MUSIC 2022.03.10

Interview: Awich ー3月14日開催の武道館ワンマンライブで“Queendom”を作るー

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Yuta Kato, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

3月14日に初の日本武道館公演『Welcome to the Queendom at 日本武道館』の開催を控えているAwich。3月4日にはニューアルバム『Queendom』が発表、3月5、6日は渋谷のSO1で『POP-UP STORE “Welcome to the Queendom”』が開催され、Awich x VERDY×BlackEyePatchによるトリプルコラボアイテムもリリースされた。
Awich周辺の熱気は最高潮に高まり、来るべき3月14日に向けて期待が集中しまくっているわけだ。そんな開催直前の今、Awich自身は、武道館へのワンマンに向けて、どんな心境でいるのだろうか。ポップアップ会場となったSO1でインタビューを行った。

Queendomの始まりとなる武道館でのワンマン

ー『POP-UP STORE “Welcome to the Queendom”』が開催されましたが、ファンと直接交流するMeet&Greetを日本武道館公演前に行ったのも印象的でした。これには何か理由があったんですか?

Awich:武道館公演に来てくれるみんなにも、一緒にライブを作っていく感覚を持ってほしいと思ったんですよね。それに、アルバム『Queendom』リリース直後のイベントとなったので、その感想をネットからではなく直接聞けたのが、私にとっては嬉しいことで。今回の『Welcome to the Queendom at 日本武道館』は、私1人だけで作っているものではないし、そもそも今の私があるのは、リスナーや応援してくれる人がいてこそなので。それに対する感謝を伝えたい気持ちが強かったです。だからこそ、公演前に会いたくて。

ーでは、日本武道館公演については、どういう日だと捉えていますか?

Awich:ゴールでもあるんですけど、私のQeendomの始まりでもある。これまでの私の人生と、これから先を見据えた覚悟が、パフォーマンスを通してステージで表現されていくと思います。それを観てほしいですね。でも、やると決めたからには楽しんでやる、1番はそこです。めちゃくちゃ楽しみです!

ーそもそもですが、日本武道館でワンマンライブをやろうと思ったのはなぜですか?

Awich:最初に日本武道館という言葉を出してきたのは、YZERR(BAD HOP)なんですよ。

ーあ、そうなんですか!?

Awich:そう! 去年の春ぐらいに<姉さんならもっとイケる>って。これは「GILA GILA」のリリックにも書いていることなんですけど。YZERRと、そういう話をして「武道館とかやっちゃいましょう」って。BAD HOPも武道館でワンマンをやっているし、彼の言葉にはすごく重みがあったんです。

Awich:そんな風に言ってくれたから、私でもできるかもって思えたんですよね。もちろん、実際にやるのは簡単なことではないし大変なことなんですけど。でも、できる・実現するってところまで来たので。だから、事の発端はYZERR(笑)。彼にはすごく感謝していますね。

ー日本武道館は、Awichさんにとって、どんな場所ですか?

Awich:ほど遠い場所だと思っていました。でも、アーティストとして日本でやっていくうえで、ジャンル問わず、登竜門的な場所でもありますから。これまでにもイベントで武道館のステージに立たせてもらったことがあるんですけど……なんかちょっと違う魔物が潜んでいる感じがあるんですよね。作りも独特だし、裏に行っても、他の大きな会場とが違う空気が流れているような気がして。

感謝の気持ちを持ち日本代表として世界へ

ー魔物的な違和感があるっていうのは聞いたことがあります。日本武道館と言えば、天井から吊り下がっている大きな日の丸も特徴的ですよね。そのステージに立つということは、日本人を代表しているような感じがしますが、いかがでしょう?

Awich:そうですね。まず、私は沖縄の出身なので、日本代表という感覚が、ずっと遠くにあったんですよ、絶対に無理みたいな。日本でありながら、まるで異国にいるような気分というか。そんな意識があったんです。

ーその感覚に変化があった?

Awich:ええ。あの、小さい島で生まれ育って……。沖縄は大好きだし、沖縄のヤツらは仲間だって気持ちは、もちろんあるんですけど、そこから離れてみたら、もっと大勢の仲間がいた。そして、私を応援してくれて、支えてくれて、愛してくれる。だから、その感謝の気持ちを持って、日本を代表して世界へ向かえるように、という清々しい気持ちになっていますね。

ー日本武道館に立つにあたっての、日本人としての矜持が納得できる形で生まれたんですね。

Awich:はい。日本は日本でも、沖縄は沖縄でも、進化する日本の先頭でありたいと思いますね。こういう生き方をしてきた私にしか提示できない考え方があると思うので。

ーそういった決意や覚悟は、アルバムのタイトル曲『Queendom』のリリックからも感じさせられます。本作は、日本武道館に向けたものであり、自身の区切り的な作品になると思いますか?

