Talk session:内田怜央 × 関口シンゴ
バンドとして表現する音楽
Kroi Live Tour “Dig the Deep”での共演を前に

Photography_Reina Tokonami、Text&Edit_Mizuki Kanno

Talk session:内田怜央 × 関口シンゴ
バンドとして表現する音楽
Kroi Live Tour “Dig the Deep”での共演を前に

Photography_Reina Tokonami、Text&Edit_Mizuki Kanno

Kroiが主催する対バン・ライヴ企画「Kroi Live Tour “Dig the Deep”」が、11月3日(金)のZepp Fukuokaを皮切りにスタートする。Kroiが活動初期より大切にしている本ツアーも今年で4回目。これまでもジャンルの垣根を越えた個性豊かなアーティストとステージを作り上げてきたKroiが今回、かねてよりファンだったOvallと仙台PITにて共演を果たす。その一夜を前に、Ovallの関口シンゴ(Gt)とKroiの内田怜央(Vo/Gt)による対談が実現。どことなく似ている空気感を纏った二人の音楽論をお届けする。

L to R→関口シンゴ(Ovall)、内田怜央(Kroi)

ーお二人は今日が初対面だと伺いました。

内田怜央(以下、内田):そうなんです。自分たちはずっとOvallさんのただただファンで、グルーヴとか、サウンドの価値観をここまでバンド内で共有して、突き詰めているバンドって他にはいないんじゃないかなと思っています。音源もライブも、1音1音にすごくこだわりがあるバンド。憧れですね。

関口シンゴ(以下、関口):恐縮です。新しく配信される曲は毎週チェックしているんですけど、Kroiというバンド名を結構な頻度で目にするので聞いてみたら、Ovallがやっている音楽とのシンパシーを感じたんですよね。でもちゃんと今っぽいし、僕らにはない切り口の音楽だったので、ずっと注目していました。だからこそ、対バンの話をもらったときは嬉しかったです。

内田:光栄です。

ー今回、二組が共演するKroiの対バンツアーDig the Deepは、Kroiの結成当初から続く企画ですよね。改めて、開催のきっかけを教えてください。

内田:Kroiはインディーズの頃から、“変だね”って言われていて(笑)、どの企画に当てはめたらいいのか、ブッカーの人を悩ませていたみたいなんです。ヒップポップ系のライブに呼ばれたりすることもあって、すごいアウェイな空間なんですけど、僕ら的にはそれがすごく楽しくて。いろんなジャンルの音楽と触れ合えるし、今日ここに来ているお客さんに向けてライブをするので、自分たちの演奏も変わってくるというか。その感じが好きだったので、ジャンルを問わずに素敵な先輩方と対バンできるイベントを作りたいね、とはじめたのがDig the Deepでした。その中でも、僕ら的にはOvallさんはかなり親和性が高いんじゃないかなと思っています。

関口:嬉しいです。Kroiというバンドが、どういうバランスで成り立っているのかすごい気になっていて。内田くんはザ・フロントマンっていう感じ?

内田:もともと自分は、ただ曲を作りたいという気持ちが強くて。そんなに、自分が前に出て行きたいっていうタイプではないんですよね。

関口:確かにライブ映像を見た印象と、いま話している印象が全然違うから納得です。

内田:家では一人ではしゃいでいるタイプなんで、ステージ上では、その部分が出るみたいなんですが、普段は割とクリエイター思考というかオタク気質。メンバーも音の話になるとそんな感じです。バンドとしては自分がデモを作って、メンバーに肉付けしてもらって、レコーディングして、鍵盤の千葉さんがミックスをやって。だいたいそんな流れで曲作りをしています。

関口:どの程度までデモで作るの?

