ART 2023.10.13

Interview:Levi Pata 10月14日からスタートする個展“BLACK, WHITE, RAINBOW”に表現したエネルギーの形

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Takao Ookubo, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

Levi Pata(リーバイ・パタ)はネイティブ・アメリカンを祖先に持つ北カリフォルニア出身のアーティスト。その個展『BLACK, WHITE, RAINBOW』が10月14日(土)から29日(日)までの間、ギャラリー月極にて開催される。
Levi Pataは2019年にTAKAHIROMIYASHITA TheSoloistとコラボレーションしたり、UAの演奏と共にライブペイントしたりと、ファッションや音楽に精通するアート表現を展開している。抽象的なタッチで描かれる作品はエネルギーを可視化したものとも考えられるそうだ。一方で詩などのドローイングもLevi Pataの特徴だ。
その作品はどれも独特で何かの系譜に依るところがない。この個展開催に際して、どんなアートを表現しているのかをインタビューする。

アーティストLevi Pataの個展“BLACK, WHITE, RAINBOW”が10月14日より開催

ライブ中に無意識状態のまま描く絵

ー絵を描くようになった経緯から教えていただけますか?

Levi Pata:小さい頃から絵が好きで2歳の頃からずっと描き続けてきました。大学に入る頃に自分はどういう仕事をしたら良いんだろう? と悩むようになり、そんな折にサンフランシスコの美術館でゴッホなどの絵をみたのが衝撃的だったんです。そこで世の中にアーティストという職業があることを知り志していくようになりました。

ー何でもほぼ独学で絵を描けるようになったんだとか?

Levi Pata:そうなんです。もちろんデッサンなどは勉強していてキャンバスを作れるようになってからは家で自分の描きたいものを表現するようになっていきました。何かを参考にして模倣するのではなく、最初からオリジナリティがあるものを描こうと考えていましたね。ただ、そう考えてもなかなか自分らしいスタイルを構築していくことは難しいことでした。今の作風に繋がっていくのはライブペインティングを始めてからだと思いますね。

ーライブペイントはいつ頃からやっているんですか?

Levi Pata:最初にやったのは東京のバーみたいな場所で2010年頃でした。やはり家で描くには絵のサイズ的にも限界がありましたし、表現という意味でもライブペイントは自分にマッチしましたね。でも、始めた頃はまだ頭で考えながら絵を描いているような状態でした。

ー頭で考えながら描いていた、ということは、無意識で描いていた方がいいという意味ですか?

Levi Pata:そうです。オーディエンスにどうパフォーマンスを見せるのかだとか、そういった雑念を取り払って、音楽に身を任せて無心に絵を描いていくことで表現できる絵、そういったスタイルを追究しているんです。

ーライブパフォーマンスに欠かせないものは何ですか?

Levi Pata:音楽ですね。ライブパフォーマンスは大体1時間程度行っているんですけど、2ヶ月ほど前からプレイリストの準備をしてどんな絵を描くのかを楽しみに想像しながら考えているんです。そのプレイリストが重要で、日々の生活を送りながら出会った人やその時々のムードなども踏まえて作っていきます。徐々に気分が盛り上がっていくように曲順を考えて、自分の中での起承転結も意識して組んでいますね。

ーどういうアーティストの音楽をセレクトしているんですか?

Levi Pata:本当に年代もジャンルも様々なんですよ。例えば、この間作ったプレイリストの1曲目は2Pacでした。だけど、全然無名の曲でした、イントロとしてすごく良くて。1920年代にアメリカの社交場でダンスするときに流れていた音楽だったり、ビョークやポール・マッカートニー、ベートーベンやフランク・オーシャンもセレクトしたりします。改めて、自分のアートには音楽が大きな影響を与えていると思いますね。

ー音楽を好きになったのは何か理由がありますか?

Levi Pata:両親や家族の影響が大きいです。アメリカに住んでいた小学生の頃からHIPHOPをずっと聴いていて。あとはバスケのカルチャーも近くにあったのでなおさら好きでしたね。サンフランシスコではミクスチャーな音楽にも触れて、そういう友人も多かったです。そんな人生経験から音楽が好きになっていきました。

近代化以前の歴史的な文化や考え方が好き

ー今回の展示『BLACK, WHITE, RAINBOW』ではライブペイントで表現されたものから、人物画、メッセージをドローイングしたものまでありますね。この辺りの表現の差について教えていただけますか?

Levi Pata:家で描いているものだと比較的サイズが小さいものが多いですね。<DON’T BLAME ME>というメッセージがある絵は利き腕を骨折しているときに左手で描いたんですよ。それで少し曲がっています。以降、ライブペイントでも両手を使えるようになって現在のスタイルが生まれたと思います。

ー絵だけではなく、メッセージのドローイングもされていますが、これはどういう理由があるんですか?

Levi Pata:2009年に日本へ移住した頃、すぐに日本語を扱うことができず他人と英語でもコミュニケーションが取れない時期がありました。その頃、言葉を全然発していないような気がして、何かもどかしさがあり伝えたいけど言葉にできないって気持ちがあったときにメッセージのドローイングを始めたんです。

ーそもそもですが、Leviさんが日本に住むことにしたのはどういう理由があるんですか?

