MUSIC 2021.05.13

Report LIVEWIRE:THE MATSURI SESSION -ZAZEN BOYS vs NUMBER GIRL- at 日比谷野外音楽堂

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

5月4日に日比谷野外音楽堂で開催された『THE MATSURI SESSION』。ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLの2マンライブという未曾有の組み合わせが有観客ライブ&配信で開催予定であったが、コロナ禍による時勢を踏まえ、無観客の配信オンリーでの公開となった。スペースシャワープロデュース「LIVEWIRE」で配信されている本イベントをレポート。

夕暮れは逢魔時。人あらざる何かと出会ってしまうかもしれないという根拠のない畏怖の念と、それを期待する静かな高揚感をもって野音のステージを見つめて没頭すること、およそ3時間。今日が何年の何月なのかも曖昧になるような異空間を経て、我に返ったのは2021年5月4日20:30現在。
ああ、すごかった『THE MATSURI SESSION』。この気絶していたような時間をレポートできる語彙量は全然持ち合わせていないです。

配信では聞こえていただろうか。ライブ開始時刻頃、17:00を告げるチャイムが、どこからともなく日比谷野外音楽堂に微かに聞こえてきて、それをバックに、楽屋口からは「夕焼け小焼け」にも似たメロディを張り上げる向井秀徳の歌声。
あー、「カ~ラス〜×××××」って歌が聞こえるな、ノスタルジア……と思っていたら、スルスルとNUMBER GIRLが出てきて、ガーンというギター音がVOXから。「日常に生きる少女」が唐突に始まり、「福岡市博多区からやって参りました。NUMBER GIRLです」という2曲目「鉄風 鋭くなって」前のMCで、うわ、本物のNUMBER GIRLだ、と究極に当たり前のことを思いながら血の気がサーッと。

以降、約1時間に渡るNUMBER GIRLのライブが展開される。セットリストは最後に列記するが、古のファンにとっては全曲、イントロだけで脳天が痺れるような選曲。黒い半袖シャツを着た向井秀徳を中央に、黒Tシャツ(向井秀徳デザインの『THE MATSURI SESSION』オリジナルTシャツ!!)1着でジャズマスターを構える田淵ひさ子、向かって左手に黒ロンTの中尾憲太郎。2人がアヒト・イナザワのリズムに合わせてぴょんぴょんジャンプする姿も、THIS IS NUMBER GIRLだ(いや、当たり前なんだが)。

今、30代中盤以上の年齢で『THE MATSURI SESSION』を視聴する人であれば、全員がNUMBER GIRLとの思い出を持ち合わせているだろう。私の場合は、それが、例えば20年前の2001年のRSRだったりして、あの日、演奏された「ZEGEN vs UNDERCOVER」や「TATTOOあり」を野音で浴びていると、そのときのことが、ストレートにそのまんまフラッシュバックしてきて、時空の平衡感覚を保てなくなって、色んなことを思い出して赤面した。あのとき、私は高校生で、通学時にNUMBER GIRLを音漏れさせながら『この車両でナンバガ聴いてる自分が最強』とか思ってた。……消えたい。今は音漏れしない程度の音量で、しかもカーステレオで聴いているから他人様に迷惑はかけていない。

閑話休題。
ライブの仔細はさておき、まだ『THE MATSURI SESSION』を視聴していない人へのリコメンドとして、次の話を。
ライブ終盤にさしかかり、いよいよ夕闇に包まれかかった時刻に演奏された「排水管」(というタイトルであろう)楽曲。「塩田明彦監督が新作を作りました」というMCから続く1曲なのだが、向井秀徳の新作であることは確か。曲終わりのギターとベースのユニゾンが本当に綺麗で。誰も聴いたことのないものであろうから、ZAZEN BOYS、NUMBER GIRL、双方の(もしくは、どちらかの)ファンであるならば絶対に聴いておいた方がいい。美しい曲であります。

NUMBER GIRL終演後、セットチェンジの合間に日比谷公園を少し歩く。緊急事態宣言中のGWということもあって昼から人はまばらだったが、日も暮れて、いよいよ静けさに包まれている。公園を根城にしている方々は就寝の準備を進めていて、普段はいないはずのスケーターが数人で笑い合いながらトリックを決めんと笑顔で滑り続けていた。見たところ10代、彼らにも野音からの轟音は届いていたか。

時刻は18:30を回って、「MATSURI STUDIOからやって来ました」ZAZEN BOYSに。MIYAと松下敦による屈強なリズムに乗る吉兼聡のギターの単音へ、今度は白シャツに身を包んだ向井秀徳のリリックが複雑に絡む。「自問自答」からスタートしたダンスタイムは「Honnoji」、「Himitsu Girl’s Top Secret」と続く。

時折ブレイクやリフでスネアの連打が起こると、それが日比谷の高層ビルに反響して、静かな野音にフィードバックし、どこか厳かな儀式めいた空気が生まれていた。辺りがすっかり暗闇に包まれてしまうと、ZAZEN BOYSの影が照明によって映し出される。さながら、森の中で秘密結社が2拍子3拍子(などなど)を不変則に操りながら談合しているようなシーンではないか。こちらもセットリストは末尾に列記するが、リヴィングでビール片手に体を揺らさざるを得ないビートの応酬。いよいよ酔いが回ってくる。

