MUSIC 2024.06.05

Interview:Kroi 更なる飛躍を確信させる
3rd Album『Unspoiled』

Photography_Renzo Masuda、Styling_ Minoru Sugahara、Hair & Make_Chika Ueno、Text & Edit_Mizuki Kanno
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

6月19日(水)にリリースされるKroiの3rd アルバム『Unspoiled』。アニメ「SAND LAND: THE SERIES」のオープニングテーマ「Water Carrier」や、ダイドーブレンドのCMソング「Amber」をはじめ、シングル作品から新録楽曲まで、今のKroiの音楽性を示す個性豊かな14曲が収録されている。前作『telegraph』リリースから約2年、瞬く間にメジャーシーンを駆け上がり、日本武道館での単独公演も成功させたKroi。今作を引っ提げ、彼らはさらなる高みへと向かう。
現在発売中のEYESCREAM No.190でもKroiにフォーカスしているので、ぜひ合わせてご確認いただきたい。

Left to Right→内田怜央(Gt/Vo)、長谷部悠生(Gt)、
千葉大樹(Key)、益田英知(Dr)、関将典(Ba)

「最近は割とウェットな曲が増えている気がして、そこがこれまでとの一番大きな違いかもしれない」

ー前作『telegraph』についてのインタビューでは、作品の全体像を“冒険”と表現していただいたのですが、今作はどのように感じますか?

益田:「モダン」かな…一度みんなの意見も聞いてみましょう。

内田:前作で作った曲がパワーアップしたような楽曲もあるので、冒険感は引き続きあって、でもやっぱ今回は…「モダン」かな。

一同:(笑)。

:自分はどちらかと言うと前回は「旅行」で、今回が「冒険」という印象です。去年ぐらいから怜央がエスニックなムードだったり、そういったスケール(音階)が取り入れられた楽曲を出してくれるようになって。完成したアルバムを改めて聴いてみたら、世界各国の音楽のルーツが感じられる作品に仕上がっていたので、冒険感を感じました。

益田:ルーツ・ミュージックは大切にしつつ、そこに傾倒しすぎない、今っぽいサウンドメイクを組み込むことも意識しているところが「モダン」っぽいなと。例えば、当時のレア・グルーヴを目指しつつ、ただそれを再現するだけじゃなく、現代の技術と我々が培ってきたノウハウを加えて、どうKroiっぽいサウンドに昇華させるのかみたいな。今聴いても「新しい」と感じる音楽を目指したところはあります。

内田:あと『telegraph』よりは、音像がひらけていると思います。今までのKroiはかなりデッド。リバーブやエコーはなるべく使わないようにしていましたが、最近の曲は割とウェットな感じの曲が増えている気がして、そこがこれまでと一番大きな違いかな。

千葉:そこのムードは、かなり変わってきているよね。

ーそれは意識的に変化させたんですか?

内田:単純に、デッドな自分達の曲に聴き飽きたんだと思います。

:ウェットだからこそ、今までで一番、大人っぽいアルバムでもあります。新録した曲たちを並べて聴くと、落ち着いたムードが漂ってる。

千葉:アニメとのタイアップ曲は割と派手だから、他の楽曲は抑えようみたいな意識がみんなあったんじゃないかな。

ー今作の収録楽曲では「Sesame」、「Hyper」、「Water Carrier」がアニメ作品のオープニングに起用されていますよね。制作の際に、タイアップだからこそ意識した点はありますか?

