Interview:Liza
#PARAPARAMIXTAPEから紐解くLizaの核

Photography_Hiroki Asano
Text_Tsuyachan.

Interview:Liza
#PARAPARAMIXTAPEから紐解くLizaの核

Photography_Hiroki Asano
Text_Tsuyachan.

Lizaが変わった。そう感じている人は多いのではないか。今年の夏に「#PARAPARAMIXTAPE」と題された、新作のリリースを匂わせるビジュアルがInstagramやYouTubeにアップされた。そこには「#ChakiZulu」というタグが記されている。先行曲として「PARALLEL feat. 7」がリリースされ、TikTokを中心に大きなバズを起こした。SNSの更新が増え、時には複雑な心情を吐露するようにもなった。やはり、何か大きな変化が起きている。

Lizaはあまり多くを語らない人だという印象があった。パブリックイメージとしても、どこかミステリアスでつかめないキャラクターに見えているだろう。けれども、今のLizaであれば全てを話してくれるのではないか? 聞くと、打ち明ける準備はできているという。彼女のもとに向かうと、そこには、これまでになく吹っ切れた表情のLizaがいた。何がそうさせたのか。冒頭からズバズバと核心を語りはじめた取材の、一部始終をお届けする。

——どこから訊いていこうかという感じなんですけど、まずは、Chaki Zuluさんとの制作がどうやって始まったのかを知りたくて。

Liza:去年の11月頃ですかね、Chakiさんと話す機会があったんです。Chakiさんの音楽ってタグが入ってなくても誰が作ったか分かるし、ずっと好きで、一緒に曲作ってもらえませんかというので直接話しに行ったんですけど……いきなりそこで面食らってしまって、、

——なぜ?

Liza:的確な指摘をされたから。色々言ってもらえたけど、一番はアーティストとしてのLizaが分からない、ということだったのかな。それがすごく的を射ていて、思わずハッとさせられました。自分でもその迷いは分かっていたし、それでこの人と一緒にやったら本当に成長できるだろうなって感じた。アーティストとして足りてない部分をそこまでちゃんと厳しく言ってくれる人っていなかったから。でも、最初はそれで終わっちゃって。私は、自分は何がしたいんだろうということをそれから考えはじめたんですけど、やっぱりなかなか分からなかった。その後も何回か会ったんですけど、言葉にできないまま、くどくど説明するよりも本当にChakiさんとやりたいんだっていう強い思いをもう伝えるしかないなと思って、それで「命を懸けてやります。全てを音楽に注ぎます」って言いました。

——それに対して、Chakiさんは?

Liza:「分かった」って。

——先ほどの「アーティストとしてのLizaが分からない」というのは、音楽性にブレがあるという意味ですか?

Liza:そう。あと、自分自身の内面についても言ってもらえたかな。私は当時けっこう病んでいたり、感情が不安定だったりして……。それを人のせいにしていたところが多かったんですけど、それって結局自分が悪かったんだなって振り切れるきっかけをもらいました。

——実際に制作が始まっていく中で、どうでしたか。

Liza:まず、人間的な相性がすごく良いなと思いました。私は自信は持っていますけど自分に満足はしていなくて、Chakiさんの言ってることをちゃんと理解して吸収しようと努力しているし、逆にそれでもここは違うと思うところはChakiさんが納得いくまで話してます。歌詞に関しても、私自身の感情が深く込められている部分については譲れないところがあるじゃないですか。恋愛の曲で怒りをテーマにしていた時、その怒りの感情を相手視点で書くか自分視点で書くか、そういったところも含めてとことん議論していて。その一カ所だけで3時間ぐらいディスカッションして、とことん詰めてます。私は全部好きなようにやっていいよって自由を渡される環境よりも、これやったらいいんじゃない?って出されたものに対して個性を入れていく方が合ってると思うんですけど、Chakiさんとはそういうところもハマってる気がする。自分の中では、次の「#PARAPARAMIXTAPE」では「PARAGRAPH」という曲が一番思い入れが強いんですけど、その曲とかはめちゃくちゃ話し合いました。

——プライベートなことも含めて、さらけ出すわけですよね。

Liza:はい、さらけ出します(笑)。今は腹を割って話せるけど、でもそうなるまで私は緊張してました。私の中で、おにぎり事件っていうのがあって(笑)。食べる時に、海苔の音がパリッとするじゃないですか。でも私はしーんとした静かな中でその音をさせるのが嫌で、開けてずっと放置して海苔をしならせてから音を立てないように食べてたんです。それも、急いで二口くらいで。そのくらい、最初は私も自分をさらけ出せなかったし、自分で自分が分からない中、探り探りで。

——そのくらい、探り探りだったと(笑)。そんな中で、先行曲としてリリースした「PARALLEL」は今までにないテイストですごくユーモラスな曲ですよね。ああいうちょっと肩の力を抜いた曲も、そういった過程を経る中で生れるようになったわけですね。

Liza:最初フックを作ってた時に、「この曲ぶっ飛んでるわ~」って話してて、そしたらChakiさんから「この曲、7ちゃんとかハマるんじゃない?」って提案があったんですよ。「OK、LINEします!」ってその場で連絡したら即「いいよ!」って。秒で決定。7ちゃんのレコーディングも7分で終わって、あの曲は一番スムーズにできましたね。

——「PARALLEL」はTikTokを中心にめちゃくちゃ拡散されましたけど、こんなことになると思ってましたか?

