ART 2023.11.10

Interview: Poseidon デジタルとアナログの融合による混沌としたグラフィックの背景

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

Poseidonは昨今、音楽、ファッションシーンにおいても話題を集める新鋭アーティストであり、アナログとデジタルを絶妙にミックスさせた表現を行っている。特にモノトーンで描かれるデジタルコラージュ的な作品はインパクト大。パッと見で印象に残る強さを持ち合わせている。
昨年10月開催の初個展『DEBRIS』を経て、11月11日から月極で2度目の個展『ERROR』が開催となる。今、注目を集めるPoseidonのクリエイションついてインタビュー。その源泉を聞く。これを読んで月極で彼のアートを体感していただきたい。

「偶発的で完璧ではない何か」を描いたPoseidonの個展“ERROR”

アナログ的思考をデジタルの手法とミックスさせる

ー絵を始めたのは何歳だったんですか?

Poseidon:小学5年生だったんで11歳のときですね。とあるアート本に掲載されていたゴッホの存在を知って、絵そのものに興味を持ったんです。絵が持つパワーを知りたい、ということをもう15年以上考え続けながら絵を描いています。

ーその後、どう美術を学んだんですか?

poseidon:2021年まで多摩美術大学のグラフィックデザイン学科に通っていたんです。当時、グラフィックは本当にやりたいことじゃないなと思いつつ、PCでデザインを作りながらアナログで絵を描いているような生活を続けていましたが、当時、自分の絵に限界を感じて、アナログの感覚でデジタル作品を作るようになっていったんです。

ー今回の展示では大学在学中に描かれた絵もあるそうですね。非常に大きな作品です。

poseidon:はい、19歳のときに描いた絵なので展示するか悩んだんですけど今の自分に繋がる原点的な作品でもあります。これはアナログなんですけど、バスキアに出会って救われた感覚があったんですよ。

ー救われた、というのは、19歳当時、大学1年生の頃に何か葛藤があったということですか?

poseidon:大学に入学した頃、中高が男子校だった自分には共学の空気に馴染めなくて居心地が悪かったんですよね。せっかく望んで美大に行ったのに大学生活を楽しめていない、そんな葛藤が積み重なってとにかく大きな絵を描きたいと思ったんです。そこでどういう作風で描くかを悩んでいたときにバスキアに出会って衝撃を受けたんですよね。そこから視野が広がっていった感覚があります。

ーなるほど。すでに現在の作風を感じさせる部分もありますが実際にデジタルとアナログをミックスさせていくようになっていったんですか? なかなかない表現だと思うんですが。

poseidon:もともと好奇心が強いタイプなので、どうなるんだろう? っていう純粋な気持ちから自分なりにアナログとデジタルの表現をミックスさせていった感覚はありますね。それに、新しい表現を模索していくことは作家の仕事だと思っていますし、探究を進めることで、世の中に対する知見を広げていくことができると考えているんです。

ーなるほど、探究の一環として表現が変わっていったという。

poseidon:そうですね。そもそもの話なんですが、僕はアートに人生を作ってもらったと思っていて、アートに恩返しをしたいと考えているんです。そのうえで、自分が何をすべきかを考えると、今までにない新しい表現で描かれた作品を作るということになると考えていて、それで今の作風に繋がっていったと思いますね。

ーこの幾何学的なビルなどがコラージュされている作風こそ、Poseidonという感じがしますが、これはどう描いているんですか?

poseidon:これはコラージュ的ではあるんですけど、全部自分で素材を描いて、それをアナログに取り込んで制作しているんですよ。だからコラージュなんですけど純粋なコラージュじゃないんです。3D的でもあるんですけどあえて平面で表現しています。

ーじゃあアナログで描いた絵をデジタル上で組み合わせて加工を施しているということですか?

poseidon:はい。BlenderでモデリングしたうえでPhotoshopで画質を下げてピクセルが見えるようにしたりしています。別のソフトウェアも使ったりしているんですけど。

自分だけど自分じゃないというズレが大事

ー画質をあえて下げて、線がガビガビになっているというのも実にPoseidon的だと思いますが、こういう表現にしているのはどういう理由があるんですか?