Levi Pata:5歳から琉球空手をやっていて次第に日本に興味を持つようになり、あるとき那覇に旅行にいって日本に住みたいと考えるようになっていきました。今思えば、私は歴史的な文化が好きなんだと思います。近代化する前の文化や歴史が今に繋がる形で残っているというのは日本ならではのものなんですよね。アメリカではななかなかなくて、あるとしてもネイティブ・アメリカンの文化だったりするんです。

ーLeviさんは祖先にネイティブ・アメリカンを持っているということですが、思想などその文化から影響を受けた部分はありますか?

Levi Pata:ストライプを施した人型モチーフの作品などは顕著に影響が現れていると思います。人間の左側はスピリチュアルな世界へ通じていて、右側が地球に繋がっているという考えを形にしていますね。あと、ここには月の満ち欠けのサイクルに対するイメージも込めています。そういった自然が流転していく様はネイティブ・アメリカンのことを学んでから考えるようになったことで、自ずと作品にも投影されていますね。

万物はエネルギーで構築されている

ー過去にコラボレート作を振り返ると、2019年の秋冬コレクションでTAKAHIROMIYASHITA TheSoloisと協業していますよね。

Levi Pata:はい。2015年に作品集『小さい部屋から from a small room』を出したんですけど、それが人伝いに宮下さん(宮下貴裕氏)の手元に渡って、特に僕の詩を気に入ってくれたみたいで。その後、ご連絡いただいて一緒にサンフランシスコに行ったり旅をしてコラボレーションすることになったんです。僕からはペインティングとドローイング、コラージュの作品をいくつかお渡ししてデザインに起用していただいたんです。この出来事は自分にとっても大きなことでしたね。コレクション発表後は一緒にパリにも行きましたし、宮下さんともすごく仲良くなれて嬉しかったです。

ー一方で、UAさんとライブパフォーマンスを実施されています。もともと知り合いだったんですか?

Levi Pata:いえ、UAさんは僕がファンでずっと聴き続けてきたアーティストなんですよ。一時期、京都に住んでいたことがあるんですけど、行きつけのバーでイベントオーガナイザーの人と知り合って、UAさんのライブ時にペインティングさせてもらえるかもしれない機会をもらったんです。結局、台風でライブは中止になったので実現できなかったんですけど、それがファーストコンタクトです。その後、2021年に『はじまりの木: 現代のカリフォルニア・インディアンの話』という本を出版するときにコメントをUAさんにもらったんですよ。あれは本当に嬉しかったです。そして、ようやく今年の4月、Levi’s 501®デニムの150周年イベントでライブペイントをご一緒させていただくことになったんです。今回の展示でも、その作品を2つに割って展示しています。

ー今回の展示タイトルは『BLACK, WHITE, RAINBOW』ですが、ここにはどんな思いを込めているんでしょうか?

Levi Pata:自分の思想や行動、人間に対して抱いているイメージ、作品に表現されている色、そういったものを幅広く包括的に表現したタイトルですね。例えば、僕の作品はモノトーンで描かれることが多いですがライブペイントではカラフルにレインボーとも捉えられる色使いをします。それに、黒から白へ至るまで、その間には青や黄色、七色では収まらないほどのカラーがあるとも考えられます。あとは、ステートメントにも記載したんですけど、「すべてのモノはエネルギーでできている」という思いも込めています。その背景には月の動きが重要な意味を持ちます。直接的に単一のコンセプトがあるわけではなく、いろんな意味があるタイトルだと受け取ってもらえたら嬉しいです。

ーでは、今回の個展を経て今後はどういったアートを表現していきたいと考えていますか?

Levi Pata:今後は特にライブペインティングに集中していきたいと思います。今までは年に2、3回だったんですけど、その頻度も増やしていきたいですね。1人で行うものだけではなく、UAさんとやったときのように誰かとライブしても面白いかもしれません。あと、最近は文書や詩の表現をしていなくて、これは2年前に出した本でたくさん描いたからという理由もあったんですけど、最近はまた言葉を描きたいという気持ちが再燃してきているので、それも実践していきたいですね。今回も壁に自分の詩を描いたりします。今後の自分の表現を示す展示になっていると思うので、是非会場でチェックしていただきたいです。

INFORMATION

Levi Pata個展 『BLACK, WHITE, RAINBOW』

会期:2023年10月14日(土) – 10月29日(日) ※月火水休廊
開場時間:14:00 ~ 20:00(木/金/土) 13:00 – 19:00(日)
入場無料

会場:月極
東京都目黒区中央町1丁目3-2 B1
http://tsukigime.space
https://www.instagram.com/tsukigime.space/

<Opening Party -Levi Pata Live Paint->
会期:2023年10月14日(土)
開場時間:17:00 – midnight
Live Paint:18:00 – 19:00
入場無料
会場:月極 & メグロネオン
住所:東京都目黒区中央町1丁目3-2 B1
http://tsukigime.space
@tsukigime.space / @meguroneon

Levi Pata
https://www.instagram.com/sofunithurts/

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