MUSIC 2024.04.18

Interview: aviel kaei ーCVLTEが表現する類ない音楽世界ー

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photography_Taka nekoze[Top Portrait], Leo Kosaka[Portrait], Erina Uemura[Live Photo], Text_Ryo Tajima(DMRT)

今や次世代アーティストを代表する存在の1つとなったオルタナバンド、CVLTE。現代の音楽シーンにある音楽をすべてミックスさせて1曲に昇華させるようなスタイルはDTMとバンドのハイブリッドと称され、他にない音楽を作り出している。
大型音楽フェスの常連でもあり、バンドに注目が集まっていく中、2月7日に待望のニューアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』がリリースされた。クラブミュージックとラウドやロックといったバンドサウンドが完全に溶け込んだCVLTEらしい内容だ。
本作を踏まえ、CVLTEというバンドはどんな世界観を表現しようとしているのかについて。作曲と作詞を担当するフロントマン、aviel kaeiに話を聞いた。

※掲載する写真は3月29日にZepp Shinjukuで開催された『DIGITAL PARANOIA 2052』のリリースパーティ時のもの

 

意図的に曲のバランスをコントロールできるようになった

ー今回のインタビューではCVLTEがそもそもどういう世界観を作ろうとしているのかについて聞きたいと思っています。2月7日に待望のアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』がリリースされました。このアルバムに今のCVLTEが凝縮されていると思うのですが、2021年発表の前作『praystation 2』の頃と比べてどんな変化があったのか、というところから教えてください。

aviel kaei(以下、aviel):曲ごとに足し算引き算をするのがうまくできるようになったと思います。『praystation 2』の頃はロックもHIPHOPもハイパーポップもやりたい、じゃあ全部やればいいって考えで単純に1曲の中に詰め込んでいた部分があったかもしれません。それはそれで自分がやりたいことが表現できていたんですけど、今はより意図的にうまくバランスを取れるようになったので成長を感じています。曲ごとにうまく差別化することができたんじゃないかと。
 

ーavielさんがDTMで作る音楽とバンドサウンドを融合させるテクニックが上がったということですね。

aviel:そんな感じですね。もともと僕はDTMでトラックを作るだけの人でボーカルを始めたのはCVLTEをスタートさせてからなんですよ。当初、バンドという形態でやっているからバンドのサウンドを入れなくちゃいけないっていう義務感があったんですけど、今回はそこから解放されて自由に制作を進めることができました。というのも、無理してバンドの音を使わなくてもいいじゃんって思ったので。
 

ーバンドサウンドのことを意識しなくなったのはなぜですか?

aviel:僕のことを信用してくれているメンバーと一緒にバンドをやっているので、ライブ用のアレンジをバンドで作ればいいと考えたんです。音源として聴くものと生で演奏するものは同じ曲でも感じ方が違いますし、別々の形で表現することができて、2度制作の楽しさを味わえたんですよ。これまでバンドという形態で制作することに悩んでいたのは何だったんだろう? と思うくらい『DIGITAL PARANOIA 2052』はちょうどいいバランスで作れました。
 

ー仰る通り、『DIGITAL PARANOIA 2052』には曲ごとにDTMとバンドのよさの両方を表現されているように感じます。特に最後の曲「digital paranoia.」は曲の中盤からガッツリテクノ調になりますね。

aviel:この曲はすごく気に入っています。僕が大好きなプロデューサーのNUU$HIくん(ARANCK Collective所属のプロデューサー、DJ)との共同作で一緒にスタジオに入って2回くらい集まって完成させました。

ー参加アーティストという意味では『DIGITAL PARANOIA 2052』に客演で参加しているのは海外拠点アーティストばかりですね。海外のアーティストという点に何か理由はありますか? 今後CVLTEは海外で活動をしていく、だとか。

aviel:今回一緒に曲を作ったアーティストたちは年齢や国境関係なくフィーリングが合って仲良くやっている面々です。「トラックができたから何かのっけてよ」って、友達を誘うような感じでお願いして、みんなのクリエイティビティを信用して好きにやってもらいました。戻ってきたものはどれもめっちゃよくてそのまま使うことにしたんですよ。感覚の近い人たちと一緒に制作することができて楽しかったです。それに海外か国内かというのはあまり意識していないんですよ。僕は自分がインターネットに生息していると考えているので海外での活動に対して変に意識する部分がないというか。それに自分のルーツはヨーロッパにあるし、幼少期から触れてきた文化は海外の方が近いんです。
 

ーある意味、CVLTEは世界中のどこでライブをしたとしても同じスタンスで向かうのかもしれないですね。バンドにとってライブ活動はどういうものだと考えていますか?

