MUSIC 2026.07.31

祝25周年!! サマソニに込めた想いをクリエイティブマン清水代表にIsaac Y. Takeuが訊く。「文化は進化、変化していくもの」「規模感が大事」

Photography_Daikichi Kawazumi, Text_TAISHI IWAMI
EYESCREAM編集部

日本はもとより、今やアジアを代表するワン&オンリーな音楽フェスティバルである〈SUMMER SONIC〉、通称サマソニ。2000年の初開催以来、グローバルな音楽シーンの潮流をいち早く捉えたブッキングで毎年、音楽ファンを歓喜させ(時に戸惑わせながら)、また数えきれないほどの新たな音楽ファンを作り出してきた。ここ数年は東京・大阪の両会場を合わせて2日間で約20万人を動員するまで規模を拡大しており、25周年という節目を迎える2026年は3日間開催で約30万人の動員を見込む。The Strokes、Ado、L’Arc-en-Cielといったヘッドライナーをはじめ、David Byrne、Jamiroquai、FKA twigsなどなどジャンルもフィールドも世代も超えた、かつ“今こそ観たい”トップアーティストが揃う今年のサマソニ。8月14日(金)、15日(土)、16日(日)の開催まで1ヶ月を切ったなか、同フェスを主催するクリエイティブマンの清水代表を直撃した。訊き手は、サマソニのSpotify StageのMCも務める人気ポッドキャスター/クリエイターのIsaac Y. Takeu

――Isaacさんは昨年、東京のSpotify StageのMCを務められましたが、どうでしたか?

Isaac:コミュニティとして完成されているというか、国内で唯一と言える、グローバルでジャンルも多彩なラインナップがあって、そこに集まる人々の音楽愛や熱量を感じるフェスティバル。そこに運営側の一人として参加させてもらえたことは、ほんとうに貴重な経験になりました。だから今日は聞きたいことがたくさんあって、まずサマソニが始まったのは2000年ですが、開催に至るまでの経緯を聞かせていただけますか?

清水:クリエイティブマンを立ち上げたのは1990年で、そこから10年かけてUSのオルタナティブロックやパンク、UKのインディーロックといった、さまざまなロックアーティストの公演を軸に手掛けてきました。1回目の〈SUMMER SONIC〉は、その時点での集大成と言える内容でしたね。

Isaac:クリエイティブマンがスタートした1990年は、まだ日本に今のようなフェスはなかったですよね? その頃からフェスをやろうという構想はあったのですか?

清水:いいえ。立ち上げ当初はCLUB QUATTROや、もっと小規模のクラブでの公演から始めて、海外アーティストも年に数回しか呼べなかったし、社員も僕も含めて二人だったから、そんなに大きなことは考えていませんでした。

Isaac:そこからフェスをやろうと思った、きっかけのような出来事があったのでしょうか。

清水:いくつかの角度から、「これはもうやるしかないな」と思うようになりました。まずは、海外のアーティストやエージェントとの繋がりが広がってきて、私自身もUKのレディング(Reding Festival)など海外のフェスにも行くようになったことですね。1日に何十ものアーティストのライブが観られることに、「こんな夢のような世界があるんだ」と感じたときの幸福感を、日本の音楽ファンにも感じてもらいたいと思いました。

あとは、1994年にRadioheadの初来日ツアーを、1996年にはGreen Dayの初来日ツアーを手掛けたことも大きかったですね。彼らのようなアーティストをブッキングし続けるには、自分たちも大きくなっていかないとなって思った時に、フェスというコンテンツを意識し始めるようになりました。そして1997年にフジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)が始まるわけですよ。そこで日本国内におけるフェスシーンが大きく動きましたね。

清水直樹


Isaac Y. Takeu

Isaac:海外アーティストを軸に展開するフェスは、当時フジロックしかなかったですよね? 