内田:タイアップ作品に関しては、アニメの視聴者が「オープニングがKroiで良かった」と思ってくれることが何よりも嬉しいので、作品の中にしっかり入り込む音楽を意識して作っています。音って時々、視覚よりも強いパワーを持つことがあるので、作品が愛されるためにも、その世界観に寄り添った曲であることを大切にしています。

ー「Water Carrier」は「SAND LAND: THE SERIES」のオープニングテーマとして、2年前にはすでに完成を迎えていたと聞きました。

:「Water Carrier」は、Kroiが初めてアニメのオープニングを手がけた作品なんです。自分達もリリースを心待ちにしていました。当時の制作の様子は、もうあまり覚えていないのですが(笑)、鳥山明先生の作品に携われた喜びは、今でも鮮明に覚えています。鳥山先生ご自身が、先生の描く世界観との親和性をKroiの楽曲から感じてくださったと伺いました。「SAND LAND: THE SERIES」の公開までには武道館に立つことができたので、なんとか遜色ないくらいには成長できたのかなと思っています。

内田:最初の打ち合わせで、「『SAND LAND』の世界で流れている音楽を作ってほしい」というお題をいただいたんです。Kroiは何のジャンルかわからない曲を作ることは得意ですし、ちょどその頃、前作の『telegraph』で砂地をイメージした「Drippin’ Desert」を制作していたので、砂地集大成的な感じでデモを3つ作ったんです。自分の頭の中でアニメーションを思い浮かべ、主人公のスピードに合ったテンポ感を意識して、調整を重ねて。アニメとのタイアップは、そういったクリエイター的な視点も必要なんだなということを学びました。

「昔のKroiっぽさを残しつつ最近の感じも混ざった、まさにバンドの現在地を示した曲だと思う」

ーKroiの皆さんへのインタビューでは毎回、収録楽曲の中から、推し曲を伺っていて。今回もぜひ教えてください!

内田:じゃぁせーので。(見事に聞き取れず)

:自分は「Stellar」。前作を出したあたりから、「ミドルテンポの楽曲も出したいよね」という会話をしていて、今作で「Stellar」が録れたことへの満足感が大きいです。今までのKroiのミドルやスローテンポの楽曲にはなかったムードが漂っているので、Kroiの新しい表現の形をまた一つ提示できたと思います。

千葉:「Stellar」はデモを聴いた時から、めっちゃ良いなと思っていました。構成自体はシンプルだけどメロも良くて、日本では珍しい70〜80年代の洋楽の雰囲気もあるし、超名曲だと思う。Kroiは面白いことをいろいろ試すけど、何も飾らないシンプルなKroiの楽曲も昔から好きで、その中でも「Stellar」は自分的に過去一かもしれません。

内田:オレも「Stellar」と「明滅」で悩みましたが、「明滅」は益田さんに話してもらうとして、自分は「Psychokinesis」にしようと思います。この曲はアルバムの納期が迫っていることに気づき始めた時に、曲数を増やすために入れた曲。そもそも、作った時もめっちゃふざけていたし、大丈夫かなと思っていたけど、最終的にすっごい仕上がりの良い曲で、アルバムのワンアクセントになっていると思います。特に聴いてほしいのが、ドラムのビート。打ち込みのハットと生のドラムを組み合わせていて、さらに生のドラムをめちゃめちゃ歪ませて録ったんです。もうガシャガシャ。それがかっこいいんですよ。「生だよ」って言わないと、誰も気づかないだろうから、ここで言っておきます(笑)。曲自体もかっこいいんですけど、そこに隠れちゃうのが勿体無いくらい暴れているんですよドラムが。

益田:「明滅」はKroiでは珍しく、ギターがオープンコードを使っていて、アメリカンな雰囲気の曲なんです。

内田:オープンコードはすごくひらけた音像というか、いわゆるフォークソング的なノリで、今までKroiでは全然使ってきませんでした。サビの部分が特に聴きどころですね。

益田:コーラスの混ざり方もひらけた感じで、カントリーっぽさを感じつつロックの要素もあって、ヒップホップのセクションもある。その辺を楽しんで聴いてほしいなと思います。あとは、前作で言ったら「熱海」みたいな感じで、カリフォルニアでの思い出がぎゅっと詰まっている曲。聴いた瞬間、その時の匂いや景色がフラッシュバックするんです。

