Age Factoryが2曲のシングル「Party night in summer dream」と「向日葵」を携えて全国8箇所を回ったワンマンツアー「Party night in summer dream」の初日公演が、去る6月4日(日)に渋谷Spotify O-EASTで開催された。コロナという長いトンネルを抜け、ようやく制限から解放された現在のライブ。閉じ込めれてきた観客と彼らのエネルギーが混じり合い爆発的な上昇気流が生まれた熱い夜の様子をお届けする。
物事には段階というものがある。横綱だって幕下や序の口から始まるし、トップアイドルにも下積み時代や候補生だった時代がある。誰だって当たり前に一段ずつ登っていくしかないのだ。ときたま、2段飛ばし、3段飛ばしくらいのスピードで飛躍する人もいるけれど。
その3段飛ばしが、今Age Factoryに起こっている。変化を感じたのは昨年秋。ようやくフルキャパ解禁、声出しもOKになった時期のワンマンだ。コロナにうんざりした時間が長すぎた、という話であれば条件は皆同じ。しかしAge Factoryのライブに関して言えば、急激に、見違えるほどフロアがフィジカルになった。大量のシンガロングとクラウドサーファー。今かい、と思う。
荒ぶる魂に火をつける爆音なら、ファースト・フルアルバム『LOVE』を出した頃からすでにやっている。不協和音の飛び交うヒリヒリしたステージを見ながら、なぜモッシュが起きないのかずっと不思議に思っていた。突破口が見えたのは2018年の『GOLD』。楽曲も気持ちも大きく外に開かれ、評価も一気に高まった時期だ。絶頂期が始まるかと思えた。しかしコロナが始まり、リンクするようにバンド・サウンドは内省的な方向へ。ごくパーソナルな世界に寄せた2枚のアルバム『EVERYNIGHT』と『Pure Blue』を発表している。
この数年をおさらいしたうえで、今回のライヴについて。2曲の配信シングルを携えてのワンマンツアー「Party night in summer dream」初日である。渋谷0-EASTはソールドアウト。20代前半とおぼしき客が中心で、ファッショナブルな女の子も多い。ロックのライブならTシャツとタオルみたいな、決まりきった同調の空気がないのがいい。ちなみに開演前のBGMはスーパーカー。ざわめくフロアは居心地のいいクラブのようでもあった。
暗転。歓声が爆発し、一気に人々が前方へと押し寄せる。Age Factoryが出てくる。俺たちのヒーロー。大袈裟ではなくそんな空気だ。全員がシンガロングし、拳を突き上げ、ダイバーたちが次々と頭上を転がっていく。さながらパンクの激しさだが、しかし1曲目はシングル「Party night in summer dream」なのだ。初めてヴォコーダーを使ったダンスミュージック寄りのナンバー。ビートに乗って踊ること、一緒になって歌うこと、重力も感じないくらい全身を解放すること。それらの喜びが渦を巻いてステージに向かっていく。続いて「See you in my dream」のイントロが始まる瞬間の、最初の歓声を十倍にしたような「うおおおおぉぉぉ!」も忘れられない。なんだ、この求められ方は。
勢いあるロックナンバー「1994」はもちろん、世の中のクソを並べ立てる「CLOSE EYE」でもシンガロングが止まらない(みんな本気で〈援交 鼻くそ〉と叫んでいる!)。さらにはJUBEEを迎えたラウド系ヒップホップ「AXL」でも喜び勇むダイバーが続出。「ヤバいね、これまだ5曲目でしょ?」というJUBEEの言葉で我に返る。たった5曲、いや、最初のたった1曲、もっと言えばメンバーが登場した瞬間から、これが最高潮みたいなピークがずっと続いているのだ。何度も言うが、5年前は決してこうではなかった。バンドがどれだけ爆音で挑発しても、みんなどうしていいかわからない様子で直立していた。
何が変わったのか考える。清水英介は「CLOSE EYE」で〈僕らはどうしたい〉と問いかけ、「1994」では〈ただ速く 心走らせて〉と理想を描く。どちらも主語は〈僕ら〉である。初期の曲には〈最果てから 吐き散らす〉なんていうパンチラインがあったが、共にある未来を提示するか、それとも敵視して拒絶するか、ここに大きな違いがある。『GOLD』や『EVERYNIGHT』からAge Factoryに芽生えたのは、誰かと共にあるバンド、という自覚なのだろう。ベタな応援歌ではない。安い共感をばらまく図々しさもない。ただ、誰かの憧れになる存在であれという理想が、このバンドは最初から異様に高かった。
