Interview:Grace Aimi × 新保拓人
1st Album『If』Release
信頼関係が生み出す新しいクリエイション

Photography-Yuki Aizawa、Text-Mizuki Kanno

Interview:Grace Aimi × 新保拓人
1st Album『If』Release
信頼関係が生み出す新しいクリエイション

Photography-Yuki Aizawa、Text-Mizuki Kanno

沖縄から世界に向けて、ポジティブな歌声を届けるGrace Aimiのデビューアルバム『If』が、11月26日にリリースされた。愛に溢れた彼女が生み出すパワフルな音楽が、プロデューサー・Chaki Zuluによって鮮やかに色づけられ、身体中を幸福で満たす。まるでGrace Aimi自身のように、キラキラと輝きを放つ12曲が収録された意欲作だ。
EYESCREAMでは彼女をデビュー前からよく知り、お互いに「家族のような存在」と話すビデオディレクター・新保拓人との対談を行った。デビュー作からこれまでに彼女が発表した数多くの楽曲のMVディレクターを務め、今作では「Karaoke Queen」のMVも新たに手がけている。
太陽のように明るいバイブスを持った2人の出会いから、MV撮影の裏側まで。互いのクリエイティブを尊敬し、支え合う彼らの素顔を覗いた。

L to R→Grace Aimi、新保拓人

「Graceの音楽に救われた」ー新保拓人

ーお二人はGraceさんのデビュー前からのお知り合いなんですよね?

Grace Aimi(以下、Grace) :ラッパーのOZworldが同郷の友人で、彼がフィーチャリングしている「Betty boop feat. OZworld a.k.a. R’kuma」という曲のMVの撮影に、私と私のお姉ちゃんも一緒に参加していて、その作品の監督が拓人だったんです。拓人とは話した瞬間に気が合うことを感じて、お姉ちゃんも一緒に三人で夜通し話したのが最初の出会いです。

新保拓人(以下、新保):沖縄のエアビーで撮影をした後に、そのままみんなでそこに泊まろうってなって、一気に仲良くなりました。僕がその次の週もたまたま沖縄に行く機会があって、Graceの家に泊めてもらったりして。

Grace:自分の家族も拓人のことを、本当の家族のように思っています。

ーGraceさんからデビューの話を聞いたときは驚きました?

新保:感動しましたね。Graceが東京に来るときは大体僕の家に泊まっているので、新しい曲ができるタイミングで一緒にいることも多いですし、感慨深いです。僕が家で仕事をしている間にGraceは曲を書いたりしているんですけど、急に何か作業を始めたと思ったら、もう曲が完成していたり。凄いですよね。絵とかもすごく上手いし、本当に才能の塊だと思います。溢れ出る感性みたいなのがあるんだろうな。自分には追いつけないので羨ましいです。

ー最初にお二人が一緒に作品作りを行ったのが、Graceさんのデビューシングル「Eternal Sunshine」ですよね。

新保:Graceの作品で言えばそうだよね。でもちょくちょく、自分が監督するMVの美術のセットとかをGraceが作ってくれたりはしていたんです。上手なんですよね(笑)。Graceの作品で言ったら「Eternal Sunshine」がはじめて。

Grace:私が音楽を始める前から、“もしグレイスが音楽をはじめたら” をテーマに、拓人とビデオのアイディアは出し合っていて(笑)。この曲を拓人に聴かせた瞬間、お互いのやりたいことが通じ合って、あの映像が生まれました。とにかく明るくて、太陽のバイブスが全面に出ているビデオにしたくて。

新保:Graceが太陽の設定だったので、オレンジの衣装にして。いろんな街で撮りました。

ーGraceさんがおじいさん、おばあさんと一緒に、ベンチに座って歌っているシーンが印象的でした。

Grace:撮影で行った広場でゲートボールをやっているおじいちゃんとおばあちゃんがいて、MVのプロデューサーが「今撮影をしているので、一緒に出てくれないですか?」って話しかけて、急遽踊ってもらいました。釣り堀で踊ったりしたのも楽しかったな。

ーそのあとが、5thシングルの「Rainbow」ですよね。「Eternal Sunshine」とは真逆の、Graceさんの妖艶な姿が新鮮でした。

新保:当初はディスコやキャバレーみたいなシチュエーションで撮影するプランだったんですが、ロケーションを探している中で、映画の『シャイニング』のような物々しい雰囲気のホテルを見つけて。Graceはそこに現れる謎の女の子っていう設定で撮ることにしました。GraceもGraceのお母さんもめっちゃ優しいのに、ホラー好きで、連続殺人鬼のドキュメンタリーとかにハマっていたりするんですよ(笑)。僕も映画は特にホラーが好きで、三人ともキューブリック作品のファンっていう共通点もあるので、あのホテルを見つけたときに、MVの構想が固まりました。

Grace:拓人に『シャイニング』って言われる前に、あのホテルに入った瞬間、私もお母さんも「あ、『シャイニング』っぽい!」ってなって、拓人が安心していました(笑)。「Eternal Sunshine」のときはいつもの自分のまま、踊っているだけだったけど、このときは、階段を降りる秒数とかも細かく決められていて、映画の撮影みたいで新鮮でした。

新保:こういうGraceの姿を初めて見たから、かっこよくてびっくりしました。あれって練習したの?

