TRI4TH×岩間俊樹(SANABAGUN.)対談。ジャズ+αのハイブリッド・グルーヴと熱いラップが炸裂する

photography_Ryuichi Taniura, text_Taishi Iwami

TRI4TH×岩間俊樹(SANABAGUN.)対談。ジャズ+αのハイブリッド・グルーヴと熱いラップが炸裂する

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TRI4THがメジャーからの3枚目となるアルバム『Turn On The Light』を10月7日にリリースする。これまでも打ち出してきたように、インストのジャズを基調にパンクやスカなどをハイブリッドさせたグルーヴという持ち前の魅力に、これまでの経験値をもってあらためて正面から向き合った、豊かでありながら小細工なしのシンプルで生々しい一枚となっている。そんななかでひときわ異彩とも、チャレンジングという意味ではもっとも原点的とも言える、作品のパワーを一段上に押し上げネクストフェーズを示すのが、SANABAGUN.のMC、岩間俊樹を迎えた「The Light feat. 岩間俊樹(SANABAGUN.)」だ。TRI4THのフィルターを通してヒップホップにアプローチしたサウンド、世代を超えて共鳴する岩間の詞。ここに両者を迎えた対談が実現した。

L→R / 関谷友貴(Bass)、織田祐亮(Trumpet)、伊藤隆郎(Drums)、藤田淳之介(Sax)、竹内大輔(Piano)

岩間俊樹(MC / SANABAGUN.)

ー今作『Turn On The Light』は、TRI4THのプリミティヴな本質にもっとも迫った作品だと思いました。例えば、ここにいらっしゃる岩間さんとの「The Light feat. 岩間俊樹(SANABAGUN.)」の詞、TRI4THはジャズを基調に、スカやパンクのハイブリッド・グルーヴが持ち味だと宣言している「River Side」、ケルト音楽とパンクのエネルギーを融合したザ・ポーグスの代表曲「Fiesta」のカヴァーなどは、そのことをダイレクトに示していると感じたのですが、いかがでしょうか。

伊藤:今作については、コンセプトとかイメージとか、そういうゴールみたいなものはまったくなくて、とにかく必死でやったということを強く言っておきたいです。その結果、本質的だと思ってもらえたのかもしれないですね。というのも、メジャーに入ってから2枚のアルバムをリリースしたんですけど、そこから今作に着手するまでのあいだは正直苦労しかなくて。みんなで悩みまくったし、やりたくないこともやってきた。でも、それも含めて僕らはなかなかない良い環境で作品を作らせてもらっていると思うんです。それならせっかくだし、3枚目というひとつの節目とも言えるタイミングで、やりたいことを好き勝手やろうと。だからこそ、自分たち自身に厳しい目を持って、60曲以上作った候補曲のなかから、ほんとうにいいと思う曲だけ、いいと思うメロディだけ、大好きな曲のカヴァーだけを厳選した全11曲。これしかないと思える気合いの入った一枚だと思います。

ーSANANAGUN.には「メジャーは危ない」という曲がありますが、岩間さんはいま伊藤さんがおっしゃったことについては、どう思いますか?

岩間:僕とTRI4THのみなさんが同じことを感じているかはわからないですけど、結局はメジャーそのものが危ないというより、環境が変化したり、聴かれる層が広がったり、ライブの規模感が上がったり、そういった変化によって自分のマインドをいかに保つかが難しいんですよね。自分との戦いの瀬戸際に立たされてしまうということだと思います。

ーそういった意味合いでも、今回の「The Light feat. 岩間俊樹(SANABAGUN.)」から感じることは多いのですが、まずは今回のコラボレーションに至った経緯を聞かせていただけますか?

伊藤:僕らは“インストジャズバンド”というカテゴリーで活動していますけど、今回は声を使うアーティストと一緒にやりたいねって、メンバーとスタッフのあいだで話していたんです。そこでまず初めに名前が挙がったのが岩間さんで。そのあとSANABAGUN.のライブを観に行って、最新アルバムのプレイベントみたいな……、あれ何て言うんですかね?