Liza:思ってました。

——なぜ?

ちょうど三か月くらい前に、病んでた時期があったんですよ。もうね、本当に辛くて、そこを乗り越えたから今があるって感じで。アーティストって曲を出せてない期間が長くなると精神的にかなりしんどくなってきて、それが止められなくなってくる。私は一年くらい出せてなくてかなり落ちてて、あと周りとの関係性も悪くなってた時期で。仕事関係の人に連絡してもレスが遅かったりするとストレスを感じるし、こっちはもっと仕事したいのにって考えてイライラと負のスパイラルに陥ってた。まぁ、よくあることです。それに対してChakiさんと話す機会があって自分自身の根本にあった物事の捉え方に問題があったことに初めて気づけたんです。それが自分の人生を他人軸で生きてるか、自分軸で生きてるかってことでした。」

——ハッとする言葉ですね。

Liza:そうなると、全部の視点が変わったんです。友達も家族も恋人も。例えば、恋人に「なんでこんなことするの?」って思ってたのが、それ以降は「なんでこういうことする人といるの、自分は」になった。選んでるのは自分ですよね?って。仕事の連絡とかも変わって、「なんで返信遅いんですか?」って突っかかってたのが、それからは「返信ください、本当にいつもありがとうございます」と言えるようになった。周りに対して攻撃するんじゃなくて、感謝する機会をたくさん設けるようになった。そうなると、Lizaと一緒に仕事をしてくれる人たちの空気が変わった。何もかも変わっていった。そこで、確信したんです。これから出すものはたくさんの人に聴かれるんだろうなって。それで「PARALLEL」をリリースしたら案の定どんどん伸びていって、そうだよねって思った。とにかく何もかも変わった。環境を変えた。人間関係も変わった。色々なものを断ち切った。

——8月に、Lizaプレゼンツで7さんとSheidAさんとスリーマンライブを開催されたじゃないですか。時間軸で言うと、それはその前の話?

Liza:いや、後です。だから、もう秋になってからの話で。めちゃくちゃ最近のこと。あのライブも、私の中では本当に迷ってたり苦しかったりした時期だったんですよ。これまでLizaというアーティストはあまりしゃべらないし淡々としているところもあって、でも当時はその表現自体に迷ってたところがあった。それで、ライブではいつもよりもふざけたMCもしたりして……でもそれを自分で見返して、これはLizaというアーティストがやることじゃないかもなって思った。自分で自分が分からなくなって、中途半端な部分があったかもしれない。

——そもそもLizaプレゼンツという主催が初めてだったし、もしまた今ああいったライブをやるとしたら全然違うものになるかもしれないですね。

Liza:全然違うものになると思う。

——つまり一言で言うと、Lizaとはどういうアーティストになったんでしょう。

Liza:「私がLiza」だということです。自己理解が深まったんですよ。以前は、「Lizaってこうなりたい、こうしたい」というのがあった。自分に対して第三者的だったというか。でも今は、「私がLiza」であって、それ以上でも以下でもない。

——あえて作らなくていいということですよね。なんかLizaさんの話を聞いていると、アーティストにとって一番大切なのは、自分で自分を深く知ることなのかもしれないなと思いました。

Liza:本当にそう思う! 前は、周囲から色々言われることに対していちいち「そうなのかな」って思って影響を受けてたんですよ。今は全く思わない。そっかそっか、でも私は私だからね、って感じ。全然ブレなくなった。今まではアンチが来るたびにブレてたから。そうなるともう、現実的な数字は後からついてくるって思えるし、やっぱり内面が変わったのが大きい。

——他のアーティストを見る目も変わりましたか?

Liza:他のアーティストは見なくなりました。闘うべきは自分でしょう。嫉妬がなくなった。悔しいと思っても、自分の中で昇華する。

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——Lizaさん、変わりましたね。

Liza:変わったと思います。でもそれで面白いのが、なんか若返った気がするんですよ。同世代の子たちのくだらないやり取りとか、前は第三者視点で冷めた目で見てたんですよ。こいつらくだらないな、って。最近はそこに自分も一緒に混ぜてもらいながら「そういう意見もあるんだ!」って思えるようになった。

——なんか、思考がシンプルになった気がします。

Liza:あぁそうそう!シンプルになりました。

——そう考えると、変わったのは本当にこの2、3カ月くらいのことなんですね。

Liza:本当につい最近です。尊敬する人が言ってたんですよ、「何かを成し遂げたい時は何かを捨てなきゃいけない」って。8月のライブの時点では、捨てる前だった。つまり、どこかでまだ甘えがあった。だって音楽がうまくいっててもいってなくても、家に帰ったら幸せだったから。そんなの甘えじゃないですか。

——なるほど。もし話せるようであれば、「何かを捨てた話」について突っ込んで訊いてもいいですか?

Liza:そうですね……今ここで話してもいいんですけど、さっき言ってた「PARAGRAPH」という曲も含めて、然るべきタイミングが来たら全部話します。もう少しだけ、待ってください。たぶん、その時の方が曲もあるし、ちゃんと伝わると思うので。

——分かりました。言いづらいこともあったかもしれませんが、ひとまず今日はありがとうございました。

INFORMATION

Liza

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