OTHER 2025.05.30

adidasがゴルフカテゴリーの大規模な発表会をドイツ本社で開催 編集部の潜入記・後編

EYESCREAM編集部

adidasがゴルフカテゴリーの大規模な発表会をドイツ本社で開催 編集部の潜入記・前編

先日、adidasの本社“WORRLD OF SPORTS”で行われたゴルフカテゴリーの大規模な発表会。これに参加したEYESCREAM編集部が、6日間にわたるプレスツアーを前後編に分けて現地レポート。先週公開された前編では、広大すぎる本社やパフォーマンスプロダクトなどについてお届けした。
そして、後編では1985年にベルンハルト・ランガーがドイツ人初の「マスターズ」優勝を成し遂げて以来、約40年ぶりに復活を果たしたadidas originalsのゴルフラインOriginals Golfを中心にお伝えしたい。

気温0℃の朝8時半過ぎ。一行は、宿舎がある“HOMEGROUND”からadidas Golfのパフォーマンスプロダクトについてのプレゼンテーションも行われた“HALFTIME”へ、各自シェアサイクルや徒歩で移動。この日は、adidasではなくadidas Originalsからローンチを迎えたゴルフラインOriginals Golfのプレゼンテーションがメインだ。

これまでadidas Golfからは、スケートボードの要素を組み合わせたカプセルコレクションRolling Linksや、​​ラッパーのマックルモアが手掛けるゴルフブランドBogey Boysとのコラボコレクションなど、限定的に展開することはあったが、トレフォイルロゴを取り入れたバッグやアクセサリーを含むフルラインナップが揃うのは、1980年代以来となる。

adidasのCEOビョルン・グルデン。プライベートでは家族の他に現役フットボーラーとコースを回ることも多く、元ドイツ代表のトーマス・ミュラーとは昨年だけでも3〜4回は一緒に楽しんだそう。ちなみに、世界で最もお気に入りのコースは、中国の「ミッションヒルズ・ゴルフクラブ」

ということで、期待に胸を膨らませながらオープニングビデオを観ていると、なんとプレゼンターとしてCEOのビョルン・グルデン自らが登壇。グルデンはもともと、フットボールとハンドボールのプロ選手として活躍していた人物だが、20歳になる前からゴルフにのめり込み、子どもたちの独立を機に直近4〜5年で再度熱中。今では最も好きなスポーツのひとつがゴルフで、いわく「ゴルフ経験のないアスリートは、数えるほどしかいない」とのこと。

熱弁をふるうadidasのCEOビョルン・グルデン

「Louis Vuittonのファッションショーで、フットボールのグラフィックが使われていたことをご存じでしょうか。こんなこと、いったい誰が想像できましたか?ストリートのキッズたちを見ても、彼らはフットボールシャツを着ていますよね。このような現象は、他のスポーツでも起こり得ると思っていて、25年前はテニスがファッションシーンを牽引していました。そんな中、ゴルフは特に女性のファッションで重要な役目を担えると確信し、アーカイブも、リソースも、タレントも揃えている我々であれば、ゴルフのカルチャーごとファッションに投影することができる。そして、パフォーマンス性のあるアイテムをファッションで起きている事象と融合させていきたいーーそこで、トレフォイルの出番だったんです」

adidasのCEOビョルン・グルデンが着用しているジャージーは、Originals Golfのアイテム

時を隔てて再びOriginals Golfの復活を決めた理由については、「今がまさに正しいタイミングだから、としか言えません。adidasが再びファッショントレンドになったことはもちろん、ゴルフ界全体で起きていることもリンクしています。若い世代を中心とした新しい消費者だけでなく、他のスポーツのアスリートやミュージシャンたちもゴルフを始めていますよね。その影響はラグジュアリーブランドにまで及び、以前までの枠組みを超えた次のレベルに達しています。ゴルフは、ハイブランドからストリートまで、さらにはカルチャーそのものを変え始めているんです。だからこそ、今この瞬間がOriginals Golfをローンチさせるのに最適なタイミングだと考えました。かといって、取って付けたようにトレフォイルロゴを乗せただけのコレクションを発表するのは間違っています。アーカイブのアイテムをベースに、新しいシルエットを取り入れることで、Originals Golfは今の時代に一致するのです」と、熱い想いをスピーチ。その後もグルデンは、持ち時間を15分以上オーバーしてもなお構想を語るのを止めず、その姿からもOriginals Golfへの期待感が伝わってくる。

グルデンのプレゼンテーションの次に案内されたのは、実際にOriginals Golfを手に取って試すことができる展示会場だ。デビューコレクションとなる2025年春夏シーズンは、“ゴルフコースでは、誰もがオリジナルな形でゴルフを楽しむ”のコンセプトのもと、1970〜80年代のゴルフスタイルを着想源にデザイン性と機能性をアップデートしたアイテムがラインナップ。どれもゴルファーにとって特別な色であるグリーンとイエローを中心に、ブルーやホワイトなども取り入れた明るいカラーパレットを採用しているのが特徴だ。