岩間:去年出したアルバム『BALLADS』のタイミングですね。僕らはいつもアルバムを出すたびに公開ゲネライブみたいなことをやっていて。いつも通りお客さんは入れるんですけど、本格的なリリースツアーの前ということで、いろいろふざけたことをやってる、その姿を最初に観られちゃいました(笑)。

伊藤:シンプルにすごいと思いましたね。バシッと演奏がはまるところと、例えばMCの掛け合いとか、企画性のおもしろさとのメリハリがおもしろくて。

織田:エンターテインメントとしての完成度の高さに驚きました。

伊藤:そのあとマイナビBLITZ赤坂でのツアーファイナルも観たんですけど、ゲネのときにはなかった、序盤のガンガン曲で繋いでいくストイックな演奏でショウアップしていく感じが特に印象的でした。ソロ(リベラル a.k.a. 岩間俊樹)のパフォーマンスも観たんですけど、それもまた違った魅力があって、岩間さんのことを知れば知るほど制作への意欲が高まりましたね。

ー曲を作るにあたって、お互いにどんな話をしましたか?

伊藤:曲の大きな骨組みは、岩間さんといろいろ話す前に作っていたんですけど、詞に関しては実際にお会いして僕らの気持ちを話しました。来年の結成15周年に向かうような姿勢を、ラッパーと一緒に日本語の詞が入った曲を一から作るという初の試みのなかで示したかった。

ーラッパーのあっこゴリラさんと組んだ「Shot The Ghost -あっこゴリラREMIX-」は、昨年リリースしたアルバム『jack-in-the-box』収録曲のリミックスだったので、一から作るとなると今回が初となるんですね。

伊藤:はい。そこで「自分たちの歴史を代弁してもらえたら嬉しいです」と伝えたら、岩間さんのフィルターを通して素晴らしい詞が返ってきました。そこがこの曲で何よりもグッときたポイントですね。

ーすごく胸が熱くなるカッコいい詞だと思いました。岩間さんはTRI4THの魅力をどう捉えたのでしょうか。

岩間:楽器の演奏力は高いですし、そもそも大先輩なんでどう言ったらいいのかわからないんですけど、勝手な僕のイメージでは、けっこう不器用というか、人間くささを感じたんですよね。会話になると情熱をうまく伝えられないみたいなところは、僕と似てるなって。

伊藤:なるほど。そうかもしれない。

岩間:あと、テクニカルという意味での演奏スキルはすごく大切なんですけど、それを持っているからといって、多くの人に伝えたいことが伝わるわけじゃない。そこは100%イコールにはならないじゃないですか。

岩間:SANABAGUN.はそこでけっこう葛藤することがあるんですけど、伊藤さんと織田さんに実際に会って話を聞いたうえで、TRI4THにも同じような想いがあるんじゃないかと思ったんです。叩き上げのスペシャルなスキルとともに、オーバーグラウンドで戦おうとしていることにシンパシーを感じたので、そこをしっかり押し出していきたいと思いました。

伊藤:めちゃくちゃ嬉しいですね。

岩間:竹内さん、関谷さん、藤田さんとは歌詞を書くまでにじっくり話す機会がなかったんで、座右の銘とか、TRI4THの音楽を言葉にするならとか、質問をたくさん投げて。お三方の答えにもすごく共感したので、後半部分にはそこで出てきた言葉を詰め込みました。

竹内:グループLINEでやりとりして。僕らはみんな歌詞になることが前提ではなく、ただ正直な気持ちを返信しただけだったので、そこをどうまとめてくれるのか興味津々でした。見事に僕ら一人ひとりの言葉を拾ったうえで、素晴らしい歌詞にしてくれた。

関谷:僕らはメンバーそれぞれ、音大出身だったり、誰かに師事したり、音楽を理論として学んできたので、相応のスキルはあるのかもしれないけど、まさに岩間さんがおっしゃったように“葛藤“ですよね。テクニカルな方向に向かえば人に伝わるわけじゃない。実際に、TRI4THのサウンドは年々シンプルになってきている。