清水:大規模なものはそうですね。クリエイティブマンとしては1994年にタワーレコードと一緒に〈イグアナラマ〉っていう小さなフェスを日比谷野音でやってるんですよ。House of Pain、The Jesus Lizard、Helmet、BOREDOMSといったラインナップで、アメリカのロラパルーザ(Lollapalooza)の小規模版みたいなイメージでした。

そのあと、我々は1998年に川崎CLUB CITTA’でパンクをフィーチャーしたアメリカのワープドツアー(Vans Warped Tour)を日本で開催するなどして力を蓄えて、2000年のサマソニ初回につながっていった感じでしたね。そしてフジロック、サマソニ、ライジングサン(RISING SUN ROCK FESTIVAL)、ロックインジャパン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)の4つのフェスが出揃った2000年が、今の国内のフェスシーンの母体になっているように思います。

Isaac:フジロックとの差別化は意識しましたか?

清水:特に強く意識はしていませんでした。フジロックはUKのグラストンベリー(Glastonbury Festival)のような感じで、自然とキャンプが魅力のフェスです。それに対して私は、アクセスのよいレディングのようなフェスにも魅力を感じていたのと、ちょうどその頃、レディングがリーズとの2箇所開催で、演者が入れ替わるスタイルになったことがロールモデルになっています。

――サマソニだけタイトルに“ロック”というワードがないですよね。

清水:ロックだけにあらずということは、当初から考えていました。そのなかでロックにはこだわりたい、という考えは今も昔も変わってないですね。タイトルは夏にやりたかったから“SUMMER”という言葉がまず浮かんで、そこに音をイメージさせる言葉を足したくて。オルタナティブロックやインディーロックが好きな私たち世代は、“SONIC”って、アイコニックなワードというか。Sonic Youthとか、Sonic Boomとか。それで語呂もいいから〈SUMMER SONIC〉にしました。

Isaac:そのお考えのうえで、初回の出演者はほぼロックアーティストでしたよね?

清水:そうですね。さきほども言いましたが、ロックアーティストの公演を中心にやってきた我々の集大成的な意味合いがあったのと、あとは時代もそうでしたよね。フェスと言えばロック、それだけの母数と需要がありました。

Isaac:そのなかにJames BrownとArrested Developmentが。

清水:ヘッドライナーはGreen DayとThe Jon Spencer Explosionでしたが、一方で私は1960年代や70年代のR&Bやファンクも好きで、1997年にはクリエイティブマンで来日公演を開催したJames Brownにオファーしました。Arresred Developmentは、80年代にロックだけでなくヒップホップの台頭を体感してきたことや、Beastie BoysやPublic Enemy、De La Soulらとも仕事をしたことのある流れを汲んでいます。


Isaac:そして初回は2ステージだったところから、ステージ数も増えていき、ジャンルの幅も広がっていきます。なかでも2007年にヒップホップのThe Black Eyed Peas、2009年にR&BのBeyonceがヘッドライナーの一翼を担ったことは、その先にある新しいサマソニのイメージの基盤になったような気がするのですが、時代の流れをどう捉えていましたか?

清水:Beyonceはコーチェラ(Coachella Festival)やほかの海外のフェスよりも早くヘッドライナーとしてオファーしましたし、Black Eyed Peasはライブを観て「これは間違いなく楽しい」と思ってブッキングしました。サマソニは世界中のアーティストのライブが日本でも観られるように、トップアーティストを呼び続けられるように、規模を大きくしていきたいという想いがあったので、そうなると洋楽のロックを軸にし続けることが難しくなっていったんですよね。

それは悲観的な話ではなくて、もともと幅広いジャンルをカバーしていくことは頭にありましたし、文化は進化、変化していくものですから。そのなかで、規模を大きくしていくことをマストにすれば、ずっと同じようなイメージのことはできないじゃないですか。海外だと例えばダウンロード(Download Festival)のような、ヘビーメタルに特化した10万人規模ですっとやっているフェスもありますけど、日本でジャンル特化型の洋楽アーティストを中心としたフェスをやるとなると、その半分以下の規模を維持するかシュリンクさせて続けていくしかない。

Isaac:とはいえ、ヘッドライナーの色を変えるというのは、チャレンジだと思うんです。

――2008年にロック色の強いレディングでヒップホップアーティストのJay-Zが、2007年のサマソニではBlack Eyed Peasがヘッドライナーを務めた際も、大きな物議がありましたよね? 結果、どちらも伝説的なステージになるわけですが。

清水:そこは、自分がワクワクするかどうか、今誰のどんなライブを観てもらいたいのか、どこまでいってもオーガナイザーとして欲求です。Black Eyed PeasもBeyonceもそうですね。