また、ジャカード織りのトーナルアーガイル柄が特徴のメンズ用ニットポロシャツや、スリーストライプスのバンドディテールが目を引くウィメンズ用のノースリーブワンピースといったアパレルはもちろん、アーカイブのゴルフシューズを再構築したスパイクレスのCoursecup(コースカップ)や、名作フットボールシューズGazelle(ガゼル)のシルエットはそのままにスパイクレス仕様にカスタムしたGazelle Golf(ガゼル ゴルフ)なども登場。さらに、キャップからグローブ、ヘッドカバー、キャディバッグまで、アクセサリー類も驚きの充実具合。全身だけでなく用具一式を丸々そろえることができるのは、これからゴルフを始めようとしている方には嬉しいだろう。

adidas Golf デザイン シニアディレクターのディラン・ムーア

そして、会場ではadidas Golfでデザイン シニアディレクターを務めるディラン・ムーアが我々を出迎え、Originals Golfにおけるトレフォイルロゴについて、「三つ葉は、それぞれ意味を持っていて、真ん中の葉はadidasの長い歴史やアーカイブに基づくスポーツを、左の葉は日常的に着こなすストリートウェアを、右の葉はハイファッションを表しています。トレフォイルロゴには、スポーツ、ストリート、ハイファッションの3つの世界が交差し、カルチャーを形作っているという意味が込められているのです」と説明。続けてadidas Golfとの差別化を、「パフォーマンスロゴが付いているadidas Golfの全てのプロダクトは、アスリートのパフォーマンスを高め、競技をより良い形でサポートすることが目的です。一方でOriginals Golfのプロダクトは、クラシックな見た目や素材感でありながら、ゴルフに必要なパフォーマンス性能も備えています。ただのファッションアイテムではなく、プレーもできるプロダクトなんです」と講じてくれた。

「お分かりになる方も多いと思いますが、芝生はもちろん、伝統的なゴルフクラブのロッカールームのカーペットや壁など、グリーンはゴルフというスポーツと色濃く結び付いています。adidas Originalsといえばブルーバードカラーですが、今回はシグネチャーカラーとして“Originals Golfのグリーン”を生み出し、洋服のタグも通常のブラックかホワイトからグリーンに変更しました。今回はデビューコレクションだからこそ、ゴルフらしいビビッドなカラーパレットになっていますが、次の2025年秋冬シーズンではハイファッションの要素を取り入れ、少し柔らかくニュートラルなトーンを取り入れています」

“MAKERLAB”の入り口手前には、非売品のアーカイブブックがずらり。当然、社外への持ち出しは禁止されていた

Originals Golfのプレスカンファレンスが一通り終わると、(残念ながら編集部は食べ損ねたが)社員食堂での昼食を挟み、本社のコア“LACES”内にある“MAKERLAB”と呼ばれる場所へ。ここは、いわばadidasのフットウェアが生み出されるデザイン基地であり、日夜、数十人体制で試作や改良、製品テストが行われているそうだ。

「現状に満足せず、常に挑戦し続けろ」

入室する際にふと足元に目をやると、“YOUR COMFORT ZONE WILL KILL YOU”の文字が。こういった遊び心が、斬新なアイディアの閃きに欠かせないのだろう。

室内には、数えきれないほどの生地や糸、紐、ボタンといった素材がずらり。さらに、SuperstarのシェルトゥやUltraboostのフォーム素材、3Dプリンターで製作したミッドソールの4Dなど、adidasならではのパーツも。案内人いわく、画面上でデザインが完結してしまう時代だが、実際に手を動かすことでしか得られないこともあるんだとか。このようなDIY的メンタリティは、靴職人の息子として生まれた創業者アディ・ダスラーの精神に根付くものに違いない。

“MAKERLAB”の見学後は、FCバイエルン・ミュンヘンの2024/25シーズンの3rdユニフォームを自由にカスタマイズできるワークショップが開催。“MAKERLAB”に触発された参加者たちは、ボタンを付け替えたり、レースを縫ったり、裾を裁断したりと、大胆なアレンジを楽しんでいた。このワークショップで本社でのプレスツアーは終了を迎え、その晩、一行は懇親会も兼ねたディナーのためニュルンベルグの街中にあるレストラン「Clubhouse Nürnberg」へ。ここでは、ドイツビールを片手に大画面でシミュレーションゴルフが楽しめ、その数なんと7台。自然と国別のグループに分かれ、各国でゴルフの腕前を競い合う楽しいひと時を過ごした。

そして翌日、一行は本社を後にし、車に揺られること2時間。バイエルン州の州都ミュンヘンへと移動し、FCバイエルン・ミュンヘンの本拠地“アリアンツ・アレーナ”で試合を現地観戦するという、贅沢すぎるフィナーレでプレスツアーは締め括られた。

adidasがどれだけゴルフを重要なスポーツに位置付け、Originals Golfという新たな挑戦に注力しているか、十分すぎるほど肌で味わえたと同時に、改めてadidasがいちスポーツブランドを越えた存在であることを再認識できた今回のプレスツアー。
なお、4月にリニューアルオープンした東京・銀座のadidas Brand Core Store Ginzaでは、3階がゴルフ専用フロアに一新され、すでにOriginals Golfが展開中。
今回のレポートを読んで気になった方は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

INFORMATION

アディダスゴルフお客様窓口
TEL:03-6732-5461 (土日祝除く、9:30~18:00)
製品情報:shop.adidas.jp/golf/

POPULAR

7