Interview:ハク。
揺れ動く心象を捉えた
ニューシングル「ナイーブ女の子」

Text&Edit_Maho Takahashi

Interview:ハク。
揺れ動く心象を捉えた
ニューシングル「ナイーブ女の子」

Text&Edit_Maho Takahashi

2019年5月に結成した大阪拠点の4ピースバンド、ハク。。高校時代に出会ったという少女たちの躍進は凄まじく、2021年にWEBドラマの主題歌「BLUE GIRL」を含む6曲を立て続けにリリースし、関西最大の十代才能発掘プロジェクト『十代白書 2021』ではグランプリを獲得。今年一月には初のミニアルバム『若者日記』を発表した。そんな勢いを止めない彼女らがリリースした新曲「ナイーブ女の子」は、『夢のような空間の中にある現実感。ーーあい(Vo/Gt)』という言葉の通り、恋する繊細な感情を巧みな言葉選びで綴ったチャーミングな一曲。プロデューサーに河野圭を迎え、新たなサウンドの引き出しを得たバンドが鳴らす心象風景とは。より“強化”したハク。が向かう先について、バンドのヴォーカル・あいに話を訊いてみた。

「素直に描くけど、
ベタな感じにはしたくない」

ーまず、メンバーとの出会いからバンド結成に至る経緯を教えてください。

私とまゆ(Dr.)、なずな(Gt.)とカノ(Ba.&Cho.)がそれぞれ同じ高校で。4人が出会ったのは、高校時代に今通っている専門学校で高校生向けのサークルでした。たまたま参加した日に、そこの先生から『パートも分かれているし、4人でバンドを組みなよ』って言われて組むことになりました。

ー運命的ですね。出会って間も無く結成されたと思いますが、あいさんは今バンド内ではどんな立ち位置なんでしょう。

割とお転婆キャラかもしれません…(笑)。結構直感で突き進むタイプなので、それに対してカノが具体的な言葉で補ってくれたり。バンド内では意見の多い二人ですが、最近は意見もまとまるようになり、いいペアになっていると思います。

ー歌うことは元々好きだったんですか。

好きでしたね。幼稚園のときに、合唱部だったはとこがアンジェラ・アキさんの「手紙」を歌っている姿を見て、よく真似して車の中で歌っていました。今考えると、それが原点というか、歌を好きになったきっかけになったのかもしれません。

ー楽曲制作は高校生の頃からされていましたか。

所属していたサークルの大会が、オリジナルを最低一曲はなくてはいけなかったので、そこから作るようになりました。その時にバンドを組んで初めて自分で作った曲が「ワタシ」なんです。

ーすごい…! 今年の一月には「ワタシ」も収録した1stミニアルバム『若者日記』をリリースしましたが、改めてどんな作品になりましたか。

色のある作品だと思っています。高校時代に作った曲がほとんどなので、高校生ならではの気持ちというか、棘があったかと思えば、分かりやすくハッピーな時があったり、感情の波が見える一枚になっています。

ー高校時代はどんな音楽を聞いてました?

高一はフレデリックをよく聞いていました。最初は声が特徴的だなと思っていたんですが、聞いていくうちにリズム感の面白さにハマって。高二〜三は、中村佳穂さんやサカナクションを聞いていました。独特なリズムや不思議な言葉使いをしている方が好きなのかもしれませんね。ここ数年では洋楽のバンドもよく聴くようになったので、日本との流れの違いだったり、単語の区切り方や発音の面白さにときめきを感じています。

ー聞いている音楽からインスピレーションを受けることが多いですか。

そうですね、最初の頃は特に多かったです。けど最近は、日常で見たものを反映するようになったので、日々の情景も考えるようになりました。

ーここからは新曲「ナイーブ女の子」について伺っていきます。恋する繊細な気持ちを綴った歌詞に対するポップなサウンドのバランス感が素敵だと思いました。

明るい曲調に対して歌詞が湿っぽかったり、ギャップを感じるものが好きなので、この曲もそこは意識しました。歌詞に関しては、普段から見たものや感じたものを素直に描くようにしているのですが、ベタな感じにはしたくないと思っているので、言い換えられる部分は面白い表現を考えるようにしています。こういう歌詞を好きになったのは、昔から聞いているサカナクションの影響が大きいかもしれません。並んでいる単語を見ただけでも、意味のある漢字を使っていたり、探りたくなる言い回しや情景が浮かぶ歌詞がいいなと思っています。

ー歌詞はどんなときに浮かびますか。

音楽に入り込んで聞いている時期は逆に描けないので、その時期はインプットとして吸収しつつ、さらっと聞ける時期に浮かんだものを描いていて。ワードとかは、高校生ときの英語のノートの余白に殴り書きしています。あと、今話してて気づきましたが、描くときの椅子に座る角度が決まっていますね。大体自分の部屋で描くんですけれど、床に座っていつも同じ方向を向いて描くことが多いです(笑)。ある意味雑というか、構えすぎない勢いも大事かもしれません。今回でいうと使いたいワードがいっぱい出てきたので、選ぶのに時間がかかって、ノートが印や線でぐちゃぐちゃになっていました。みんなに共感してもらえる言い回しを意識しつつ、自分がワクワクする曲ができて良かったと思います。

