WONK 4thアルバム『EYES』
混沌とした世の中への問題提起と壮大な宇宙を描いた超大作

Photography_Kisshomaru Shimamura, Text&Edit_Mizuki Kanno

WONK 4thアルバム『EYES』
混沌とした世の中への問題提起と壮大な宇宙を描いた超大作

Photography_Kisshomaru Shimamura, Text&Edit_Mizuki Kanno

先日、配信生ライブ「EYES SPECIAL 3DCG LIVE」の開催を発表したWONK。アバターとなったメンバーが、仮想世界でライブを繰り広げるといった新しいエンターテインメントが、8月22日(土)に披露される。その舞台となる架空の映画『EYES』の脚本がベースとなった、彼らの3年振り4枚目のアルバムが、去る6月にリリースされた。都合の良い情報のみに囲まれた未来の世界で生きる主人公の葛藤が、全22曲の楽曲を通して描かれ、私たちにさまざまな“EYES”を受け入れることの意義を問う超大作だ。「私たち自身の中に“自分だけのものさし”を取り戻そうという思いを込めた作品です。本作を通して起こりうるアクションが皆さんの人生にとって、何かしらプラスになりますようWONK一同願っています」(荒田洸)。彼らの配信ライブが目前に迫ったいま、本作について改めて話を聞いた。

L to R→井上幹、江﨑文武、長塚健斗、荒田洸

じっくり自分と向き合って考える、“余白”を残すことが大事。

ー自粛期間明けに発表されたアルバム『EYES』ですが、期間中は何をして過ごしていましたか?

江﨑:この機に、初めて家庭用ゲーム機を買いました。ニンテンドースイッチとプレイステーション。ゲームって進んでたんですね。「どうぶつの森」とか、曲のクオリティーの高さにビビりました。ちゃんと全部生録。メインテーマのトランペットは、エリック・ミヤシロさんが吹いていて。ニンテンドーが賑やかしで、「どうぶつの森」に参加している奏者の方々の演奏動画をアップしているんですけど、中央にエリック・ミヤシロさんが鎮座してた(笑)。

荒田:おもろいね。僕はこの期間に引っ越しを。前の家はワンルームだったから閉鎖空間すぎて、部屋数の多いところへ。引越しするには、ちょうどいいタイミングでした。

江﨑:更新料払って引っ越す、サイコパス転居。

荒田:寄付だと思ってる。

ーラジオ上でのセッション動画もアップしてましたね。

井上:WONKはもしかしたら、ラジオ上でのセッションを配信した初のバンドかも。リアルタイムでの配信ができないっていうのは、課題としてありますけどね。音楽はちょっとしたズレが致命的なので。

江﨑:でも、そこを活かしてセッションをやってる方々が増えてきていて、面白いんです。フリージャズセッションっていうのにチャレンジしている知り合いがいて。映像には遅延がないから、音を切って、体の動きだけでセッションをするというものなんですけど。音楽的にちゃんと成立していて、面白いなと思います。音楽の幅が広がっている。

荒田:ミュージシャンの適応能力は、半端ないですからね。

ー『EYES』は架空の映画がベースとのことですが、どんな話なんですか?

井上:情報社会が発達した、未来の世界の話です。全員がマスクを被っていて、自分の視界を自由に操ることができる世界。見たくない情報は排除して、好きなもののみに囲まれて生活することで、考え方自体も偏ってしまう。そんな社会に主人公が疑問を持つところから話は始まります。彼が月に住む異星人と出会うことで様々な感情を知り、自分の世界を変えるべく、奮闘していくといった感じです。はたまたラブコメディー。

江﨑:ではないですね(笑)。

井上:閉鎖的な情報社会で生きることへの、主人公の葛藤が描かれています。

ー現代社会と通ずる部分がありますよね。コンセプト・アルバムになってると思うんですけど、今作のテーマはみなさん共通の想いだったんですか?

江﨑:意識が重なるところはたくさんありました。

井上:根幹となるテーマに、みんなの問題意識を擦り合わせて、同じ方向に進んだ感じです。

荒田:エコチェンバーという言葉で表現されるような状況に疑問があって。自分に都合の良い情報で周りが塗り固められている状況が多くなってきていますよね。様々な価値観を受け入れ、考え続けることへの意味を本作を通して提示しています。

ー答えみたいなものは、見つかりましたか?

江﨑:今作は問題提起をするところに留めておくというのが、多分バンドとしての総意だったのかなと思っていて。アルバムをリリースするということが、僕らなりの答えでした。

井上:現時点での答えって多分それぞれ違っていて、ただそれを考えるための手助けや、きっかけになる作品を目指して作りました。

江﨑:“余白”を残すことがすごく大事だなと思うんです。今は、すぐに正しい答えを求められる時代。反省しているのかどうかよりも、世間が炎上したら、即座に謝罪が求められる。そういう風潮が、世の中の攻撃性に拍車をかけていると思います。『EYES』という作品は、そういったことに対してのアンチテーゼでもあり、もっとじっくり自分と向き合って、考えようという意味も込められています。

ー歌詞は長塚さんが書かれていますよね? 混沌とした世の中への救いを求める描写が多い印象でした。

長塚:特に自粛期間に入ってから、様々な出来事があったじゃないですか。自分自身の気持ちも引っ張られてしまいそうな時もありました。でも、今作で描かくべきことは、現実に僕らが目の当たりにしている出来事ではなく、あくまで作品の主人公の心情。脚本に沿って曲をあてはめ、ここでは何を語るのがベストなのか、といったことを考えながら書きました。主人公の心のバランスみたいなところの表現。図らずとも今の社会と繋がる部分はあったと思いますが、作品の世界観をどのように膨らませていくのかが課題でしたね。