チャレンジという意味で言うと、Beyonceの翌年、2010年はその要素が強かったように、振り返って思いますね。Jay-ZとStevie Wonder、両日ともロックではないアーティストがヘッドライナーを務めたのは初で、オーディエンスの戸惑いもこの年がもっとも大きかった感覚がありますし、動員も振るわなかった。でも二人のレジェンドとしてのパワーがあって、その後のサマソニの方向性が固まる、もっとも意味のある回の一つになりました。そして今は、BlurとKendrick Lamarがヘッドライナーだった2023年、The 1975とPost Maloneの2022年のように、ロックとヒップポップアーティストがヘッドライナーになることが自然になったし、アジアやK-POP、国内のアーティストも含め、よりグローバルでジャンルの幅も広いブッキング力を持った唯一のフェスだと自負できるようになりました。


――では、今年のサマソニはどんなところが魅力ですか?

Isaac:今年で25周年、おめでとうございます。

清水:まず、近年のサマソニはコーチェラから受けた影響が大きいですね。主催のプロモーター、Goldenvoiceとは1990年代から付き合いがあって、コーチェラの変遷もずっと見てきたんですけど、世界の今を反映しながら多様化していくラインナップもそうですし、2010年代に入ってからは配信を始めたことによる影響力も、フェスシーンにおいてとても重要なことだと思います。そんななかで、年々ロックアーティストがフィーチャーされることが少なくなっているところについては、サマソニは頑固にやっていきたいなと。ロックを育てたいという想いは強いです。

そのうえで、今年は特に、25周年ということもあって、昔のロックなサマソニに戻ってほしいという声にも応えたい気持ちも強くて、2003年と2011年にも出てくれているヘッドライナーのThe Strokes、初回のヘッドライナーだったJon Spencerもそうですし、David Byrneのようなレジェンドや、初期のサマソニを盛り上げてくれたZebraheadなども呼びました。

Isaac:ジャンル問わず、新人アーティストも強いですよね。

清水:今年は2日ではなく3日間開催ということもあり、新人もしっかりブッキングできましたね。Billie EilishやDua Lipaのように、早い段階で見られたことをのちに自慢できるようなアーティストが誰になるのか。第1回目で初来日だったColdplayやトップバッターだったMuseがのちにヘッドライナーになった、そんな歴史を刻んでくれるようなアーティストが出てくるのか。すごく可能性のあるラインナップになったと思います。

Isaac:清水代表のおすすめするアクトも、ピンポイントで聞きたいです。

清水:今ここで読者の方に挙げるとすれば、FKA twigsですね。私がずっと好きなRadioheadやBjorkのようなオルタナティブ/インディーアーティストからの影響を受けつつ、その感覚をポップなものへと昇華する音楽性、ダンスもあわせてライブで構築される世界観の完成度やパワーは最高峰と言っていい。そしてDavid Byrneもそうですけど、コーチェラの配信で日本でも話題になったアクトがすぐに日本で体験できる、という流れもすごくいいことだと思っていて。みんな心のどこかでフィジカルな体験に飢えていると思うんです。「やっぱこれだ」って感じてもらえると思います。

あと、Isaacさんが去年MCをやってくれたSpotify Stageも、大きな見どころのひとつですね。もう4年間続けているのですが、サブスクリプションサービスによるアップカミングなアーティストのキュレーションは自分たちにはない視点だから、個人的にも毎年注目しています。

Isaac:自分が今、好きな目当てのアーティストはもちろん、まだ見ぬ新人との出会いも楽しみですし、北海道の田舎にいた若い頃、サマソニが遠くの憧れだった時代を感じさせるブッキングにも惹かれますし、ほんとうに楽しみです。

清水:まさに、いろんな角度から楽しめるようになっていますね。新しいアーティストが好きな人にはサマソニの原点的なアクトも楽しんでほしいですし、初期の懐かしさから今回行ってみようかなと思っている人にも、新しい音楽を発見してほしいです。

Isaac:こうして話をさせてもらっただけでも、僕のサマソニに抱いていた想いが一本の線で繋がった気がして、ワクワクしました。今日はありがとうございました。

清水:ありがとうございました。

INFORMATION

SUMMER SONIC 2026

日時:2026年8月14日(金)、15日(土)、16日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園

https://www.summersonic.com/

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