LINNA FIGG:出会った頃はお互いに別のバンドをやっていて対バン相手だったんですよ。最初は面識があるかないか程度の関係でした。大学生の頃、おれがメルボルンに留学している時期があったんですけどめちゃくちゃヒマで(笑)。それで『音楽をやりたい』ってことをSNSで発信したらkyazmが声をかけてくれたんです。それが始まりですね。
LINNA FIGG:えーと、まず2人とも佐藤ではないんですよ。最初に名前を決める頃に観ていたアニメにサトウってキャラクターがいて、そこから取っているんです。その後、ちゃんと2人で活動していこうとなったときに名前を変えるかどうかって話はあったけど、SATOHってなんかアジア感が強いし、日本に生まれて、この国で考えながらやっていくことが大事なことだと思っているから、結局変えなかったんですよね。
ーSATOHの音楽は2021年リリースの初期作はHIPHOPの要素を色濃く感じられますが、1stアルバム『BORN IN ASIA』では、かなりロックやポップスの要素が強く感じられますね。どのように音楽性が変化していったんですか?
LINNA FIGG:本格的に活動していくか、となったのはおれが帰国してからで、そこから自分が本当にやりたい音楽を模索していった結果、ギターロックとか、ロックの文脈にある音楽をフロア(HIPHOPなどのクラブミュージック)っぽいサウンドでやっていこうという流れになっていったんです。それでアルバム『BORN IN ASIA』の世界観に繋がっていく感じですね。
LINNA FIGG:はい、今年に入ってから出来た曲ですね。今はもう売っちゃったんですけど、日産のスカイラインって車を友人とシェアしていて、CDしか聴けない車だったんでブックオフで中古を買い込んでドライブしていたんですよね。そのときに聴いていたプロディジー(The Prodigy)の『The Fat of the Land』からインスパイアされた曲です。あの野生味ある生っぽい打ち込みの音色をSATOH流儀にやろうと思って作ったらああなったんですよ。
ー同時に『BORN IN ASIA』の後半では「hate bones」などメロディ重視のゆっくりとした楽曲も特徴的ですね。
LINNA FIGG:ナンバガと言えば、ハヌマーンも聴いていましたね。ギターリフが好きで。あとはミスチルのアルバム『DISCOVERY』や『Q』とか、あの時代のミスチルをよく聴いていましたね。
ー2人に共通するルーツミュージックはありますか?
LINNA FIGG:レディオヘッド(Radiohead)ですね。アートワークも含めて影響を受けています。どこか街感があって風景を感じるような表現が大好きなんですよ。『OK Computer』とか。ああいう情景描写をアルバムに表現したくて『BORN IN ASIA』のジャケットを考えていったんですよ。
LINNA FIGG:ああ、それこそ方向性を模索している頃はSATOHはハイパーポップなのかなって思ってた時もありました。ただ、おれらが自分たちでハイパーポップを名乗るのは、現行でハイパーポップをやっているアーティストに対して失礼かなと思う。
ー失礼になるというのは、どういう意味ですか?
LINNA FIGG:自分の中でハイパーポップは、自分の肉体から堂々と離れて音楽を表現するものだと思っていて、そこがめっちゃ好きなんですけど、おれはそうじゃないって気付いた。むしろ自分が生まれ持ったものを全部背負ってやっていかなくちゃいけないと思って、音楽を作っているので、そう考えるとハイパーポップではないのかなって思います。音の特徴っていう意味では近しい部分はあるし、そう言われることもあるんですけど。
LINNA FIGG:定期的にFLAGという自主企画イベントを開催しているんですけど、これはコロナ禍の中で、自分たちの居場所を作ろうと思って始めたもので。 日本て言語的にも音楽の辺境だし、だからって国内でローカルに独立した生態系みたいなのがあるかって言ったらそういうわけでもないと思う。特にSATOHみたいに色んな音楽をミックスしていると、その拠り所がない感じが強いんですよ。そんな島国の中で、同じくらいのタイミングで震災とコロナ禍を体験した世代が集まっているのがFLAGにある感覚だと思います。そんな日本という島国の、何もないところからやって来て、けど自分たちですごいことをやっているよってことを、みんなで証明することができたらいいなと考えています。
kyazm:そうだね。場所という意味だと新しく自分たちで作っちゃおうという感覚でいます。
LINNA FIGG:もともとある文脈に身を委ねて上がっていくタイプの音楽じゃないから、そもそも。ゼロからでもこんくらいのことはできるってことを証明していきたいです。9月にはFLAGを過去最大規模で開催する予定なので、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。