内田:うちの隣が自動車工場で騒音が凄いので、生ドラムが置けるんです。僕はずっとドラムをやっていたので、曲作りはまず最初にビートを叩いて始めます。ずっとマイキングしてあるのでそのまま録音して。なので、自分の頭の中で流れている音楽を全部一度作ってから、メンバーにガッツリ変えてもらって、という感じです。

関口:なるほど、僕らはもう15年もやっているので、その都度で変わってはきているんですけど、昔みたいにスタジオに週に何回も集まって作る、みたいなことがないので、最近はひとりが8割くらいを作って、残り2割を他のメンバーで完成させるパターンが多いですね。

ー関口さんから見て、Ovallはどんなバンドだと思いますか。

関口:僕らはバンドの成り立ちが変わっていて、Ovallをやる前から、3人ともそれぞれソロアーティストとしてCDを出してた人たちが集まったので、他のバンドの空気感とはもしかしたら違うのかな。だから曲を作るときも、みんなでOvallの曲を作ろうよっていうよりは、それぞれの色を出すことを尊重しているのかもしれないです。

内田:Kroiも曲ごとに役割分担みたいな、この部分はこの人の担当ね、みたいなのはしっかりあります。あとはめっちゃ仲が良いです(笑)。この前、ライブのセットリストを作る合宿で4日間くらい伊豆のスタジオに連泊した帰りの車中で盛り上がっちゃって、その次の日にディズニーに行きました(笑)。

関口:それはKroiにとってものすごい強みだよね。

内田:なので、すごい健康的に制作活動はできているなと感じます。でもOvallさんも仲いいですよね。

関口:ツアーとか行くと、空き時間にみんなでコーヒー飲んでるみたいな感じかな。そういう静かな仲の良さはあるかもしれないけど、でもKroiには及ばないよ(笑)

「グルーヴがまずあって、ブラックミュージックに根ざしてはいるけど、そこに自分たちが他で吸収してきた音もミックスさせていく。それがOvallの核なんだと思います」ー関口シンゴ

ーKroiもOvallもジャンルの括りがないミクスチャーな音楽性が共通点だと思いますが、お二人の原点となる音楽を教えてください。

関口:僕がギターを始めたきっかけは、X JAPANだったのでJロックからのスタートです。ひたすら曲をコピーして、学園祭に出るという1年を過ごしていました。高校生くらいから、音楽の幅を広げるために洋楽を聴くようになって、CDを買い漁り、速弾き系にいったり、ブルージーな音楽も聴いてみたり、大学に進学してからはジャズを勉強してみたり。僕は割と当時のギターキッズたちが通る王道を歩んできた気がします。2000年にディアンジェロの『VOODOO』がリリースされて、すごい衝撃を受けたんですよね。今とはまた少し違うネオソウルで、エリカ・バドゥとかもそう。Ovallの2人も多分、また僕とは異なる音楽の道を通ってきた中で、ここだけは同じタイミングで当時のネオソウルに出会って、影響を受けていて。そこがOvallの核なんだと思います。グルーヴがまずあって、ブラックミュージックに根ざしてはいるけど、そこに自分たちが他で吸収してきた音もミックスさせていく。

内田:Ovallさんはそういった音楽の先駆者的な存在だなと僕は思っていて。ネオソウルやドランクビートだったりを取り入れて、それを高いレベルで共有し合うバンドは今もなお、Ovallさん以外、日本にはいないんじゃないかなと思います。

関口:それを言ってもらえるのはすごく嬉しいし、2人も喜ぶと思う。

内田:あと関口さんが影響を受けたギタリストも気になります。

関口:例えばX JAPANだったらHIDE、PATAだし、LUNA SEA、L’Arc〜en〜Ciel、GLAYは、僕らは完全に世代だから、その辺のエレキの音っていうのはもちろん自分のルーツに入っているし、速弾き系だったら、スティーブ・ヴァイ、エリック・ジョンソン、ジョー・サトリアーニとか。あとは、スティーヴィー・レイ・ヴォーンっていう、ブルースギタリストの曲を聞いたときに、あんまり沈ませないギターの世界もあるんだと思って。そこから、ラリー・カールトンとか、ジャズをやり始めてからは、パット・メセニー、ジョン・スコフィールドとかも聴きましたね。

内田:自分のスタイルがあるギタリストにみんな憧れるんですよね。

関口:でもやっぱトム・ミッシュは救世主だと思う。Ovallは2013年から4年間お休みしていた時期があって、別にそれが理由なわけではないけど、フェスに出ても自分たちの居場所を見失っていた時期で。当時はEDM全盛期だったから僕らだけ異質な感じ。ちょうどその頃に、トム・ミッシュの名前が広がりはじめて。僕らが好きなブラックミュージック・シーンにヒーローが出てきた感覚だった。みんなジミヘンだったし、みんなジョン・メイヤーだったから、今ギターをはじめる人たちは、一度トム・ミッシュになってから、自分の道を見つければいいじゃんって僕は思ってる。