Awich:ああ、絶対になると思います。私にとってのクラシックになると思うし、自分の覚悟やけじめでもありますね。

ー収録曲の中では、これまでの半生を振り返っているような楽曲も多くあると思います。

Awich:そうですね。アルバム『Queendom』の制作は、今までの人生を曝け出すことで自分のことを理解する、というターニングポイントでもありました。ここで、自分のことを理解しないと、次に進めないと思ったんですよ。私は何がしたいのか? という自分との対話を深く行うことができたし、そのプロセスを、そのまま作品にしています。そういう表現を人に届けることで、リスナーにとっても自分を探すきっかけになってほしいと思っているんです。私がクイーンとして君臨する国、Queendomでは、人々は自分のことをしっかり理解していて、自分であることを許されるので、自ら自分の中にある弱い部分も含めて曝け出したんです。

ーだからこそ、アルバム最終曲「44 Bars」は内省的で、心情の繊細な動きを表現している?

Awich:そうそう。あの曲を作るのは、すごく時間がかかったし、辛かったしきつかったけど、制作が自分のセラピーになったし、弱い部分があってもいいんだってなったんですよね。それまで考えていた、こうでなくてはいけないという固定概念を捨てて、最終的に何がしたいのかって考えが、曲を書くプロセスの中で出てきて。『不安があってもいいじゃん、それでもQueendomを作る。だからこそ私はクイーンになる』って決意を込めています。

思い描いたからこそ実現できるものがある

ー今作の制作において、自分との対話が必要だったのは、何か特別な理由があるんですか?

Awich:いえ、『Queendom』で初めてそうしたわけではなく、常にやってきたことをより深くやったんです。私は14歳のときからラップをやっているので、昔立てていた計画とか、こういう存在になりたいだとか、何のために生きているのかだとか、そういう日記的に書き溜めてきたノートがたくさんあって。それに、いつも助けられてきたんですね。辛いことがあったり、悩んでいることがあったら、絶対に自分との対話をする、つまり昔のノートを読み返したりするんですけど、それを、すごく深くやったんです。もう本当に昔から、ずっとラップで天下を取るみたいなことを言ってノートに書いていて(笑)。それを見てあげることで、自分を応援できるようになるという気になるというか。頑張ったねって言えるし、ちゃんと進んでいるよって確認できるんですよね。

ーなるほど、そういう意味での深い対話でアルバム『Queendom』が出来ていったと。

Awich:こういう場所(会場のSO1)に自分の顔が大きく映し出されるなんて、10代の私には具体的に想像もできていなかっただろうけど、ちゃんと思い描けていたんですよね。だから時間はかかったけど、実現したことなんですよ。だから、武道館公演があったから、この作品が生まれたわけではなくて、自分が歩んできた人生が積み重なって作品になったんだと考えています。そういう意味で『Queendom』は私のレガシーでもあります。

ーでは、ポップアップで展開されたVERDYとBlackEyePatchを迎えた超豪華なトリプルコラボについても教えてください。すごく特別なグラフィックに仕上がりましたね。

Awich:これも、私が昔から書き溜めていたノートの中の1つにあったものがデザインに昇華されていて。昔、自分のアーティスト名を決めるとき、自分の本名の漢字を英語のAsian Wish Childに置き換えて、それを短縮させてAwichにしたんですよ。今の東京ストリートを代表する2者が、そのストーリーに寄り添ってくれたことが、すごく嬉しいですね。本当に感謝です。

ー最後に、『Welcome to the Queendom at 日本武道館』で表現したいものは何か、改めて教えてください。

Awich:私みたいな沖縄出身の田舎者の子持ちの未亡人でも武道館に立てる。そうやって夢を叶えていく姿を自分で見せることで、みんなが抱えている悩みやコンプレックスを強みに変えることができるだろうし、自分は自分のままでいい、楽しもうという気持ちになってもらえると思うんですよね。これは、私のQueendomのテーマでもあるので。私の国では、人はそうやって生きていくんです。そんな空間を生み出したいです。楽しみにしていてください。

INFORMATION

Awich “Welcome to the Queendom at 日本武道館”

2022年3月14日(月)
日本武道館
出演:Awich & guests
18:00 開場/19:00 開演
チケット ¥6,500(全席指定)
https://eplus.jp/sf/detail/2720490001-P0030018?P6=980&P59=1

企画/制作: and music / ALLOWS
協力: キョードー東京 / チッタワークス

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