藤田:僕らは順風満帆にそつなくいろんなことをこなしてきたと思われることもあるけど、けっこう四苦八苦しながらがむしゃらにやってきました。そこを汲み取ってもらえたことはほんとうに嬉しかった。自分たちだけでは表現しきれなかった部分を形にしてもらえて、岩間さんと出会えてよかったと思いました。

岩間:ありがとうございます。そんなに褒めてもらったことないです(笑)。

織田:バンド内でそんなに褒め合うことってないよね(笑)。

岩間:いつも「ふざけた歌詞ばっかり書きやがって」って言われるから(笑)。もっと褒めてください。

竹内:伊藤が言ったように、曲の骨組みは岩間さんと曲作りに関するコミュニケーションを取る前からできていたんですけど、実際に詞が上がってきたことで、じゃあ今度はこっちが頑張らなきゃって、よりイマジネーションが湧いてさらにサウンドを前進させることができたと思います。

ーサウンドが変化していくプロセスについても聞かせてもらえますか?

織田:SANABAGUN.とTRI4THはお互いジャズがルーツにあって編成も近いし、それに僕がもともとSANANAGUN.が大好きだったことも重なって、最初は引っ張られちゃったんですよね。

伊藤:最初、(SANABAUN.と)すげえ似てたんですよ。織田が(SANABAGUN.を)好きなのは知ってたから、「ナチュラルにそうなってんのかな」って思いつつ、ギリギリまで突っ込んでなかったんですけど、いよいよ骨組みを決めていくっていう最終段階で、「これ、パクッてない?」って言っちゃいましたから(笑)。

ーこういうミニマルな展開の曲は、かなり珍しいですよね?

伊藤:実際に岩間さんと話す前までは、展開があるというか、「AがあってBがあってドーンッときて、ここでスウィングしていって、ビートも変わって」みたいな曲をイメージしていました。でも、そういうスキルは自分たちらしさのひとつではあるけど、ここはワンループにこだわってラップ乗せたほうがいいかもなって。

織田:岩間さんも「リフで押し切るヒップホップがやりたい」って言ってくれたんで、だったら今までやってこなかったことだけど、やってみようと。

ー初めてラップありきで曲を作っていくうえで、どんなことを考えましたか?

伊藤:ラップがどうというより、ヒップホップそのものとどう向き合うかですね。メンバーみんなヒップホップは好きなんですけど、そのカルチャーに精通しているわけではなくて。僕らはジャズをアイデンティティとして持ちつつ、雑食性を大切にしています。同時に、スカやパンクといったさまざまな音楽性を採り入れるうえで、それぞれの文化的な背景や意味を理解することもすごく大切だと思っている。「ヒップホップやってみようぜ」って、そんな簡単にペロッとやるもんじゃない。

ーそこはどうクリアしたのでしょうか。

伊藤:ジャズの雰囲気を漂わせながら、なんとなくBPMを落としてそれっぽくして、みたいにはなっちゃいけないなって。そこで、僕らが今までに聴いてきた90年代や00年代のヒップホップだけじゃなくて、そこまで深くは聴いてなかった新しいヒップホップ、それこそケンドリック・ラマーをあらためてしっかり聴いたりとか。彼は、ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンといったジャズミュージシャンとも一緒にやってるし、生っぽい良さもあるじゃないですか。そういったあたりも参考になったし、ほかにもいろんなアーティストの音色に着目するとか、いろいろ調べましたね。でも、それだけだと何かと似たものになってしまうし、ならばと従来のTRI4THらしさを意識しするとそれはそれでやりすぎちゃう。

織田:そんなことを何度も繰り返してできた曲です。

ーそのトライアル&エラーの細かいプロセスも気になります。

関谷:例えば、こういうリフ系のヒップホップって、僕の先入観かもしれないですけど、エレキベースやシンセベースが主流だと思うんです。そこにTRI4THのウッドベースをはめようとすると、サスティンが伸びないんでうまくいかない。音を伸ばすには歪ませないといけない。そうするとウッドベースらしさ削がれてしまう。試行錯誤した結果、低音のところだけを歪ませることにしたらそれが見事にうまくいきました。僕が最近買った120年前に製造されたウッドベースのアコースティックな音色と、2020年にヒップホップをやるということが、うまく両立できたんじゃないかと思います。

ー岩間さんは、“平成生まれ”と世代を強く打ち出して活動しながら、世代を超えてコラボしていくことについて、どう感じていますか?

