LIVE TALK WITH GRAPEVINE

Text_Naoto Okutomi(BOY)

LIVE TALK WITH GRAPEVINE

Text_Naoto Okutomi(BOY)

GRAPEVINEの約2年振り・17枚目となるニューアルバム【新しい果実】が、5/26にリリースされた。
ルーツミュージックを軸にあらゆる要素を巻き込み、現代の解釈で柔軟に織り成す表現と年々深まっていくグルーヴ。リリースを絶やさず、時間を重ねてきたGRAPEVINEだからこそ響かせることの出来る爽快さと繊細さが美しい傑作となっている。
このアルバムを更に楽しんでいただく為、VICTOR ONLINE STOREおよびSPEEDSTAR CLUBでスペシャルパッケージ盤や初回限定盤を期間内に早期ご予約、ご購入頂いた方への招待制オンラインプログラム「LIVE TALK WITH GRAPEVINE」をアルバムリリース日に決行。
メンバーとトークを繰り広げる中で、オンライン上で視聴者の質問もまじえつつ、各楽曲それぞれについて伺った。

・M1-「ねずみ浄土」

―先行シングルとして発表されている楽曲ですが、曲もMVも新鮮で意外な印象でした。

田中:基本的に僕らはビデオのイメージを持たずに、監督のセンスにお任せしているんですが、かっこよくて驚きましたね。MIKIKO先生が振付されることは聞いていたんですけど。

―メンバーが出てこないビデオというのも、これまであまりなかったイメージです。

西川:本当はビデオの最後にちょっと出る予定だったんですよ。ちょっと嫌だなと思って。

―なんでですか(笑)。

西川:自分が出てくるとガッカリするじゃないですか(笑)。
田中:わかるなあ。この雰囲気でせっかくかっこいいのに、自分ら出てきたら嗚呼ってなるもんね。
西川:最後に主役の女性とすれ違うっていうシーンがあるかもしれなかったんですよ。

―コメントで沢山”オシャレ””映画の様”と書かれていますね。

田中:たしかにこのビデオはオシャレですね。
亀井:以前ビデオを撮ってもらった監督に見せたら嫉妬してましたね。悔しいと。

―(笑)。ビデオはCAVIARの志賀匠さんディレクションの作品ですね。

田中:今回は3本とも志賀さんにお願いしましたね。

―亀井さん、ドラムは苦労されましたか?とコメントがきています。

亀井:そうですね。結構特殊なパターンなので苦労しましたね。かっこよく録れたので満足してます。
田中:作る前はどういうものになるか想像出来なかったんですけど、見事にGRAPEVINEのやり口として成立したなと。あまりやった事がない感じの曲だけど、うまくいった手応えがあるかな。

―曲を作る際にどういうイメージにするかという前提はあるものなんですか?

田中:良く聴くブラックミュージックから触発されてデモをつくったんですが、GRAPEVINEとしてどう消化するかはバンドに持ってってからかな。
コーラスはデモの段階で三声四声いれてましたね。こういう曲ってコーラスで成立されている所があって、まずコーラスで構成を作らないとっていう所から始まってますね。
西川:最初は、メインとコーラスが逆になってるパートもあったんですよ。
田中:本当は一番低いところをメインにしようとしてたんですけど、実は聴かせたいところは真ん中だなと思ってそこをメインにしました。

―アルバムタイトルの【新しい果実】はどなたがつけたんですか?

田中:いつもアルバムタイトルは最後につけるんですけど、全体的にどういう雰囲気かなと思って、【ねずみ浄土】の”新たなフルーツ”という歌詞からとって。一番今回のご時世を象徴しているんじゃないかと思いますね。
前作の1曲目も多重コーラスから始まる曲だったので、【ねずみ浄土】を1曲目にするのを最初は反対してたんですが、結果的にこれからはじまるのが一番ギョッとするんじゃないかという事で。

・M2-「目覚ましはいつも鳴りやまない」

田中:このビデオも斬新で良かったなあ。前々から歌詞が出てくるビデオはちらほら観てたんですけど、リリックビデオっていう言葉がある事を今回初めて知りましたね。

―映像作品3作とも志賀さんのディレクションですが、同じ方が作ったとは思えない作風の広さですね。
志賀さんにお願いするきっかけは何だったんでしょうか?

田中:以前、【FLY】のミュージックビデオをお願いした事があって、それ以来ですかね。
それも面白い感じに仕上がっていますね。センスのある方で。

―アルバムを作っている段階でどのくらいの時期に出来た曲なんですか?

田中:曲としては最初からありましたね。録音したのはあとのほうですね。
亀井:今回曲はコロナ前に揃っていたので。

―曲順はどういう風に決めているんですか?