千葉:オレたち自身が聴いて浸れる楽しい曲かも。

内田:益田さん、向こうでこの曲を録っている時点ですでに「これは思い出の曲になるな〜」って酔っ払いながら言ってたもんね(笑)。

益田:千葉もミックスチェックの時に「明滅」を聴きながら、スマホのライトを目にかざして「アメリカの太陽光を感じる〜」とか言ってた。

長谷部:今まで映画でしか見たことのなかった日差しを初めて感じたんですよね、カリフォルニアで。戻りたいな…。

益田:その感じとかも全部思い出すんです「明滅」を聴くと。名曲です。

長谷部:「Green Flash」は今作で一番最後に録った曲で、自分的には一番Kroiっぽい曲だなと思います。特に始まり方が、ファンクからソウル、R&Bの要素が入っていて、昔のKroiっぽさを残しつつ、タイアップ曲も増えて世間と戦ってきた、最近の感じも混ざっているし、まさにKroiの現在地を示した曲だなと思う。

:「Green Flash」は、今回のアルバムのリード曲でもあるんです。

内田:あと、今作は全体的に夕日の曲が多いんですよ。「Green Flash」然り。

:怜央の解説を聞いて知ったんですが、「Green Flash」は、日が沈む時に一瞬だけ見える緑色の光のことらしいです。

内田:海面に夕日が沈むタイミング、本当に沈むギリギリのところで気象条件が揃うと、一瞬、太陽が緑になるんです。それがグリーンフラッシュ。グリーンフラッシュを見たら幸せになれるという迷信とかも一部の地域にはあるみたいですよ。

ー改めて今作「Unspoiled」も様々な表情を持った楽曲が収録されていて、聞き応え満載ですね。

内田:いつものKroiよりかなりウェッティな楽曲が多い作品になっています。他の方と比べたら、まだまだドライかもしれないですが、今までのKroiと比較したら大きく違うところ。

:「風来」や「Hyper」、「Sesame」は、ホーンやストリングスなどのセクションが追加されているので、『telegraph』までの作品と比べると、スケール感のあるアルバムになっています。そういった曲のレコーディングを経て、今回新録した作品があるので、デッド感を拭っている要素にも繋がっていると思う。

千葉:前作を作っていたときの自分たちから、表現の幅がぐんと広がりました。それはアニメとのタイアップ作品へのチャレンジが大きいのかもしれません。でも、急にスケールさせすぎると、環境が崩れてしまう。例えば、ゲームとかでも、強いキャラが急に現れたら成立しなくなると思うんです。徐々にスケールさせていく上で、今回のアルバムに収録されている楽曲のバランス感はちょうどよかった。

内田:改めて、最初は超デッドな音楽性でやっていてよかったなと思います。自分たちの心境的にも同じことをやっているだけでは飽きてくるので。でも、また数年後とかにはデッドに戻ったりもするんですきっと。

INFORMATION

Kroi 3rd Album『Unspoiled』

2024.6.19(wed)Release
https://lnk.to/Unspoiled

1. Stellar
2. Psychokinesis
3. Sundown (Interlude)
4. Green Flash
5. Signal
6. GAS
7. Hyper
(TVアニメ「アンダーニンジャ」オープニングテーマ)
8. Amber
(「ダイドーブレンド」ブランドCMソング)
9. PULSE
10. Sesame
(TVアニメ「ぶっちぎり?!」オープニングテーマ)
11. Water Carrier
(スターオリジナルシリーズ『SAND LAND: THE SERIES』オープニングテーマ)
12. papaya
13. 風来
14. 明滅

CD+LIVE Blu-ray「Kroi Live at 日本武道館」/ PCCA-6293 / 税込6,050円
CD+LIVE DVD「Kroi Live at 日本武道館」 / PCCA-6294 / 税込6,050円
CD Only / PCCA-6295 / 税込3,080円
©︎PONY CANYON / IRORI Records

Kroi Free Live “Departure” at 横浜赤レンガ倉庫
2024.6.22(Sat)17:30 OPEN / 19:00 START

https://kroi.net/unspoiled/#Departure

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