Interview: TAIKING-Suchmos-がRoadMovies+で表現した音楽とソロ活動について

移動が思い出に変わるカメラアプリとして、ホンダが提供するRoadMovies+。誰でも楽しくスマホ1つで動画制作ができるアプリが人気を博している。
RoadMovies+はSPACE SHOWER MUSICとコラボし、旅・移動をテーマにしたアプリ限定オリジナル楽曲をリリースしており、このプロジェクトにTAIKING(Suchmos)も参加。オリジナル楽曲を提供している。この曲には、どういう思いが込められているのか、またTAIKINGは何を考えながらソロとしての活動をし、音楽表現をしているのか。実際にRoadMovies+でムービーを作ってもらいつつ、その思いを聞いた。

大切な人と過ごす時間に向けた楽曲

ーRoadMovies+を使って、どんなムービーを制作されたんですか?

TAIKING:家族で海に遊びにいったときに撮影した動画をムービーにまとめてみました。というのも、自分が提供した曲が、大切な仲間や家族、恋人と一緒に過ごす時間で作るムービーに寄り添うものでありたいというイメージで制作したんですよ。なので、その楽曲に則したムービーを作ったんです。

ーTAIKINGさんが作った楽曲はインストで、どこか楽しくなるような曲調が特徴的ですね。

TAIKING:そうですね。サウンド的にもクールでカッコよく、というよりは、可愛らしさを意識して作ったんです。だから、家族旅行をする人の思い出ムービーにもマッチするんじゃないかと。

ー跳ねるようなギターの音色がポップな印象だと思いましたが、いかがでしょう?

TAIKING:オルゴールみたいな雰囲気で聴こえるようなギターにしたいと考えていたんですよね。あえて、ギターっぽくないことをギターで表現するというか。ギターが持つ本来のカッコよさやお洒落感って部分ではなく、オモチャを連想させるような楽しくて軽快な感覚を出したいと思ったんです。それも、さっき話したコンセプトがあったからで、作曲に関しては非常にイメージしやすかったですね。

ー提供する曲のテーマとして、家族や恋人、仲間と過ごす時間にフォーカスしたのは、何か理由があったんですか?

TAIKING:RoadMovies+のコンセプトが、すごくハッキリしていて、大切な人との思い出を残すためのアプリなんだなと感じたんですよね。だから、曲もカッコいいより可愛い方がイメージに合っているんだと、すぐに考えることができたし、作りやすかったですね。自分の中で曲の方向性をすぐに決めることができたので、スムーズに制作が進みました。

ー実際にRoadMovies+を使ってみた感じ、どうでしたか?

TAIKING:めちゃくちゃ良かったですよ! これから動画制作を始めたいと思っている人の入門編としても活用できそうです。今ではプロアマ関係なく、みんなカメラを持っているし、誰だって動画編集できる時代じゃないですか。そんな中で非常に役立つアプリだと思いました。僕は普段、ムービー制作などはしない人間なんですけど、すごく使いやすかったですね。最初は、自分でもできるのかな? って心配だったんですけど、やってみたらすぐにできちゃったんで、これは便利だぞ、と。

ー最初にムービーの長さを12秒か24秒で選べるのも面白いですよね。しかも、コマの長さを秒数で指定できるのも楽に使える理由なのかなと。

TAIKING:そう、そこで思ったんですけど、12秒設定の動画では2秒刻み、24秒設定の動画なら3秒刻みのコマでムービーを構築していくと、しっくりくるんですよ。テンポやリズム感が良いというか。これから使う人は、そこのところも試してみてはどうでしょう? という。

ーなんだかお話を聞いていると音楽制作をされているように動画編集されたような気がしてきますね(笑)。

TAIKING:いや、けっこう似ているところはあると思いますよ。今では楽曲制作ソフトの中に、色んな楽器の音色が入っていて、どれを選ぶのかが大変だったりするんですよね。特に個人でやる人は迷っちゃってまとまらなくなっちゃうんじゃないかと思います。でも、あえて機能に制限があることでゲームみたいな感じで楽しくやれる部分も出てくるものだと思うので。そのバランスがRoadMovies+はちょうど良いと感じましたね。思い出を動画でまとめたいという希望を最適化したような仕様だと思います。

音楽表現においては映像ではなくライブで魅了したい

ーちなみに、音楽と映像のカルチャー的な関係性についてはどうでしょう? どんなことを考えていますか?

