MUSIC 2022.07.30

[Talk Session]AAAMYYY × (sic)boy:
新しい表現を追い求めて

Photography_haruta、Text & Edit_Mizuki Kanno
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

AAAMYYYの新しいデジタルEP『ECHO CHAMBER』が7月8日にリリースされた。小袋成彬やanoをはじめ、全曲ともに個性豊かなアーティスト陣を客演に迎えている本作。EYESCREAMでは、参加アーティストのひとりである(sic)boyとAAAMYYYの対談を行い、「雨 feat. (sic)boy」について話を聞いた。ふたりのコラボレーションは、昨年リリースした「水風船 feat. AAAMYYY」に続く2作目。互いに「自分にはない視点を持っている」と話す両者が、ひとつの作品へともに想いを馳せるとき。そこには、どんなやりとりが生まれるのか。今作のMVの裏側を切り取った写真とあわせてお届けする。

ーまずはEP『ECHO CHAMBER』は、AAAMYYYさん的にどんな作品に仕上がりましたか?

AAAMYYY:今作に収録されている5曲とも、素晴らしいアーティストの方々と一緒に制作を行ったので、振り幅の広いEPになっていると思います。これまでもいろんな方とフィーチャリングさせてもらってきましたが、自分の作品としては久しぶり。トラックメイキングに特化しているYaffle君や、普段からいろんな人に曲を提供している小袋君、カナダ出身の3人組兄弟バンドのGliiicoなど。どの曲にも、それぞれの人柄や思想が反映されています。(sic)boyくんと作った「雨 feat. (sic)boy」はヒップホップやロックなど、さまざまな音楽を昇華した楽曲になりました。前作では(sic)boyくんが書いた曲に、私がヴァースやリリックを入れて、お互いにデモを出し合って完成させていく方法をとっていて、今回はその役割をテレコして制作を進めた感じだよね。私が書いた曲に、(sic)boyくんが肉付けしてくれて。

(sic)boy:そうですよね。お互いのパートを入れて、デモを出し合って作りました。今回、AAAMYYYさんからオファーをいただき嬉しくもありつつ、プレッシャーを感じていた部分もありました。「水風船」は僕自身、とても気に入っている曲だからこそ、今作ではさらに進化した姿を見せたいなと思って。

(sic)boy:今回、AAAMYYYさんからオファーをいただき嬉しくもありつつ、プレッシャーを感じていた部分もありました。「水風船」は僕自身、とても気に入っている曲だからこそ、今作ではさらに進化した姿を見せたいなと思って。

AAAMYYY:私が投げたファーストのデモに、(sic)boyくんが入れてくれたヴァースが完全に出来上がっている状態だったので、その想いを強く感じました。

(sic)boy:デモをいただいてから、速攻で送った記憶があります(笑)。

AAAMYYY:私の中では「水風船」との繋がりをイメージしながら、コーラス部分のリリックなどを書いてはいたんですけど、(sic)boyくんには自由に調理して欲しかったから、彼には一旦、何も伝えずにデモを送って。私のその想いが加味されたリリックを書いて戻してくれたので、すごく感動したのを覚えています。

AAAMYYY

(sic)boy

ー最初にAAAMYYYさんから送られてきたデモを聴いたとき、どんな感想を持ちましたか?

(sic)boy:不思議な曲だなっていうのが第一印象でした。どういうメロディーでくるのかが想像できない感じ。でも、AAAMYYYさんの意気込みや決意みたいなのを感じて、それを汲み取るのが僕のやるべきことなのかなと思ったので、AAAMYYYさん特有の儚いフロウは生かしつつ、僕の色も乗せた感じですね。

AAAMYYY:私は(sic)boyくんの最新のアルバム『vanitus』をよく聴いていて。(sic)boyくんのルーツや個性、持ち味など、彼の魅力が全部投影されていて大好きな作品なんです。だからこそ「雨」では、(sic)boyくんの新しい一面が見せれたらと思って作りました。実は、私の潜在的なルーツには演歌があって。(sic)boyくんが書くリリックには哀愁を感じるから、演歌と相性が良さそうだなと思ったんです。でも、(sic)boyくんの世界観も大切にしたいから、演歌と相性が良いドラムンベースも混ぜて。グランジっぽい雰囲気もある中で、歌ったら映えるんじゃないかなと思って。

「この曲がダークな印象にならなかったのは、(sic)boyくんのおかげ」ーAAAMYYY

ー「水風船」との繋がりも意識したと話していましたが、改めてAAAMYYYさんはどんなことをこの曲で描いているんですか?