aviel:例えば、わかりやすいMCをしっかりとして元気付けたり感動させたりってことが得意な人間ではないので、ただ音楽表現をしてみんなに届けにいくという気持ちでいます。「こんな素敵な曲たちを作ったから、みんな聴いてよ」って。これを伝えなくてはいけないという使命感を持ってやるのではなくて、ステージから醸し出す空気感も含めて「ちょっと見てみてよ」っていう感覚があるんじゃないかと思います。
 

好きな映画や漫画のストーリーから受ける影響

ーここからはavielさん自身のルーツについて教えてください。音楽を聴くようになったのはどういうところからでしたか?

aviel:ゲームで育ったので『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズのサウンドトラックを聴いて、そこから派生していろんな音楽を聴くようになっていきました。でも、特定のアーティストを聴くというわけではなくゲーム音楽だったり映画やドラマ、アニメなどのストーリーやビジュアルだったり、音楽以外のものも含めて影響を受けることが多いです。『DIGITAL PARANOIA 2052』に関しては、そのパターンからの影響が大きいと思いますね。

ー映画やドラマ、アニメ。自分に影響を与えてきた作品はどのようなものがありますか?

aviel:昔から大好きな映画は『トロン:レガシー』や『ブレードランナー』など。サイバーパンクな世界観が描かれている作品の影響は強いです。今回のタイトルも『ブレードランナー』から影響を受けているので。
 

ー『DIGITAL PARANOIA 2052』に西暦が入っているのは『ブレードランナー 2049』からのインスパイアでもある?

aviel:なんとなくタイトル+数字の組み合わせがいいなってくらいでしたけどね(笑)。2052の“52”はDCコミックスからなんですよ。
 

ーアメコミと言えばのDCコミックスですね。漫画もお好きですか?

aviel:僕はDCコミックスやマーベルだとかアメコミと言われるもののオタクなんです。DCコミックスで『NEW 52』というシリーズがあるんですけど、2052の“52”そこから引用しています。語呂がよいというか、タイトルとしての見た目がいいなと思って。
 

ーCVLTEが発表してきた作品のアートワークや映像、ビジュアルなどを観るとどこか暗い世界観を感じつつもそこに可愛らしさを感じさせられます。そんな表現が好きだったりしますか?

aviel:はい。ダークファンタジー的なものがすごく好きですね。DCコミックスでも『コンスタンティン』とか。単純にダークなものだけではなく、ぱっと見は明るいものでも内には狂気を孕んでいるものがあったりだとか、表面と内面が異なっていてビックリするような作品も好きです。

※アルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』のアートワーク

ーそこでいくと『DIGITAL PARANOIA 2052』のアートワークもダークファンタジー感があります。漫画家の裏那圭さんが描かれているんですよね。

aviel:そうです。今も連載中の『ガチアクタ』という漫画を描かれている方なんですけど、うちのメンバーが好きで読んでいたんです。そしたら、どうやら裏那圭さんがCVLTEを聴いてくれているらしいぞ、と。
 

ーそうだったんですね、偶然にも。

aviel:それでSNSで繋がって仲良くなり「いつか何かを一緒にやりましょう」って話をしていたら、こういう形になったんです。最高な仕上がりだと思います。僕が髪の毛の色が緑だった時期があったので、そういう人物を1人とあとは3体くらいのキャラクターがいて、サイバーパンクな緑の世界観を描いてくださいっていうラフなお願いをしました。ほとんどお任せで好きに描いてもらいましたけど、素晴らしいものにしてくれて本当に感謝です。
 

自分の作曲スキルと共にバンドの存在も上がっていけば

 

ーサイバーパンクというとグリーンの世界観というイメージがあるのですが、avielさんの好きな色はやはり緑ですか?

aviel:1番好きな色は紫と黒なんですけど、『DIGITAL PARANOIA 2052』収録曲で最初に発表した曲が「scorpion.」で、この曲が緑のイメージなんですよ。僕は自分が作った曲を色で判別するところがあるんです。その後に出来ていった他の曲も各々違う色の印象を持っているんですけど、最初にできた「scorpion.」=緑の印象が強くて、そこに引っ張られてアルバム全体が緑色のイメージになっていったんです。
 

ーこうしてアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』がリリースされたわけですが、CVLTEは今後どのような場所をしていきたいと思いますか?

aviel:僕は、夢は口に出すけど表には出さないタイプなので、アバウトな言い回しになるんですけど、導かれる場所に導かれればいい、行くべきところに行けばいいなって。カッコいい音楽を作り続けて、それに見合うステージを作っていけば、自分の作曲スキルと共にCVLTEというバンドは変化しながら上がっていくと思いますし。どこか目標の場所があるというのではなく、気づいたら辿りついていたという感じで今があるので、このままCVLTEという存在が上がっていったら嬉しいです。

INFORMATION

CVLTE “DIGITAL PARANOIA 2052”

CVLTE
https://www.cvltecult.com/
 
DIGITAL PARANOIA 2052
https://cvlte.lnk.to/DP2052
 
aviel kaei
https://www.instagram.com/avicvlte/

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