子供でした。人見知りが激しくて、外で友達と体を動かすよりも、家の中でひとりで遊んでいることがほとんどでした。
ー意外です! ファッションに興味を持ったのは?
高1の終わりくらいに、思い切って見た目をイメチェンしました。口にピアスを開けて、髪の毛を刈り上げて。でも洋服自体は、まだその頃は、みんなが着ているような流行りのものを選んでいました。見た目の変化と共に、自分に似合うものだったり、好きなものが明確に見えてきた感じです。
ーめちゃめちゃ思い切ったイメチェンですよね。何かきっかけはあったんですか?
中学生の頃、対人関係が上手くいかなかったり、あとは家庭環境も少し色々あって。当たり前に平和で楽しい日常だったはずなのに、少しずつ歯車が狂い始めました。生きているのが難しいなって。でも下ばかり向いている訳にはいかないし、まずは自分で自分を変えなきゃって思って。そこから徐々にファッションが好きになって、自分のことが好きになって、世界が広がっていきました。
ー90年代後半から2000年代初頭に流行ったような青文字系だったり、漫画家の矢沢あいさんの世界観みたいなものを詩羽さんから感じます。
世代ではないですけどそういうカルチャーが好きで、母の影響もあってまさに矢沢あいさんの「ご近所物語」はバイブルでした。
ー詩羽さんの変化に周りは驚いていませんでした?
みんなびっくりしていましたが、自分が恐れていたよりも意外と肯定的な意見の方が多くて。自分の身近にいてくれる人たちが、私の変化を受け入れてくれたから、あの頃の私はうまく進めたのかなと、今改めて思います。
ー今はデザイン系の大学に通っているんですよね?
そうです。デザイン学科でグラフィックを専攻しています。私にはわからない分野ができる人や、自分と同じ方向を向いて一緒に頑張ってくれる人、若くしてクリエイターとして活動する人たちに囲まれた今の環境は、刺激的だなと思います。
ー詩羽さんのInstagramに投稿されている 「.NOMA」の活動や、「MY BODY IS CUTE 」のプロジェクトも面白いですよね。
「.NOMA」(@09.noma)の方は大学1年の頃に、同じ学校の写真をやっている友達と、何かやりたいねから始まった企画です。ちょうどコロナ禍ということもあって、大学にも通えず、いろんなことが制限さている今だからこそできることを模索して、自発的に企画を立ち上げようって。私たちの共通の興味がファッションで、特にその友達は90年代の洋服が好きなので、テーマは「’90sのカルチャーを発信していく」に。ファッションを題材にするんだったら、洋服に詳しい人たちとやりたくて、文化服装学院に通う知り合いに声をかけて、チームを発足しました。90年代を生きていない私たちが、その時代を勉強して表現する。アムラーのようなギャルスタイルやシノラーとか、当時のことはわからないけど、そのカルチャーをおしゃれだと思う2000年代生まれの私たちがやることで、何か伝わるものがあるんじゃないかなと思って。私がリーダーで企画運営やスケジュール管理、撮影の段取りとかを仕切っています。
ー当時の感覚に今の解釈が加わり、作品として昇華されるんですね。反響はありました?
大きな反応がありました。シノラーに扮して、ランドセルを背負って、原宿を歩いて。「フワちゃんだ」って声を聞いて今の時代を感じたし、面白いなって思いました。今はもうシノラーという現象を知らない人も多いので、時代はこうやって変わっていくんだなって改めて思いました。
ー「MY BODY IS CUTE」は映像作品ですよね。
これは、私の思っていることを、広くたくさんの人に伝えるには映像が一番だなと思い、制作しました。でも私は映像はできないので、映像を勉強している友達に思いを伝えて、撮影してもらいました。自分のできないことを頑張るよりも、得意な人たちに力を借りて作った方がいいものになるし楽しいから、役割分担は大切です。企画は私が、撮影や編集などは友達が。
ーSNSを通して世の中に自分自身のことを含めプロジェクトを発信していくことに、抵抗はありませんでしたか?
全てがうまく行かなかったあの頃って、自分のことが嫌いだったし、人生がつまらなかったけど、自分が変わることでどんどん自己肯定感も上がったから、「ちゃんと生きていればいいことあるよ」、「なんとかなるよ」って同じように悩んでいる人たちに伝えたくて。今はSNSがあるんだから発信して、誰かの目に留まって力に慣れたらいいなっていう思いが全てです。私はDMは全部返していて、今も読んでいます。私が水曜日のカンパネラの2代目ボーカルとして活動していくことを発表したときも、ずっとフォローしてくれていた人たちが「おめでとう」のメッセージを送ってくれたり、インスタライブをやったら観に来てくれたり。もっと頑張るから待っててね、って思います。
ー水曜日のカンパネラへの加入は、インスタのDMから始まったんですよね?
