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ReN EP「Early Project 2」
発売日:2025年4月4日(金)
配信サイト:https://ren.bio.to/EP2
シンガーソングライターのReNがDigital EP「Early Project 2」を4月4日にリリースした。
前作「Early Project」から約2年半ぶりのEPとなる今作にのせて今のReNは何を思い、伝えるのか聞いた。
──本作は2022年10月リリースの「Early Project」以来、およそ2年半ぶりのEP。その2年半、単曲でのデジタルリリースはされてきましたが、特に2024年はツアーをはじめライブが活動の中心だったかと思います。その意図と、ライブを重ねることで感じたことを教えてください。
コロナ禍でライブができなかったから、その禁断症状みたいなものが出て。2023年にギター1本で巡るアコースティック全国ツアー「#CalmDaysTour」を始めて、2024年もその弾き語りツアーを春にやって、秋には本来のスタイルであるループステーションとアコースティックギターの演奏でのクアトロツアー「Q3 Tour」を組んだので、特に去年は忙しくなっちゃいました(笑)。それでもやっぱり弾き語りはトライしてみたかったんです。というのも、コロナ禍での制限がある中でも、アコースティックライブはできた。だからこそ、アコースティックでのライブに対するスキルアップもしたかったし、最小限のもので音楽が成り立つということを再認識したかったから。
──トライしてみたかったというアコースティックツアー、実際にやってみていかがでしたか?
ギター1本という何の偽りも飾りもない世界でみんなと一つになれて、すごく良かったです。あとは客席との距離がすごく近かったので、自分のファンの人たちのキャラクターもよりわかったし、「みんな僕の歌を大事に聴きにきてくれたんだな」と感じられて。これから先も、弾き語りも続けていきたいなと思いました。僕の中では武者修行のような意味合いでもありましたけど、楽しかったです。
──アコースティックツアーも含めてライブ三昧の日々を過ごすことで、作る音楽や音楽を作る意味に変化はありますか?
ライブを重ねていくなかで、今、自分たちの身の回りに起きていることは何かということはすごく意識するようになりました。それまでは自分の世界だけを追求していたんです。それもみんなが求めているものの1つだとは思うんですけど、やっぱり、そこにいる全員じゃなくても、そこにいるみんながなんとなく感じていることに目を向けて、それを歌っていきたいなと思った。実際、僕のライブに集まってくれている人は自分に対してそういうことも求めているような気がしましたし。ライブも、アコースティックとそうじゃないものの2軸でやることで見えてきたものがあるように、歌うことも自分の世界だけを追求するものと、社会で起きていることを歌うものの両方をやることで、もっと自分らしいものができていくんじゃないかなと思いました。
──今おっしゃったように、自分たちの身の回りに起きていることに目を向けたのが、まさに今作『Early Project 2』の1曲目に収録されている「Riot」ですよね。<都合よく書き換えた事実の裏側で 殺されたエンターテイナー>という歌詞から始まる現代へのメッセージソングですが、どうしてこの曲が生まれたのでしょうか?
それこそファンの方ともSNSで繋がれる時代だから、発信するときには必ず受け取ってから発信するようにしているんですけど、そうすると、みんなが世の中に対して感じている違和感みたいなものも感じるんですよ。世の中の変なものに振り回されて、それでいて自分たちのことはずっとわからないままでみたいな。そういうものを忘れたくてライブに来てくれる人もいると思うし、僕ももちろん「一緒に楽しい世界行こうぜ」っていう気持ちもあるんだけど、同時に、「確かにそうだよね」って言いたい気持ちもあって。僕たちに今すぐ何かを変えることは無理かもしれないけど、みんなで「そうだよね」って認識し合って、何かを変えようとすれば、まずは一つのガードになる。そうやって、現実も見ながら音楽も一緒に楽しめる仲間でいたいなって思って。歴史を振り返ってみると、どうしていいかわからないときに人々を動かしてきたのが暴動なんですよね。ネガティブな意味じゃなくて、いい世界を求めて動き出すのが暴動。僕にとっては、音楽がそういうものなんです。僕の音楽を好きでいてくれるファンの人たちと、その暴動の火種のようなものを共有できればと思ってこの曲を書きました。
──実際、今まで社会に対する思いを綴るような楽曲はこれまで書いてこなかったと思うのですが、書いてみていかがでしたか? 難しかったですか? それとも書いてこなかったぶん、書きやすかったですか?