TAIKING:今は映像と音楽が1つの表現として、まとまってきているじゃないですか。それはテクノロジーの進化に伴うエンターテイメントの質として、そういう時代になっているってことなんでしょうけど。でも、僕としては映像で伝えるっていうよりかは音楽で伝えたいなって思うんですよね。僕は音楽を表現することで満足しちゃうタイプで、そこに映像が不可欠だとは考えていないんです。もちろん、映像とセットで音楽表現する人を否定しているわけではないし、MVや映像作品には、それ自体のすばらしさがありますから。ライブの場面においても、ものすごく映像演出に凝った表現があると思うんですが、僕は、その壁を破りたいと思っているんですよね。

ー映像とライブは切り分けて体験してほしいという?

TAIKING:もちろん映像があって成り立つ部分もあるんですけど、その演出に甘えちゃいけないなって思っているんですよ。お客さんが音楽のライブに来てくれている以上、音楽の魅力で圧倒させなくちゃいけないし、演者として映像なしでも観客を魅了するようなパフォーマンスをしなくてはいけないと考えているんです。だから、僕は映像に頼りすぎないようにしなくちゃ! って思いながらやっていますね。

ー映像演出の魅力に頼りすぎないよう、自分に言い聞かせているような感じですか?

TAIKING:ええ、僕の場合は、あえて映像と距離を置いているというのはあるかもしれません。もちろん、映像演出が適した音楽表現はあるし、ステージをしっかりとサポートしているライブはたくさんあるので、一概に言えることではないですよ。僕の場合は、そう考えているということなんです。RoadMovies+で作るような映像は、また別ですよ。あのアプリで作れるものは、まったく別の表現になるので、個人的な視点で撮影したものに、BGMとして音楽を載っけるのは、すごく良いと思います。

ーRoadMovies+に提供した楽曲の話に戻りますが、この曲はインストの楽曲じゃないですか。TAIKINGさんは劇伴とか何か映像作品のサウンドトラックを作ってみたいとか、考えたりしますか?

TAIKING:どうだろう、その辺りは現状では考えていないですね。やっぱり歌がある音楽をずっと聴いてきて、Suchmosでもプレイしてきたので、自分の中のベーシックはそっちなんですよね。ただ、インストの曲を作るのはすごく面白かったですよ。今後、あの曲を練り直して自分の歌が載るような曲にリブラッシュしても良いかもしれないですね。うーん、そう考えてみると、意外とインストの楽曲を聴いているんですよね、最近。

ーあ、そうでしたか?

TAIKING:そうなんです。自分の周りにもインストをやっている人が増えてきたし。ある意味、言葉がないってことは良さの1つですよね。音楽に対する先入観を変に生まないし、日本語詞か英詞なのかっていう問題もないじゃないですか。今はサブスクやネットを介して、誰もが自分で作った音楽を世界に発信することができるし、自分が活動する土俵を国内だけじゃなくて世界を見据えたときにインストは効果的かもしれませんよね。まず、言語の壁をクリアできるって意味でビジネス的にも理に叶っている。そう考えると面白いですね。時代感にもマッチしているのかもしれない。

自分らしい新たな活動にトライしていきたい

ー昨年からソロ活動を本格的にスタートさせたわけですが、その辺りの時代感などは考えますか?