「事務所で話しませんか?」って知人を介して、インスタを見たDir.Fと会うことになりました。聞いたことない事務所だし、知らない人だし、めっちゃめちゃ警戒しました(笑)。いろいろ調べた結果、どうやら安全そうだったので、面白いことあるかな〜くらいの気持ちで会いに行きました。音楽について話すことはなくて、今まで何をしてきたのか、今後どんなことがやりたいのかみたいな、この先の人生についていろいろと聞かれました。2回目のときにはケンモチさんにもお会いして、3回目で水曜日のカンパネラの話がきて。詩羽で新しく音楽を始めるのかな?と思っていたから、まさかすぎてびっくりしましたが、その場ですぐに「やります」ってお返事しました。そのときは、やった〜って思っていたけど、家に帰ってから、急に不安になりました(笑)。
ー音楽の方向に進む未来は予想外でした?
学校で学んでいるデザイン関連で就職をするか、フリーランスのモデルとして頑張っていくのかなと思っていたので、本当に予想外でした。
ーコムアイさんと初めて会ったのは?
加入が決まったのが6月の中旬くらいで、その日の夜に、早いうちにコムアイさんに会いたいとDir.Fに私から伝えて、その月の末には実際にお会いしました。本当に綺麗な方でした。話すと凄く気さくで、私の目を見て話してくれるし、私が話すのを待ってくれる。凄く優しさを感じました。音楽について話すというよりも、何にハマっているのかとか、ゆるい会話で、ここでもそんなに音楽の話はしませんでした。
ー詩羽さんが2代目を引き継ぐことで、どんな水曜日のカンパネラになっていくのか楽しみです。
コムアイさんがいた水曜日のカンパネラがあるからこそ、これまでのファンの方々もいて、だから私が2代目としてスタートすることができて。コムアイさんが歌ってきた過去の曲も、歌い続けて行きたいと思います。でも、詩羽らしく。今までのものを大切にしつつ、進化させるっていうのが目標です。
ー詩羽さんが歌う新生・水曜日のカンパネラという印象の「アリス」と、これまでを踏襲したような「バッキンガム」。デビュー曲としてこの2曲を聴いて、どんな感想を持ちましたか?
今まで “自分の曲” なんてない世界で生きてきたから、これが “私の曲” だと思うと不思議だったけど、妙に腑に落ちる印象もあって。ケンモチさんの中でもともと構想があった「バッキンガム」は、私の声質や音域を調べるために、仮のレコーディングを繰り返している中で、詩羽に合うなって決まった曲。私はラップの経験がなかったので、初めは歌えるのか不安でした。「アリス」はタイトルから決めた曲です。今まで水曜日のカンパネラは人名がタイトルの楽曲が多かったから、私になったらって考えたときに、アリスの天真爛漫な部分や子供っぽさなどに自分との共通点を感じたので、話し合いの中で「アリス」に決まりました。
ー「バッキンガム」のミュージックビデオは詩羽さんと同世代のクリエイターが集って作った作品なんですよね?
そうなんです。映像をやっている友人のまいちゃん(@yasashimiyoshi)に私が頼みました。私は大きなチャンスを頂いたので、自分の周りの人たちにもそのチャンスを繋げて、一緒に頑張って行けたらいいなと思って。全員が20代でこれが初めての現場みたいな感じだったから、あたふたしながら一生懸命撮影をしたことは、一生忘れないんだろうなって思います。
ー2人で話し合ってストーリーは決めたんですか?
それがほとんどなくて。監督であるまいちゃんのやりたいことをやって欲しい、曲を聞いて感じたままに撮影して欲しいと思ったので、彼女の世界観で作られています。
ー実際に詩羽さんの近くにいて、詩羽さんを観てきた監督ならではのMVですよね。
私には水曜日のカンパネラに入ったことでやりたいことがあって。ひとつは自己発信を続けていくこと。もうひとつは、若いクリエイターと一緒に成長していくことなんです。その想いが強くあったので、一発目の作品で叶えることができたので嬉しいです。
ーここをスタートに、やりたいことがもっと広がっていきそうですね。
もともと個人としてやっていたモデルの活動は続けて、もっともっと露出を増やしていきたいと思っています。水曜日のカンパネラとしては海外にも進出して行けるように、ズカズカと前進していきたいです。