そうですね。時間はあまりかからなかったですけど……ぱっと出てきたものをそのまま曲にしたからきれいな曲じゃないというのは自分の中ではわかっていて。実はこの曲はリリースするよりもずっと前からライブはでやっていたんです。でもそのときは後半の歌詞がなくて。
──前半だけだと、より強い曲の印象を受けますね。
そうなんですよね、でも“きれいにまとめあげることができなかった”というのも自分の中の一つの答えだし、これはこれでまず歌ってみようと思って。ギター1本ならなんとでもなるし。そう思って歌い続けていたんですが、やっぱりそれだと、投げかけて終わってしまう感じがして。だから、そういう状況に対して、自分はどうしていきたいかという思いも入れて、ちゃんと曲として完成させようと思って後半を加えました。
──ボーカルレコーディングはいかがでしたか? メッセージが強いぶん、歌う際に意識したことやこだわったことがあるんじゃないかなと。
ハモりやコーラスのボーカルアレンジはかなりこだわりました。自分のハモだけに反響音を入れて、目を閉じて聞いたときに“riot(暴動)”が起きていくような、前進していくようなイメージで。ただ……そうやっていろいろ詰め込んではいるんですけど、歌詞がすごくストレートなので、余計なものはいらないと思っていて。すごく攻撃的な歌詞で、ギター1本で聞くとみんなちょっとウッとなるけど、音源で聞くと、割とクールに聞けて、平常心で世の中で起きていることに向き合えたらいいなって。
──シンプルに聴こえるようにいろいろこだわったと。
そうです。僕なりにバランスを考えて皆さんに届けたつもりです。でも、これをまたライブでやるとどうなるのかは、僕にも想像がつかなくて。
──今回のツアーでまた曲の印象が変わるかもしれないですね。
そうですね。去年ツアーに来てくれた人はこの曲の前半部分は聞いていると思いますが、その方たちに「なるほど、これが完成系か」と思ってもらえるに、僕ももっと詰めていきたいなと思っているところです。
──2曲目の「Why so serious」は、歌詞もサウンド感も「Riot」とは打って変わって軽やかな楽曲です。
こんなこと言うのは良くないかもしれないんですが……今、EPを曲順で聞く人って少ないと思うんです。だから僕は今回、収録曲は全部違う世界観の楽曲にして、その中にピンとくるものがあったらそれをチョイスしてもらればいいかなと思っていて。実はこの曲も弾き語りのライブではもう披露しているんです。
──弾き語りのほうなんですね。サウンド感的に、てっきり「Q3 Tour」かと。
違うんですよ。だからこのアレンジは、ファンの方もまだ知らないんです。
──そうなんですね。ではバンドサウンドも含めて、この楽曲のアレンジをするうえで意識したのはどのようなことだったのでしょうか?
70’sのイメージでアレンジしました。当時は当時でいろいろな問題はあったんでしょうけど、僕の中では70’sの音楽ってすごくスカッとしているイメージで。心がバーっと開けていて、風通しが良いイメージ。作っていたときから、そういう雰囲気にしたいなと思っていたので、簡単なビートで懐かしさを感じるメロディにしました。
──歌詞の世界観はどこから出てきたものなのでしょうか?
この曲は、ループステーションを使いながら作っていたんですけど、今話したようなサウンドを作っていたときに、一気にサビの歌詞が出てきたんです。曲の雰囲気は全然シリアスじゃないけど「serious」という言葉が出てきて。そこからこの言葉に合う世界やメッセージを考えていったら、周りの目を気にして自分のことをうまく表現できていない人へ向けて「肩の力を抜いて、こんなもんでいいんだよ」と伝える曲が合うんじゃないかなと思って、こういう歌詞になりました。
──そして既発曲からは「シャンデリア」が収録されています。
この曲は昨年末に出したんですが、浄化するような想いを込めた曲です。クリスマスの時期の曲なので、本当はもっとキラキラした明るい世界を歌うべきかもしれないと思ったんですが、去年の年末に1年間を振り返ったときに、「今年は結構しんどかったな」と思ったんです。1月から悲しいニュースがあって、僕自身もことあるごとに悩まされた1年で。そう思ったときに、僕の中でのメディテーションになるような曲が欲しいなと思って、この曲を作りました。前向きな思いときれいなサウンドということを意識して作ったので、年の終わりはもちろん、疲れた日の夜とか「明日頑張ろう」って思ったときに聞いてもらえるとうれしいですね。
──「浄化」とおっしゃいましたが、讃美歌のような厳かさがありますよね。
まさにそういうホーリー感を入れられたらなと思っていました。この曲はピアノで作ったんですよ。ピアノだからこそ出てくるメロディーや、ピアノが運んでくる言葉ってあるんだなということを知って、作っているときすごく楽しかったです。曲は悲しいんですけどね。僕、自分のルーツにColdplayがあって。クリス・マーティンのアップライトピアノのサウンドがすごく好きなんです。思えば、Coldplayにもすごく讃美歌を感じるんですよね。静かなんだけどエネルギーを感じるというか。そういうものを自分の中のルーツからうまく取り出せたような気がします。
──ボーカルがかなり大きな要素を占める楽曲ですが、レコーディングはいかがでしたか。
レコーディングはすごくスムーズでした。最初は「難しいメロディになってしまったな」と思っていたんですけど、馴染んでくるとすごくハマってきて。キーは結構高いところまで行っているんですが、それもピアノでメロディを考えたからこそ。そこも歌っていて気持ちよかったし、楽しかったですね。
──普段はギターで曲を作られると思うのですが、ピアノで作ってみていかがでしたか?