AAAMYYY:私のEPのタイトル『ECHO CHAMBER』は、残響が残るレコーディングルームを意味する言葉でもあるし、最近では、SNSで自分と同じ考えや興味を持っている人をフォローした結果、それ以外の情報が見えなくなってしまうことをエコー・チェンバー現象って言うみたいで。悪く言えば同調圧力、よく言えば、心地よい残響の中に身を置いているっていうことですよね。EPにはどちらの意味も込めています。「雨」も同じで、お天気の“雨”から連想される“哀愁”や“叫び”といった部分と、“Hale”の両方を表現しています。スポーツの試合などで起こるブーイングって、怒号が雨のように降ってくるから、英語では“Hale”って表現するんです。どちらの内容にも取れるようなリリックにしました。

(sic)boy:そうだったんですね。僕は“雨”というキーワードに持っていかれすぎず、リスナーのその日の気分で、いろんな発見があるようなリリックと歌い方を心がけました。その人の心境によって聞こえ方も変わる曲になったら素敵だなと思って。「水風船」のエピソード2、だけどフレッシュに。逆に「雨」を聴いて気になってくれた人が「水風船」も好きになってくれるような。そこを意識していました。

AAAMYYY:嬉しいですね。自分の視点だけで曲を書くとワンパターンというか、ひとつの物事しか見えていないときもあって。(sic)boyくん然り、フィーチャリングするアーティストが、いつも自分の世界観をぐんと広げてくれるんです。この曲が絶望とか、そういうダークな印象にならなかったのは、(sic)boyくんのおかげだと思います。

ー確かにジメジメした雨ではなく、キラッと輝く美しい印象ですよね。一種の多幸感が漂っているようにも感じました。2回の共作を経て、お互いの印象は変わりましたか?

(sic)boy:僕も客演するときって、自分じゃ広げられない視野を持ってきてくれる方にオファーしたいといつも思っていて、僕にとってそれがAAAMYYYさんなんですよね。AAAMYYYさんは楽曲通りの優しい方です。僕は自分を追い込み過ぎちゃって圧迫感があるときと、のんびりしているときの差が激しいから、AAAMYYYさんのオーラに助けられています。僕自身も穏やかになる。

AAAMYYY:私は、会う前から(sic)boyくんの曲もMVもめっちゃ好きだったからこそ、いい意味でやばいテンションの持ち主なのかなって思っていました(笑)。でも、実際に会ったらすごく紳士だし、腰も低くて。あとは、本当に自分に厳しい。身体中から勢いやパッションみたいなのを感じます。私は意外に人見知りなんですけど、そんな雰囲気を(sic)boyくんからも感じていて。人と直接話すとき、気持ちを言葉にするときに少し不器用な部分があるのかなと勝手にシンパシーを感じていました。

ー言葉にしない分、その気持ちを歌詞に託している部分も?

(sic)boy:そうですね。基本的に僕はリリックだとスラスラかけるんです。歌詞にすると気持ちがストレートに出てくるのかな。

AAAMYYY:私はちょっと言葉を咀嚼する時間が必要。結局その間に、みんなの会話はどんどん進んでいて、言えないまま終わることも多くて。それが蓄積して、必然的に曲やリリックに反映していることが多いかもしれないです。昔は、はっきり言葉で伝えることに美徳を感じていたけど、どんな一言で相手を傷つけてしまうのかわからないなと思って。まずは聞く側に回って、必要な時だけ喋る。そういう話し方に変わりました。

(sic)boy:僕は逆にしっかり意思表示することを最近は心がけていて。ちゃんと向き合えばよかったって後悔することが結構あって、伝えないまま時間だけが過ぎて行くことに恐怖を感じました。結局、なんだかんだ僕は人が好きなんだと思います。会話をすることで、相手を理解したいと思うので。

AAAMYYY:すごく素敵な考え。確かに、対話することって大事なんだって思ったことを、今思い出しました(笑)。いつも(sic)boyくんから刺激をもらっています。

(sic)boy:僕もです。

「客演で参加するときは、相手の世界観にヒールとして登場することを意識しています」ー (sic)boy

AAAMYYY:(sic)boyくんも結構いろんな人を客演に呼んだりしていますよね?誰かと一緒にやるときに、意識していることはありますか?

(sic)boy:僕の作品に参加してもらうのか、客演として参加するのかで意識することは変わりますが、去年までは、自分の色を出すことだけが全てだと思っていた部分もあって。最近は、その人の世界観に悪役として、ちょっとヒールな感じで登場したいなと思うようになり、心がけています。

AAAMYYY:めっちゃかっこいい。私は、フィーチャリングするアーティストのことはみんな好きで、だからこそ、その人の作品にない感じで歌ってもらいたいとか、違う一面も見てみたいという私の願望を入れちゃっていますね。今作も、(sic)boyくんの声で演歌を歌ってほしい、っていう欲望を入れていますし。それをお願いしたときに、みんなやってくれるし、うまくいくから楽しいんですよね。

(sic)boy:1番大切なのは、楽しみながら作ることですよね。今回、AAAMYYYさんが少しでもワクワクしてくれたのであれば、僕が今作に参加した意味があるし、楽しかったっていう感想が1番嬉しいです。

AAAMYYY:今回はレコーディングも一緒にできて、(sic)boyくんの絶妙なピッチ感に感動して、結構ミラクルを感じていました。デモにも声は入れてもらっていたけど、実際に(sic)boyくんが歌っているところを見ていたら、作品に命が吹き込まれていく感動があって、それも全部楽しかった。また一緒にやりましょうね。

(sic)boy:絶対、やりましょう!


INFORMATION

『ECHO CHAMBER』

2022.07.08 Degital Release
https://aaamyyy.lnk.to/ECHOCHAMBER
Track List.
1.生きてみるわ
2.Ignition
3.あの笑み [feat. ano]
4.Come and go [feat. Gliiico]
5.雨 [feat. (sic)boy]

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