2017年9月16日 大阪 心斎橋JANUS『VS SANABAGUN. Round 2』
2017年9月24日 東京 渋谷WWW X『VS SANABAGUN. Round 3』
いや、もう、ほんとにクラった。場所は恵比寿リキッドルーム。SANABAGUN.『THUG TOUR』のツアーファイナル(ワンマン)である。5月26日の仙台に始まり、全国6ヵ所を経ての東京場所。前情報として『SANABAGUN.が最高の状態に仕上がっている』とは聞いていたが、ここまでとは……。正直言って吹っ飛ばされた。この上ないほどに楽しませていただいた。
6月23日、金曜日の夜。アルコールを求める人々が行き交う交差点をすり抜けてリキッドに到着。階段を上がる。このツアー自体が“Powered by BEAMS T”の冠を擁していることもあり、2階には大量のTシャツが掲げられたブースも見え隠れしていた。バンドの物販ブースでは、音源付きでリリースされたSANABAGUN.× BEAMS Tの(オリジナルカラーのホワイトは販売と同時に即完)会場限定カラーであるブラックも販売されていたが、これもすぐに無くなってしまった様子。
そう、これもSANABAGUN.の特徴の1つだと思う。というのは、ファッションカルチャーとの結びつきを明確に提示した活動を展開しているという点。だから、彼らのライブには、ドレスアップした観客が多く集い、ライブだけではなく、“音楽を含め、その場を楽しもう”という雰囲気が作られるのではないか。
さて、時刻が20時を回るとSEと共に暗転、文字通りパンパンのリキッドルームが大歓声をあげ、弾けるようにステージに登場したメンバーに向けて差し出される約1000人×2の手の平。前述したSANABAGUN.× BEAMS TのTシャツと合わせてリリースされた新曲『Yukichi Fukuzawa』からライブがスタートした。続いて『板ガムムーブメント』では、恒例の板ガムばら蒔き。3曲目『B-Bop』終了と同時に全員で「SANABAGUN.だ、味わえ」のシンガロングで『SANABAGUN. Theme』で、フロアの空気を一層締める。
この日のフロアとステージの一体感は凄まじく、バンドがライブを通して伝えようとするアクトに、しっかりオーディエンスが応じ、シンクロしていた。だから、熱気は言わずもがなすさまじい。セットリストもMCもバッチリ。
中盤に『Mammy Mammy』のイントロが始まると同時に「マミー! お母さーーん!」とステージに叫ぶ美女軍団もいて。日本全国探しても、ステージに「お母さん」なんて叫びかけられるバンドも彼らだけだよな……と。
第一部終盤『BED』演奏後には、無音の中、高岩遼によるキレッキレのアクション。特に意味のない動き1つ1つに、あんなにも盛り上がるってどういうことなのだろう。そして、あのアクションとレスポンスは予め予定されていたものだったのだろうかーー。機会があったら高岩本人にそれとなく聞いてみたい。アンコール『実家帰りなよ』でラップリレーが観れたのは、古くからのファンにもたまらなかったはずだ。とにかく、会場には何もやっても完璧にピースがハマるような暖かい空気感が終始溢れており、愛のある光景についついニッコリしてしまった。
こういったライブはフロア後方が関係者で埋められることが多く、その一画は腕組みした紳士淑女による、いわゆる“大人見”の光景が広がることが多いのだが、この日は驚くことにフロアの隅々まで、全員がライブに陶酔し、体を揺らしていた。リキッド全体でバウンスしたような状態だ。こんな風景が作れるのもSANABAGUN.だからこそ。皆、本心で彼らの音楽を信じているし、バンドが、その期待に120%応じる強さを持っているからであろう。
終盤、岩間俊樹は「汚ねぇ路上でライブをやっていたときからは想像もつかないほど大勢のお客さんが来てくれて光栄だ」というMCをしていたが、彼らはゼロの状態から自分たちのやり方と音楽で、着実に歩いてきたのだ。だが、もちろんこの日は、予定されていた通過地点。今後、この10倍、100倍のキャパシティを容易に埋め尽くすバンドになっていくのだろう。
SANABAGUN.はこの日、対バンライブ『VS SANABAGUN.』を9月に大阪・東京で開催することを発表。このツアーファイナルを経て、9月にはどんな光景を見せてくれるのか。これからも楽しみに待っている。