ー今はシャッフルで音楽を聴く人が多いと思いますが、『EYES』は主人公の心情の変化を各楽曲が紡いでいて、作品を通して聴くと、長編映画を一本観終えた感覚になりますよね。

荒田:ヒップホップで主に使われているスキットという手法を、WONKの作品ではよく取り入れていて。いつもはインタールード(間奏)として使っているのを、今回はあえて語りで入れたことによって、より物語の中に没入できるような気が僕はしています。だから、順を追って聞きたくもなる。

長塚:物語の転換点となる部分は日本語で説明してあげたほうが、リスナーには届きやすいのかなと思い、あえてこの手法を使っています。歌詞は英語になってしまうので、スキットでおおまかなあらすじを把握してもらう。分かりやすかったと言ってくれるリスナーさんも結構いて。物語を言葉で色付けしていく役割です。映画作品感というか、アルバムは通して聞かないとダメだ感がより助長されますよね。

ー特に印象的な楽曲はありますか?

井上:完成までに1番時間を費やした曲でいうと「if」かな。2年前のデモからあるよね。ずっと作り続けてるわけではなく、寝かせ続けてきた感じ。

江﨑:曲の全体の雰囲気は決まったものの、しっくりくる状態を探して、試行錯誤を繰り返しました。AOR的なイントロから最後に繋がっていく感じ。これまでのWONKにはない楽曲だから、これを形にできたらかっこいいだろうなと全員が思いつつ、具体的に詰めていくとなんか違うというジレンマを抱えていて。それを最終的に完成の域まで持って行ってくれたのが井上。

井上:あれはかなり勢いで仕上げましたね(笑)。その曲だけ最後まで残ってしまって。でも今までアレンジを試していなかったわけでもないし、行き詰まった勢いでやってみました(笑)。

江﨑:幹さん(井上)がまとめてくれたことで、逆にインスピレーションが湧いてきて、真ん中の部分はジャズにした方がいいなと閃きました。納品まであと2日の時点で、ジャズベーシストの方にお願いしました。「すみません、明日納品なんですけど今日録ってきてもらっていいですか」って。なのであの曲は、井上の作ったハードロックなテイストにコンテンポラリージャズが挟まるという新しい構造になりました、2日前に(笑)。

井上:一つ前の楽曲の「Depth of Blue」は、ディズニーランドのエレクトリカルパレードの曲っぽいって結構言われるんですよ。スペイシーで楽しそうな感じ。そこからの「if」だから、AORに行き、ハードロックから、コンテンポラリー・ジャズになっていくみたいな。忙しい(笑)。

長塚:あと、「Esc」の歌詞は何度もやり直したよね。フックのメロに当てはまる言葉が全然決まらなくて。ハイパースペースドライビングとか、イングリッシュマンインニューヨークとか……..(笑)。深夜までレコーディングに参加してくれたミュージシャンと、みんなでひたすら考えた作業は大変でした。そのあと荒田が考えてきてくれたやつにポンて決まってね。

荒田:その後も、結局めちゃめちゃ時間かかったけどね。

-今作ではアートワーク含め、月や宇宙を意識している部分があると思うんですけど、そういったSFの世界観への憧れはありますか?

江﨑:僕、月の土地持ってるんですよ。小学生の時に、サッカーコート1面分を3000円で買ったんです。なのでいつか行ってみたいです、自分の土地に。みんなでサッカーしましょう。

井上:イナズマイレブンみたいな必殺技ができるね。

長塚:SF映画の世界の中だけだった話が今はもう、そう遠い未来の話じゃなくなってきていますからね。SFを観てるかのごとくイーロン・マスクがやってるスペースXの活動が観れるんで。

江﨑:アポロ計画とかあった時代の機密文書とか、今ちょうど保管期限が切れ始めたものがでてきてるしね。

荒田:あれもおもろくない? 2050年のムーンショット計画。

井上:何でもできるようになってるだろうね。

-仮想空間からの配信生ライブ“EYES SPECIAL 3DCG LIVE”もそんなイメージなんですか?

荒田:時間と空間から解放されて、もしかしたら、宇宙に行けるかもしれないですね。

長塚:まあ、詳しい演出は当日までお楽しみにということで。期待してもらえたら、嬉しいです。

INFORMATION

『EYES』

On Sale
[収録曲]
01. Introduction #5 EYES
02. EYES
03. Rollin’
04. Orange Mug
05. Sweeter, More Bitter
06. Filament
07. Skit 1 – Behind The World
08. Mad Puppet
09. Blue Moon
10. Signal
11. Esc
12. Skit 2 – Encounter
13. Third Kind
14. Depth of Blue
15. If
16. Skit 3 – Resolution
17. Heroism
18. Fantasist
19. Nothing
20. Phantom Lane
21. Skit 4 – Prayer
22. In Your Own Way
https://caroline.lnk.to/Eyes_AL_Wonk

INFORMATION

「EYES SPECIAL 3DCG LIVE」

2020.8.22 19:00
配信先:Streaming+
視聴チケット発売:イープラスWEB/アプリにて発売開始
チケット価格:¥3,800-(システム手数料¥220別)
https://eplus.jp/sf/detail/2336590002-P0030013?P6=001&P1=0402&P59=1

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