Age Factory好きな奴のことは友達だと思っている。友達には踊っていてほしい。そんなMCから始まる「Dance all night my friends」もよかった。軽やかなリフと妙にメランコリックなメロディ。それでも背中を蹴り上げるタフなビートがあり、サクッと終わる尺も潔く無駄がない。強さの中にある柔らかさ。もしくは、消えない憂鬱と前進する勇気。そういうものが今は必要なのだろう。不満を吐き散らすだけでは踊れないし一緒に未来を見ることもできない。コロナで家に閉じこもった時期が長かったのだから当然の感覚だ。長いトンネルを抜けて、照れも気取りもない愛を伝え合う。バンドと観客が初めてその境地に達したのではないか。
JESSEが飛び入りした「Light off」、牛丸ありさと歌った「ALICE」など、東京だから実現する競演も多数。その隙間に1stアルバムからの「Yellow」が挟まっているから、楽曲の幅が当時からどれほど広くなったのかもよくわかる。初期はオルタナティヴへの憧れが原動力。でも今は自分たちのために。友達も含めた俺たちの音を鳴らす。セットリストのほとんどが新しい曲で統一されていたことも記しておきたい。
そのうえで、初めて作ったラブソング、「ロードショー」がひときわ感動的だった。清水英介がまだ10代だった頃に書き、2014年発表の1stEPに収録された一曲だ。さすがに古すぎて若いファンは知らないかと思いきや、観客は大合唱でこれを受け入れ、我が事のようにロマンを噛み締めている。色褪せない歌詞と永遠を思わせるメロディ。爆音で挑発していた時期は確かにある。でも、始まりの始まりには、こんなにも美しい愛の歌があったのだ。
そこから最新シングル曲の「向日葵」へ。強さと優しさ、胸を掻きむしるメランコリーが爆発する。バンドの歩んだ10年がバチンと繋がるような流れだ。今はメンバー3人だけでなく、心からAge Factoryを求める1200人のファンがいる。共に歌い、必死に手を伸ばし、泣きそうな顔で笑っている。ものすごい熱量だ。ブレイクスルーはもう始まっている。動員が膨れ上がり、2段飛ばし、3段飛ばしで規模が変わっていくだろう。O-EASTはもう彼らにとって広い会場ではなくなっていた。
Age Factoryがいいバンドなのはずっと変わらない。ただ、観客の空気、爆発している熱量、説明のつかない上昇気流も含めて、今のAge Factoryは今しか見られない。強気で断言しておく。このツアーは特別なものになる。
2023/6/04(日)Spotify O-EAST
Age Factory 2023 summer tour “Party night in summer dream”
01. Party night in summer dream
02. See you in my dream
03. 1994
04. CLOSE EYE
05. AXL feat.JUBEE
06. Dance all night my friends
07. Merry go round
08. Peace
09. Light off feat.JESSE
10.Yellow
11.ALICE feat.牛丸ありさ
12.OVER
13.Feel like shit today
14.Blink
15.ロードショー
16. 向日葵
17. TONBO
18. HIGH WAY BEACH
EN-1. GOLD
INFORMATION
Age Factory
『Party night in summer dream』
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT INC.
https://agefactory.lnk.to/partynight
『向日葵』
UKDZ-0241H2
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT INC.
https://agefactory.lnk.to/himawari
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