西川:曲タイトルを書いた小さい紙を並べて、適当に誰かが並べたのを見て、いまいちだなーとか言ったり。2、3時間位で決まりましたね。
田中:めちゃめちゃアナログやね。比較的今回は悩まずスムーズやったなあ。
亀井:レコーディングの最終日に決まりましたね。最後の曲のミックスの日に決めて、そのままマスタリングに送って。
田中:今回マスタリングは海外の人にお願いしてたんで、そこに送るまでに曲順を決めなきゃいけないっていうのがあったんです。

―その場のニュアンスやテンションで左右される事もありそうですね。

田中:それはあるかもね。
西川:今回はなかったんですけど、曲間の秒数に関しては物凄く気分によって変わりますね。凄く長く感じる時もあれば、短いように感じる時もあったり。
田中:いつ聴くかにもよりますよね。夜聴くのか朝聴くのかでも全然違うし。

・M3-「Gifted」

―初めて聴いた時に、コロナ禍を通してからの曲という印象が強かったです。

亀井:よく言われましたね。
田中:コロナ禍になって久々に出したのもだし、イントロも不穏というのはありますよね。
歌詞も辛口で書いたところがあるんで、そういう意味では届いたというか、アッて思った人も多いんじゃないでしょうか。曲作っている時は歌詞はほぼ考えてないですね。ほとんど音で考えているんで。皆が演奏したりアレンジしてる時に見える景色がどんどん変わってくるんですよね。その景色がだんだん結実していく感じで。
だからどうしても歌詞は後になりますね。

―歌詞の印象が強いんで、どういう感じで作られているのか気になっていました。

田中:事細かに説明してもいいですけど、それをしてしまうとガッカリされる事も多いと思うんで(笑)。

―先行リリースの1曲目として鮮烈でした。

田中:先行リリースの曲は会社の人が決めてくれたんですけど、曲の手応えを共有していたんじゃないですかね。
【Gifted】は、ドラムの音が録れた時点で”おお!”と思ってましたね。

―先日の日比谷野音でのライヴでも披露されていましたね。

田中:Gifted含め、今回のアルバムの曲を4曲くらいやったんですけど、既にいい感じにはなってましたね。
西川:比較的手をつけやすい曲からやったので、残ってるのは結構大変な曲ですね。やってみないとわからないですけどね。結構意外な曲が成長したりもするんですよね。
亀井:【ねずみ浄土】とか、ライヴでかっこよく出来たらいいですね。
田中:あれ難しそうやね。隙間がすごい多い曲なんで。

photography_Taku Fujii

photography_Taku Fujii

―配信ライヴは、今回が初めてでしたね。

亀井:そうですね。でも、お客さんも居てたんであまり配信感もなかったですね。
田中:僕らとしては、通常のライヴが野音で出来て”良かった!気持ちええな”って。だからあんまり配信感はなかったけど、配信で観た方は喜んでくれたみたいで、そういう意味で良かったですけどね。

・M4-「居眠り」

田中:すごい覚えてるんですけど、一番最後にミックスした曲なんですよ。金戸[覚](Ba.)さんに”なんちゅう歌詞書くねん”とキレられて(笑)。

―曲を作ってから、あとに歌詞がつけられて意外な印象だったりしますか?

田中:歌入れの日まで歌詞を持っていかないんですよね。
というのは、ギリギリまでああしようこうしようって悩んでるんで。だから、メンバーは歌入れの日に初めて歌詞を見るし、歌入れの日に来れないメンバーはミックスの日に見るんですよね。それで、金戸さんがキレた、と。

―どういう点にキレていたんでしょうね(笑)。

子供にはわからない大人の悲喜こもごもを描いてるかなと思うんですけど、よくわからないそこは(笑)。

―亀井さんは今回の田中さんの歌詞はどういった印象でした?

亀井:今回は、特に意外なものが多かったかもしれないですね。和っぽいものが多かったんで。
【ねずみ浄土】しかり、【居眠り】もこういうタイトルがつくとは思ってなかったですね。

―今回、新しく挑戦した楽器はありますか?

田中:今回のアルバムは非常にベーシックかもね。
亀井:DX7というシンセサイザーが、今回割と活躍しましたね。
田中:全然新しくないけど(笑)。(高野)勲氏が持ってきたんですよ。その当時、マドンナとかa-haとか、その時代の”ああ!あの音だ!”っていうのが出るやつですね。それはすごい活躍しました。

―その音が一周してモダンになっている印象もあります。

西川:DX7の音は、今は新しく感じるんじゃないですか。
田中:80’s リバイバルが続いてるんで、もしかしたら新しく聴こえているのかもしれないですね。

photography_Taku Fujii

photography_Taku Fujii

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・M5-「ぬばたま」

田中:この曲でラップを、、ラップという程大したものでもないんですけど。ヒップホップは昔から聴いていますが、息子が最近のヒップホップをめちゃめちゃ教えてくれるんですよ。僕が聴いたことないような、ドレイクとかトラビス・スコットとか、最新のアメリカのを。

―最近教えられて聴いたので良かったのはありました?

田中:息子がチャイルディッシュ・ガンビーノを聴くんですよ。俺のイメージだと、役者のイメージだったけど、何年か前にグラミー賞取ってたじゃないですか。聴いてみたら凄い良くて。
別名で役者とミュージシャンと使い分けてて、今の人ってこういう感じなんやなと思って。

―【ぬばたま】に関して、今作でも一番ってくらい好きな曲でして。不思議なアレンジが続くけど、サビは圧倒的な解放感があって。曲の始まりと終わりで全然印象が異なるという。

西川:この曲はレコーディングして結構変わりましたね。
田中:曲の世界があっちこっちにいくというか、サイケデリック感や酩酊感がありますね。

―ちなみに、【ぬばたま】の言葉の意味は何なんでしょうか?

田中:檜扇(ひおおぎ)っていう植物の実で、黒い実なのでお歯黒の成分にも使われていたみたいなんですけど。万葉集とかでは、黒にまつわる枕言葉として使われていたみたいで。
調べたところ、ぬばたまって英語ではblack berryなんですよね。なんで、ロックワードなんだなと。

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