MUSIC 2023.07.12

Interview: MÖSHIによるライブの現場へ向けたデジタルEP“I’VE GOT EVERYTHING BUT YOU”

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Yuta Kato, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

アーティスト、MÖSHIが昨年以来、約1年ぶりの新作となるEP「I’VE GOT EVERYTHING BUT YOU」をリリースする。全6曲で構成された本作は曲ごとに、これまでのMÖSHIにはなかったアプローチが表現されている。今作の背景にあるのは、昨年より増えてきているというライブの現場での体験だ。MÖSHIがステージに立って感じたことを1曲ごとに表現した作品はどんな内容になっているのか。

何かが足りない成功者が大事にする価値観は何か

ーリリースとしては約1年ぶりになると思うのですが、今回のEP「I’VE GOT EVERYTHING BUT YOU」に対して、どう向き合っていったんですか?

MÖSHI:1stフルアルバム『BABEL』をリリースして以降、どんな曲を作っていいのかわからない時期が長く続いていたんですが、9月頃から徐々にライブもできるようになり、自分的にもライブをすることが好きになってきたんですよね。それで、実際にライブするときにあったらいいんじゃないかと思う曲がアイディアとしてまとまってくる瞬間があって、今作の形に一気にまとまっていったんです。

ーでは、ライブの現場で得た経験や考え方が楽曲に反映されているということになりますか?

MÖSHI:そうですね。頻繁にライブをすることが制作のヒントになりました。例えば、テンポの速い曲であったり、シンガロングしやすいパートが必要だなってことが体感的にあったので、そこは大きく影響していると思います。自分や友人の現場に行っても思うんですけど、ぐっと引き込まれるアーティストの楽曲には、スピード感だったり、パッと聴いて理解できるわかりやすさがありますし、曲を聴いたことがない初見のお客さんもつかめるような要素が必要なんじゃないかなっていうのは、これまで家でやっているだけでは気づけなかった部分ですね。

ーそこでいくと、「GOT EVERYTHING BUT U」はジャジーでテンポも速く心地よいですが、ライブを意識された部分も強いですか?

MÖSHI:この曲に関しては、EPの他の曲と比べてもちょっと複雑な構成になっている部分もあるかなと。ジャジーなトラックにスピード感のあるラップを乗っけてみたいというところから着想を得ている曲でもあります。最近は1人でライブをやっていて、これまでにない新たな提示を行おうとしているんですが、逆に「GOT EVERYTHING BUT U」はドラムソロもあるので、バンドと一緒に生っぽいパフォーマンスで表現しても良いかなと思っていて、そんな可能性がある曲だと思っています。

ーこの楽曲は、そのままEPのタイトルにも通じる部分がありますが、どういう内容が歌われているんでしょうか?

MÖSHI:これは、EP全体のテーマに関わってくるんですけど、僕は作品を作るときに、いつも映画などの物語を意識して考えるんですが、今回はすべてを手に入れた成功者なのに、どこか物足りなさを感じている男性像をテーマに作ってみたいと思ったんです。それでタイトルも“君以外全部持っている”という内容になっているんです。何かが足りない状況で、どこに自分が大事に思っている価値を置くかという考え方が根底にあります。

ーそういうテーマに行き着いた理由はなんですか?

MÖSHI:やっぱり、この1年間で悩んだ部分は関連してきつつ、僕としてはやりたいことができていると思う反面、どこかで、あと一歩どうしたらいいんだろうって悩みが常に制作面で考えていたので、そこがEP全体に反映されていると思います。

さまざまなアプローチを1曲ごとに形にした

ー一方で「FACE VALUE」や「EYES ON ME」はHIPHOP的アプローチを強く感じます。リリックにもアグレッシブな表現が強く、これまでのMÖSHIさんにない表現だと思ったのですがいかがでしょうか?

MÖSHI:この辺りについては1年ぶりの作品ということで、いろんな新しいアプローチをやってみたかったんですよ。どこか自分の殻を破りたいという気持ちがあるのかもしれないですし、リリックの内容は強い口調になっているのは、何か強く言いたいことがあるのかもしれないんですけど、言葉の出し方を変えることで、他の曲とのフローに差を出せるでしょうし、自分にとってのチャレンジとして、違うやり方をしているんです。それで、どんな風にメッセージが伝わるのかなってことにも興味があります。そんな実験的な部分もあると思いますね。

ーこの2曲について、トラックに関して意識した部分はありますか?

