加藤雄太:新宿 #8
by Yuta Kato

Text,Photography_Yuta Kato

加藤雄太:新宿 #8
by Yuta Kato

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フォトグラファー加藤雄太の「新宿」連載第八回。暇さえあれば声をかけに出る彼がこれまでに撮りためてきた作品は数千以上に及ぶ。その時その一瞬を収め続けてきた彼のレンズ越しにみる新宿という街のリアルやドラマをテキストと共に楽しんでもらいたい。これは見ず知らずの人間の人生を垣間見る邂逅録である。今回の舞台は原点の新宿へ。

今、大学2年で、そろそろ社会との関わりもいっぱい出てくるじゃないですか。小さい頃って「20歳」って聞くと大人だなってイメージがあったんですけど、なってみると全然そんなことなくて。19歳まで全然子供の感覚で、20歳になってもやっぱ子供で。いつになったら大人になれるんだろうって思います。
 
社会に出たこともないですけど、当てはめられるイメージはすごくあります。自分の信念を曲げて、従わなきゃいけない場面も来るんじゃないかって。それが嫌だし不安です。別にしたくないことでお金を貰って生きていくくらいなら、お金を貰わなくていいからやりたいことをやって生きていきたい。何か大きなことを成し遂げるとかそんなんじゃなくて、自由に好きな服を買って着て、晴れの日も雨の日も散歩に行ったり、思ってることを書き起こしてみたり。そうやって暮らしていくのが理想です。

散歩は高2、高3の受験勉強らへんから続けています。散歩中は、生きる意味や哲学的なことを考えることが多いです。あとは、近所とか歩いてると当たり前な風景なんですけど、意外と見たことない花があったりして、身近なところにも綺麗なものが落ちてるんだなって気付きがあります。そういうのが好きなんです。当たり前をちゃんと大事にして生きていくみたいな。

僕たちはInstagramで出会いました。
当時、私はオーストラリアに居て、彼はアメリカに居ました。Instagramで繋がって、もうそこから8年間、一緒に過ごしています。
僕と彼女は同い年で、出会った時は18歳でした。

ーオンラインで知り合って、初めて直接会ったのはどこでしたか?

中国の北京です。話してみると、二人とも出身地が同じで。
お互いに留学先へ戻る前にメッセージを取り合って、会う約束をしました。

ーどんな印象をお互いに抱きましたか?

すごくシンプルに、直感的に僕がこれから連れ添うのはこの人なんだって思いました。
私も。言葉ではうまく説明できないけど、同じ印象を抱きました。

今日は朝9時からです。昨日も。いつも何回も描いてるんですけど、その度に諦めて、なかなか完成しないんです。学生の頃は割と「こうだ」って意志を知らないうちに持っていて、気づいたら絵が出来上がったり、思い悩まなくても手が進んだものです。でも年々歳を重ねると、色々考えて、こうじゃない、ああじゃないって繰り返して、もっと身軽に描けたらなぁと思います。

最近亡くなった画家で野見山暁治さんという方がいて、あの方なんて綺麗な景色を描いたでしょ。海を描くにしても、海って一般的に綺麗に描かれるじゃないですか。色なんかもすごく鮮やかに。でも震災があって、野見山さんはすぐに現地へ向かわれて、それで一寸綺麗な景色の中の恐ろしさといいますか、そういう力を感じて、絵にしたんですよね。あの人の絵は暗さもあってちょっと怖いんですけど、私は好きなんです。

今描いてるこの絵では、黄色を多く使いたいです。綺麗な黄色を。これはあそこの木の幹の部分だけを描いた絵になります。ふと思いますが、絵を描けることは心の余裕でもありますよ。子供も今は手がかからない年齢になりましたし、幸いお金は気にしなくても生活ができています。だから筆を手に取れます。少し前までは「仕事」「仕事」で、絵なんて考える暇もなかったですから。

いやー、あれは嬉しかったね。人生の七不思議の1つに入るっていうくらい。もう田舎にひっこんじゃったわけですから。もともと生まれは〇〇のほんとにど田舎です。高校も行かずで、女房と2人で喫茶店をして、こじんまり暮らしてたわけです。そんな人間にね「田舎に置いとくのは勿体無いから東京に来ないか」って言ってくれたんですから。

なんつったってね、田舎にいると仕事がないですから。だからもう単身赴任覚悟で、それからずっと(東京)です。だから関東へ来てから結局金儲けしたのかなーと。あれは42歳でした。だけどあのー、田舎からこっちへ出てきて何百万と稼げるというのは「どういうことだ?」って驚きましたね。それで〇〇(大手電機メーカー)で定年まで働いて、それからまた〇〇へ帰ってのんびり暮らしてたんです。でもこれも不思議なことに、真面目にアルバイトをやってたからでしょうね、免許を取らせてくれたんですよ。〇〇2級っていう、なかなか取れない免許です。その免許持ってると珍しいから仕事くれるでしょ。飯食っていけるんですよ。だからまたこっちに出てきて今までですねー。

今もめちゃめちゃ働いてます。疲れてます。えぇ。でもね、それをどうクリアしてるかって言うと、やっぱり昔の16歳の頃に培ったものがあるわけですよ。あの当時ろくな金も貰わないでサービス残業させられて、こっぴどく怒られ、しごきあげられた。その時代を思い出せばこんな仕事で金もらっていいのかって思うほどです。当時は電気工事をやっても1日に400円でしたから。1ヶ月休みなしで働いても1万2千円。そっから飯代5千円引かれて、もう生活費が7千円。だからその当時を思えば幾つになっても今仕事をしない手はないだろうって、元気で働けるなら素晴らしいじゃないかって思います。だからこのまま、元気でいられるなら80歳代までやってみたいです。要するに、女房を食わせる役割がありますから。あとは子どもたちにも迷惑かけないよう貯金をしとけたらなと。

新宿 #1 by Yuta Kato

新宿 #2 by Yuta Kato

新宿 #3 by Yuta Kato

新宿 #4 番外編 by Yuta Kato

新宿 #5 by Yuta Kato

新宿 #6 番外編 by Yuta Kato

新宿 #7 番外編 by Yuta Kato

INFORMATION

加藤雄太

「毎日、知らん人に話しかけたら?」先輩の一言をきっかけに、
2014年より街行く人々の写真を撮り、話を聞き・書く生活を始める。2022年、独立。
HP:yuta-kato.com
Instagram:@_yuta_kato_

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