poseidon:もともと完璧なものが好きじゃなくて、昔から不完全なものに惹かれてきたんです。絵を描くにしても上手に描こうとするのではなくて、無心でサッと引いた線の方が良い、というマインドを持っているんです。特にデジタルって手で描いても補正されちゃってカチッと綺麗になるじゃないですか。それに抗いたくてピクセルが見えるという表現に至ったんです。アナログの思考でデジタルの表現を考えていたような感覚です。

ーその辺りの感性は今回の個展名『ERROR』に繋がる部分があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?

poseidon:はい、僕の場合間違いから生じたものが作品になることがあって、意図しない表現を大事にしているんです。だからアナログで描くときもあえてペンや筆を描きにくい持ち方で持ってグッと線を引いたりとか。そうすると無意識の中で生まれるものがあって、自分なんだけど自分じゃないっていう、微妙にズレた感覚や思考が大切だと思います。それで『ERROR』と名付けたんですよ。

ーなるほど。アナログ作品において微妙に線が歪んでいたり配置が少し変なのはそういった思考から成り立つものなんですね。このキービジュアルにもありますが、どこか宇宙船のような多面体が複数出てくるのもPoseidonっぽいと思うのですがいかがでしょう?

poseidon:そういったモチーフは自分が好きだからというのもありますね。大友克洋さんや『スター・ウォーズ』、ガンダムシリーズが好きで影響を受けていますし、宇宙のものを空想で考えるのが好きなんです。銀河鉄道だとか、こういう世界があったらいいなってことを考えながら想像して描いていますね。

ーそこでいくと他に影響を与えられた作家やカルチャーなどはありますか?

poseidon:考え出すと、数えきれないくらいいますよ。例えば、ピエール・ボナールとか。今まで受けてきたインスパイアが特にアナログ作品には全部入っていると思います。あとは父が建築家だったので建造物や家具は昔から好きですね。そういうのも反映されていると思います。

ーでは、創作に対するモチベーションをキープするという意味ではどういうことをされていますか?

poseidon:やっぱり人が好きなので誰かと会って過ごす時間が良い影響を与えてくれますね。具体的な何かがなくても楽しかったなって漠然と思ったりだとか。人との出会いや時間が制作の原動力になっています。

ーそういった出会いを反映するように今後はコラボなども決まってきているそうですね。これから先どんな活動をしていきたいですか?

poseidon:アーティストとのコラボがいくつか決まっていて随時発表できるタイミングでローンチされていくと思います。それもありつつ、自分としては作品を制作して発表し続けることで、少しでも世の中を良くしたり人助けをしたいと思っているんですよね。そのためには自分自身がもっと力を持って発言力をつけていかなくてはいけないと思います。Poseidonと言えばこうだよねっていうものを作りたいですし、そう思われる作家になっていきたいと思います。

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INFORMATION

Poseidon Solo Exhibition『ERROR』

2023年11月11日(土)-12月10日(日)※月火水休廊
14:00〜20:00(木/金/土) 、13:00 – 19:00(日)
入場無料

月極
東京都目黒区中央町1-3-2 B1
http://tsukigime.space
@tsukigime.space / @meguroneon

Opening Party
2023年11月11日(土)17:00 – 23:00
入場無料

月極 & メグロネオン
Saki Ideshima Live:21:00 – 21:30
DJ:CESAR(ALI)、OKGEN、Big timtam
FOOD:Brother
http://tsukigime.space
@tsukigime.space / @meguroneon

Poseidon / 水上雄太
1997 年東京生まれ。宗教家の母と建築家の父の影響を受け育つ。小学5年生の時ゴッホの本を読み画家を志す。2017 年頃から本格的に作品の製作を開始。デジタルとアナログを独学で研究し、両方のアプローチから脳内にある蓄積イメージを限りなく高い解像度で書き出すことに挑んでいる。現在は、デザイナーとして音楽・ファッションのシーンを中心に活躍し、現代アーティストとしては個展・グループ展などで展示し活動している。
@mizukamiyuta

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