ピアノで作ると、優しい歌が自然と生まれるんだなと思いました。コロナ禍に作った「We’ll be fine」という曲も、メロディはピアノ鍵盤で作ったんですよ。だからなんとなく、ああいう夜っぽい世界が見えてきたんですけど。今まではその使い分けみたいなのが自分のなかであまり明確にわかってなかった。なんとなくバラードっぽい曲を作りたいなと思ったらピアノがいいかな、みたいな感じだったんですけど、今回「シャンデリア」を作ったことではっきりしました。
──そのほかに今作で新たにチャレンジしたことや、ご自身のなかで「これはトライしたな」と思うことはありますか?
実は今回のEPでは「Riot」でベースを弾いたり、スタイロフォンという使ったことない楽器を触ったりと楽器に触れる時間がすごく増えたんです。それによって自分のスキルもどんどん上がっていて。
──ベースも!?
はい。サックス以外、全部弾いたんじゃなかったかな。
──すごいですね。楽器も全部自分で弾こうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?
曲を作ったときに、自分のなかで他の楽器のパートも「こうしたい」というものが見えているんですよね。それを、弾ける方にお願いするときに、ニュアンスを伝えるのがどうしても難しくて。だったら自分で触って、ニュアンスを出せるならそっちのほうがいいなって思ったんです。もちろんそれでも弾けないものに関しては助けてもらうんですけど、自分でやったことがないのにやらないと決めるのは違うかなと思って。特にベースはすごく興味があったし、ループステーションを使うときにギターでベースをイミテートして弾くことも多いからやってみようかなと思って。レコーディングしながらベースも弾けるようになるし、いいことしかないんですよ。
──確かにそうですね。でも、そう思ってできるようになるのがすごいですよね。
いやいや。そんなに難しくない……って言うのもあれですけど、僕の頭の中に見えている音を追いかけるというやり方だから、楽しくできるんですよ。あとベースに関しては、音楽を始めた頃はベースって一番地味な楽器だなって思っていたんです。でも音楽を知れば知るほど、ベースの大事さに気づいて、ベースのカッコ良さも見えてくる。それを自分でできるようになると超気持ちいいんですよ(笑)。たぶん、他の楽器でも全部そうだと思うから、今後も、自分ができそうだなと思ったもの、興味を持ったものには積極的にトライしていきたいと思いましす。
──そうしてできた今作は「Early Project 2」。今作にこのタイトルをつけた理由を教えてください、
2022年に“最近自分が取り掛かっていたものたち”という意味を込めて「Early Project」というEPを出しまして。今回も同じように、ライブを経た今の自分が実験的に作ってみた作品という意味で、このタイトルを継続して付けました。
──前回「Early Project」を作ったときに、シリーズ化するというのは想像していたのでしょうか?
そうですね。自分の中で、EPというものはアルバムとはやはり違うと思っていて。基本的にこういうランダムな作品になる。もし他にピッタリハマるタイトルが生まれたらそれでもいいと思っていたんですけど、僕の中ではシリーズ化していくほうがわかりやすいかなとは思っています。とか言って、次のEPは違うタイトルになっているかもしれないですけど(笑)。
──でも“実験的なもの”という意味のEPシリーズがあると、今後も実験しやすいですよね。
そうなんですよ。実験もしやすいし、ちょっとした気持ちを曲に残していきやすいので。
──そして5月からは本作を携えてツアー「Riot Tour -今こそ立ち上がれ!-」が始まります。「Riot」の歌詞を使用したツアービジュアルもインパクトがありますが、どんなツアーになりそうですか?
ビジュアルでは「Riot」にフューチャーしていますけど、このEPとしてのメッセージが「Riot」のメッセージとイコールではないのと同じで、この曲のメッセージを打ち出すツアーにするつもりはないです。だから皆さんも戦闘体制では来ないでくださいね(笑)。“今の時代を共有する”という姿勢は「Riot」と通ずるところはありますけど、ちょっと帯を締めて帰れるような、温かくて熱いライブにできればと思っています。
──「Early Project 2」が“最近の自分が取り掛かっているもの”というテーマだということで、今のReNさんを知るために、本作制作時もしくは最近、感銘を受けたカルチャーがあれば教えてください。
それでいうと、ヒップホップには影響を受けましたね、再認識というか。僕は兄貴がいるので、兄の影響で2000年初期のものを中心に、もともとヒップホップはよく聴いていたんですが、「Riot」を作っているときに、ふとこの曲はラッパーのマインドと近いなと親近感が湧いて。そこから聴くのがもっと好きになりました。それに、自分の音楽にラッパーを交えてみたいなということも最近ちょっと思っていて。僕はラップができないので、一緒に鳴らしてみたらどんな音楽になるんだろうなって。
──ラップとReNさんの音楽、すごく合いそうですね。
だといいな。めちゃくちゃ興味あります。そういう曲、書いてみたいですね。