TAIKING:いえ、音楽に関しては、今のムードはこうだから……といったことはまったく考えていないですね。本当にやりたいようにやって、好きな人がいたら聴いていただいて、って感覚です。

ー今はEPを2枚リリースされていますが、それもTAIKINGさんが表現したいものを、そのまま自由に表したものだということなんですね。

TAIKING:そうですね。そもそもソロはバンドが活動休止したから始めたことではないんですよ。2020年のコロナ禍でメンバーと会えなくなり、ツアーが飛んじゃったときに、各々曲作りをしていた期間があったんですよね。そこで、1人で曲を作っていると、中にはYONCEが歌っているのが全然想像できないものも生まれてきたんです。で、これ(曲)どうしようかなって考えたときに、せっかく作ったんだから、じゃあ自分で歌うか! って感じでもあったんですよね。その頃から楽曲は作り溜めていて、出来た曲たちを、昼をテーマにした『RAFT』と夜をテーマにした『CAPE』に曲を振り分けていったんです。

ーでは、今後も自由にTAIKINGさんが表現したいことを曲としてストレートに発信していくというスタイルで活動していく?

TAIKING:はい、やっぱり自由にやっていきたいかなと思っていますね。でも、逆にガチガチに縛られてやるのも、Suchmosの頃に経験していないからやってみたいですけどね。

ーああ、逆にですか? 例えば、サビ始まりの曲で、とか?

TAIKING:サビ始まりで3分20秒の曲作ってください、とか。そういうことを、あまりにもやってこなかったんで、逆に、そういう縛りが明確にあるテーマで作るのも、今ならやってみたいとか思いますけどね。今回のRoadMovies+の曲に関しても、秒数や曲の条件が決まっているのが面白いと思ったんで。自分の中でやりたい方向性があるうえで、その制限とすり合わせていく作業ってプロっぽいじゃないですか。

ーそんな、プロっぽいって(笑)。

TAIKING:けっこう初めてに近い経験でしたからね、今回のは。3、4年前に同じオファーがあっても絶対できなかったですよ(笑)。今かだらこそ面白いと思えているので。

ー最後に、今後TAIKINGさんがやってみたいことはどんなことか教えてください。

TAIKING:音楽的なことで言えば、まずは自分のツアーをやりたいと思います。バンドの頃から支えてくれているファンの人もいるでしょうし、藤井風くんやRADWIMPSのツアーがきっかけで自分のことを知ってくれた人もいるでしょうし、そんな人に向けて、今自分がどうしたいのかを明示したうえで表現していきたいですね。バンドでできなかったこともたくさんあるし。

ーソロだからこそ実現したいことがあると?

TAIKING:はい。例えば、この間、ソロの1stライブをやったんですけど、ライブ撮影を許可したんですよ。本来、業界的には絶対ダメなんでしょうけど、僕は現代ならいいと判断しているんですよね。コロナ禍の中、わざわざ会場まで足を運んでくれた人には、何か持って帰れるものを現場で作れるようにしたいという思いもあって。それが正しいのかどうかはわからないんですけど、トライ&エラーをしていきたいんです。なんかこう……音楽を通してコミュニティを作りたいってすごく思うようになったんですよね。予め、セットリストを公開してライブしてみても面白いかもしれないし、ファンとBBQしても良いかもしれない。そこでファンから「あのMCはないわ~」とかダメ出しされたりしても楽しいかもしれない。エンターテイメントや音楽の形が変わっている現代だからこそ、アーティストごとの形が際立って表現されていくと思うし、そこが顕著になっていくんじゃないかと感じますね。その中で、じゃあ自分はこうやって表現して活動していこうって考えながらトライしていきたいんです。

INFORMATION

RoadMovies+

https://www.honda.co.jp/appli/roadmoviesplus/
https://roadmoviesplus.page.link/BHBK

TAIKING

https://taiking.fanpla.jp/
https://www.instagram.com/taikitotsuka/
https://twitter.com/totsukataiki
https://linktr.ee/TAIKING

Live Information
5月7日(土) OTODAMA’22(大阪)
5月28日(土) GreenRoom Festival ’22(神奈川)