本編は「遊び足りない」と連呼する「Asobi」で終幕。アンコールとして用意されたのは「フィッシュ&チップスの忘れられんっちゃんねって曲」という向井秀徳1人で演奏されたサカナクションのカバー「忘れられないの」。最後の最後にゲストであるLEO今井を招き、「Kimochi」がかき鳴らされた。ステージ脇に向かう5人は口々に「Kimochi」の歌詞を口ずさみながら、向井秀徳はLEO今井と肩を組み合って楽屋口へ。
ステージから全員が見えなくなっても、その後しばらく、アカペラがこだましていた。

17:00にどこからともなく歌が聴こえ始め、20:30にステージが空になっても歌は続く。その歌声がどこで始まり終わったのか、正面だけを見つめている我々にはわからない。このライブは配信として届けられるものであるから、この描写には何か1つの終わらない映像作品を提示されているように感じられた。

あの時間はなんだったんだろう、ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLの2マンライブっていう壮絶な夢空間だったんだけども。
と、『THE MATSURI SESSION』が終わってから何度も振り返ったが、今ひとつちゃんと話すことができない。だから、文字でうまいこと表現することもできない。繰り返しになるが語彙量が足りない、という言い訳になる。
まぁ、強いて言うなら、人じゃない何か化物じみたものに突然、殴打されたようなもので、というか、恐らく事実として、テレキャスでぶん殴られているわけで、もはや事故である。この配信を観た各ご自宅で、または友人宅や愛人宅で、もしくはオフィスのデスクなどのパーソナルな空間で、数多の個人的事案が多発したことであろうから、ひと騒動あったと言って差し支えない。5月4日『THE MATSURI SESSION』によって、日本全国に局地的祭り状態大発生。すなわち、「異常空間Z(引用:向井秀徳)」である。

ZAZEN BOYSからNUMBER GIRLを知った世代も、NUMBER GIRLからZAZEN BOYSを追いかけ続けている皆々様も、LIVEWIREで5月17日(月)までアーカイブ配信を視聴することができるので、ご都合の良い時間帯に、各々事故ってみてはいかがだろう。
飽きるまで何度でも観ればいい、何回でも事故ればいい。

また、向井秀徳デザインの『THE MATSURI SESSION』TシャツがSPACE SHOWER STORE限定販売中。本配信の忘れ形見としていかがでしょう。

SET LIST – NUMBER GIRL
01.日常に生きる少女
02.鉄風 鋭くなって
03.タッチ
04.ZEGEN vs UNDERCOVER
05.透明少女
06.YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING
07.水色革命
08.排水管
09.TATTOOあり
10.OMOIDE IN MY HEAD
11.I don’t know

SET LIST – ZAZEN BOYS
01.自問自答
02.Honnoji
03.HIMITSU GIRL’S TOP SECRET
04.COLD BEAT
05.Weekend
06.ポテトサラダ
07.はあとぶれいく
08.杉並の少年
09.破裂音の朝
10.Asobi

en01.忘れられないの ※サカナクション カバー
en02.Kimochi ※with LEO今井

Photograph_Shigeo Jones Kikuchi(DYNASTY)
Text_Ryo Tajima(DMRT)

INFORMATION

ZAZEN BOYS / NUMBER GIRL|“THE MATSURI SESSION” ver.【LIVEWIRE】

LIVE STREAMING TICKETS
LIVEWIREにて見逃し配信中
https://livewire.jp/p/matsurisession
見逃し配信:
2021.5.17 mon 23:59 JSTまで
チケット販売期間:
2021.5.17 mon 21:00 JSTまで

ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLのツーマンライブ「THE MATSURI SESSION」、新たにディレクターズカット版映像を公開!
5月4日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で無観客ライブとして行われ、スペースシャワーがプロデュースするLIVEWIREを通じて生配信されたこのライブの、ディレクターズカット版がこの度公開。
新たに映像の再編集を行い、サウンドもニューミックスで当日のライブを、より生々しく伝える映像となっております。既に視聴済みの方も、まだこのライブを未見の方も、5/17(月)まで視聴可能ですので、ぜひご覧ください。

『THE MATSURI SESSION』向井秀徳デザインのオリジナルTシャツ販売中
https://spaceshowerstore.com/detail.php?goods_id=2777

「THE MATSURI SESSION」オリジナルTシャツ 
¥5,000(TAX IN)
カラー:ブラック/ナチュラル
サイズ: S / M / L / XL 
※スペシャストア期間限定販売アイテムとなります
販売期間:5/4(火・祝)16:00〜5/17(月)23:59
※スペシャストアへの会員登録(無料)が必要となります
※商品の発送は5月中旬以降で順次発送となります。

ZAZEN BOYS
http://www.mukaishutoku.com/

NUMBER GIRL
https://numbergirl.com/

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