岩間:伊藤さんが、「ヒップホップのことを知らないのに簡単にやるもんじゃない」とおっしゃってましたけど、それって、先輩方が文化へのリスペクトをちゃんと持ったうえで行動することをすごく重んじてくれているからだと思うんです。僕らよりもっと下の世代になると、そんなこと関係なくズカズカ入ってくるし、いろんなものに対してライトに手を出すんですね。それもすごくいいことなんですけど。

ー岩間さんはちょうどその中間くらいの世代。

岩間:そのなかで、僕個人は「マインドもねえのにヒップホップなんて書くんじゃねえ」っていう考え寄りなので、伊藤さんがおっしゃったような思いは僕なりにすごくわかります。なおかつ、みなさんは僕の知らない時代を生きてきた、僕の知らないことをたくさん知っている人たちなんだって、音を聴けばわかる。僕はそういう先輩たちのことをもっと知りたい。あえてちょっと生意気な言い方をすると、「ヒップホップのことはよく知らないって言うけど、ジャズでもなんでも、芯があるじゃないですか。それってすげえヒップホップですよ先輩」って、ヒップホッパーとして思いますね(笑)。何が言いたいって、「この曲だけは俺がTRI4THのフロントマンだ」って、それくらいの気持ちで詞を書けたのは、先輩たちのバックボーンのおかげ。感謝しています。

織田:僕らも、岩間さんのおかげで新たに可能性のあることがやれて、きっと今までTRI4THのことを知らなかった人たちにも聴いてもらえるでしょうし、めちゃくちゃ感謝しています。

伊藤:「あいつらいつもおもしろいことやってるな」と思ってもらえるのが一番。僕らを好きな人たちが僕らに求めるサウンドがあることはありがたいんですけど、それが正解だって自分たちで線を引いて飽きてしまわないように、変わり続けていきたい。いつも新鮮な気持ちでいられれば、この5人でもうすぐ15年になりますけど、まだまだ続けていけると感じています。

INFORMATION

TRI4TH「The Light feat. 岩間俊樹(SANABAGUN.)」

[Streaming/Download]
https://smer.lnk.to/U24gx3go

■TRI4TH
New Album『Turn On The Light』
2020年10月7日(水)発売
初回生産限定盤(CD+BD)デジパック仕様:4,000円(税込)
通常盤(CDのみ):3,100円(税込)

[収録内容]
CD
01. Move On
02. For The Loser feat. KEMURI HORNS
03. The Light feat. 岩間俊樹(SANABAGUN.)
04. Bring it on
05. Fiesta
06. Moanin’
07. Corridor in Blue
08. River Side
09. Fineday
10. Sailing day
11. EXIT

初回生産限定盤 -特典映像BD-
「SING ALONG TOUR」at マイナビBLITZ赤坂 2019.11.27(wed) Digest

予約URL
https://smer.lnk.to/TurnOnTheLight

Instagram / Twitter / FacabookなどSNS各種は以下より
https://linktr.ee/TRI4TH

■岩間俊樹
SANABAGUN. 2020年初の有観客ライブは3公演合計「378席」のプレミアムライブ!

SANABAGUN.『LIVE 378』
2020年9月11日(金)梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00

2020年9月16日(水)渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00

2020年9月17日(木)渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00

チケット前売:5,000円(D代別)
チケット一般発売日:2020年8月22日(土)

SANABAGUN.HP
http://sanabagun.jp/

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