MÖSHI:ライブをしていることを想定して、家の中で動きながらBPMを決めたりしたので、やはりライブ感は意識していますね。あと、ボーカルという点で今まではサビで歌いあげることが多かったんですけど、よりラッパーっぽく、みんなが口ずさめるような印象的なフックを作ることに専念して、乗りやすくなるように意識しています。例えば、「FACE VALUE」の<手首には既にROLEX>だったり、「EYES ON ME」で<Eyes on me>をリフレインさせたりとか。そういうところですね。

ー続いて「ARE YOU DOWN?」と「ONE TAKE」はダンスミュージックやエレクトロの要素が感じられ、同時にMÖSHIさんらしさも感じます。

MÖSHI:そうですね。もともと好きだったんですけど、意外とハウスに振り切った曲も作っていなかったので、1曲通して四つ打ちの楽曲もやってみたいと思ったんです。深夜のクラブに出演することも多いので、そういう深夜の空間でハマると思います。「ONE TAKE」では2ステップ、これは「Connected feat. ASOBOiSM」でもやっているリズムですけど、1回きりでやめちゃうのもなんですし、今の自分ならどういうアプローチになるかなってことも考えて作っていきました。

ーEPの最終曲「THE ONE」ですがリリックからラブソングだと思いました。

MÖSHI:ええ、このEPの流れでいったときに、構成的にラストはラブソングで終わりたかったんですよ。“君以外全部を持っている”という状況から完全なハッピーエンドではなかったにしても、作品の主人公がこれを大事にしていこうという価値観に変化していったような物語性を作りたかったんです。なので、この曲だけミドルテンポで少し落ち着いた雰囲気でEPを締めくくっていますね。

ー今回のアートワークもMÖSHIさん自身が担当されています。同背景の中で楽曲に応じて中央のモチーフが変化していくようなデザインで展開されてきましたが、これについて教えていただけますか?

MÖSHI:やっぱりEPのテーマと通じるデザインにしたいと考えたので、リッチな印象を想起させるゴールドを使ったり、繊細なモチーフを使って高級感があるように整えていきました。デジタルシングルのアートワークでは、曲の中で表現されているモチーフやディテールをピックアップしていますね。背景のコラージュ感は自分らしさもあり、写真を撮ってくれたフォトグラファーさんのおかげで、しっかりとしたジャケットに仕上がったと思います。

ー7月21日には、自身でイベント「PREMIERE」を主催・開催します。自主企画イベントをやろうと考えた理由と、どんなパーティにしたいのかについて教えてください。

MÖSHI:こうしてライブをいろんなところでやるようになって、やっぱり自分のホーム的な場所がほしいという気持ちはあるんですよ。それで、「PREMIERE」を主催して、自分が好きなアーティストであるS.A.R.とSPENSRという2組を呼んでいます。彼らとは友達ですし、ちょっとジャンルの異なる音楽をやっているようで、実は共通点も多いんじゃないかなと。お互いのファンにとっても楽しめるようなイベントになると思いますね。そんな風に、自分から音楽の楽しみ方を提示する場になればいいと考えています。

INFORMATION

MÖSHI

https://the-moshi.com/
https://twitter.com/the_moshi
https://www.instagram.com/moshi_the/

2023年7月12日(水) Release
Digital EP「I’VE GOT EVERYTHING BUT YOU」
https://jvcmusic.lnk.to/MOSHI_IGEBY
GOT EVERYTHING BUT U
FACE VALUE
EYES ON ME
ARE YOU DOWN?
ONE TAKE
THE ONE

MÖSHI presents “PREMIERE” 
2023年7月21日(金)
KATA & Time Out Cafe & Diner
OPEN 18:30 / START 19:00
アーティスト LIVE: MÖSHI / S.A.R. / SPENSR
チケット ¥2,500-(税込/All Standing/1drink別)
https://www.creativeman.co.jp/event/moshi23/

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