内田:確かにトム・ミッシュの存在は偉大ですよね。僕は最初にジョン・フルシアンテから始まって、ファンクもブルースも、ロックもいけるギタリストとして影響を受けました。レイ・ヴォーンあたりからは関口さんと結構一緒です。

関口:一緒なんだ!Kroiはギターの美味しいところがしっかり入った楽曲が多いよね。

「ロックってみんなに訴えかける力が強いと思うので、そこは意図的に入れています」ー内田怜央

ーKroiの新曲「Hyper」もギターのフレーズが印象的ですよね。

関口:また違った側面を見せてくれていますよね。Ovallにも通ずるようなビート感もありつつ、ファンクを強く感じる曲。音色的な部分もそうだし、ノリというか、ファンクの生き生きしてる感じがすごく印象的だった。ギターも作り込まれているのか、感覚でやっているのか。絶妙なところがまたうまい。今の時代の音楽のなかでは、Kroiの曲って長い方だと思うから、その中でジャムっているのも聞かせるし、展開もいろいろ変わっていくから、作り込みすぎると聴き手が疲れちゃうと思うんだけど、抜きどころをわかっているから重くない。そのバランスをどう考えているんだろうっていうのは、聞いてみたかった。

内田:嬉しいですね。そんなに作り込んじゃいけないなとは思っているので、そこまで意識せずに作っています。自分もギターを弾くし、もう1人ギタリストもいて、二人ともレッチリが大好きなので、ファンクでありつつ、ロック的な要素が最近は特に強くなっている気がします。ロックってみんなに訴えかける力が強いと思うので、そこは意図的に入れていて。ジャンルの混ぜ方で、どれだけメジャーシーンで戦えるのかを調整しています。

関口:歌い方も広く訴えかけるロックな感じだけど、全然わざとらしくない。勉強になります!

ー関口さんはソロギタリストとしても幅広くご活躍されていますが、バンドだからこその表現や意識していることなどあれば教えてください。

関口:Ovallはコード感のある楽曲が多いのに、実はメンバーには鍵盤はいなくてギターがいる、という不思議なバランス感で成り立っていて、だからこそギターの役割は、ベーシックな上での装飾というか、耳に残す演出をすることだと思っています。内田さんとの共通点で、僕もステージの前に出るのが、めちゃくちゃ嫌なタイプ(笑)。でも、Ovallでのギターソロは、派手に、前に出てパフォーマンスをすることが必要だと思っています。さっきのロックの話じゃないけど、やっぱりお客さんの気持ちをつかみに行く上で大切。ロックな音色のギターソロを心がけています。

内田:関口さんのOvallでのソロは、ゴスペルのギタリスト的な雰囲気を感じますよね。ギターってお客さんに熱量を伝えやすい楽器だと思います。関口さんのギターテクは本当にすごい。もう使いこなされてる。対バンツアーで聴けるのがとても楽しみです。

ー改めて、Ovall含め7組のバンドとの対バンツアーとなる「Kroi Live Tour “Dig the Deep” Vol.4」への意気込みやオーディエンスへのメッセージをお願いします。

内田:Ovallさんにご出演いただく仙台のKroiのお客様は、ガッツのある方々が多くて、ギターソロもしっかり聞いてくれるし、素敵な方が集まっているので、Ovallさんとの相性もとても良いと思います。化学反応が楽しみです。

関口:Ovallは、GAGLEという仙台在住のヒップホップユニットと仲良しで、アルバムも一緒に作ったことがあって、よくライブをしに仙台に行ってたから、メンバーみんなめちゃくちゃ楽しみにしてる。レーベルメイトのNenashiがゲストボーカルに入ってくれるんで、スペシャルな感じになるかなと思います。

INFORMATION

Kroi Live Tour “Dig the Deep” Vol.4

11月3日(金)Zepp Fukuoka w/Tempalay
11月5日(日)Zepp Nagoya w/OKAMOTO’S
11月12日(日)Zepp Haneda w/nobodyknows+
11月18日(土)Zepp Namba w/Nulbarich
11月19日(日)広島CLUB QUATTRO w/Bialystocks
11月26日(日)仙台PIT w/Ovall
12月2日(土)Zepp Sapporo w/クリープハイプ
 
特設サイト:https://kroi.net/dtd2023/

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