Grace:メンタル面のね。拓人の撮影チームは前から知り合いで、カメラさんも仲良いから、かっこいい顔を見せるのは恥ずかしかった(笑)。

ー「Rainbow」は元々Graceさんのお友達の赤ちゃんから生まれた曲なんですよね? MVも合間って、最終的には全く異なる表情を持った楽曲になりましたね。

Grace:最初は赤ちゃんの変わりやすい感情を色に例えた歌だったんですけど、徐々に変化していって、最後は暗い恋の話に。この曲が生まれた瞬間のビーチで録ったビデオは今でもよく観るんですけど、歌い方とビートで曲の雰囲気はこんなにも変わるんだなって改めて思いました。

ー今年8月にリリースされた「What’s Perfect?」では、Graceさんのリラックスした素顔の表情が印象的でした。

Grace:「完璧なものなんてないし、完璧って何?」っていうことを伝えたくて作った曲だったから、ビデオもありのままの自分を出したくて、いつものように沖縄で友達と遊んでいる姿をセルフで撮影しようと思っていたんです。でも、その度に台風が来ちゃって撮れなくて。東京に行かないといけないタイミングだったので、拓人に相談したんです。

新保:何を撮るかはノープランのまま、とりあえず海に行くかってなって、朝日を見るために、二人で夜中に家を出て、千葉の九十九里まで車を走らせてみることにしました。その途中で出会った人や、目に入った場所で降りてみたり、GraceのロードトリップをiPhoneで記録した感じです。その映像にプラスして、三年前にGraceたちが東京に遊びに来たときに撮った映像も入れています。

Grace:あれ懐かしいよね!この撮影の日は、ただビーチで遊んで、海沿いを車で走って、寄り道して。行きは高速を使ったけど、帰りは下道で。めっちゃ楽しかったよね。ビーチでギターを弾いていた人に、「今この曲のMVを録っているんだよね」って話をしたら、彼が即興で引いてくれたり。全部がいい思い出。

新保:実は「What’s Perfect?」の撮影の前に、僕一人で九十九里に行っていて。

Grace:え、そうなの !?

新保:今はじめてGraceに言うんですけど(笑)。自分が監督をする映画の撮影中に、いろんなハプニングが起こって、結構凹んだ状態で家に帰ってきたんです。ちょうどその映画の撮影が始まる前に、僕の家にGraceが泊まりに来ていたので、その精神状態で完成したばかりの「What’s Perfect?」を聴かせてもらいました。その後、一人で九十九里に行って、この曲を聴いたらすごく救われて。その後にGraceからMVのオファーが来たので、絶対九十九里で撮ろうと思っていたんです。

Grace:初耳です。すごく嬉しい!

新保:「What’s Perfect?」が体中に沁みましたね。僕にとってこの曲は、Graceの曲の中でも特別な曲です。

「自分の視点から見えた景色だけを、偽りなく描いた作品」ーGrace Aimi

ー「Eternal Sunshine」、「Rainbow」、「What’s Perfect?」含む、全12曲が収録された1stアルバム『If』がリリースされましたね。収録曲の「Karaoke Queen」のMVも新保さんが撮影すると伺いました。

Grace:「Karaoke Queen」は、私がカラオケでいろんなアーティストの曲を歌うように、いつかみんなが私の曲もカラオケで歌うような日が来るといいな、という想いを込めた歌です。最近はコロナの影響で減っちゃったけど、その前は週に4~5回くらい家族でカラオケに行っていて、小さい頃からカラオケは家族で一緒に楽しむ遊びでした。

新保:なので、MVもストレートにカラオケを中心に構成しようと思っています。

Grace:「Karaoke Queen」の撮影には、お父さんも参加してくれる予定です。実はこの曲の歌詞は、お父さんが書いてくれた内容がベースになっていて。「めっちゃいい曲が書けたから、ぜひ使って」って、お父さんからスクショが送られてきて。最初はお父さんのために作ろうって思っていたけど、言葉を並べ替えてみたら、案外いいかもってなって。プロデューサーのChaki Zuluさんと作った80’sっぽいビートとの相性もばっちりで、すごく好きな楽曲になりました。MVの撮影では、お父さんが拓人のアシスタントをしてくれるみたいです(笑)。

新保:(笑)。いつもChakiさんとはどうやって曲を作ってるの?Graceは大体、お昼頃にスタジオに出かけていって、夕方くらいに帰って来るんですけど、その間に4曲くらい作ってきたりしていて。一体、何曲ストックがあるんだって思う。

Grace:Chakiさんと相性がいいこともあって、いつも割とスムーズに曲ができていくかも。基本的には私が歌詞とメロディーを作ってきて、Chakiさんがそれに合うビートを作ってくれる感じ。でもたまに、1日中ずっと試行錯誤しているのに、2人とも「まだなんか足りないよね〜」って困っちゃうこともあって。調子がいい日はスタジオに入った瞬間に、今日は色々できそうだなって予感がするんだけど。

新保:このアルバムの中で、特に悩んだ曲はある?

