MUSIC 2025.09.11

Report:過去と現在を繋ぎ、未来を示すEYESCREAM NITE VOL.2が描いた一夜

EYESCREAM編集部
Photography_Hiroki Asano, Edit&Text_Chie Kobayashi

EYESCREAMが⽴ち上げたライブイベント「EYESCREAM NITE」。8月20日に初開催され、翌日の8月21日にVOL.2が行われた。VOL.1はバンドによる芳醇な音が満たした代官山UNITだったが、第二夜となったこの日は、TAIL、REIKO、オープニングアクトにYUSIIと、一人の歌声で心を震わせるアーティストが並んだ。

オープニングアクトはYUSII
今年4月にざきのすけ。からYUSIIに改名した彼は、昨年12月以降、楽曲制作に勤しんでおり、この日が約8ヶ月ぶりのステージとなった。しっとりした鍵盤の音に導かれるようにステージに姿を現すと、アグレッシブな「Puddle」で勢いづけ、切実な思いを聴かせた「down under」、澄み切った声が心地よい「the way you light」と、感情豊かな歌声で観客の心を動かしていく。

YUSIIという現在のアーティスト名は本名からつけたそうで、改名理由を「ありのままの自分でいたい」という思いからだったと明かした彼は、最後に改名後最初に発表した「OMOKAGE」で自身の新たな一歩を噛み締めた。

花柄のセットアップに身を包んだREIKOは1曲目「Take It Back」からソウルフルな歌声で会場を包む。ファンが音にあわせて手を叩いているのを見ると「そのノリ方、拝借!」とばかりにクラップを煽り、フロアで踊りながらスマホで撮影をしているファンを見つければカメラに視線を送るなど、フロアに集まったファンの反応にも呼応し、共にライブの空間を作り上げていく。

「No More」で踊らせたあとのMCでは、「初めましての人?」と客席に尋ね、初めましての人を確認すると「初めましての人がめちゃくちゃ踊ってくれているのを見た。うれしい」と顔をほころばせていた。その人懐っこさこそが、初めましての人の心も開いていくのだろう。「失恋したことある人?」と、ともすれば古傷を抉ってしまいそうな問いかけから始まったのは「君のせい」。さらにHY「366日」のカバー、「イタズラ」とバラードを続け、失恋した心やリスナーの古傷を癒していった。

そんな空気を切り替えるようにクラップ音が響き渡ると、続いては愛おしい人とのひとときを歌ったMAZZEL「Fantasy」のカバーを軽快に届けていった。

MCでは7月に1stワンマンツアーを終え、これからについて考えすぎて悩んでいたと吐露。言葉をつまらせながらも、「だけど1日ずつ大切に生きて、自分の体も心もケアしていけば、いつか遠くに行けるって信じるようにしています。仕事から無事に帰ってきただけでも祝うとか、楽しいことを思い出すとかをしなきゃいけないんだなって思われました。

だから今日は皆さんと生きていてよかったって祝える日にしたいと思っています」と悩み抜いたからこそ見つけられた価値観でステージに立っていることを話すと、ダンサブルな「BUTTERFLY」、エキゾチックな「Neverland」、久保田利伸の楽曲をサンプリングした「LOVE DEEPER」と、祝福モードで会場を盛り上げた。

転換時には酒を嗜む人、友人との会話に勤しむ人、そして場内に並べられたEYESCREAMのバックナンバーに目を通す人など、各々が自由に過ごしていた。

DJと共にステージに立ったのはTAIL
「まだまだいけますか〜?」と明るく声をあげると、<誰彼かまわず歌え><皆踊れ皆踊れ>との歌詞を乗せた「Sha la la」でライブをスタートさせる。その言葉通り、TAILとTAILのファンはもちろん、REIKOのグッズに身を包んだファンや、客席で見ていたREIKOも歌い踊る。サウンドの華やかさやキャッチーさはもちろん、何よりも体にじんわりと染み込むような優しく深みのある歌声が、リスナーの心と体を彼の音楽へと誘っていく。

さらにTAILは<声あげて Let’s celebrate!><聞かせて Let’s celebrate!>と歌う「Celebrate!」を続け、盛り上げていく。TAILの音楽と歌声に、どんどんオープンマインドになっていくフロア。そんなムードにTAILも思わず「今日って平日ですよね?」とあまりの盛り上がりに驚いていた。

この日のラインナップについて「個人的にも大好きなアーティスト」「声と言葉で届ける人」と言うと、自身の楽曲の中でも特別大切にしているという「Confession」へ。この曲はファンからの手紙を受け取り制作した楽曲だと言い「その人の代わりに、何か思いが伝わればいいなと思って作った曲です」と添え、<好きで好きで好きでごめん>と切実な思いを丁寧に歌い上げた。

2023年11月に、それまで活動していた「向井太一」から「TAIL」に名義を変えて活動しているTAIL。
今年の7月末にそれまで所属していたトイズファクトリーからの卒業を発表し、この日は卒業後初のステージとなった。そして8月13日に約2年ぶりに向井太一名義でリリースした「Eyes on you」を力強く歌い上げる。

最後は再び「Break up」「Toxic」で踊らせ、大いに歌い、大いに踊ったこの日のステージをしめくくった。

改名し8ヶ月ぶりのステージとなったYUSII、1stツアーを終えこの先への不安を抱えるもそれを乗り越えたREIKO、長年所属したレコード会社を離れ、フリーランスとなったTAIL。はからずもこの日が再出発への第一歩となったアーティストが揃ったこの日。

彼らの音楽は、いつも以上に説得力を持って鳴り響き、集まった観客の胸を打ったことだろう。

日々の中で立ち止まってしまったとき、次の一歩を踏み出すのが怖くなってしまったとき、そんなときに寄り添ってくれたり、背中をそっと押してくれたり、不安を吹き飛ばしてくれるのが、音楽をはじめとするカルチャーなのだ。改めてそう思わせてくれた一夜だった。

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