ー今回サウンドプロデューサーに河野圭さんを迎えていますが、どんなやりとりがありましたか。

最初から曲は結構できていたので、そこに一緒にアレンジを加えていく感じで。ハク。の色を残しつつ、『こうするんだ!』という意外性を提供してくれました。その中でも選択肢を設けてくれたので、いろんなパターンを試させてもらって。こっちの方がいいと押し付けるのではなく、自分達の引き出しを広げてくれようとしてくれているのを感じました。オファーを引き受けてくれた際に、河野さんのことをちゃんと調べたら、ビックネームの方々を手掛けられていたのではじめは恐縮しましたが、今は仲良くしてもらっています(笑)。

ー素敵ですね。ちなみに意外性を感じた部分は具体的にどんなところでしょう。

サビの〈でも不足が不思議とさスパイスだったりもする〉の後に、最初はギターソロを持ってきていたんですけど、あえて一回突き放すことで余白を提案してくれて。そういう表現もあるんだという新たな発見がありましたね。メンバーも気に入っていました。

ー今回はコーラスも入っていますよね。

自分の中で入れたい箇所がいくつかあったので、たくさん入れました。メンバーもコーラスのために歌詞を覚えているので、何回か合わせていくうちに、『ここのフレーズが好き』と言ってくれたりもしました。

ー普段メンバーとはどうやってイメージなどを共有していますか。

0から1を産む過程は私がやっているので、口頭でイメージを伝えてから、各々にアレンジや音を考えてきてもらって。それに対して細かいイメージをすり合わせながら、みんなの意見を取り入れています。今回はほとんど歌詞も完成させた状態でみんなのLINEに送って。初期の頃ほど、リアクションは大きくなかったですが(笑)、みんな『いいね!』と言ってくれたので、そこから制作に移っていきました。メンバーの中だと、なずなは私が伝えたイメージと全然違う独特なギターリフを上げてくるので、違う頭を持っていて良いなと思います。最近のギターでいうと、短音のリフとかが、ハク。らしくていいけど、ガッツリ弾くテイストもいいよねと話したりもしています。

ー今年はライブの経験も積んだかと思いますが、バンドの活動に還元されていますか。

そうですね。純粋にもっと頑張りたいと思っています。SNSなどでも、お客さんのリアクションを目にする機会も増えてきて、前は沈んてしまうこともあったけど、届けるべき場所があるという使命感を持てたというか。一本のライブに対して、自分の立ち位置がブレなくなってきました。それに、ライブから時間が経ってから不意に、お客さんの景色や、後ろ向いた時のまゆの表情などを思い出したりするので、そういう一瞬の光景をいつか曲にできたらいいですね。

ー楽しみです。また今年はA夏目さんの楽曲『青いとばり feat.ハク』にもフィーチャーされましたが、初の客演はいかがでしたか。

A夏目くんとは元々交流があって。オファーをいただいた際にParaviオリジナル『恋のLast Vacation』の主題歌ということは聞いていたのですが、ここまで恋愛の曲を描いたことがなかったので、正直不安もありましたが、新しいことをやってみたいと思い挑戦しました。今回の曲で言うと、いつも自分が描く歌詞よりストレートに描いていいんだなと思い、途中からそっちにシフトチェンジして。A夏目くんのリリックを見て、ここはリンクさせた方がいいかなって考えながら描いていくのが楽しかったです。あと、先日初めて一緒にライブで披露して、生で歌う方が声質が重なり合う感じがしたので、あえて合わせすぎるのではなく、リードして歌った方がこの曲には合っているのかなと思いました。それが正解かはわからないし、まだフィーチャリング自体の経験もないので、今後も機会があれば前向きにやっていきたいです。

「可能性に対して、
ストッパーをかけることが無くなった」

ーでは改めて、この一年を振り返ってみてどんな年でしたか。

自分たちの可能性に対して、ストッパーをかけることが無くなった一年でした。バンドとしてそれぞれ技術の壁に直面している中で、向き不向きを自覚しながらも、できることの範囲を狭めずに『やったことないからできない』と言わなくなりました。例えばメンバーに『こう言う曲を描いてみたら?』と提案されたときに、経験がないから描けないって思ってしまっていたけど、“できない”はやめようとメンバーとも話しています。

ーそういった変化は、何かきっかけがあったんですか。

ハク。に携わってくれているチームの存在は大きいかもしれません。すごく熱意を持っている方に囲まれているので、自分の中で気持ちが沈んだときでも、ここまで頑張ってくれている人がいるんだと身に染みて感じて。この人たちにもっといい景色を見せてあげるためにも、ここで折れてはいけないと踏ん切りがついたというか。あとは、バンド内で意見が飛び交うようになったり、言わなくても伝わる部分も増えて、前よりも支え合えるようになりました。

ーちなみに来年でメンバー全員が二十歳を迎えますが、成人と言う節目は意識しますか。

十九歳から二十歳を迎える前は、十代との違いがあるのかなと想像はしていましたが、そこまで特別視はしていなかったです。けど、周りの方には“二十歳”ってことを言われるので、大事にはしたいと思っています。きっと自分で意識しなくても、過ごした時間や忘れられないことに繋がるんだろうなって思います。

ー最後に、バンドとして来年の目標を教えてください。

来年もいくつかリリースを考えているので、楽曲をどういうテイストにするかを考えています。昨年から制作やレコーディングが続いていますが、それはバンドが大きくなるためにも必要なことですし、何より自分達がやりたいと言う気持ちが強いのでモチベーションを持ってやれそうです。いろいろな気づきも経て、やる気もあるので来年も頑張りたいです。

INFORMATION

ハク。

「ナイーブ女の子」
配信中:
https://haku-circle.lnk.to/NaiveGirl

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