Grace:「4 AM」と「Forgot With Time」。自分の中でひとつ音がハマっていないだけで、全体的にダメなように聴こえちゃうことがあって。最初のころは、何が違うのかうまく言葉で説明できなくて、Chakiさんが何回も直してくれて。だけど私の中で「何か違う」っていうスイッチが入っちゃっているから、なかなか納得が行かないんですよね。最近は、その違和感を言葉で説明できるようになってきたけど、でもそういうモードのときは、無理に制作を続けずに、リフレッシュするようにしています。また違う日に聴くと、いいアイディアが浮かんだり、逆にやっぱりいい曲だなって気付くこともあるし。この2曲もまさにそうで、最初は何かが足りないなって思っていたけど、リフレッシュして聴いてみたら、ちゃんといい曲でした。ただそのときの自分の気持ちが、よくない曲にしてしまっていたんだなと思いました。

新保:そういえば「沖縄に戻って聴いてみたら、すごくいい曲だった」って言ってたよね。そしたら、一番好きな曲は?

Grace:今の一番は「Are You Okay?」かな。この曲は昔の彼氏からのメッセージのおかげでできた曲であり、新しい自分のサウンドを探せた曲でもあるから。スタジオで制作中に、その彼から付き合っていた頃の思い出とか、もっと大事にしておけばよかった、みたいなことが書かれた長文のメールが送られてきて。突然だったから心配になったんですけど、恋愛においてこういうことって、よくあるんじゃないかなと思って。女性がようやく前に進むことができたのに、男性はそれを知って逆に寂しくなる。そんなときの感情を表現したいなと思い曲にしました。彼から送られてきたメッセージとかも、そのまま歌詞に取り入れています。やっと好きなサウンドと自分がやりたい音楽が一致して、一気にアーティストとしての自信が増した曲ですね。

新保:確かにその日スタジオから帰ってきて、「ひとつ壁を突破して、すごくクリアになった」って言ってたよね。

Grace:「Are You Okay?」はこの先も、心の一番いい場所に残る曲なんだと思う。この曲も拓人に一番に聴いてもらったけど、東京に来ているときに曲を作るので、必然的に拓人との思い出がある曲が多くて。東京に出てきても、拓人の家に泊まっていれば寂しくないから。拓人は友達を超えて、改めて家族みたいな存在だなって思う。

新保:僕もこうやって形になったGraceのアルバムを手に取ると感慨深いし、曲毎にGraceに聴かせてもらったときのことが蘇ってきます。

Grace:『If』は初めてCDとして残せた作品でもあるし、自分の赤ちゃんのような感覚(笑)。Yoshirottenさんが担当してくれたアルバムのアートワークに使われているのは、私の瞳なんです。「自分の視点」を大切にしていて、このアルバムに入っている曲も全部、自分がリアルに感じたことを書いた作品だし、自分に嘘をついてもいい音楽にはならないから。『If』が完成して、自分に正直でいてよかったねって改めて思います。昔から漠然と「クリエイティブなことがしたい」っていうのはあったけど、何がしたいのかまでは明確じゃなかったから、音楽を始めたことで、ようやく自分が音楽がやりたかったことに気が付いて。でも、自分が作る作品に対して、まだどこか自信が持てていなかったから、このアルバムが完成して、それがクリアになりました。心の奥底から「いい作品ができた!」と思います。

INFORMATION

Grace Aimi
1st Album『If』
2021.11.26 Release
1. If (Prod. Chaki Zulu)
2. Karaoke Queen (Prod. Chaki Zulu)
3. Friend Zone (Prod. Mixla & Chaki Zulu)
4. 4 AM (Prod. Chaki Zulu)
5. What’s Perfect? (Prod. Chaki Zulu)
6. Rainbow (Prod. Chaki Zulu)
7. Waiting For You (Prod. Chaki Zulu)
8. Eternal Sunshine (Prod. Chaki Zulu)
9. OHAYO (Prod. Sinato & Chaki Zulu)
10. True Feelings (Prod. GC & Chaki Zulu)
11. Forgot With Time (Prod. Chaki Zulu)
12. Are You Okay? (Prod. Chaki Zulu)
視聴リンク:
https://umj.lnk.to/GraceAimi_If_Album

HP:http://graceaimi.com/
Instagram:@graceaimiofficial
Twitter:@GraceAimi

新保拓人
HP:https://www.takutoshimpo.com/
Instagram:@takuto_sbs
Twitter:@tkt5959beats

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