先日、ファーストアルバム『BODY』をリリースした、現代のSSW・AAAMYYYにEYESCREAM NO.170ではフォーカス。PAELLASのMATTONやBEAMS×EYESCREAMのプロジェクト「PLAN B」を介して交流を深めたNY在住のComputer MagicとJILもフィーチャリングとして参加した本作について、彼女にインタビューを試みた。
“BODYも屍体を指すし、今回は死生観や宗教観がかなり強くなっていて”
ー今回が初アルバムになりますが、これまでにリリースされたカセットテープEPに収録されている楽曲とまったく異なる新曲が並んでいることに、まず驚きました。
「EPをたくさんリリースした後のアルバムって、その中のベストソングを収録して、ちょっとだけ新曲を入れるというアプローチが多いと思うんですけど、そういうベスト的な内容ではもったいないと思って。それに、これまでリリースした作品は制作当時思っていたことを提示した内容なので、現時点の自分とはちょっと違うものなんですね。だから『BODY』もしっかりとコンセプトに即した、今の自分を表す内容にしたいと思って」
ー『BODY』のコンセプトとして近未来の世界観などが語られていると聞きましたが、タイトルの意味と合わせて教えてくれますか?
「死生観や宗教観が強くなっています。『BODY』も屍体を意味するBODYなんですね。延命するとか老化しないとか。また、そういうものに憧れる人間だとか。そういうこともテクノロジーが進化した先には現実に成り得るかもしれないし。宇宙科学に関しては、冬眠カプセルによるコールドスリープの技術が熱心に研究されていますし。まだ現実にはなっていないけど、そんな現状が確かにあって。それも生死観の否定肯定に繋がるのかな、と思うんですよね」
“EYES(feat. CONY PLANKTON)” (Official Music Video)
ーなるほど。いわゆる近未来を描いた映画やドラマなどは好きですか?
「好きですね。私はネットフリックスが好きなんですけど、特に衝撃を受けた作品は『アナイアレイション-全滅領域-』や『マニアック』。小説ベースだったら『私立探偵ダーク・ジェントリー』とかなんですよ。SF色の強いものが好きで。今作で言うと3曲めの『被験者J』の歌詞は『マニアック』から影響を受けている部分もあるんです」
ー今挙げていただいたのは、まさに未来感のある作風ですよね。シンギュラリティなど、AIが世界を支配する時代が来るのでは?なんてことが最近ではニュースになることもありますよね。
「それもどこかで世界が間違えちゃったらあり得ることなのかなって。でも、もしAIが支配するような世界が来たら、もう一面の世界にすぐ行けるのかな?とかも考えますね。1曲めの『β2615』は2615年のβ版、という意味なので、裏の世界を表現している感覚なんです。映画『FRINGE/フリンジ』が、まさにそういう表裏の世界の物語なんですけど」
ーそういう世界観が歌詞からも伝わってきますが、リリックには明確な個人が登場しているんですか?
「架空の人物の場合もありますし、私自身のこともあります。あとは特定の誰かでないとわからないようなメッセージも入れています。例えば喧嘩別れしてしまった人がいて、そのときには伝えられなかった思いを伝えるには、時間の経過と、手紙など物として残る言葉が必要だと思うんです。そんな意味合いでのメッセージ性はちょっと込めたりしました」
ーじゃあ、聴く人が聴けば「自分のことかな?」と思える曲もある?
「もしかしたら、ですけど(笑)。でも、そういう経験って誰もがすることじゃないですか。そこに対して自分の意見が全てということではなくて、事実をどう受け入れ良い方向にシフトできるのか。そういう方法論や精神論とかを歌詞にしているんです。そして聴いた人に考えてほしいんです。曲やアルバムのタイトルと歌詞を紐づけて、その人自身の世界で掘り下げていってほしいという思いがあって」
ーサウンド面においては2000年代初頭のポップスを彷彿させるキャッチーさも感じました。
「そこは意識しました。当時のポップ感に響くような音像になるようにミックスをしたんです。その時代の音楽は私も好きですし、昔のカメラだとか、古い家、車といったレトロなものに惹かれるしノスタルジーを感じるんですよ。だから歌謡的な部分でも、楽曲にそういった空気感を反映しているのかもしれないです」
ーちなみにソロ以外にもあらゆる場所で音楽活動されていますし、楽曲提供なども精力的に行っていますよね。そんなAAAMYYYさんにとってのソロ作というのは自分にとってどんな存在ですか?
「私にとってソロは純粋に自己表現する場所です。ミュージシャンが自分の考えを発信する場所として、最近ではSNSが舞台になることが多くなっていると思うんですけど、それが私の場合はソロ活動を通した提示だと思っています。普段から活動しているTempalayやRyohu、TENDREでは、そこまで強く自己主張をせず、自分の作品とは違う別なものを表現しているので、そこは異なる点だと考えています」
ーTempalayに関しては正式にメンバー加入して活動されて。そういった経験は今作『BODY』にも影響を与えていますか?
「かなりありますね。参加している各集合体が、それぞれ全然異なった空気を持っていて面白いんです。会話する内容、ヴァイブスの共有の仕方がちょっとでも違うだけで、こんなにも違うものになるのかな、ということを考えながら、その場で話をするのがすごく楽しいんですよ。1歩外に出たらワクワクが待っているような楽しい状況です」
ーでは最後に。今年、何かやってみたいことはありますか?
「やっぱり今年はいっぱいフェスに出たいですね、バンドでもソロでも。1つのお祭りじゃないですか、フェスって。それに出て楽しむのはもちろん、それに向けてメンバーみんなで絆を強くしていく作業が楽しいと思うんです」